ニシダ☆テツヤ NSR -804ページ目

語り尽くせない思いを(終)

今回の件は見る人が見れば、単なる一試合での不正事件でないことが浮かび上がってきます。

そこに至るまでには様々な要因があり、いろいろな人の思惑が渦巻いています。
それはあの不正行為があくまで故意に行われたものであり、決して過失だったのではないと信じるに至る根拠が雄弁に物語っています。

普通なら見て見ぬ振りをするのかもしれませんが、僕にはできませんでした。

ここまで長々とお話させていただきましたが、単に個人的な恨みつらみの念にかられてのことではありません。

その事については、敢えてここで詳しくお話しすることを今は避けますが、今まで僕達が受けてきた嫌がらせがこれからも続くようなことがあったり、関係者の意識が変わらないようであれば、僕が知っている限りの事実を公表することも辞さないつもりです。

誰もが彼らの卑怯な行為を必要悪だと認めている訳ではありません。

何かに怯え、または何かを得ようとして今は彼らに協力している者もいます。

ですが、不正を正すためには一切の見返りを期待しない、どんな犠牲もいとわないと思う者もいるものです。

今は時代が変わりました。
このブログもそうですが、雑誌やテレビや新聞だけが不正を世に知らしめる手段ではありません。

今までは一部で囁かれている単なる噂の類いと片付け、隠し通してこれたと思っていたかもしれませんが、これからはそうもいきません。

すでに彼らに近い関係者からの善意の情報が続々と寄せられています。

僕も実際に取り組んでみて思ったことですが、フェアに戦えばトーナメントは本当に面白いものです。

競技の場からもたらせられる技術の向上は計り知れないものがあり、それが競技の中だけでなく全体に恩恵を与える効果は素晴らしいものです。

かかり釣りトーナメントはこれからも必要だと思いますし、今まで以上に認知され、注目されて盛り上がることを僕も願っています。

そのためには今一度、競技である限り絶対に必要な「スポーツマンシップ」と「フェアプレー精神」について選手と主催者、スポンサーやマスコミ等その他の関係者、そして一般のかかり釣りファン、みんなで考え直してみようではありませんか。

まだまだお話ししたいことは山ほどありますが、これであの事件に対する僕の思いや意見を述べるのは一旦終わりにしたいと思います。

最後になりましたが、今回のことで驚くほど多くの方からの励ましや応援のお言葉をいただきました。

まだ開設して間がないこのブログも、ちょっと信じられないようなアクセス数を毎日記録しています。

そんな皆さんや、特に我が身に降りかかる犠牲をかえりみることなく、自らのブログで応援してくれたりんさんとWING君、名塩さんに心からの感謝をお伝えしたいと思います。

ありがとうございました。

語り尽くせない思いを 4

天野選手には大変失礼なことをしてしまったと思います。

僕が3位決定戦を棄権したこと自体も天野選手にとって後味の悪いことだったかもしれませんが、それよりも今思えばあの時の僕の態度は少々礼を失していたと反省しています。

3位決定戦の準備をしていた天野選手に僕は「この試合を棄権する」と伝える前に

「おめでとう、3位決定やで」

と吐き捨てるように言ってしまいました。

準決勝戦で起きた不正への怒りに心を支配されていたとはいえ、選手として相応しくない失礼な態度だったと思います。

その事には現場ですぐに気付き、帰港前にできるだけ丁寧にお詫びさせていただいたつもりですが、ここで重ねてお詫び申し上げます。

3位決定戦を棄権しましたことと、失礼な態度をとってしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。




天野選手には本当に申し訳なく思いますが、あの時の僕の立場としては、3位決定戦を棄権することはやむを得ない選択であり、今も後悔はしていません。

準決勝を事実上勝利した僕は、本来ならば決勝戦に進むはずだったのです。

主催者が何らかの裁定を下さないといけなかったという立場はよく分かりましたが、不正を働いた選手の言い分を認める訳にはいきませんでした。

故意にヘダイをチヌと偽ったわけではなく、あくまでも過失であった。

従って自分の勝利に間違いはない。

それはいくらなんでも納得できる話でありません。

もし僕がそのまま3位決定戦に進んでしまったら、それらすべてを認めると受け取られてしまう恐れが大いにありました。

もちろん棄権した時点で僕の順位は無くなるものと思いましたし、確定していた賞金を得る権利も捨てることになることも覚悟の上でした。

このことに関してはもしかしたらご批判の声もあるかと思いますが、僕にとっては重要なことであり、大きな意味があってのことだったということは多くの方にご理解いただけるのではないかと思っています。

語り尽くせない思いを 3

人間とは単純なもので




問題の対戦で不正を犯した彼とはそれまでもいろんなことがあって、正直言うと大嫌いな存在でした。

それが昨年のゼウスカップでのある出来事で、少なからず僕の感情には変化が起きていました。




昨年のゼウスはファーストステージの一週間も前から現地入りし、必勝体制で望みました。

日を追うごとに自分の釣りが磨きあげられ、どんどんと仕上がっていく感覚を得られました。

毎日同じ海を見つめ続けたからでしょうか、前日や前々日などは他に大勢いたプラクティス組が感じることのない何かを感じ取れるまでに、心と身体が仕上がったとハッキリと自覚できるまでに至りました。

誰一人として追従できないほどの釣果も毎日出ていたのですが、そんな僕の釣りを見て彼はこう言ったのです。




「今のニシやんには誰も勝てやんな」




人間的には嫌いだとはいえ、トーナメントでの実力はトップクラスだと僕も認めざるを得ない彼の口から、その言葉が出たことは正直嬉しかったです。




しかし僕はファーストステージの最初の試合であっさりと負けてしまいました。

1対0でした。


悔しさや信じられない気持ち、情けなさ、切なくやるせない感情、自分への怒り…


様々な思いにただ涙をこらえるだけの僕に向かって、また彼はこう言いました。




「辛いなあ、ニシやん」

「でもなこれがトーナメントなんや」

「どんなにがんばっても、努力しても、それでどんなに力をつけても、こんなこともあるんがトーナメントなんや」

「だから俺たちは努力するんや」

「後悔も言い訳もせんでええようにな」




全ての言葉が心に響きました。


その時に僕の彼への思いは完全に変わりました。

今までいろんなことがあったけど、そんなこともスーッとどうでもよくなりました。

敵に不足なし。

こいつを倒してやろう。

突如として燃え上がったライバル心を隠すこともできず僕の口を突いて出た言葉。




「絶対あなたに勝って見せる」




それからの一年間は常に自分の釣りをレベルアップさせることを意識して、可能な限りの努力を重ねました。




すべては彼に勝つために。




ファーストステージを勝ち上がり、ファイナルステージに進出が決まった僕は燃えに燃えていました。

あと1つ勝ったら彼と戦える。




前々日から開場入りした僕の釣りは冴えていました。

本番に向けて一年間懸命に仕上げてきた釣りは絶好調でした。

彼との戦いの前には、正木さんという大きな壁がそびえていましたが、それも僕に課せられた試練と受け止めました。

絶対に勝つ

その一念でした。




前日の練習を終え、荷物も車に積み込んでしまったあと、僕は彼に近づきました。

そして言いました。




「明日の第一戦は間違っても負けないで下さい」

「俺も絶対に負けませんから」

「俺はあなたを倒すためにこの一年間、必死でがんばってきたんです」




そして彼は言いました




「死力を尽くして戦おう」




嫌いだけどやっぱり凄いヤツ。

その凄いやつに正面切って堂々と勝負を挑んだことをどんと受け止めてくれた言葉だと思い、感動しました。

相手のことを好きとか嫌いとか、そんなものを超越した男と男の熱い思いのぶつかり合いに心が震えるような気がしました。




それなのに

あの結末になろうとは、このときには想像もできませんでした。

前日にあの会話を交わした僕との試合で、あの卑劣な不正を働くとは。

あんな形で裏切るとは。




彼には僕の気持ちが分かるでしょうか。

どんなに無念な思いをしているのか、彼には想像することができるのでしょうか。