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ミノルタSR1・最初期型




ミノルタSR1最初期型…半自動絞り、不等間隔表示のシャッターダイヤル、緑色のロゴ、巻き上げレバーの特徴的なデザイン、外見的にも最初期型である証左を持ち、極めてレアな一台が汚い状態でジャンク屋に転がっていた。


『治るかな…これ』もはや飽きるまで修理を楽しもう。人生は『尽きせぬ代々こそ、めでたけれ…』だ。

数時間後…注油と軽メンテを施すべく下カバーを外して部品構造の差に驚愕した。


『これは一眼レフじゃない…。』
巻き上げレバーとフイルム軸クランクを連結するのは一枚のプレート、そのプレートの往復作業を担うのは極細のスプリングが二本。似たような構造にミノルタレポがある。レポは、さらにチープな部品構成だが、考え方としては同工のものだ。これでもミラーリターンという負荷がなければ、問題はないが…。

職人が手作業で調整した事は、このプレートの仕上げで理解出来る。一枚、一枚仕上げに研磨して組付けをしている。

また、初期型であってレリーズ音も相当に違う。リターンミラーがあるにも関わらず『ライカ的』な感触である。

半自動絞り、という負担の少なさが軽めの作動音を産み出しているようだ。

このオリジナル構成では全自動絞りは強度的に難しく、再設計を求められたのだと推察する。確かに、この部品構成に手直しだけで生産を継続しても、さほどに失敗製品とは思われない。しかし、高度成長期に即した生産ラインとなれば最初期型では手間が多い。

何より、最初期型は一眼レフとして構造が古すぎる。より確かで、耐久性の高い構造を必要としたはずだ。当時の工場と設計陣には、外側を変えず内部構造を変更するという難しいミッションがあったと思われた。

一枚目・最初期型。
二枚目・頼りないスプリングと磨かれたプレート。

三枚目・続初期型の内部。全自動絞り、クィックリターンの同調に対応して強度を増やした部品群、組み立て工程もマニュアルで統一された背景が見えてくる。

逆に考えれば、最初期型にはミノルタの職人作業が偲ばれて感が深い。製品としては耐久性に不安を残すが、カメラ工業自体が精密工業として過渡期であった証人であろう。

みんな灰になる


お世話になった方の棺が目の前にあるのに、そこ故人がいる気配はもはやない。私の祖父が百一才で亡くなった時、人は頑張っても百年足らずの人生なのだと知った。たった百年で何が出来るんだろう。


せめて、子に伝えるものがあれば幸せというものか。

お世話になった…と書いたが、故人は短気で非常に気難い老人であった。むしろ、私は昔風の江戸弁で怒鳴られたり、お説教(僧籍だからね)を貰っていた。一応の信頼を得るのに一年くらいあったように思う。


そのうちに老人からの指示もなくなり、勝手次第で作業をしていた。私が適当にサボり、要領よく済ませていたことは承知していたはずだ。

晩年、老人の体が動かなくなり始めた頃、私に『俺が死ぬまでは、辞めないで来てくれよ…』と、その約束は守れたと思う。


明日は告別式。

さようなら…ぁあ、さようなら。

さらぬ別れ

窓を開けた。東の空を一際に明るい星が二つ連なって上ってゆく。互いに伴われるように輝く星がゆく。


『俺が生きている間は、辞めたりしないでくれよな…』それが最後にお会いした際の言葉だったように思う。


まぁ…考えると寝付けないわけだ。