おい、三谷!

脚本家としての三谷さんの才能はすごいと思う。十二人の優しい日本人から笑の大学、新選組!も鎌倉殿も大好きだ。でも、監督しちゃうとどうしてこんな風になっちゃうんだろうか?ダラダラしてるし、それにこだわる意図も理解し難い。続きものの一発勝負な演劇と、たくさんのカメラで撮って編集する映画。もしかしたら時間を捨てるのが下手な監督なのかもしれない。それでも名前は大きくなるし、いい役者だって予算だって集まってくるから、こんな駄作が生まれてしまう。偉くなりすぎると叱ってくれる人がいなくなっちゃうんだろうな。

これぞ旅やって!

1組のカップルがバイクに荷物を積み、タンデム(2人乗り)で世界一周に挑んだドキュメント。映画になってるわけだから、もちろんちゃんと帰って来てるんだけど、旅の不安感やトラブルのたびにドキドキしてしまう。400日以上、6万キロという旅だから桁が違い過ぎるが、勝手に自分の輪行や一人旅に重ね、やっぱり旅はいいなぁと思う。でも一番すごいなと思ったのはカップルの男の方、映画の監督でもあるナメさんの包容力。ただでさえキツくて先の見えない旅に、精神的にも不安定な彼女を連れて行って安全に連れ帰る。そのしんどさったらないだろう。もちろんそれ以上のメリットを感じたから連れて行ったんだと思うけど、あのじゃじゃ馬が一番乗りこなすの大変だろうなぁ。

うちは、おばあちゃんじゃないけれど。

余命1年を宣告されたおばあちゃんと大学を中退してフラフラしている孫の物語。遺産目当てで動き出す大人たちと、時間があるので一緒に住むことから始める孫。どうしても自分の両親に重ねてみてしまう。みるみる弱っていくのを感じるけど遠いので面倒は妹たちに任せきり。エンディングノートみたいなものは作っているらしいが、見たことはない。…あ、映画の感想ではなく、自分の状況確認になってる。でも、頭を巡るのがそればっかりだったんだもの。

意外と。

たぶん昔見ていると思うけど、例によってあまり記憶のないスーパーマンの新作。といっても続編とかではなく、ここから始めるリブート的な作品みたい。アベンジャーズとその仲間たちのカッコよく戦えればなんでもいい系には食傷気味なので、これもどうかと思っていたけど…結構良かった。スピードとか物理の法則とかは考えないのは他と同じだけど、良かったのはめちゃディフェンシブなところ。超能力を敵を倒すためより、何かを守るために使う。これぞ専守防衛(選挙中だからあかんかな(笑))やられてやられて守って耐えて耐えて勝つ!中年レスラーのような戦いぶりに応援せざるをえないやろ。

物語の力。

家族に問題を抱えた中年オヤジが、ひょんなことから市民劇団に参加。しかもロミオとジュリエットのロミオを演じることになって…というコメディではなくハートウォーミングな物語。彼らの問題が後半、ロミオとジュリエットの物語に重なっていき、それを演じることで再生する力を得ていく展開は見事だった。もちろん物語は誰かが考えた作り物の世界。でもそれがこんな風に誰かの気持ちや人生に影響を与えることってたくさんある。それを求めて今日も映画館に通うのさ。

この時期の公開でよかったね。

吉沢亮主演の吸血鬼コメディ。もともと2月公開だったのに、年末に吉沢君が微妙な不祥事で公開延期。そのあとあの「国宝」での好演で一気に株をあげたあとだから、ちょっと期待して見に行った。吉沢君は悪くないよ、でも仕事選んだら?漫画に目くじら立てるなと言われたらそれまでだけど、ひど過ぎる。作品の中で当たり前のこととして通ってる「森さんのブレないヴァンパイア設定」ってなんや。森さんの周りの気持ち悪いキャラクターたちの設定も、物語の展開も「漫画だから」というならば漫画を馬鹿にしていると思う。これの人気があって、映画化までされる日本の若者世界に…そんなこと言ってるからおじい扱いされるんだけど。

なんか、ちょっと寂しかった。

浅草キッドの水道橋博士が3年前の参院選に立候補し当選、そのあと鬱病を発症し、議員を辞職するまでのドキュメント。

選挙という日常の中の非日常を追った「選挙ドキュメント」はこれまで何本か見てきた。テレビや街頭演説では出てこない候補者の人間味や、周りの人たちの苦労、選挙という戦いにチームで挑む感じが好きだし、今回もその部分はあった。でも今回は主役が芸人として尊敬する博士だったのだ。最近でこそあまりやらないが、漫才師としてはたけし軍団の最高傑作だと思うし、文章での切り口・切れ味も抜群で、著書も何冊も持っている。そんな博士がどこをどうかけちがえたのか?芸人としてのキャリアを投げ捨てて、政治家に立候補。師匠のたけしさんを誰よりも尊敬し、くだらないことに真剣に取り組んできた数十年の芸人人生と天秤にかけるほど魅力的な仕事に見えたんだろうか?画面の中でどんどん面白くなくなっていき、当選した挙句、バランスが取れなくなって鬱病を発症。奥様はこれも一つの経験で、それを踏まえてできることがあるって言ってたけど、この色眼鏡は芸人としては相当厳しいと思う。到底理解できない政治の魅力そして魔力の奥深さにおののくばかりだ。

家に帰って、素麵を食べたくなった。

オダギリジョー主演・プロデュース、舞台作品の映画化。息子と仕事、そして家族を失い、茫然としている中年男と、そこに一緒に住むことになった姪。暑くてカラカラの長崎の夏を舞台に、愛を失い心がカラカラな人たちが絡み合って…という物語だ。オダギリジョーも高石あかりも薄暗く、ジメジメした坂の上の家以外に居場所はなく、毎日を惰性で過ごす。ラスト前、象徴的に雨が降る以外は何も起こらない。そう、大概の人の人生だってそんなもののはず。スーパーヒーローも絶世の美女も、革命的におもろい事件もおこらない。そんな自分に重ね合わせ、彼らが小さな潤いを見つけていく姿が心に染みる。ババンバなんとかみたいなガキ映画より、こっちを選んで正解。

ちょっと邪魔な雲が…

コロナ禍で何もできなかった2020年の夏、オンラインでスターキャッチコンテストをやった高校生たちのアオハル物語。自分にとっても悪夢だったあの時代に、人生で一番楽しい時期を過ごさねなければなかった彼ら。アイデアと行動力でこぎつけたスターキャッチはすごく爽快。しかも、全国各地から同じ空を見ているという一体感もよかった。でも余計なパートや不必要な表現も多かったなぁ。もっとシンプルにしたほうがスッキリしたはず。

人間怖え!

ホラー映画は苦手でまず見に行かない。でもこの映画、そんじょそこらのホラーよりよっぽど怖かった。子どものウソを発端にしたサイコパスの母親による殺人教師のでっち上げ。事なかれ主義の学校に強要され、謝罪をしてしまったことで、妄想が事実のように流布し大騒ぎに。人生を壊されかけた綾野剛が、裁判で…という話なんだけど、いろいろスッキリはしないまま終わる。冤罪をあおるだけあおったマスコミの責任は?あの家族はどうなった?そこには匿名の有識者の皆さんは興味ないのね。