ひとも地球もサステナブル! -2ページ目

ひとも地球もサステナブル!

幸せを実感できる社会=ひとも地球もサステナブルな世界
そんなビジョンをみんなで描き、実現しましょう!


★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆



【第28日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


南極で今何かが起こっている・1


「さて、いよいよ南極の話をしよう。

でも、あんまり楽しい話じゃない
かも知れないよ。
いや、かなり恐い話になるだろう。

2人とも心を静めて聞いて欲しい。

ある意味では、地球の運命を左右
するかも知れない話
だからね」

大南先生が、まるで古代からの
知恵を伝える語り部のような
冷静だが使命感あふれる表情に
変わりました。


「今までも相当恐かったけど、
もっとすごい話なのかしら?」

何か質問できない雰囲気に、
尚子さんはひとりごとのように
つぶやきました。


「今まで、今世紀末に地球の平均
気温が最高4.8℃上がって、海面も
1メートル上昇すること(正確には
IPCCは最高82センチ上昇する
としています)を前提に、いろいろな
影響予測について話してきたよね。

しかし、ここで予測されている海面
上昇は、あくまでも『静的な変化』が
起こる場合の数字なんだ。

『静的な変化』とは、屋根に積もった
雪が自然に融けて消えたり、
雪だるまが少しずつ融けて自然に
消滅するような変化
をいうんだ。

一方、屋根に積もった雪が突然
バサッと落ちてきたり、雪だるまの
頭が突然落ちて、びっくりさせられる
ことがよくあるよね。

山に積もった雪が、雪崩れ(なだれ)
になって、突然崩れ落ちることも
よくあるよね。

 


このような変化を『動的な変化』
いうんだ。

屋根に積もった雪をよく観察して
みると、『静的な変化』よりも『動的な
変化』の方がよく起こるようだ。

とはいっても、『動的な変化』がいつ、
どのくらいの規模で起こるかを予知
することはほとんど不可能
だよね」

大南先生が訳の分からないことを
言っています。


2人は、先生の心の中が見えずに
うろたえています。
 
 



次回に続きます。
 

 


★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆



【第27日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


永久凍土が融けてメタンが
  大量に放出される


「氷河の話が出たついでに、寒い
ところで起こっているもうひとつの
話をするね。

・・・・今、シベリアなどで永久凍土が
溶けけ始めているんだ。

永久凍土とは、水分が凍って岩石の
ように硬くなった土のことで、
アラスカ、カナダ、シベリアなど夏も
地中の温度が氷点下の地域で
見られる
よ。

北極海沿岸では厚さが数百メートル
もあるんだ。

アラスカ州では全面積の8割が
永久凍土におおわれている
んだよ。

 
    【北半球での凍土の分布】
      紫の地域が永久凍土

 
・・・・
永久凍土が溶け始めたきっかけは
森林伐採といわれているけど、
最近の温暖化で融けるスピードが
速くなる心配がある
というんだ。

その原因は、

森林伐採することで
凍土に太陽が当たるようになる


その部分の温度が上昇して氷が
溶けて沼のようになる

沼に向かって木が倒れる

木が倒れると地面に太陽が当たる

・・・・

という悪循環でますます永久凍土が
消滅していくという理屈だ。

悪いことに倒れた木はやがて腐り、
二酸化炭素の発生源になって
しまう
んだ」


「するとまた地球温暖化が進むの
ですね」

一郎くんが口をはさみました。


「そうだね・・・・
でもそれだけじゃないんだ。

永久凍土に閉じ込められていた
メタンと言うガスが、今後大量に
放出されるというんだ。

メタンは同じ量だったら、二酸化
炭素の58倍も温暖化の力が
大きい
んだ。

つまり永久凍土地帯から大量の
メタンが放出されることによって、
温暖化がますます加速する
かも
知れない」


「そうなると最終的にどうなるの?」

尚子さんが不安になって聞きました。


「地球の温度が何百度にもなって、
水が全部沸騰してしまう」

「ええっーも、ウソでしょ。
そんなことが起こったら、地球も
生物も生きていけない!」

尚子さんの顔が青ざめています。


「いやいや、今のは冗談・・・・とも
言えない・・・・人間が今のままの
生活を続けると・・・・そんなことは
絶対に起こらないなんて、先生は
言えない!」

大南先生が珍しく真剣な表情で
言葉を強めました。



次回に続きます。

 


★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆



【第26日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


氷河が融け出す


「さて、地球温暖化の話もいよいよ
大詰めだ。

今までは比較的暖かいところの
話をしてきたけど、これから寒い
ところに目を向けてみよう」

「ヤッター、とうとう南極のお話?」

尚子さんは、せっかく南極に来た
のに、いつになったらその話になる
のだろうと気をもんでいたのです。


「まあまあ、そう急がずに。

もうすぐしたら南極のことを
『もうたくさん』というほど話して
あげるから。

・・・・ところで尚子さん、あと100年で
地球の平均気温が何度上がるん
だったかな?」

大南先生は、尚子さんを挑発する
ような質問をしました。


「先生、バカにしないでください。
さっきから何回も出てきているわ。
最高6.4℃でしょ」

尚子さんはバカにされたと思い、
口をとがらせました。


「うん、そうだったね。
でも、これはあくまでも地球の平均
だと言っただろう。

ということは場所によって違うって
ことだよ」


「さっき、寒くなることもあるという話が
ありましたが、そのことですか?」

一郎くんが尚子さんと違って冷静に
応えました。


「それもあるね。でも今から説明する
のは、『緯度が高くなるほど気温の
上昇が大きい
』ということなんだ」


「緯度というと、赤道が0度で南極と
北極が90度というあれですか?」

一郎くんはそう言ったものの、
<それが何を意味するんだろう>と
不思議に思いました。


「温室の中を想像してごらん。
温室は外よりも温度が高いだけでなく、
温室内部の温度がだいたい一定と
いうことに気づかないかい?」


「そうですね。
温室の中はどの場所も同じくらいの
温度ですね」

一郎くんは、温室の中に入ったとき
のことを思い出しました。


「温室内部は狭い空間だから、
どこかの温度が変わると、空気の
対流が起こるんだ。

その結果、温室内部の温度は
どこも同じくらいになるんだね。

これを地球規模で考えても同じこと
だね。

地球の大気も有限で、対流を起こし
ている。

だから、

『今寒いところほど温度上昇が大きく
なって、暑いところほど上昇が小さく
なる』


ということになるよね。

言い換えると、『温暖化による気温の
上昇は南極や北極で大きく、熱帯
地方ではごく小さい
』ということなんだ」


「南極・北極と熱帯では、どのくらい
気温の上がり方が違うのですか?」

一郎くんがすかさず質問しました。


「このことについては、色んな研究機関
で研究されてきたけど、どの研究機関も
『熱帯地方では気温がほとんど上がらず、
南極と北極地方で大幅に温度が上昇
する』という点では一致してるんだ。

具体的には、100年後に南極や北極
地方の周辺で、『冬に10℃以上気温が
上がる』というものが多い
ようだ。

特に北極周辺で20℃も上昇すると予想
している研究者もいるんだよ。

 

観測記録でも、この100年で地球の
平均気温が0.7℃くらい上昇したが、
その間に南極や北極周辺では2.5~
3℃上昇したことが確認されてる
んだ」


「ええー! 
20℃も気温が上がったら氷が全部
融けちゃわない?」

尚子さんは心の底から驚いています。

<大南先生たら、本当に人を驚かせて
ばっかりなんだから>


「氷の話が出たので、少し氷河のこと
に触れてみよう。

IPCCは、『今後100年間で、山岳
氷河の3分の1から2分の1が消失
するかも知れない
』と言っているんだ。

氷河が減少すると河川の水量が
大幅に減少して、水力発電ができなく
なったり、農業用水が不足したり
する可能性があるというんだ。

今でも水不足の地域がたくさん
あるんだが、そこでは干ばつなどが
ますます激しくなると予測されている。

また二酸化炭素濃度が現状の2倍
になると、日本を含む温帯アジア
では多くの河川で水量が減少する
そうだ。

ヒマラヤなどでも山岳氷河の容積も
減るため、河川に溶け出す水の量は
2100年には3分の2になると予想
されてる
んだ。

このことは大木先生からも聞いたと
思うけど、地球温暖化は水不足の
大きな原因のひとつ
なんだ」


 
次回に続きます。
 

 


★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆



【第25日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている


世界中で健康被害が増加


「人間への悪影響といえば、健康
そのものへの被害も心配されて
いるんだよ。

IPCCは、
『マラリア患者が5000~6000
万件も増加する。

また、気温上昇・洪水増加の影響
としてコレラなどの感染症も増加
する恐れがある。

気温2度の上昇で、アメリカでは
熱波の被害が深刻になり、心臓病
などで死亡する人は、2050年に
ニューヨークで現在の5.5倍、
ロサンゼルスで8.7倍に増える


としているんだ。

世界保健機関(WHO)によると、
現在でも南アジア、アフリカ、中南米
を中心に、年間3~5億人が感染し、
150万人~270万人が死亡して
いるそうだ。

これが温暖化による3~5度の気温
上昇で、マラリア患者は年間5000万
~8000万人も増加する
というんだ。

これらの数値自体は発表の度に変化
するけど、温暖化によって数値その
ものよりも健康への影響が大きくなる
ということを理解して欲しい


「先生、尚子さんも心配してると思う
けど、日本ではどうですか?」

一郎くんが尚子さんの気持ちを
察して質問しました。

尚子さんは、しつこいと思われるの
がイヤで、日本について聞くのを
ためらっていたのです。


「君たちが心配している通り、日本人も
健康被害が予想されているんだよ。

環境省は『21世紀半ばには、西日本
全体がマラリアの流行危険地域に
入る可能性がある』と言っている。



 
 

また熱帯病で、デングウイルスが
原因で発熱や出血などを引き起こす
デング熱も、温暖化が進むと日本に
上陸するかも知れないそうだ。

コレラ菌、サルモネラ菌、病原性
大腸菌O-157などの食中毒菌も、
温度上昇で増殖力が高まりそう
なんだ。

厚生労働省は、気温が20℃を
超える日が増えると要注意と警告
している
んだよ」

「でも、日本はお医者さんが優秀
だから、感染してもすぐに治療して
もらえるんじゃないの?」

尚子さんが大南先生に食い
下がっています。

「たしかに日本のお医者さんは
優秀だ。

でも問題は、日本にはマラリヤや
デング熱の患者を診察した医者が
ほとんどいないということ
なんだ。

未知の病気が流行し始めたとき、
知識がないためにほかの病気と
誤って診断してしまったり、
治療法が徹底されずに多くの人が
手遅れになってしまうかも知れない。


日本人は、それが自分の家族や
孫かも知れない、と考えたことは
ないのだろうか?

「先生おどかさないでよ。
ますます心配になっちゃう。

でも、温暖化が防止できれば、
そんな心配なんかしなくても
いいんだよね」


 
次回に続きます。
 

 

★ストーリーで学ぶ地球環境問題


☆☆大好きな地球を大切に☆☆


【第24日】:

第2章 
地球温暖化はもう始まっている



温暖化で水産資源も減少する


「実は、魚や貝などの水産資源も
危ないんだ。

危ないというか、すでにそのきざしが
見られるそうだ。

たとえばアメリカのカリフォルニア州
沖の太平洋で最近約40年間に、
海水の温度上昇が引き金となって
プランクトンの数が80%も減って
いたんだ。

プランクトンが減っている海域の
水温を測ってみると、1.1℃から
1.7℃高くなっていた。


水温の上昇は、海面から深さ180
メートルのところまで起きていて、
海面に近いほど温度が高くなって
いたそうだ」


「どうして水温が上がったら
プランクトンが減るのですか?」

2人が同時に同じ質問をしました。


「不思議に思うかい? 

少し難しいかも知れないけど、理由を
説明するからよく聞いてね。

海面に近い部分と深い部分の海水の
密度差が大きくなった結果、深海の
栄養分が海面に上昇しにくくなった
のが激減の原因らしいんだ。

・・・・もう少し分かりやすく説明しよう。

海底から、プランクトンの栄養になる
ミネラルなどを豊富に含んだ地下水
が湧き上がってくる。

この地下水は比較的温度が低いの
だが、通常の海面温度であれば海面
付近まで昇ってきてプランクトンに
栄養分を補給するんだ。

 


しかし、海面の温度が高くなると
地下水が上昇できなくなって、
プランクトンの栄養が絶たれてしまう

ことになる。

お風呂を思い浮かべると分かると
思うが、冷たい水は比重が大きい
ので、激しい上昇流でない限り、
温かい水の上に来ることはあり
得ない
よね。

・・・・さて、栄養を絶たれたプランク
トンが減少すると、イワシやサバ
などのエサが不足し、飢えて死ぬ。

すると今度は、ハマチやマグロなど
の大型魚のエサがなくなるといった
具合に、またまた食物連鎖を通じて
水産資源も大きな影響を受けて
しまう
ことになるんだ。

日本近海でも最近イワシが激減して
いるけど、これも海水温度の上昇に
よる影響が1つの原因と見られて
いるんだ」

大南先生は一気に説明しました。


「以前からオゾン層破壊や海洋汚染
によって水産資源が減少していること
は聞いたことがありましたが、地球
温暖化でも同じことが起こるのですね」

一郎くんが、地球環境問題の奥の
深さを実感してため息をつきました。


どの地球環境問題もそうだけど、
地球温暖化は最終的には人間に
悪影響を及ぼしてしまう
のね」

尚子さんが、自分に言い聞かせる
ようにつぶやきました。


 
次回に続きます。