■東京交響楽団 第737回定期演奏会(25/12/13サントリーホール)
[指揮]ロス・ジェイミー・コリンズ
[ヴァイオリン]大谷康子*
マルサリス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調*
(アンコール)アルベニス/アストゥリアス(伝説)*
コープランド/交響曲第3番
東響名誉コンサートマスターの肩書を持つ大谷康子さんのデビュー50周年を記念する定期演奏会。大谷さんのステージに接するのはコンマス退任公演だった2016年3月以来のことだから、もう約10年ぶりになるのか。指揮者には当初、ゆかりの深い秋山和慶氏が予定されていたが、今年1月の急逝を受け、代役にロス・ジェイミー・コリンズが指名された。英国生まれのフィンランド育ちという新鋭で、ちょっと昔のウルバンスキを思わせる長身のイケメンである。
節目のコンサートに大谷さんが選んだのは、ウィントン・マルサリスのヴァイオリン協奏曲。ジャズの人という認識しか無かったが、マルサリスはクラシック音楽も専門に学んでおり、この分野の作品も多数書いているようだ。2015年初演のヴァイオリン協奏曲はラプソディ、ロンド・ブルレスカ、ブルース、フーテナニーの4楽章構成で演奏時間45分超の大作。冒頭、ゆったりとしたヴァイオリン・ソロで始まり、ソリストはほぼ弾きっぱなしで多彩な技巧が駆使されるが、ヴァイオリンという楽器の特性がよく活かされている印象。ジャズを始め様々な音楽の要素が採り入れられた曲想は一見親しみ易そうでありながら、それらが周到に微分積分され、全体としてはなかなか一筋縄ではいかない。
第1楽章の終盤ではオケのメンバーが一斉に足を踏み鳴らす場面があり、第4楽章ではそれに手拍子も加わって、随所でいろんなセクションが足踏みと手拍子をくり返す。ラストは演奏しながら大谷さんがステージから階段を下り、客席の通路を歩きながら同じフレーズを弾き続けフェイドアウトして終演。シアターピース的な要素もあり、古巣のオケのメンバーとのコミュニケーションを全身で愉しんでいるような、大谷さんらしい選曲。アンコールではギターの名曲「アストゥリアス」の珍しいヴァイオリン編曲版を聴かせてくれた。
後半はコープランド3番。この日振るはずだった秋山さんが2005年12月の東響定期でも振っており、実演で聴くのはそれ以来20年ぶりかも。久しぶりに聴いてみて、サウンド的にはとても充実していると思うけれど、今ひとつ琴線に触れてこない…というもどかしさも感じた。第1楽章は全体が大いなる序奏のようで、なかなか本題が始まらないまま終わってしまった感じ。第4楽章冒頭の「市民のためのファンファーレ」が本題のようにも思えるが、となると交響曲というより、壮大なオブリガート付きのファンファーレのようにも…。コリンズ&東響の熱演には敬意を表しつつも、秋山さんが振ったらどう聞こえていただろう…とも考えた。