一番頼りになった家電製品
見送った後、いなくなった空間。
今朝。十年来に愛用した洗濯機をリサイクル処分した。業者によって破砕されるのか、あるいは次の主に使われて、第二の人生を歩むかは定かでない。
思えば、一番信頼できる家電製品が洗濯機だった。疲れて帰宅した私を出迎えてくれて、下着やシャツを洗ってくれる。
私が体調を崩し具合の悪い時でも、間違いなく洗濯は完璧だった。
父が日立で洗濯機の開発・設計をしていたので、当然の事ながら私の愛用機も『日立の洗濯機』である。別に宣伝ではないが、日立の洗濯機は信頼性は抜群だった。
大切に使ってきたし、まだ使える機を処分するのは心痛むが、別れも人生である。
私は感謝の気持ちを込めて、愛用機を磨いて搬出した。
回収業者『全然、きれいじゃないですか。惜しいですね。』
…私『良かったら、使って下さい。マニュアルも付けてあります』…業『リサイクルに回されて、使われる場合もありますからね…』
白い洗濯機が業者の荷台に乗って去って行くのを見送りながら、自分の棺が出て行く風景と重なったような気がした。
いずれ、私は自分の棺を見送るのだろう。どうにも矛盾した感覚だが、魂の重さだけ体から抜けて、身か軽くなったように思えた。




