チョコの天使が泣いている
第一章『不運な空腹男』…スーパーの棚に積まれていた『ペヤング・チョコレート焼きそば』キャッチコピーは、ずばり『ギリ!』…らしい。
ふーん。たぶん、チョコレート風味のソース味だな。苦味が利いていて、予想外な味わいかも知れないな。一つ食べてみるか…。
第二章…『全てに未熟な私』
空腹を抱えて自宅へ到着。早速、湯を沸かしパッケージを剥がす。…おっと、その前に写メでネタの証拠写真を撮ろう。
沸騰した湯をカップ容器に注ぎ三分間…湯切りをして、カヤク&ソースを投入。
そのとき、指先に付いたソースを思わず舐めてみた。
『ん…これは!』
間違いない。そのまんま、チョコソースじゃねぇか。
え゛…これって美味しくなるのかな?
第三章…『苦悶』
完成はしたものの、次第に食欲は失せ希望を失いつつも、まずは箸をつける。
脳内堕天使が囁く…『あま~い!』
無駄に甘ったるいチョコペーストが麺に絡み、ミスマッチな香りと甘さが舌の上をどこまでも追ってくる。こんな苦行な食い物初めてだぞ。
チョコ焼きそば…空腹なので我慢して食べつつも、どうにも悲しくなってきた。自らの恥を晒すようだが、生涯でバレンタインにチョコを女性から貰った経験が一度もない私には、『チョコ焼きそば』の存在で、人類の女性全てに振られたような気分になってきた。。これが、もし『ギリチョコ』ならば…どこかに悪意があるとしか思えない。
ともかく、食えないことはないが不味い。
この不味さ。何とかならないのか。そこで粉チーズを振りかけてみた。
第四章『消えない煩悩』…甘いチョコの
香りは粉チーズに消臭された。だが、相殺されたように何の味わいもなくなった。
焼そばに使われたチョコも可哀想だ。
チョコの天使も泣いているだろう。
能楽と別れる日
私は能楽の撮影者として滅多に能評は書かない。だが、先日の銕仙会定期能『翁』で『三番三』を舞われた山本則秀師による揉ノ段・鈴ノ段には心底に敬服した。その舞いは、自分が長らく忘れていた精神を揺り動かすくらい鮮烈に炸裂する存在だった。
まさしく『翁』に付く三番三としての舞いだった。本来の『神が役者に憑依した舞い』…いや、『神ってる舞い』と言うべきか。神を舞う・演じる演技とは、あの様に全身全霊を込めて、身体を駆使するものだ。
100%の演技で舞うには、身体を追い込む120%の厳しい訓練が無ければ難しいはずだ。そう考えると、どのような稽古をするものなのか。どうするれば、あの様に舞えるのだろう。
私は撮影者ではなく、一人の演技者として考えらさせられてしまう。
能楽サークルの学生時代から素人会や仲間内の稽古会などで適度な稽古を積み重ねて、もっぱら無理をせず周囲との軋轢を生まないように人々の顔を伺い、何者かに遠慮しながら『礼儀や社交』として、どこかで現実からは逃避する口実にしていたように思えた。
いずれ、私にも舞い納めが近づく年齢になってくるが、どうせ『能楽』を止めるならば全力で最大限に心身ともに破壊寸前まで追い込んで終わりたいではないか。それが一番の私らしい幸福なのではないか。
私にとって能楽が終わるのは舞台撮影ではなく、その別れは『初心』どおりの舞台上が良い。そう思えた。
身欠きニシン
両親が夕食はニシンの煮付けが食べたい…というので作ってみた。
手始めに鍋に湯を沸騰させて日本茶を大さじ一杯。湯が色づいて来たら三等分に切った干しニシンを入れ、二十分煮込み取り上げる。
鍋に大根、油揚げを入れて、具材を水で浸す程度に張る。
醤油・酒・砂糖を適量…使う酒は普通に飲める日本酒が最適である。その方が断然にニシンが美味いのだ。
沸騰したら中火にして先程のニシンを入れ、あとはギリギリまで煮込む。皿に盛り付けたら白胡麻を振って出来上がり。
所用時間は約一時間余り。
大根と油揚げ、そこにニシンの香りが染み込む。この地味な料理は、あまり子供向きではないが、大人ならではの冬の味覚だ。
合うのは、やはり…酒。日本酒が良い。








