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コマツ


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以前ピアッツァで一緒に働いていたコマツである。


彼は3年前に東京に行き、有名店にて腕を磨き、この春から札幌に戻り、「マガーリ」で働く事が決まっている。

美味しい店に就職が決まって何よりである。


東京ではコマツの下に何人か居たらしく、「返事もしないヤツが居るんですよ」と、苦労を洩らしていたが、私と一緒に働いていた当時のコマツの反抗期も十分それに値していたではないか。

「あたしの気持ちが分かったかコノやろー」と言ってやると、笑っていた。あまり分かっていない様である。


コマツはこんな顔であるのに可愛い妻がおり、先日札幌にて結婚式をした。

その際にスピーチを頼まれたので、あまり得意ではないがコマツの頼みであるし仕方あるまいと引き受けた。

私は日々でかい事は言っているが、かしこまった人達の前では言えないという、最悪のパターンなのだ。


すると後日、「乾杯の音頭もお願いできますか・・」と電話が来た。

「乾杯?!」と焦ったが、今更スピーチも乾杯も一緒だと思い、「わかった、やるよ・・」と引き受けた。


文章を覚えるのは間違いなく無理なので、パソコンでプリントアウトしたものを持って行き読む事にした。

当日、不安だったので友人を練習台に読んで聞かせた所、「・・文とかいう問題じゃなく、女だったらもうちょっと可愛い紙とかに書いたりするんじゃない・・」と、しわしわのA4のコピー用紙を指摘された。

「なるほど!そうだ!」と思ったがもう遅い。仕方ないのでせめてもと、しわしわのコピー用紙を綺麗にたたんだ。


そして、高砂ど真ん前の主賓席に座り、スピーチに乾杯の音頭と、コマツのおかげでうちの父親でさえやった事のない大役を果たしてしまった。



店に遊びに来たので、有無を言わさずエプロンを渡し強制労働である。

今度来た時は、私の賄いとしてカノビアーノ仕込みのスパゲッティを作って貰おうと考えている。







悪天候

今日はひどい天候である。雨が真横に降っている。


そうは言っても私は、自宅から車に乗り、店まで車で来るので数十歩で店に着くのであるが、そんな数十歩だけでも鬼の形相である。



出勤途中に車中から見た道行く人々はかなり大変そうであった。下校中の中学生が風に向かって後ろ向きに歩いていた。完全に同じ発想であるので非常に気持ちが分かる。

骨だけになった傘を持っている男性も目にした。

こんな日は道端に骨だけの傘が捨てられていたりするので、「彼はちゃんと持って帰るのか、当たり前だがエライなあ」と、見知らぬ男性に惚れそうになったりもした。



悪天候の時はなるべく外を歩きたくないものであるので、「予約のキャンセルがあるかも」と、思っているや否や電話が鳴った。

「今日7時から3名で予約を・・」と言われ、まさにその時間に3名の予約があったので、完全にキャンセルだと思い込んで話を進め、話が噛み合わないのでおかしいと思うと逆に予約の電話であった。大変申し訳ない事をしてしまった。



こんな悪天候の中、ご来店下さるお客様に心から感謝である。




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ブタ

女の子の友人とランチに出掛けた。

わざわざ女の子の友人と言うのは、彼女は友人の中でもピカイチの女性らしさであるからである。他の女友達は、戸籍上女というだけで中身は男である。



そんな女の子の友人であるので待ち合わせ場所に遅れてはならぬと思い、早目に家を出て用事を済ませるとえらい時間が余ってしまった。

「いんやちきしょ、コーヒーでも飲むか」と、近くにあったマクドナルドに入り注文すると、口が勝手に「ベーコンレタスバーガーセット」と言ってしまった。これからリストランテ・テルツィーナでランチだというのに、前菜でマックである。


「バカか私は・・」と思っていると、「ポテトは出来上がり次第お席までお持ちいたします」と言われたので、席について先に貰ったハンバーガーを1分ほどで食べ終え、大人しく待っていた。

ポテトを持って来た店員さんは、もうハンバーガーが紙だけになっている事に完全に動揺していた。少々早く食べ過ぎた様である。



ポテトも食べ終え、きっかりの時間に店に行き、何食わぬ顔でコースを注文した。マックを食べた事はまだ友人には内緒である。私の場合、腹が苦しくて残すなんて失態は間違っても無いので、わざわざカミングアウトしなくても良い。


しかし終盤に差し掛かり、少々腹が膨れてきたので、「もう言っちゃおう」と思い、「実は来る前にマックを食べた」と言うと、友人は当然ながら呆れていた。

「今日パンおかわりしないからおかしいと思ったんだよね」と、多少察していた様である。


そんな事は言っても残さず平らげたので何の問題もない。

「実は来る前にマック食べて来たんですよねーアハハハ!」と、上着を着せてくれた素敵な店員さんに言ってみると、店員さんは困っていた。こういう自虐も大概にしたほうが良い。



女の子の友人とのランチなので、その後はもちろんショッピングである。

ブタのピアスを見つけたので自分にぴったりと思い購入してきた。

店の中を所狭しと、ブタがブタを付けて歩いている。



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ハート


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顔に似合わずハート柄が好きである。

そうは言っても、思いっきり身に付けていては気持ち悪いと思われる年齢であるのは承知しているので、ちょっとした物で取り入れている。



これは私がお気に入り、あぐらのハート型キーホルダーである。裏がレースになっていてこれまた可愛らしい。

今日また新作が追加されたので大量に購入した。



先日、誕生日を迎えた私の友人、江別にてイタリア料理店「マリナーラ」を営むマリさんに、このハートをプレゼントした。

「あんた使ってるかいハート」と尋ねると、「もったいないから袋に入れたまま眺めている」という。

貧乏くさいから今すぐ使えと言っておいたが。



私の大量購入のせいで今はこんなに種類はないが、かろうじて何個かはまだあるのでご希望の方は当店までどうぞ。



カズヤ


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ピアッツァを冬休み中のカズヤが手伝いに来てくれた。

来てくれたというのは少々語弊があるかもしれぬ。かなり強制労働に近い。


試食と称して、カジキマグロのカツレツ、エゾ鹿のラザーニヤ、鶏レバーのクロスティーニ、鱈のメッシーナ風と、二人であっという間に平らげた。ものの何分かである。

カズヤは物凄い小さい声で「・・ごちそうさまでした・・」と、言っていた。何故か私に対してはいつも小声である。


以前、ピアッツァで一緒に働いていた時、私が出勤してもカズヤが居なかった。

「遅刻だな」と思っていると、すぐに店の電話が鳴った。

「カズヤから電話」と言われ出ると、「・・・しですけど(小林ですけど)、・・・しました(寝坊しました)」と、蚊の鳴く様な声で遅刻の報告をしてきた。電話だと小声もますます顕著である。


しかし声とは裏腹に体は大きくなる一方である。

いったいどこまで太るのか。