ひとも地球もサステナブル! -3ページ目

ひとも地球もサステナブル!

幸せを実感できる社会=ひとも地球もサステナブルな世界
そんなビジョンをみんなで描き、実現しましょう!


★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆


趣旨については このブログ を
ご覧ください。



【第23日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


◆食糧が世界全体で不足する


「アジアの食糧危機を世界全体で
救うことはできないの? 

たとえばアメリカとか・・・・」

尚子さんが祈るように言いました。


「残念ながら、地球温暖化は文字通り
地球規模で起こるから食糧も世全体で
不足すると予想されている
んだよ。

日本の農林水産省は、『地球温暖化が
進めば、早ければ2030年頃に小麦や
稲など主要穀物の栽培に適した土地が
半減する』
という予測を発表したんだ」


「さっき先生は、『小麦などに適する
土地が北に移っても、中国やインド
北部では砂漠や高山で耕作地を
増やすことはできない』と言われました
が、アメリカ大陸でもそうなのですか?」

一郎くんが希望を込めて質問しました。


「確かに北アメリカでは、現在の穀倉
地帯が打撃を受ける代わりに、もっと
北にある地域が小麦栽培に適した
気象条件になるはずなんだ。

しかし、この地域の土の質(土壌)は
養分が少なくて酸性が強くて、小麦の
生産に向かない
そうだ。

そしてその辺りには大森林地帯が
広がっていて、この森林を大量に
伐採してしまわなければ耕地を造る
ことができない
んだ。

温暖化のことしか考えないと、こんな
当たり前のことを見逃してしまう。


これはまさに地球環境問題のモグラ
たたきだね」

大南先生は、ここでいったん間を
取って再び話し始めました。


「また、ヨーロッパでは小麦やトウ
モロコシの適地が消滅するとまで
言われてる
んだ。

一方で、中緯度の多雨地帯や
低緯度の地域は温暖化の影響を
受けないか、むしろ良くなると推定
されているけど、この程度では焼け
石に水なんだ。

牛や豚などの家畜のエサは、
ほとんど穀物なのは知ってるよね。

穀物がなくなれば、牛肉も豚肉も
食べられなくなることは分かるよね」


「世界中で農業がダメになったら、
日本はどうなるのかしら?」

尚子さんは日本のことが心配な
ようです。


「尚子さんが心配しているとおり、
日本はこのままでは大変な食糧
不足になるかも知れないよ。

環境省は、

『平均気温3度の上昇で、水田から
のお米の収穫量は東北、北海道で
増加するが、西日本では現品種の
ジャポニカ米は高温障害で栽培が
難しくなる。

またトウモロコシが1~5%増え、
小麦は最大22%減少する。また
収穫量の年によるばらつきは、
北日本では減少し安定するが、
西日本では増加し、凶作・豊作の
差が大きくなる』


と言っているんだ」


「なんだかピンと来ない。
収穫が増えることもあるのね」

尚子さんが、少しホッとした表情で
いいました。

しかし、何か違和感を感じている
ようです。


「確かにこれだけでは、それほど
深刻さは伝わってこないよね。

ところが、この予想は、どう考えても、
海面上昇に伴う塩害の増加、オゾン
層破壊による有害紫外線の増加、
酸性雨の増加などを考慮している
とは思えない
んだ。

日本人は、これらの要因が複合した
とき、より大きな影響が出ることを
覚悟しておかなければならない
と思う。

ところが日本は、農業生産の自給率
なかでも穀物自給率が30%以下※と
いう低さにも関わらず、コメの栽培面積
を減らす減反政策を進めてきた
んだ。

 

食料自給率は39%を切りました。



ボクにはこのことがまったく理解できない。


 


地球環境問題の悪化と世界の人口
爆発で食糧不足が深刻になることは
目に見えているのに・・・・。

その時、最も深刻な影響を受けるのは、
間違いなく日本
なんだけどなあ」

大南先生がいつになく心配そうな
顔をして言いました。

「でも、日本は海に囲まれているから
農業がダメになっても、魚や貝を
食べればいいんじゃないの?」

尚子さんが、日本近海で見た魚の
大群を思い出して言いました。


 
次回に続きます。
 

 


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【第22日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


◆食糧生産が減少する


「おにいちゃんがさっき、食糧不足に
なるって言ったけど、ホントなの?」

尚子さんがたずねました。


「すべての人間が絶滅するかどうか
は分からないけど、食糧がなくなれば
人間は生きていけないわけだから、
大変なことになることは確かだね。

IPCCの予測(第二次報告書)だけど、

『害虫、異常気象の増加を考え
なければ全世界の生産量は増える
ところと減るところがあって、大きな
影響はない。ただし、熱帯・亜熱帯
では生産が低下して、最も貧しい
地域の飢餓の危険が増える』


と言っているんだ」


 


「なんだか当たり前のことを言って
いるようですが、もっと具体的に
説明してくれませんか?」

一郎くんは、何か煙に巻かれた
ような気がして、落ち着かないよう
です。


「一郎くんは内心では何か気づいて
いるようだけど、それが何か分から
なくて落ち着かないんだね。

リクエスト通り、もうすこし具体的に
説明してみよう。

・・・・地球の平均気温が2℃、海面が
50センチ上昇すると、コメの収穫量が
中国の場合で、現在より78%も減少
するそうだ。

ただし日本は45%減から30%増、
韓国は37%減から16%増と予測に
幅があるんだ。

小麦の収穫量はウルグアイで30%減、
ブラジル15~50%減、トウモロコシも
メキシコで6~61%減、アルゼンチンが
17~36%減など、中南米で減少が
目立つとしている。

つまり、全体として穀物の収穫量が
減る可能性が強いと予測している
んだ」


「今、何で落ち着かないか分かりました。

IPCCは、『害虫や異常気象の増加を
考えなければ』と仮定していますが、
地球温暖化が進むということは、害虫や
異常気象が増加するということじゃない
ですか? 

それに害虫という表現には問題が
あります


「それは先生も気づかなかった。
地球温暖化が進んで異常気象が
起こらないというのは、ちょっと
考えられない
よね。

だったら、食糧生産はもっと深刻な
事態を迎える可能性が強くなるね。

 


そして害虫は、あくまで人間にとって
都合が悪い虫ということで、その虫も
食物連鎖の中で一生懸命生きている
のだからね」

大南先生は一郎くんに教えられた
ようで、感動しています。


「食糧不足については、ほかにも
情報が届いているんだ。

日本の環境省は、

『地球の温暖化で気温が1.5度上昇
すると、小麦(冬小麦)は生産量世界
3位のインドで60%、1位の中国で
10%減少するなど、南アジアで50~
60%、世界全体では13%の減産に
なる。

トウモロコシは生産量世界2位の
中国で40%、モロコシ(コーリャン)も
中国で54%、朝鮮民主主義人民
共和国(北朝鮮)で87%の減産。
インドのジャガイモも39%減る』

と予測しているんだ。

これは、気温が成長に適さないくらい
高くなったり、土壌中の水分や降雨
量が変化する
からだ。

また、温暖化が進んで小麦などの
耕作に適する土地が北の方に移動
しても、中国やインド北部では砂漠
や高山で耕作地を増やすことは
できない
ということだ。

中国政府も、『地球温暖化の影響で
中国は将来、農作物の生産力は
平均10%前後減少する可能性が
ある』と言っている。

中国をはじめとするアジア地域では、
温暖化と同時に人口爆発も起こって
いる
ことは知っているだろう。

このままでは、アジアは食糧問題が
ますます深刻になって、大規模な
飢餓や難民問題に襲われることは
確実
なんだよ」


 
次回に続きます。
 

 


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【第21日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


生態系が温度の変化について
    いけない 


「先生、よく分かりました。
さっそく、次に進みましょう!」

尚子さんが一瞬にしていつもの
明るさを取り戻しました。

子どもは頭の切り替えが早くて
実に頼もしい!


「OK!
あと100年で平均気温が2℃上昇
するだけでも深刻な影響が出てくる
ことは分かったね。

ところが、この程度だったら札幌と
東京の平均気温の差である7.4℃
よりもずっと小さいので大したことは
ない、と思う人もたくさんいるのが
実情なんだ。

でも、氷河期と温暖期の差である
3~5℃の変化は数千年以上
かかって少しずつ進行した
んだよ。

しかし今問題になっているのは、
100年で同じくらいの温度上昇が
起こるということ
なんだ」


「どんな問題があるのですか?  
温度上昇のスピードが速すぎる
とか?」

一郎くんは、自分の質問に答える
ように言いました。


「その通り。具体的に言うと、
生態系はこれほどの急激な変化
にはついていけない
んだ。

たとえば、温帯には温帯という気候
条件の中で進化してきた生態系が
でき上がっているよね。

ここでは、すべての動植物が食物
連鎖を通して共生、つまり共に
生きている。

『食物連鎖のどこかが切れると、
すべてのつながりが切れる』
ということは、今までに何回も出て
きたからもう分かるよね。

一郎くん、君ならどう説明するかな?」


「はい、やっぱり食物連鎖のことですね。

急激な温暖化によってまず大きな
影響を受けるのは、地表付近で活動
している微生物やバクテリアです。

これらが地表温度の急上昇について
いけずに死んでしまいます。

するとミミズや昆虫がエサがなくなって
飢え死にします。

その結果、土が死んで森林が消え、
動物がいなくなります。

そして、いつか食糧不足になり、
人間もいなくなってしまいます」

一郎くんは、すっかり食物連鎖に
ついてマスターしたようです。

 

 


「そうだね。最後の予測は物騒だけど、
その可能性は今のままだったら充分
あり得ることだね。

実は、これらのことは2℃程度の温度
上昇であっても起こると予想されて
いるんだよ。

簡単に言えば、『今いるところが寒帯
ならば亜寒帯に、温帯ならば亜熱帯に、
亜熱帯なら熱帯になってしまう。

そうなれば、地球上の森林のうち
3分の1が適応できずに枯れたり、
育ちが悪くなったりする。

育ちが悪くなると抵抗力がなくなる
ので木食い虫などにやられてしまう。

木が枯れると二酸化炭素を吸収
しなくなるばかりか、腐ったり、
燃えたりするときに二酸化炭素を
排出してしまう』ということなんだ。

燃える原因は、風が吹いて木と木が
こすれあって、摩擦熱で発火すること
もあるけど、人間が畑を作るために
故意に火をつけることも多いんだよ。

これは焼畑というんだが、森林破壊で
また出てくると思うので、そのときに
勉強しようね」


 
 

次回に続きます。
 

 

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【第20日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている



海面上昇で日本はどうなる?・2


海水面が1メートル上昇すると、
21世紀末には日本国内にある
砂浜のおよそ9割が消滅
すると
いうんだ。

岡山、沖縄、秋田、宮城、東京、
石川、福井、京都、大阪、和歌山、
島根、山口の12都府県で砂浜が
ほぼ100%消えてしまうそうだよ」



 


「海水浴場がなくなってしまうわね。
わたしって、にぎやかなのが好き
なんだけど・・・・

海岸に泳ぎに来る人がいなくなる
なんて、ちっとも楽しくないわね」
 
 
「砂浜が消滅するっていうのは、
海水浴場がなくなるだけでは
ないんだ。

・・・・一郎くん、ほかにどんなことが
考えられるかな?」


「海水浴場のほかにですか? 

・・・・そうだ、景観というのかなあ
・・・・景色が悪くなる」


「そうだね、
では尚子さんはどうかな?」


「ええっと、砂浜には小さな生き物
がいっぱいいるから・・・・それが
いなくなる・・・・
そうするとそれを食べる魚や
水鳥がいなくなって・・・・
命のつながり(食物連鎖)が
切れて生き物(生態系)がダメに
なっちゃう」


「いいところに気がついたね。
食物連鎖で生き物がみんな
つながっているのだったね・・・・。

他にないかな?」


「ウーン・・・・」

「ええっと・・・・」

2人とも考え込んでしまっています。


「じゃあ、いつものようにヒントを出そう。

汚れた水が海岸に打ち上げられたと
すると何が起こるかな?」

大南先生は少し難しすぎるかなと
思いましたが、2人の想像力と理解力
を信じて質問しました。


「・・・・」

「・・・・」


「じゃあ、砂の上に汚れた水をかけた
ときのことを想像してごらん」

「水が砂の中にしみ込んで・・・・
汚れは砂について・・・・あっ、そうか!
砂浜が汚れた水をろ過するんだ!」

一郎くんが謎を解いて喜んでいます。


 


「その通り。では、尚子さん・・・・
砂についた汚れはそのあとどうなる
と思う?

・・・・汚れは汚いものではなくて
有機物だと考えてごらん」


「うん、学校で勉強したことを思い
出したわ。

・・・・有機物は栄養だから微生物が
食べてしまうのね。

そしたら汚れが消えちゃう。

・・・・エヘン、わたしが砂浜の役割を
ご説明しましょう。

・・・・エヘン、砂浜の役割というのは、
汚れた水をきれいにしてくれる、
自然の浄水装置
なのです。

つまり、わたしたちをキレイにして
くれるお風呂場みたいなものです。

えっ・・・・ということは・・・・お風呂場が
なくなるということは・・・・わたしたちは
汚れをどこで落とせばいいの・・・・
そんなのイヤだ、エーン」

尚子さんは、最初は得意になって
砂浜の役割を説明していましたが、
やがて大変なことに気づき、泣き
出してしまいました。


「尚子さんの気持ちはよく分かるよ。
だからこそ、砂浜の役割をできる
だけたくさんの人に知ってもらえる
ように努力しなければならない

だよ」

 



大南先生が尚子さんをなぐさめる
ように言いました。
                  

次回に続きます。
 

 


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【第19日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


海面上昇で日本はどうなる?

「本当は、日本も人ごとではないん
だけどね。

国連(IPCC)は、

『温暖化に伴う海面の上昇で、日本
周辺では高潮被害が深刻化する。

平均海面が1メートル上昇した場合、
堤防の増設などに約19兆円が
必要になる』


と計算しているんだ。


日本の環境省も、

『1メートル海面が上昇すると410万
人が満潮の水位以下のところに住む
ことになり、満潮時に高潮や津波が
来襲すると、さらに多くの人や資産が
危険にさらされる』


と発表しているんだ。

これに東日本大震災を体験して
分かると思うけど、津波対策の
費用も加算しないといけない
ので、
べらぼうな金額になるだろうね。

この金額を考えると、海岸地域に
住んでいる人を高台に移住して
もらう方が費用が安くなるかも
知れないね。

何れにしても、高潮や津波対策は、
日本国民全体が本気になって
取り組まなければならない大きな
課題だね

 

 
阪神尼崎駅前にある室戸台風と
ジェーン台風襲来時に発生した
高潮の最高水位。
 


「日本も大変なのは分かるけど・・・・
わたし・・・・なんだか心配になって
きちゃった」

尚子さんが浮かない顔をしています。


「ボクも、日本人が高潮に襲われる
なんてこと想像したくないよ」


「違うの、そうじゃないの。

わたしが心配なのは、堤防の増設に、
津波対策を抜きにしても19兆円が
必要になるという数字を見て、

『しめしめ、これでまたお金儲けが
できる』

と喜ぶ人がいるかも知れないって
ことなの。

もし、そんなことを考える人がいたら、
わたし悲しい・・・・」

尚子さんが肩を落としました。


「うん、それはあり得る」

一郎くんが素直に同意しました。


「まあまあ、二人ともそんな深刻な
ことは考えない方がいいよ。

今ボクたちにできることは、人間を
信じて、人間が大切なことに気づく
のを待つということ
じゃなかいかな」

大南先生は、自分にも言い聞かせる
ように2人に伝えました。


「ほんとそうですよね。
考えてみたらボクたちも人間だものね」


「私もひとごとみたいな言い方して
・・・・恥ずかしい」

2人とも反省しているようです。


「分かってくれて先生もうれしいよ。

・・・・さてもうひとつ日本の海岸で
起こりそうなことを見てみよう。

 
 


次回に続きます。