“紙”と“時間”と“世代間ギャップ”と
みなさん、こんにちは。
以前とある出張先から帰る
新幹線の駅構内売店での出来事。
乗車前に夕食を買っておこうとレジに並ぶと、
ご高齢の女性が財布の中身と格闘中。
どうやら金額が微妙に足りずに、
小銭入れのなかの硬貨を
一生懸命探している様子でした。
最初はのどかなひとときに映っていたのですが、
たった一つしかないレジの前には
私のうしろにも一人また一人と
行列が出来上がっていきます。
お会計が終わった時には、
5人待ちになってしまいました。
そこから先は偶然なのか、
私も含めて電子マネー決裁のお客ばかりで、
行列はあっという間に解消。
私も予定していた列車に無事乗車できました。
今回の場合は関係ありませんが、
もしこの後、帳簿処理が必要であれば、
前者の場合、経理担当者はレシートを見ながら、
日付、科目、消費税区分などを
一つ一つ手入力していくのに対して、
後者であればワンボタンで
クラウド上のデータを取り込み
仕訳一本があっという間に表示されます。
たった一つの作業でも、
これが日単位、月単位、年単位と積み重なれば、
そこに費やされる時間の差は
とてつもなく大きなものになるでしょう。
とはいえ、そのご高齢女性に、
普段の買い物に電子マネーを使う意義を
説くことはできるかと言われれば
それは並大抵のことではありません。
私自身、80代の両親に
たとえ同じようなことが起きたとしても
説得ができる自信はありません。
手許に現物があること、
実際に目で見てその動きを追えること。
何十年も、それが当たり前だった習慣を、
いきなり「紙幣(硬貨)は無駄」と
全否定するのはあまりにも酷な気がします。
同様のことが、会計事務所における
ペーパーレス業務の推進にも当てはまります。
いまや税理士業界では、
□所内業務全般
□お客様からの回収資料
□お客様への提供物
それぞれペーパーレス推進が本格化しつつあります。
これはこれで、政府も後押しする
世の中の流れですから
当然積極的に行っていくべきでしょう。
しかしそれは決して、
現時点で「0か100か」という
議論ではないように私は思います。
私たちも、
会計事務所のペーパーレス化促進を
支援させていただくなかで、
「私(所長)やベテラン職員が、
パソコンやスマホ画面上で
確認したり決裁するのは現実的(効率的)ではない」
「これまで紙で提供してきたお客様への提供物が、
急に“パソコンで見てください”となったら、
サービス低下のように思われてしまう」
といったご意見を数多く頂戴します。
それはそれで真実だと思います。
だからといって、
“まったくペーパーレスに取り組まなくてもよい”
ということではありません。
まずはできるところから始め、
時間の経過、テクノロジーの進化、周囲の理解を
味方にしながらその割合を徐々に
増やしていけばいいのではないでしょうか。
できないことは、決してありません。
なぜなら、ここ数年内に開業された
若手税理士先生にお話しを聞くと、
そのほとんどが、
所内も勿論お客様に至るまで
ペーパーを介したサービス運営を
最初から前提としていないのです。
それでも業務に支障なく回っています。
「だったら、
ご高齢の経営者はどうすればいいんだ」
「そもそも、パソコンが苦手な
ベテラン職員は絶対無理じゃないか」
そんな声が聞こえてきそうですが、
はたして、そういったお客様としか
契約していないのでしょうか。
そういった職員さんしか
在籍していないのでしょうか。
絶対にそんなことはないはずです。
むしろ、これから真剣に
若い経営者とお付き合いをしたい、
若手の職員を採用したい、となったら、
お客様が保管場所に困るような
ペーパーの提供資料、
あるいは事務所においても、
執務スペースが書棚に占領され
通路もデスクも紙の山のオフィスは
はたして歓迎されるのでしょうか。
税理士先生の平均年齢を考えると、
そう円滑にことが運ぶばかりとも言い切れませんが、
時代の流れをポジティブに捉えて、
DXという良くわからない標語に惑わされることなく
一歩ずつ進んでいけたらいいなと思うばかりです。
ここ最近、事務所の二代目として、
所内に新しいカルチャーを創り出したいと
必死に頑張っている税理士先生に何人もお会いして、
そんなことを考えてしまいました。
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“残念”な解釈
みなさん、こんにちは。
「ヒトの意見を聞く」
「ヒトの言いなりになる」
この二つの違いは一目瞭然です。
ところが、所長先生が
経営上の大事な決断をしなければならない際、
この二つを混同してしまっている場面に
遭遇することがあります。
人材不足が深刻化するなか、
これまでどんなにワンマン経営で
通してきた税理士先生であっても、
誰にも意見を聞かないまま
重要な決定を下し、
実行は現場の人間に丸投げという方式は
通用しなくなってきている昨今。
ましてや、
「一人欠けても業務が立ち行かなくなる」
といったようなギリギリの事務所運営ならば、
誰もが喜んで手を挙げてくれるような
経営判断ならともかく、
一時的に体制の変更を強いられたり、
現時点では成功する確証を得られなかったり
多少の痛みを伴う業務改革のような
経営判断を下さなければならないときに、
せめてキーマンとの意見交換、
もし可能なら賛同まで
勝ち取っておきたいと考えるのが
所長先生の本音ではないでしょうか。
そんな経営者としての悩みどころを、
必ずしも現場の最前線、
なかでも一際仕事に追われている
幹部職員が慮ってくれるかというと
そういったありがたい存在はごくごく一握り。
そのほとんどが、
「では、いま目の前にある問題は
一体どうするのですか」
「そんなことに時間やお金をかけるなら、
もっと現実的なところに目を向けませんか」
「同じようなことで
これまでに何度も失敗して...
次に失敗しない確証がどこにあるのですか」
といったような、
もっともな理由によって
これまで味方だと思っていた職員から、
総スカンを食らってしまうのが現実ではないでしょうか。
そんな場面で、
あっという間に白旗をあげてしまった先生に、
私はこれまでどれだけお会いしてきたことか。
本当に、数えきれないほどです。
人手不足がどうこうということではなく、
大事な経営判断に際して、
「ヒトの意見を聞く」のは
とても重要だと私も思います。
しかし、それは決して
「ヒトの言いなりになる」ことではありません。
本当にその経営判断を
「絶対に成し遂げたい」という覚悟があれば、
“あり得ない”と思うくらいの
捨て身の説得工作に打って出ても、
あるいはその逆で、
全員を敵に回したとしてもやり遂げる気合で、
望まなければならないと思うのです。
それを唯一実践できるのが
所長先生ではないでしょうか。
本当に先生が心から納得できる反対意見によって、
決定を覆すのなら仕方ないのですが、
実際のところ、
一度白旗をあげる習慣のついてしまった所長先生が、
その後翻って、
思い切った経営判断をされたという話を
私はいままで聞いたことがありません。
所長先生が心から「実現したい!」と思う未来を、
周囲から止められてばかりの事務所に
伸びしろはありません。
くれぐれも“残念”な解釈に
陥ってしまわないよう心から願うばかりです。
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13年目の更新
みなさん、こんにちは。
「会計事務所応援」ブログも、
本日の更新で13年目に突入しました。
2010年8月2日から開始して
数にして1662回目。
“石の上にも三年”ということわざがありますが、
振り返ってみると
12年という年月もあっという間に感じます。
私は仕事柄、
毎日全国の会計事務所様のホームページを、
拝見させていただいています。
そのうちおおよそ1~2割には、
ブログ欄が設置されています。
ところが、最終更新日時が、
1カ月以上前というのは
決して珍しいことではありません。
年単位で更新していないままに
なっているものも良く目にします。
実際に事情をお聞きしてみると、
□更新している時間的な余裕がない
□更新するネタがない
□更新担当が辞めてしまった
□これでお客様が増える訳ではない
そんなご意見があります。
ブログは時間的な余裕があるから
更新するものではありません。
発信すべき情報があれば
時間を作って更新することが大切です。
また、ネタを気にする方は、
「体裁の良いものを」
「小さな間違いも許されない」と、
ご自身でご自身を
追い詰めてしまっている傾向があります。
つまらなくても、多少間違っていても
(専門性を問われる情報の間違いはNGですが)
ご自身が伝えたいことを伝えたい時に
発信するのが基本だと私は思います。
更新担当者が辞めてしまったというのは、
更新できなくなった理由にもなりそうですが、
それならば担当に
所長先生が加わればそれで解決です。
所長先生だけは絶対に辞めません。
そしてこれが一番厄介なのですが、
ブログでお客様が増えないから更新しなくなった。
これは本当でしょうか。
ブログという媒体を通じて
お客様を直接的に増やそうという目的で
取り組まれているプロは、
更新の頻度はおろか、掲載する内容など
隅々まで神経が行き届いています。
それでも、
お客様が増えないとは考えられません。
一方で、大多数のブログは、
直接的にお客様を増やすことに
力点が置かれていません。
当ブログも同様です。
それでも、ずっと続けていくことによって、
読者の方からお問い合わせがあり
結果としてお客様になっていただくケースも
実際にあると思います。
過度な期待はせず、まずは伝えたいことを
しっかり伝えることではないでしょうか。
そういえば私自身、
更新をいつも楽しみにしている
知り合いの税理士先生のブログがいくつかあります。
みなさんいつも大変ご多忙で、
「いつネタを考えているのだろう」と
不思議なくらいなのですが、
共通する点は、
「ネタは流動的で、書き方がフランク」
「それぞれの人間性が文章ににじみ出ている」
「必ずしも更新頻度は高くはないものの、
決して長期ブランクにならない」
肩に力を入れて書かれていないからこそ、
読者もリラックスして気軽に読むことができる。
気がつくと、
「次はいつ更新するのかな」と
楽しみになるようなイメージです。
そんな読者のなかから、
“この人の考え方に賛同できる”
“思い切って悩みを相談してみよう”
となるのではないでしょうか。
いまや中小零細企業であっても、
多額の広告費をかけることなく、
日本中、世界中にインターネットを使って、
文字や音、画像や動画などを通じて
カンタンに情報を発信できる時代です。
もちろんその手段は
必ずしもブログだけとは限りません。
まずは、発信してみること。
そしてそれをコツコツと続けてみること。
地味ではありますが、
とても大事だと私は思います。
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