日曜日、NHKでリッカルド・ムーティの「アイーダ」を見た。
イタリア・オペラ・アカデミーin東京の公演。
御年83歳のムーティが今や日本で毎年振っているんですね。
春に東京文化会館で行われたコンサート形式のプロダクションだ。
大規模な合唱で有名なアリアとスケールの大きな舞台のヴェルディのオペラ「アイーダ」。
テレビの画面からでも大迫力でした。
2時間の放送を見て、来年は是非見に行きたいと思った。
堅苦しいことはわからなくても、好きなものを見て良いと思えれば、それだけで幸せになれる。
この巨匠の公演も、調べてみたら、かなりお安く価格設定されているようだ。
小澤征爾がやっていたように、誰もが気軽に本物のオペラを楽しめる文化が日本にも根付くと良いなと思う。
歌舞伎もそうだけど、オペラって大衆芸能だからね。
ところで、大前提として、私はそこまでクラシックに詳しいわけではない。
誰が振っているかをそこまで語れるほどの知識もない。
ただ、好きなものは好き、好きでないものは好きでないと感じるのみだ。
なので、真面目にクラシック音楽を愛している方には、すごく浅い話となるかと思うがご容赦いただきたい。
さて、私が初めてオペラを見たのは、1996年、20代にイギリスに留学していた時。
寮の友人に勧められてコベントガーデンのロイヤルオペラで、「椿姫」を見に行った。
当時も、(そして現在も)海外では当日券が2,000円くらいから購入できる。
オペラや芸術がお金持ちだけのものではない、という文化の象徴だ。
当時、自費留学でお金のなかった私は、ロンドンの友人宅に泊まり、
早朝6時からコベントガーデンに並んでチケットを手に入れた。
今思えば、何の知識もないのに、早朝から並んで5,000円で初めてのオペラを見に行った自分、グッジョブである。
なぜならば、1996年のその公演は、1994年にロイヤル・オペラでゲオルグ・ショルティ指揮の「椿姫」で鮮烈なデビューを飾ったソプラノ、アンジェラ・ゲオルギューと、テノールはその後、ポスト三大テノールと呼ばれるロベルト・アラー二ャが再演していたのだ。
その時のチケットが発掘されました
ここで、貧乏学生はオペラの素晴らしさに触れて帰国するが、日本で同じプロダクションを見るには大金が必要だという現実を知るのであった。
この話には2つのポイントがあり、
まず、オペラはだいたい安い席から売り切れる。
お金を出せない人が少しでも安く、できるだけ多くの公演を見たいから。
因みに、そんな普通の日本人にも手を差し伸べてくれたのが、小澤征爾だと思っている。
2000年代、5万円は出さないとそこそこの席で見れなかったところに、2万円くらいで見れるウィーンフィルを持って来てくれた。
全ての人に本物のクラシックに触れる機会を提供してくれたのだ。。
さらに、小澤征爾が主催していたサイトウキネン・フェスティバルは、毎年、県内の小学生数千人を招待する日を設けている。
とても素晴らしい考えだと思うし、その尽力によって日本のクラシックシーンから、第二の小澤が現れることを信じている。
二つ目に、最初に見たのが、ロイヤル・オペラで、当時をときめくスターの公演だったこと。
私は常々、初めてのオペラは一流の歌劇場(可能なら5大歌劇場)を来日でも良いので見るべきだと思っている。
2000年頃、フィレンツェの5月祭でリッカルド・ムーティの「イル・トルバトーレ」を見たのだが、その時も当日券で、より良い席で見たい私と、チケットを差額で交換してくれたのが、少しでも安く見たいイタリア人の学生だった。
彼と話をしていたのだが、学生なのに見ているプロダクションが半端ないし、音楽をやっている訳ではないのにしっかりと評論ができることに驚いた。話を聞くと、子供の頃からフィレンツェ歌劇場でオペラを見てきたという。
何事もそうだが、幼少から本物に触れるということは本当に大事だなと思う。
もちろん、日本にいてそういった環境にあるのは、限られた資金に余裕のあるご家庭だけだと思うが、幼少でなくとも、ある程度お金が払えるようになった成人でも同じことではないか思う。
とにかく、最初はなるべく良いものを。さすれば、素人でも多少なりとも良し悪しがわかるようになると信じている。
(偉そうに言うほど分かってはいないですが)良し悪しというより、好き嫌いという方が正しいかもしれない。
そんな私がこれまでに見たトップ3プロダクションはこちら。
・1996年、ロイヤルオペラ、「ラ・トラビアータ(椿姫)」(アンジェラ・ゲオルギュー、ロベルト・アラー二ャ)
・2000年頃、フィレンツェ5月音楽祭、ズービン・メータの「イル・トルバトーレ」(ロベルト・アラー二ャ)
・2010年東京文化会館、小澤征爾・ウィーン歌劇場の「エフゲニ・オネーギン」
先述のフィレンツェは、5月にローマを一人で旅行をしていた時に、ホテルで新聞を何気なく見ていると、音楽祭初日の記事が。
イタリア語はわからないのだが、わずかなスペイン語の知識でメータが振っていて、アラー二ャが出ており、評判が良いらしいとわかった。
荷物はそのままローマのホテルに置いて、その日のうちに電車に飛び乗ってフィレンツェに。まだスマホもなく、旅先でインターネットにアクセスできなかった時代、新聞記事だけを頼りにフィレンツェでまずは宿を2泊とり、当日券に並んで、見ることができた。
おそらく、今まで見た中で一番よかった公演だ。
これまで、各国でオペラを見てきたが、とにかく大きなカンパニーで見ることをおすすめする。
今年の世界一周旅行では、ウィーン歌劇場で見ることができたので、5大歌劇場は全部制覇したことになる
(NY、ロンドン、パリ、ミラノ、ウィーン)。
現代のオペラでは、クラシックな舞台(いわゆる古典的な衣装と演出)と、現代的な舞台(現代的もしくは前衛的な演出、白塗りだったりライダーズジャケットを着ていたりする)がある。それぞれ、国(あるいは劇場)によって、どちらかに方針が決まっている。
私は、クラシックなプロダクションが好きなので、
一番好きなのが、ニューヨーク、MET メトロポリタン・オペラ さすが世界のメト。何度も見ているが外したことがない。
そのほかにクラシックなのはミラノ・スカラ座。フィレンツェ歌劇場。
もちろん、現代的(前衛的)なオペラも見ている。これはこれで面白い。ロンドン、ドイツ、フランス、ウィーンはこちら。
今年見たドイツオペラ・ベルリンのワーグナーや、ウィーンも現代的な演出だった。
ドイチェオペラ・ベルリン、ワーグナーの「神々の黄昏」パンフレットより。
そして、国内では、私の見た限りではクラシックなものが多い。東京文化会館で、これらの海外カンパニーの来日や、特にオペラシティに会社があった時は、新国立劇場で二期会も良く見ていた。
今後だが、冒頭に触れたように、イタリアのアレーナ・デ・ヴェローナの野外劇場でアイーダを死ぬまでに見たいと思っている。
ちなみに、来年のヴェローナのアイーダは2025年は6月20日から。