引っ越しと撤退作戦 | HOODのブログ

引っ越しと撤退作戦

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神田・伊勢源の鮟鱇鍋。

引っ越しとは戦史における撤退作戦に等しい。

近代戦で著名な撤退作戦には、ドイツ軍のシチリア島撤収、旧海軍のキスカ島撤退などが知られている。シチリアの場合、引き上げるイタリア本土が近いため戦線を縮小しながら交戦し、巧みに連合軍から総量的成功を収めたと云う。

一方、旧海軍の占領下にあったキスカ島はアリューシャン列島の一つ。日本本土からは遥かに遠い。優勢な米軍の制空下で旧海軍が撤収に成功した要因は、戦史解説の真髄…戦術的勝利として現代でも論を待たない。

何より人員の撤退を優先にし各装備などは放棄。ペットにしていた犬※も島に置き去りにして兵員だけを無事連れ帰った。※置き去りにされた犬はキスカ島に上陸してきた米軍に飼われて天寿を全うしたと記録にはある。

このキスカ島撤退作戦の史実に準えて引っ越しを考えると、首都近郊より遠方の地方へ移動するのだから、私の装備は最低限を所持し、輸送経費のかかる書籍の大半は放棄すべきである事になる。

私の装備…それは『膨大な蔵書』である。(実はカメラではない。)…専門書を含め、収集した能楽関連や国文学系の本が多数を占める。そのため、部屋を他人に見せたくないのは(滅多に人を呼ばない…)、私が本を持っている割りには『成績不良のバカ』である事を隠すためもあった。だから、私にはテレビ番組で書斎の膨大な書籍を背景にコメントしている学者や研究者、評論家の神経が羨ましい。たぶん『バカ』ではないんだろう。

教師や研究者になるならば、年に百冊以上は関連した本を読む…それが自分に科した命題であったが、まぁ…結果的に写真関係に人生の道を外したために成功したとは言えない。

ともあれ、教養主義に影響された残骸とでも云うべき蔵書・私の装備を破棄することに、本日決定した。自らに命じて、変更なし。


愛蔵の本達よ、今日までありがとう。苦しいときや辛いときに読む本が何よりも救いだった。さようなら。