共鳴とか、共生。
今年春に92歳で亡くなったピアニスト、フジコ・ヘミングの晩年を撮ったドキュメント。波乱万丈だった人生のあゆみや今の気持ちを語る。撮影はここ数年だから当たり前だけどヨボヨボ。でも歩行器でピアノにたどり着き、座って鍵盤に指をかけた瞬間の変貌に驚かされた。よくうまいジャズピアニストとかの演奏を見たとき、ピアノが幸せそうに歌っているように見えることがある。でもその場合、歌わせているのは演奏者で、そのエネルギーがピアノに伝わっている感じがする。それが彼女の場合違う。一方的なものでなく、双方向。エヴァでいうシンクロがピアノとの間で起こっていた。その秘訣は彼女が最後まで持ち続けていた子どものような好奇心、探求心だったのかも。90歳で宝物集めてるバアさん、あんまおらんで。
語り手の力かぁ…。
映画が自分に新しい世界を教えてくれることが時々ある。それは作者のクリエイティブによるものや気付きもあるが、ドキュメンタリーが多い。これはドキュメントではないが、実話ベース。小児愛好者による人身売買、もちろん今の話だ。そこに切り込み、危険を顧みず子どもたちを救う捜査官のある意味ヒーローもの。でも彼への称賛より、これが想像とか設定ではなく、そこにある現実だということに衝撃を受ける。それを世間に広く知ってもらうために、儲け度外視で無料で見てもらえるシステムを提案する制作側と、公開を妨害するオトナたち。どっちに共感できるか?見て判断してほしい。
死生観の違い?
海外の映画祭で絶賛されているという点、話題の侍タイムスリッパーでライバル役を好演している冨家マサノリの主演の自主映画ということで、ちょっと期待値上げすぎたかな。東日本大震災から10年の東北で…ヒューマンミステリー。そう、浅田次郎が描きそうなあの世界だ。浅田次郎はそこに持っていくまでにたっぷり時間をかけるけど、たぶん予算が少ないから描写が浅いし、整合性が取れないので時間も短い。ありそうな話で、驚きがない。1時間が長く感じてしまった。
愛に溢れた作品。
47年前に放送していた日本のロボットアニメ「ボルテスV」。それが大ヒットしていたフィリピンで実写化され、その劇場版が凱旋上映だ。当時4歳だったし、名前くらいしか覚えていなかったので、YouTubeで第1話を見てから臨んだが、その再現度に驚かされた。さらに物語後半に出てくるロボットアニメではあまり見ない家族の物語と母の大き過ぎる愛情。昭和の良さが溢れている。そんな要素がフィリピンで愛され、見事に結実していた。日本でこの手のものを作るといろんな大人の事情や忖度が働き、原作に監督や映画会社の解釈が加わってしまう。そんなものゼロで純粋に形にしている制作陣の愛に感動。こういう作品を大切にしたい。
これだけではなんとも…
踊る大捜査線は、ドラマは一切見てないけど、映画はたぶん全部観た。フジテレビ全盛時代のエンタメとして、楽しんだ。大人の事情で正当な続編が作れないからか、シリーズの名前で稼げるうちになのか、制作陣のケジメなのか、突然現れた新作。まあ、前フリだけなので、後半まで見ないとなんとも言えないな。
ある意味、警告なのか?
5年前に公開され大ヒット、社会現象すら起こした「JOKER」の続編。お金のため、というより前作を見て影響された人たちに「冷静になれよ!」とメッセージを発している「あえての凡作」なような気がした。不遇な環境を非合法ながら思い切った行動で切り開き、社会に不満を抱える人たちのアイコンになっていったジョーカー。その生きざまと活躍?を描いた「JOKER」とは違い、捕まったあとの苦悩と妄想を描いたのがこの続編だ。舞台は基本的に刑務所と裁判所の行き来だけだし、「初めて愛してくれた人」レディーガガとミュージカル仕立てで歌いまくるけど、しょせん妄想の世界。目が覚めたら厳しい現実が待っている。自分たちの鬱憤を晴らしてくれそうな存在に、熱狂してるとしっぺ返し食らうで!大統領選を前にそんなメッセージが込められているのでは?と思うのは考えすぎかな?
これなら違和感ない!
トランスフォーマーの前日譚。CGアニメーションって、いくら進化しても生き物やマンガのキャラクターだと違和感や無理がある。でも全てが作り物で元々カクカクしてるこれなら無問題やわ。おもちゃを開発する時にきっと深くは考えずに作った設定を掘り起こして、ここまでの物語にしたのは見事。さらにアクションシーンも遜色ない。というか、人間とか実写との合成いらなくねえ?


おもてたんとは違うけど。
今、アメリカに内戦が起こったら…その設定しか聞いてなかったので、ハリウッド得意のアメリカ万歳アクション映画かと思ってた。でも制作がA24 主人公はその内戦を取材する戦場カメラマンたち。テイストはだいぶ違った。自分は報道に意義を感じ、身をけずり、命まで張る人たちに違和感があるので共感できないのが前提。でももし…の世界の描写はとてもリアルで、いまそこにある危機を感じずにはいられなかった。普通の人が呵責なく、人を殺せるようになる異常な世界。でも来ないとは言い切れないよな。
インドが濃い。
髭モジャの濃いおっさんが、あり得ないくらい激しく戦ったり、これまた濃いお姉さんと歌い踊りが定番のインド映画。でもこれは「花嫁の取り違い」というインドならではの設定をうまく使ったストーリー。最後はみんな納得の大団円なんだけど、そこにたどり着くまでにインドならではの社会問題をしっかり入れ込んでいるところが素晴らしい。女性の立場、ストリートチルドレン、腐敗した警察と教育の格差…これが21世紀に入ってのリアルな物語だっていうんだから、国の大きさの分、闇も深いよな。
設定、いやタイトルが一番だったかもしれない。
「カメラを止めるな」と同じえんぶゼミ発の自主映画。死んだ人が場所とかでなく、生き物でない物体にとりつくことができる。そのアイデアはメチャいいし、セリフを被せるだけで、それっぽく見せることはできる。ただそのあとがなぁ…。モノ目線は最初だけで、すぐに客観視になっちゃうし、展開にも工夫がない。自分が動けなくても、ネコにくわえさせるとか、時間を変化させるとか、物語を動かすことはできたはず。時間が持たないからオムニバスにしているのはどうやろ?出だしがよかっただけに惜しい作品だった。