“昭和な先生”と“平成な職員”との間で
みなさん、こんにちは。
先日、弊社グループの
エヌエムシイ税理士法人東京事務所に
4名で見学にいらっしゃった
税理士先生にお礼の電話をしました。
所長含めベテラン2名、若手2名という構成で、
事務所改革の参考に
ご自身の目で直接
エヌエムシイグループの職場環境を見てみたいと
ご来社いただいたのです。
私は電話のなかで、
「先生の事務所は、
前向きで優秀な若手職員さんがいらっしゃいますね。
こういった若手の方が、
のびのび仕事ができる環境を
先生ご自身が意識して作ってあげるだけで
もっと伸びる事務所になると思いますよ」
と先生にお伝えしました。
お聞きすると、
10数名いる事務所スタッフのなかで、
このたびの見学会参加の希望を募ったところ、
挙手したのはお二人だけだったそうです。
しかも、とくに多くの仕事を抱えていて
残業も多くハードワークの状態が続いている
二人だと後でお聞きして驚きました。
もし私が同じような環境だったら、
「目の前の仕事でいっぱいなのだから、
よその事務所など見学している
余裕なんてないですよ...」
とつい愚痴ってしまいそうですが、
日常的に仕事に忙殺され、
しかも年末も近づいてきているこの時期、
それでも新しい情報に触れて、
改善のヒントにできないかと行動する姿勢は、
誰でもできるものではありません。
実際に、お二人から来る私たちへの質問も、
現業務方法の非効率な点を確認するような
無駄のない的確なものばかりでした。
こういった若手職員が事務所に定着し、
新たなスタンダードを、
少しずつでも確立していってくれたら、
どこの事務所も抱えている
経営の行き詰まり感は、
少しずつでも解消されていくのではないかと
私は思います。
“20代、30代からの応募が全然来ない”
“若手が入社しても、すぐに辞める”
“高年齢層のスタッフが事務所を独占している”
こういった話を
全国の税理士先生から
当たり前のようにお聞きしますが、
そんな逆風吹き荒れる環境でも、
この業界を希望し、
何とかこの世界でこの先10年、20年と
飯を食っていかなければと
頑張っている若者がいることは
税理士業界もまだまだ捨てたものではありません。
ただ、足下を見ると
“昭和な先生”と“平成な職員”との間で、
仕事に対する義務や価値観も
随分とかけ離れてしまっているのも事実。
※もちろん私は“昭和”のカテゴリーに入ります。
それゆえに、
所長:「私が伝えているのに、なぜ言うことを聞かない」
職員:「もっと効率的なやり方があるのに、
とても話しを聞いてくれそうな雰囲気ではない」
といったような、
お互いのスタンスの違いに
それぞれフラストレーションを溜めている場面に、
私は何度も遭遇してきました。
昭和側に属する私からすると、
「気合、根性が通用しない」
「24時間戦えない」
「組織の上下関係を絶対的なものと思わない」
そこに目くじらを立てたところで、
そもそも育ってきた環境が違うのですから、
・「気合、根性が通用しない」
→まずは必要最低限の業務ルールを明文化し、
みんなで話し合って適宜修正していく文化に変える
・「24時間戦えない」
→決められた時間内で効率良く成果を出す方針への転換
・「組織の上下関係を絶対的なものと思わない」
→各自が主体的に動けるワークフローや評価方法の工夫
面倒臭がらずに、忍耐をもって
これらを地道に積み重ねていくことが、
結果的には一番の近道であるような気がします。
私たちは、
これまでに社会人として育てられてきた過程で
育まれた考え方や価値観を、
悪気なくそのまま後進にも
押し付けてしまっているところがあるのかもしれません。
しかし、これだけ全国で若手の採用・定着に
苦戦する現状を鑑みれば、
発想の転換は必須であるように私は感じます。
「このままでは拡大できない」
みなさん、こんにちは。
今年もまもなく残り1ヶ月となります。
世間的には昨年同様、
あまり明るい話題には恵まれない
一年で終わりそうですね。
会計事務所としても、
この数年はなかなか思い切った方針転換にまでは
踏み切れずにいた先生が多かった気がします。
私自身、弊社開催のセミナー参加をきっかけに
昨年は全国の81名、今年もこれまでに75名の税理士先生の
個別相談に対応させていただきましたが、
税理士先生が抱えている悩みは
ほぼ共通していて、
“本当は顧客拡大したいけど...できない事情がある”
ということ。
その一番の原因は受け皿の問題、
端的に言えば“人が足りない”ということ。
「お客様が増えなくて困る」と聞くと、
つい集客の不調を思い浮かべがちですが、
実際には、
お客様が増やせる見込こそ立っているものの、
受け入れるキャパが用意できないのです。
何とももったいない話だと思いませんか。
当然、職員としても色々と不満や不安は募ります。
ただ、お客様が増えてもいないのに、
給与だけは右肩上がりになるなどありえません。
「だったら、
客単価を上げればいいのか」
と理屈上考えがちですが、
コロナ前でもなかなか上げられなかった客単価を、
この厳しい社会情勢で上げるというのは、
それほど簡単なことではありません。
ましてや新規契約ではなく、
既存顧客を対象とするものであれば
なおさらではないでしょうか。
つまり、
どんなに急成長を望まない事務所であったとしても、
顧客拡大のルートを自ら閉ざしてしまっては
事務所に未来がないのです。
「それなら、人に依存しない
サービス運営の方法に変えればいいじゃないか」
と業務の自動処理やアウトソーシングに
注目が集まっています。
他業種における進化の過程を見る限り、
当然の動きかもしれません。
しかし、その変革のスピードは思いのほか
スローペースと言わざるをえません。
その原因として、
「入力やチェック業務が好きで、この仕事をしている」
「お客様の面倒ごとに、
とことん付き合ってあげるのが私の得意分野」
と考えている層が、
職場の一定割合を占めていることが挙げられます。
このこと自体、
私は否定するつもりはありません。
しかし、そこで
採算がとれていないのであれば話は別です。
「お客様に対価を請求する」
「お客様自身に行っていただく」
「自動化やアウトソーシングでコスパ改善に努める」
「思い切ってサービスをやめてみる」
選択肢はいくつも用意されているはずですが、
残念ながら担当をしているスタッフが、
これらを自ら判断し対策を打つというのは
困難だと思います。
出来ていないからこそ、現状手一杯になり、
事務所全体としては
「これ以上顧客を拡大したら事務所が崩壊する」
という事態に陥っているのですから。
こういった状況は、
時間が解決してくれるわけではありません。
むしろ今後は、
インボイスや電帳法に伴う業務負荷で、
同じ客数を維持していたとしても
担当者一人当たりの仕事量は増えていき、
むしろ職場環境は悪化する可能性もあります。
顧客拡大活動をストップするのは、
あくまで一時しのぎであり、
決して解決策にはなりません。
負の遺産として積み上がり、
避けに避け続けていた事務所の『構造改革』こそ、
いま決断しなければならない最優先事項だと私は思います。
そこに切り込める存在は
所長先生ただ一人ではないでしょうか。
“もはや何から、どこから
始めていいのかわからない...”
という先生は、ぜひ一度
ご相談いただければと思います。
“辞めない人材”という幻想
税理士先生から寄せられるご相談のなかに、
「人材に関する悩み」が
含まれていないことはまずありません。
どこも人が足りないのです。
単に頭数の問題ではありません。
「税務会計の知識経験がある人」
「コミュニケーション能力の高い人」
こういった人材が
一人でも多く入社してこないかと
みんな待ち望んでいるのです。
私たちも、
“在宅業務”という限定付きで、
人材のご紹介をしておりますので、
このような人材のご要望をいただくことも
珍しくないのですが、
不思議なことに、
冗談か本気か、こんな要望が
意外と多いことに気づかされます。
“辞めない人材が欲しい”
お聞きすると、
「人材会社に高い募集費用や紹介料を支払ったのに、
半年もしないうちに退職された」
「未経験ということで、
時間も手間もかけて一生懸命教育したのに、
家庭の事情で繁忙期目前に辞められた」
「経験も保有資格も申し分ない人が来たと喜んでいたのに、
わずか数週間で“仕事のやり方が合わない”と、
出社しなくなってしまった」
こういった苦い思いを、
何度も経験されていることが
どうやら背景にあるようなのです。
ただ、入社する前から
“この人は辞めない人材”だと確信が持てることなど
本当にありえるのでしょうか。
そもそも、「入社したらすぐに退職しよう」と
心に決めている求職者などおそらく皆無だと思います。
つまり、入社前の段階では気が付かなかった、
当人にとって想定外のことが
その後起きたのが退職の要因であることは
だからこそ退職という最終手段を取るのです。
実は、
“辞めない人材が欲しい”と要望される事務所の場合、
辞めてしまう理由が事務所側ではなく、
一方的に入社してくる人材側にあると
思い込んでいるケースが少なくありません。
そうなってしまう原因の一つとして、
入社試験時の事務所側からのアナウンス不足、
入社希望者へのヒアリング不足を疑う必要があります。
ただ、これだけではミスマッチを
減らすことはできますが、
完全に取り除くことは不可能です。
だからこそ、入社後についても、
所長先生、同僚からの教育指導が
欠かせないものになると私は思います。
経験の有無に関わらず、
また、単に「続けてもらうこと」を念頭においた
顔色をうかがうような姿勢ではなく、
「辞めてもこまらない環境」を意識させつつ
一定のルール下のもとに
当人のやりがいを見出してもらうという発想の転換です。
「辞めても困らない」というと、
何かドライな印象を持たれてしまいがちですが、
いざといったときに代わりが効かない環境だからこそ、
退職者が事務所の混乱を招くのです。
「だったら、おたくの事務所のスタッフは、
誰でもこなせるようなレベルのところまでしか、
お客様にサービスが提供できないのか。
そんなことで本当にお客様は喜んでくれるのか」
以前に、とある税理士先生から
このようなご意見をいただいたことがありました。
所長先生ならともかく、
一スタッフの特殊能力に依存する前提の
サービスラインナップは属人化を加速させ、
多くの税理士先生が
過去に経験されているのではないでしょうか。
突き詰めると、
“辞めない人材が欲しい”という訴えは、
心情としてわからないこともありませんが、
実は気づかないうちに
危機に瀕しているともいえるのです。