風花が舞った日
樹齢四百年の槻。梢、空を見上げたら風花が舞ってきた。
本二冊を携えて旅に出たい…などとベタな思い付きを書いた。じゃあ、実際に行くならば何を選ぶか。
学生時代、文藝学概論では夏の定番であった『アンナカレーニナ』など、列車内で黙々と読むには最適だが、あまりに全巻は重量だ。…『アンナカレーニナ』を読むならば列車旅よりも、刑務所が似合いだろう。読み終えるまで出られない『読了刑』が似合いそうだ…。
あるいはフル回転する理屈と知識を駆使するならば『日本の思想・丸山真男』は良いかも知れない。今さらの古典だが知らないよりは読んでおいた方が、幾分はマシだ。
『日本の思想』は難しい本として一般に思われているけど、何かに置き換えて解釈すると、意外とスルリと読み終わったりするものだ。
今、手元にあるのは一冊が『人工知能と経済の未来・2030年雇用大崩壊』二冊目は『精子の戦争』だ。
すこしだけ近未来を予測出来そうな内容なので、やるせない週末を埋められると有り難い。
本と一緒に出掛けたい
欲しい本があったのだが、居住する近所には書店が皆無。隣町に仕事で出たついでに立ち寄る予定が、うっかり失念した。
自分の左目は人工レンズなので、読書では両眼の度数が合わず今一つ面倒くさい。最近、また眼鏡を使ってみるが読みにくいものだ。
さらに、知人や家族に読書している顔を見られるのが嫌(ウンコしている時と変わらないくらい快楽に耽りダラシナイ顔でいるはずだ…)で、電車の中とか図書館ロビーで読む。学生時代は空き教室や、何やら講師や教授が講義をしている大教室で、勝手に潜り込み本を読んでいた。
読書中、誰かに話かけられると刺々しく不機嫌になるから、可能ならば人からは離れたい。
うっかり知人の前で気になる本を読み始めてしまい、非礼を重ねた事は枚挙の暇もなく。
二冊くらい本を持って当てもなく電車に乗り、やがて読み終わったら帰るような旅に出たい。
イノック・アーデン
夜半、散歩に出て立ち寄った近所のレンタル店。
片隅の棚に、セールで売られていた『BEATLES FOR SALE』はワンコイン以下の捨て値。
Mr MOONLIGHT…か。
今夜は外に月が輝いている。そんな訳で、散歩ついでに買ってみた。
モノラル音源の響きが、初めてラジカセで聞いた頃を思い出せた。初期ビートルズは、シンプルなロックで一番ノっていた時代かも知れないな。
アルバムに入っているMr moon lightは、どこかロマンチックな雰囲気があって良い。リアルタイムに生きたはずの年代だけど、もし、もっと早くビートルズを知っていれば人生観も違っていたかも…しかし、当時の一曲演奏は二分足らずで短いものだ。
一曲目の『NO REPLY』なんて二分と十八秒だ。私は、この曲はサビメロの転調が好きだ。十代の頃、初めて聞いた時は少し衝撃だった。
『ぁあ、こういう感情を音楽的な心で嘆く方法って、あるんだなぁ…』
ところで、本曲をネットで検索すると『ジョン・レノンのストーカーソングだ』と解釈している向きがある。
だが、私が思うにNo Reply はジョンが書いた『イノック・アーデン』なのだと思える。イノック・アーデンはアルフレッド・テニスン作による物語詩であり、英国では有名な文学作品の一つだ。
ジョン自身も当然ながら触れたであろうとは想像するに易い。
訳詞などでは『僕には目もくれない君』と訳されているが、ジョン自身の心情を察すると違うと思う。
あえて、自分の心情を押さえた表現で、『いつか、僕の真実も伝わるはずさ…』と考えている。
宇多田ヒカルの『花束を君に』も、世界は違うけど登っている山はジョン・レノンと同じように思えてくる。



