HOODのブログ -52ページ目

一番頼りになった家電製品

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見送った後、いなくなった空間。


今朝。十年来に愛用した洗濯機をリサイクル処分した。業者によって破砕されるのか、あるいは次の主に使われて、第二の人生を歩むかは定かでない。

思えば、一番信頼できる家電製品が洗濯機だった。疲れて帰宅した私を出迎えてくれて、下着やシャツを洗ってくれる。
私が体調を崩し具合の悪い時でも、間違いなく洗濯は完璧だった。


父が日立で洗濯機の開発・設計をしていたので、当然の事ながら私の愛用機も『日立の洗濯機』である。別に宣伝ではないが、日立の洗濯機は信頼性は抜群だった。

大切に使ってきたし、まだ使える機を処分するのは心痛むが、別れも人生である。
私は感謝の気持ちを込めて、愛用機を磨いて搬出した。

回収業者『全然、きれいじゃないですか。惜しいですね。』
…私『良かったら、使って下さい。マニュアルも付けてあります』…業『リサイクルに回されて、使われる場合もありますからね…』


白い洗濯機が業者の荷台に乗って去って行くのを見送りながら、自分の棺が出て行く風景と重なったような気がした。

いずれ、私は自分の棺を見送るのだろう。どうにも矛盾した感覚だが、魂の重さだけ体から抜けて、身か軽くなったように思えた。

引っ越しと撤退作戦

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神田・伊勢源の鮟鱇鍋。

引っ越しとは戦史における撤退作戦に等しい。

近代戦で著名な撤退作戦には、ドイツ軍のシチリア島撤収、旧海軍のキスカ島撤退などが知られている。シチリアの場合、引き上げるイタリア本土が近いため戦線を縮小しながら交戦し、巧みに連合軍から総量的成功を収めたと云う。

一方、旧海軍の占領下にあったキスカ島はアリューシャン列島の一つ。日本本土からは遥かに遠い。優勢な米軍の制空下で旧海軍が撤収に成功した要因は、戦史解説の真髄…戦術的勝利として現代でも論を待たない。

何より人員の撤退を優先にし各装備などは放棄。ペットにしていた犬※も島に置き去りにして兵員だけを無事連れ帰った。※置き去りにされた犬はキスカ島に上陸してきた米軍に飼われて天寿を全うしたと記録にはある。

このキスカ島撤退作戦の史実に準えて引っ越しを考えると、首都近郊より遠方の地方へ移動するのだから、私の装備は最低限を所持し、輸送経費のかかる書籍の大半は放棄すべきである事になる。

私の装備…それは『膨大な蔵書』である。(実はカメラではない。)…専門書を含め、収集した能楽関連や国文学系の本が多数を占める。そのため、部屋を他人に見せたくないのは(滅多に人を呼ばない…)、私が本を持っている割りには『成績不良のバカ』である事を隠すためもあった。だから、私にはテレビ番組で書斎の膨大な書籍を背景にコメントしている学者や研究者、評論家の神経が羨ましい。たぶん『バカ』ではないんだろう。

教師や研究者になるならば、年に百冊以上は関連した本を読む…それが自分に科した命題であったが、まぁ…結果的に写真関係に人生の道を外したために成功したとは言えない。

ともあれ、教養主義に影響された残骸とでも云うべき蔵書・私の装備を破棄することに、本日決定した。自らに命じて、変更なし。


愛蔵の本達よ、今日までありがとう。苦しいときや辛いときに読む本が何よりも救いだった。さようなら。

みんなサヨナラ


引っ越し作業を傍らで見守る愛機。

このミノルタ7sはジャンクで売られていて、かなりの邪悪な品だった。それを小まめに修理してオリジナルに戻した愛着がある。手元において、息抜きにシャッターを切ってみる。

フィルムを入れていないが…明日から引っ越しスナップを撮影しようかな。

片付けが進む度に、私の部屋が入居当時に戻ってゆく。

住人が去ったという事は、引っ越しばかりでなく『死去』も同じ風景なのだ。
私には寂しさもあるが、また別の住人が暮らす部屋でもある。その住人は部屋でいかなる喜怒哀楽を迎えるのだろう。

他人の幸せを願う立場にはないが、私が無事に過ごせた部屋でもあるし、幸運であって欲しいと思う。

まだ引っ越し作業は続く…。