日銀の国債引受でなぜインフレが起こるのか。政府は財源を国債引受で得て、その分、例えば大幅な減税ができるので、国内にお金をばらまいたのと同じことになる。そうすると、消費が増えて、物価が上がる。これをヘリコプターマネー論というらしい。ヘリコプターで空からお金をばらまくのに例えて。
日銀の国債引受において、法律で許されている国債がある。政府短期証券(略してFB)というものだ。1年未満の返済(償還)に限り許されている。これは、為替介入による円安政策に利用されているようだが、インフレターゲットには利用できないのだろうか。
他の方法として、市中債券の引受があるようだ。これは、市中銀行(都市銀行など)が持っている国債を日銀が買い取るというものだ。これにより、市中銀行のお金が増えるので、市中銀行は多くの融資ができるようになる。そして企業などにお金が回り、経済活動が活発化し、それが消費行動の増加につながれば物価が上がる。しかし、市中銀行が日銀の要請(買いオペ)に応えて債券を売るかどうかは自由だ。それに、銀行によって差別化が起きないようにしないといけないという公平性の注意が必要だ。ちなみに、市中銀行の融資限度額は、市中銀行が持っている日銀の当座預金口座の残高に比例して決められている。日銀が市中銀行から国債を買い取ったお金は、その市中銀行の当座預金口座に振り込まれる。
インフレターゲットの方法としては、この市中債券の引受がいいように思える。
順序が逆になってしまったが、以前書いた文章では、日銀による造幣という言葉を使っていたが、日銀が国債を買い取るには造幣が行われ、そのお金が国内に放たれるということを意味している。
そして、政府貨幣についても勉強した。以前の投稿で、政府貨幣の造幣によってインフレが起こると書いたが、これは、さかのぼること、中世フランスにおいて始まったことらしい。その成り行きはこうである。当時、硬貨は額面と同じ価値があった。例えば、100円玉は100円分の銀で造られていた。すると、不法に硬貨を安く偽造して100円玉として売られるということが横行した。それに対処するために、100円玉は初めから安い金属で造られるようになった。今度は国がこれを利用して、硬貨を造れば、製造コスト以上の値段で売れるため、それを財源にしたというのである。この利益を貨幣発行益というようだ。そして、この方法で財政難を解消することをシニョリッジというようだ。
現在の日本の硬貨も、その価値は額面よりもずっと低い。だから、理屈的には現在の日本においても可能に思える。歴史的に見てみると、このシニョリッジは財政難を解消するために役立ったが、同時に貨幣の信用が下がりインフレを引き起こしてきたとのこと。何が問題なのか。当時は、財政難の解消のために、貨幣発行益を財源にしていたので、財源をどんどん得るために通貨を発行し続け、その結果、インフレが起こり、通貨の価値が下がり、造幣しても利益がでなくなったという。それどころか、インフレが進
むと、通貨の信用がなくなってしまって、もはや流通しなくなる。
しかし、現在の日本は状況が違う。ある程度のインフレを起こしたいのだ。財源確保のためではない。よって、何%のインフレを起こすという目標(インフレ率という)を設定して、このシニョリッジを行うのだ。インフレターゲットのシニョリッジ活用と呼べるだろうか。しかし、現実的には、現在の法律では、政府が発行する通貨(政府通貨)は、最高で500円玉と決まっている。この縛りがあるため、このシニョリッジをインフレターゲットに活用するには、大変かもしれない。500円玉を何十兆円も造幣することは可能だろうか。
日本においても過去、このシニョリッジ活用論が議論されていたらしい。シニョリッジによってデフレ不況を克服すべしという議論があったようだ。しかし、そこでは、500円玉の造幣ではなくて、1万円札のような高額な政府紙幣を政府が法律を改正することによって発行し、それを通貨発行益として財源にするというものだったようだ。通貨発行益とは、そのお金を製造するのにかかったコストを額面の金額から引いたものが利益となるものである。500円玉ならまだしも、1万円札を1枚作るのにかかるのは、実質、紙と印刷代くらいのものだから、1万円札を作ったら、ほぼまるまる1万円の儲けになる。しかし、この方法によって、どんどん1万円札を発行していると、以前にも書いた理由で、その1万円札は信用されなくなり、お金として認めてもらえなくなる。そして、日本は破綻してしまう。
1万円札のような高額な政府紙幣を発行するのは、日銀の国債引受よりもたちが悪い。シニョリッジを乱用することになる。
現在日本では、実際には、硬貨を造った時に出た利益は、補助的財源という程度にのみ使われている。法律で、その利益の用途が限定されている。やはり、1万円でなくとも、この乱用によって大きな財源を自由に得ることを防ぐためのようだ。法律的に工夫をすれば、このシニョリッジをインフレターゲットに利用することは、可能なように思うが、危険な要素をコントロールできるかという大きなリスクが伴う。
やはり、上で述べた市中債券の引受が、市場原理に沿っていて、インフレターゲットには適していると思われる。
まだ議論は完結ではないが、長くなりそうなので次回に持ち越し。