西早稲田眼科のブログ

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西早稲田眼科のブログです。
眼のことやクリニックのことについて発信していきます。

眼精疲労とは


眼精疲労は「眼を使用したことに伴って疲れという感覚が生じた状態」を意味する言葉であり、疾患や病気の名前ではありません。
客観的な「疲労」と自覚的な「疲労感」は必ずしも一致せず、疲労のない疲労感や疲労感のない疲労も存在します。

臨床上問題となるのは“自覚的な「疲労感」”であり、眼精疲労を治療するにあたっては「本当の原因が疲労かどうか」は関係ありません。
治療の目的は、「疲労感」を軽減させることです。

従って、治療する上で最も重要な点はその「疲労感」を引き起こしている真の原因が何かをつきとめることです。

 

眼精疲労の種類

 

眼精疲労の種類は教科書的には以下の5種類に分類されます。

 

1)調節性眼精疲労

ピント合わせの筋肉を過度に使用することによる疲れです。

 

2)筋性眼精疲労


眼球を動かす筋肉を過度に使用することによる疲れです。

 

3)症候性眼精疲労

 

何らかの眼疾患による自覚的な不快感を「疲労感」と感じることです。

 

4)不等像性眼精疲労

 

左右の眼から入力される像の大きさに差がある状態を「不等像視」といいます。
不等像視があると,両眼で物を見ようとしても大きさが揃わないので二重に見えてしまいます。これを修正しようとする努力のための疲れです。

 

5)神経性眼精疲労

 

眼以外の身体的もしくは精神的異常に伴う症状を「眼の疲労感」と感じることです。

 

眼精疲労の検査

 

「眼の疲労感」を訴えとして来院された方に対しては、1)4)のために屈折、視力及び調節検査を、2)のために眼位及び眼球運動検査を、3)のために一般的な眼科的検査を行う必要があります。そのすべてで異常がなかった場合に5)を考慮します。

 頻度の高い眼精疲労
日常診療における頻度という観点からは、1) 調節性眼精疲労によるもの、および3) 症候性眼精疲労のうちのドライアイによるもの、が大多数を占めます。

 

調節性眼精疲労について

 

調節性眼精疲労が一般的にイメージし易い「眼精疲労」です。
人間のピント合わせの機能(調節)は、遠くに合っているピントを近くに持ってきます。
水晶体という眼の中のレンズが伸び縮みすることによって、この機能を発揮しています。
水晶体の伸び縮みのために働いている筋肉が毛様筋であり、この筋が収縮するとピントが近くに移動します。

この能力は若いころは過剰にあり、その能力の一部を使うだけで遠くに合っているピントを手元まで近づけることが可能です。
このため、若いころは長時間近くを見ていても容易には疲れません。
しかし、この能力は加齢とともに衰えていきます。
ある程度の年齢になると、残っている能力に対して必要な能力の占める割合が大きくなり、以前は平気だった負荷が苦痛に感じられるようになります。
これが調節性眼精疲労です。

調節性眼精疲労による苦痛の程度を可視化できるマーカーはないので、その診断には「調節性眼精疲労として矛盾しない状況である」ことを確認した上で「調節性眼精疲労を軽減させること」をした結果として「自覚的な疲労感が軽減すること」を確認する必要があります。

「調節性眼精疲労を軽減させること」とは、毛様筋をなるべく緊張しない状態にすることであり、手軽な方法として「遠くを見る機会を増やすこと」があります。
毛様筋は近くを見るときに緊張するので、遠くを見る機会を増やすことにより毛様筋が弛緩した状態をなるべく増やすことになり、毛様筋を休ませることになります。
生活上遠くを見る機会を増やすことが困難な場合には、「眼鏡の調整をして現状よりも近くにピントを合わせる」或いは「毛様筋を強制的に麻痺させる点眼薬を使用する」といった方法があります。

これでしばらく過ごしていただき、その結果自覚的な疲労感の軽減が得られたら調節性眼精疲労であると診断できます。

治療は「眼精疲労による苦痛の程度」と「これを緩和させるために払う労力」とのバランスの問題になります。
調節性眼精疲労は、理論上は毛様筋を一切緊張させなければ起こりません。
但し、一切緊張させないためにはそれなりの労力を払う必要があります。
また、調節性眼精疲労を放置して症状が悪化したとしても、失明するような重大な機能障害を引き起こす原因にはなりません。
どこまでの労力が無理なく払えて、どこまでの苦痛が許容範囲なのかは、その人毎の価値観や環境、忍耐力等によって変わりますので、医療者側が勝手に決めつけるのではなく、自分自身にとっての最善なバランスを探る必要があります。

 

症候性眼精疲労の原因としてのドライアイについて

 

ドライアイの症状を眼精疲労と感じる事は非常によくあります。
そもそも「疲れている」「乾いている」という感覚を言葉で説明することは困難です。眼が疲れるであろうと考えられる状況下で決まって生じる不快感を「疲れ」として認識してしまうのはごく当たり前に起こり得ることです。

この混同を生じさせる最もポピュラーな状況がVDT作業(パソコン等のディスプレイを見る作業)機会の増加です。
VDT作業は近業なので調節性眼精疲労の原因になり得ますし、まばたきの回数が減るのでドライアイの原因にもなり得ます。
習慣的に長時間のVDT作業に携わる方が眼の疲労感を自覚している場合、その症状の真の原因は調節性眼精疲労、ドライアイ、その他、の可能性があります。

調節性眼精疲労とは異なり、ドライアイの重症度はある程度客観的に評価することが可能です。
ドライアイの検査で客観的な異常を認めた場合、自覚症状の主原因はドライアイによるものの可能性が高いと考えられます。
ドライアイの検査で異常を認めなかった場合、屈折の状態から調節性眼精疲労を否定できなければ、自覚症状の主原因は調節性眼精疲労の可能性が高いと考えられます。
いずれにも該当しなければ、その他の原因を検討します。

調節性眼精疲労の診断・治療については前述の通りです。ドライアイの診断・治療については他稿にゆずります。

 

よくある眼精疲労についての誤解と治療上の困難

 

眼精疲労を主訴に眼科を受診し、「眼の酷使を控えましょう」「眼を休ませましょう」といった指導をされることがあるようです。

眼精疲労の原因は一つではなく、それぞれにおいて対処法は異なります。
従って「眼を休ませる」とは具体的にどうすることなのかの説明がないと何が適切な方法なのかがわかりません。
そして少なくない割合で、眼を休めることは「物を見ずに目を閉じている」ことだと考えてしまう方がいるようです。

例えば調節性眼精疲労の場合、疲れるのは毛様筋です。
毛様筋の機能は「ピント合わせ」であり「見ること(視覚情報を獲得すること)」ではありません。
「見ること」のために機能しているのは主に網膜です。
網膜は痛覚がないので、仮に網膜を過剰に使ったとしても網膜由来の不快感は生じ難いといえます。
とすると「見ること」に伴って生じた「不快感」は、「見ることに付随する行為」により生じた可能性が高いと考えられます。
従ってこの「不快感」を軽減させる方法は「見ること」をひかえることではなく、その真の原因である「付随する行為」に対応することです。
調節性眼精疲労の場合、毛様筋の緊張が「不快感」の原因であり、網膜の電気的な興奮とは直接的な関係はありません。
従って、例えば適切な眼鏡矯正により調節を使わなくても見たいところにピントが合うようにすると、理論上は長時間眼を使っても毛様筋由来の「不快感」が生じないことになります。

但し、疲労感はあくまでも自覚的なものであり、どうしても気持ちに影響される部分があることは否めません。
理論に則って検査・診断・治療しても自覚的には明らかな効果がなかった方に眼精疲労用点眼を使用してもらったら症状が軽減した、といったようなことはよくあります。
治療の目的が自覚的な苦痛の軽減であり、科学的な妥当性よりも自覚的な効果が優先されますので、この場合はこれでいいことになります。

現在の眼精疲労のコントロールに満足であればそれでいいのですが、もし例えば「眼精疲労用点眼を処方されて使ってみたもののあまり効果を感じられなかった」、あるいは「現行の眼精疲労治療のために払う労力が大きすぎると感じている」、などという事がありましたらご相談いただければ、より効果的な治療のご提案ができるかもしれません。
 

花粉症とは?

花粉症とは、ひとことで表すと花粉が引き起こすアレルギーのことです。

目に関しては、花粉が抗原となって起こる”アレルギー性結膜炎”を指します。

 

花粉によるアレルギー性結膜炎では、空気中の花粉がたまたま目に入り結膜上に付着し、花粉を特異的に認識するIgEという免疫グロブリンの一種が花粉に結合し、そのIgEが結膜下の肥満細胞の表面に結合することにより肥満細胞からのヒスタミンの放出といった反応が起こります。

ヒスタミンが結膜表面の細胞にあるヒスタミン受容体に結合するとかゆみが起こります。

通常のアレルギー性結膜炎は原則として深刻な組織障害を伴わないため、治療の主な目的は不快な自覚症状(主にかゆみ)を抑えることです。花粉(季節性の抗原)が原因の場合、症状は一過性でありその時期をしのぐことができればいいのですが、通常は一定期間(花粉が存在する間)症状が続くのでなるべく長期間行っても深刻な副作用が起こりにくい治療が望ましいといえます。

 

花粉症の治療は?
 

①私生活で花粉症対策を行い、症状を和らげる方法

 

治療としてまず考えることは、アレルギーを引き起こしている抗原の除去です。

完全な除去は難しいですが、下記のような工夫で目に見えない空気中の花粉の侵入を減らすことができます。

 

花粉は外出時に曝露されることが多く、

✔︎外出時のマスク

✔︎フード付き眼鏡や

✔︎室内に入るときの着衣・手・顔についた花粉の持ち込み防止

✔︎室内の空気清浄機の使用

などが有効です。

 

人工涙液の点眼はまぶたの裏側の花粉を減らすのに有効と考えられます。

逆にコンタクトレンズの装用は花粉を長時間眼表面に留まらせる要因になります。

 

②薬物療法

 

前提として、薬物療法は原因治療ではなく、あくまでも症状に対する治療です。

根治を目指すのではなく、症状を和らげるのが目的の治療なので、必要最低限の治療で目的を達成することが要求されます。

 

副作用のリスクのある治療を漫然と続けることは望ましくありません。

 

③抗アレルギー薬の点眼

 

花粉症に対する抗アレルギー薬の点眼は、「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」と「メディエーター遊離抑制薬」に分類されます。

 

−ヒスタミンH1受容体拮抗薬

 

放出されたヒスタミンの受容体への結合をブロックします。

症状を起こさせる反応のすぐ前の経路をブロックするので即効性が期待できますが、ヒスタミンを減らすわけではなく持続性がありません。

 

−メディエーター遊離抑制薬

 

肥満細胞からのヒスタミン等の放出を抑制します。

効果が出るまで時間がかかりますが(1~2週間)、効果は持続的です。

 

抗アレルギー薬点眼のメリットは重大な副作用がないことで、両者の特性をうまく利用して症状のコントロールができれば、リスクの少ない望ましい治療法といえます。

 

日本眼科学会によるアレルギー治療のガイドラインの上では、抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合はステロイド点眼の併用となっています。

ステロイド点眼は抗アレルギー薬点眼よりも上流のアレルギー反応を多岐にわたって抑制します。

効果は強力ですが、重篤な副作用の可能性があり、使用のメリット・デメリットを考慮して慎重に使用する必要があります。


 
舌下免疫療法では、花粉症根治の可能性が


アレルギー性結膜疾患に対する従来の治療では症状を抑えることはできても根治することはできませんでした。

根治というのは、「アレルゲンが侵入してもアレルギー反応が起こらない体になる」という事です。

 

近年アレルギー疾患を根治する可能性のある唯一の治療法として、舌下免疫療法が開発されました。ス

ギ花粉が原因の花粉症は根治の可能性がある治療法ですが、長期的な効果を維持するためには最低でも3年間の継続が必要で、治療期間中は原則として1ヶ月ごとの受診が必要で、治療したら必ず根治に至るわけではありません。

また、可能性は極めて低いもののアナフィラキシーという重篤な反応を引き起こす可能性があります。

軽い症状の方に対して安易にお勧めできる治療ではないですが、重い花粉症でお困りの方で興味のある方はご相談ください。

緑内障とはどんな病気?


人間の眼球の後ろ側の内張り部分を「網膜」といいます。
網膜はものを見るときに非常に大事な役割を果たす部分です。


網膜の奥の層には「視細胞」という光を感じ取る細胞が全面に存在しており、視細胞で感じ取った光の情報は、神経の線維を通って脳に伝わっていきます。


この神経の線維は網膜の表面に近い層を通って、「視神経乳頭」というところに集まって束になり、眼球の外に出ていきます。
眼球の外に出た神経線維の束が「視神経」です。


視神経は脳につながっていて、視細胞由来の光の情報は視神経を介して脳に伝わります。
 

緑内障とは、この光の情報を伝えている神経の線維が、部分的に抜けていくことを指します。
 

緑内障による症状、形の変化と機能の変化
 

緑内障が進行することによって起こる「眼の形の変化」として、神経の線維が抜けた部分の網膜が薄くなり、視神経乳頭のへこみが大きくなることが挙げられます。


「眼の機能の変化」としては、神経の線維が抜けた部分に相当する視野が欠けます。
網膜は痛みを感じない場所なので、神経の線維が抜けることに伴って痛みを感じたりすることはありません。


緑内障の気付きにくい“初期症状”


通常の緑内障の初期の視野変化は、真ん中ではなく端の方から現れます。
その為、初期の症状に自分で気付くことは非常に困難です。
気付かぬうちに症状が悪化してしまっていた、ということが多くあります。


緑内障になる原因は?


緑内障になる原因は、そのすべてのメカニズムがはっきりわかっている訳ではありません。
「眼圧が高いほど緑内障が起こりやすく進行が速くなり、低いほど進行が遅くなる」という事ははっきりわかっています。


眼圧とは、眼球を中から外に押す力のことです。
日本人の眼圧の平均は14mmHgくらいですが、これより低いから緑内障にならない、ということではありません。

眼球を中から外に押されることによって、神経線維の眼球外への出口である「視神経乳頭」が傷んでいくと考えられます。
しかしこの視神経乳頭の丈夫さには個人差があり、眼圧が平均よりかなり高くても緑内障にならない人もいれば、平均よりかなり低くても緑内障が進んでしまう人もいます。


つまり、一概には言えません。
あくまで上記のような傾向があるということになります。
 

眼圧が高くないにも関わらず、緑内障になってしまう人の割合には人種差があります。
日本人はこの割合が高い、要するに人種的に視神経乳頭があまり丈夫ではない傾向があると考えられます。


緑内障の治療法


緑内障の治療では、主に眼圧を下げることをしていきます。
ただし、現在のところ抜けてしまった神経線維を元に戻す方法はありません。
すでに失われた神経線維をもとに戻すことではなく、これ以上症状が進まないようにすることが目標です。


治療法では、「眼圧を下げること」以外に科学的に効果が証明されている方法は今のところありません。
さらに、前述の通り視神経乳頭の丈夫さには個人差があるため、進行が止まる眼圧も個人ごとに違っています。


視神経乳頭の丈夫さを直接測定する方法はないので、どこまで眼圧を下げればいいかは、治療をしていかなければわかりません。
さらに、眼圧は変動するので、受診時に測定した眼圧がずっと保たれているわけではなく、実際の平均眼圧はそれより高いことも低いこともあり得ます。


そしてさらに複雑なことに、この緑内障の進行に直接関与する「眼球を中から外に押す力(眼内圧)」を直接測定することは困難です。
実際の日常診療では「眼球に外から力を加えたときの変形しやすさ」を測定して眼圧としています。


眼球の変形しやすさは、眼内圧や眼球壁の硬さに影響されます。
つまり、同じ人の測定値の高い低いはその人の眼内圧の上昇下降を表していると考えられますが、眼球壁の硬さが異なる他人との眼圧測定値の比較は眼内圧を比較していることにはなっていません。
眼圧の値だけで比較することが出来ない、ということです。


したがって緑内障の実際の治療は、数値として眼圧をここまで下げるということよりも、実際に視野欠損の進行が進まなくなるまで下げるということが本質的であるといえます。


日本眼科学会のガイドラインでは目標眼圧の設定がありますが、あくまでも目安ととらえた方が理屈にかなっていると思われます。


眼圧を下げる方法


眼圧を下げる方法としてまず最初に試みることは点眼(目薬)です。
症例によって様々なバリエーションがありますので例外はありますが、通常は緑内障の視野変化が確認され進行していると判断したら、まず1種類の点眼を使っていきます。
その点眼により、本当に眼圧が下がっているかを確かめます。


そしてある程度期間をとって視野検査をして、以前の視野検査の結果と比較します。
進行していなければこの眼圧で進行しないと判断して点眼を継続します。


進行していたらまだ眼圧が下げたりないことになりますので、さらに点眼を追加します。
上記を症状が進行しなくなるまで繰り返します。
 

眼圧を下げる点眼の種類には限りがありますので、全ての点眼を使用しても進行を止められない場合に、さらに眼圧を下げるために手術やそれに準ずる処置を考慮します。


緑内障の手術とは?


緑内障の手術は治す手術ではなく眼圧を下げる手術です。
手術は侵襲を伴うものであるため、従来はできれば避けたい、投薬だけではどうしてもだめな場合の「やむを得ないもの」という位置づけでした。


近年、より低侵襲な緑内障手術がいくつも開発され、現在フルメディケーションに至る前に導入することのメリット、デメリットが検討されているところです。


緑内障治療は効果実感がしにくい


緑内障の治療の難しい点は、実感にほぼ反映されないところにあると思います。
初期の緑内障は自覚症状を供わないため、まずそもそも自分が緑内障であることを実感できません。
初期の間の視野進行も実感できません。


従って、進行が停止したことも、点眼して眼圧が下がったことも実感できません。
しかし点眼による副作用は実感できます。


メリットが実感できないことに対して定期的に点眼を続けたり通院を続けることは苦痛を伴います。
しかし実感できるまで症状が進行したら、その症状を治すことができないのが緑内障の恐ろしいところです。


定期的な検査が最も大切


緑内障を初期に発見するためには、自覚症状が全くなくても定期的に検査する以外に方法はありません。
日本人の場合、40歳以上の方の5%が緑内障であることが分かっています。

それより若い方の発症はないわけではないですが、とても珍しいです。
一つの目安として、40歳以上の方で1年以上眼科健診を受けていない方は自覚症状の有無は関係なく健診もしくは眼科受診をした方がいいと思います。

はじめに、みなさまに伝えたいこと


結膜炎という言葉はそのままで、結膜の炎症を意味します。

誤解をされている方が少なくないようなのでまずお伝えしたいのですが、「結膜炎」は非常に広い範囲の疾患を含む総称のような言葉ですので、診断名としてはほとんど意味がありません。

オーバーに表現すれば「あなたは病気」と言っているのと大差ありません。

結膜炎は多種多様の原因で起こり、原因によって治療法も異なります。

充血と目ヤニという症状があればそれはほぼ結膜炎であり、あまり疑問の余地はありません。眼科医に求められているのはこの結膜の炎症が何によって引き起こされているのかを診察により見当をつけて、過不足のない治療を行うことです。

診察の初めに症状をうかがうのですが、「今日はどうされましたか?」というこちらからの質問に対し、「結膜炎です。」「結膜炎だと思います。」といったお返事が返ってくることがあります。

このような答えは結膜炎の原因を追究するためには意味がないものとなっております。
このような場合、具体的な症状について再度お尋ねすることになりますが、ごくまれにご立腹される方がいらっしゃいます。

問診は候補として考えられる疾患を絞って無駄な検査を省くことにつながりますし、特に結膜炎の場合には非常にうつり易いものが含まれていますので、これを否定しないとその後の検査が著しく制限されます。

快くご協力いただけると患者さまの無駄な労力を省くことができます。

一番問題なのは眼科医の中にかなり単純な診療を行っている人が少なからず存在することです。

典型的なパターンは、

「前医で結膜炎の診断のもと抗生剤とステロイドの点眼を処方されて使っているけど治らない。」

というもので、「結膜炎の原因は何といわれましたか?」と尋ねると「何も言われていない」というお返事を頂きます。

この場合、本当は前医で適切な説明がされているにもかかわらず聞いていなかったとか忘れてしまったという可能性もありますのでこれだけで一方的に判断はできませんが、もし眼科を受診して「結膜炎」と診断されてそれ以上の説明はされず抗生剤とステロイドの点眼を処方された、というようなことがあった場合には、診療内容に疑いを持ってもよいのではないかと思います。


結膜炎はどんな病気?


「結膜」とは眼球の白目(強膜)から瞼の裏側にかけての表面を覆う薄い膜を指します。
※眼の表面、粘膜のうちの黒目(角膜)以外の部分です

その結膜が組織破壊を受けた時、その破壊に対して組織を修復するための生体の反応が「炎症」です。


結膜炎の症状と治療について


結膜炎は様々な原因で起こり、結果として多種多様な状況を引き起こします。

結膜炎に対する治療の本来の目的は症状を緩和させることではなく、炎症の原因を解消することです。
※根治的な治療が困難で、苦痛を和らげることを目的とした治療を選択せざるを得ないということもあります


原因治療が必要な理由


原因治療とは炎症の原因を解明し、可能な限りその原因を解消することです。

例えば、結膜炎の典型的な症状である充血(血管が拡張した状態)についてですが、市販薬にも効能として「充血」をうたっている目薬が存在します。
塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリンといった成分を含有するものです。

これらの成分は血管収縮剤であり、充血の原因が何であれ効果を発揮します。
しかし原因を解消したわけではないので効果が無くなると再度充血し、リバウンドのためむしろ悪化することもあります。

これを改善させるためにまた同じ点眼を使い続けると、血管が拡張したまま戻らなくなることがあります。
短期的には見かけ上の充血を改善させますが、本来の病気の症状をマスクしているだけなので、実は「治っていない・悪化している」という可能性もあります。

つまり、血管収縮剤の点眼の効果は完全に対症的であることを念頭において使用する必要があるということです。

もう一つの結膜炎の典型的な症状である目ヤニに対して、盲目的に抗生剤の点眼を使用していることがよくあります。
しかし目ヤニの原因は感染症だけではないため、全く意味のない投薬になっている可能性があります。

抗生剤の無意味な長期投与や乱用は、耐性菌の発生の原因となり得るので極力控えるのが望ましいとされています。
目ヤニは様々な原因で生じ、原因によって性状が変化します。

やみくもに目ヤニの量を減らすことを目指すのではなく、目ヤニの性状を参考にした上でその原因を解明することが重要です。

対症療法は、短期的な成果のみを追求した場合、原因治療よりも優れた効果を発揮することは多々あります。結膜炎では、対症療法のみで実際に解決してしまうことがほとんどかも知れません。しかし原因が解決していなければまた同様の症状を繰り返す可能性があり、中には初期に適切な治療をしなかった結果として重篤な状態を引き起こしてしまうかもしれません。結膜炎に限らずあらゆる疾患の治療は、可能な限り原因治療を目指すことが理想です。


結膜炎の種類

 

結膜炎はその原因から、「感染によるもの」「アレルギーによるもの」「その他」に分けられます。


●感染による結膜炎


感染性結膜炎は病原体による感染が原因の結膜炎です。
病原体の種類は「ウイルス」「細菌」「その他」に分けられます。


1)ウイルス性結膜炎


結膜炎と思しき症状の訴えがあった場合、まず最初に「はやりめかそうではないか」を考えます。

「はやりめ」は非常に感染し易い結膜炎の総称で、その代表的なものがアデノウイルスが原因の流行性角結膜炎です。

流行性角結膜炎は医療従事者の手指や検査器具などを介して感染し得るので、感染者の検査を通常通りにしてしまうと、その後に検査を受ける方に感染してしまう可能性があります。

そのため、流行性角結膜炎の診断がついた場合はその時点でよほど重症な他の疾患の合併を疑わない限り、検査を終了しなくてはなりません。

高度な結膜の炎症所見、もしくは周囲に同様症状の人がいる場合に流行性角結膜炎を疑い、特徴的な所見のうちのいくつかを認め、明確に否定できる理由がない場合に診断されます。

臨床で用いられているアデノウイルス抗原検査は特異度が高く、結果が陽性の場合は流行性角結膜炎と診断できますが、感度がそこまで高くないので結果が陰性の場合は流行性角結膜炎を否定できません。

感染の拡大防止を第一義とするならば、否定できない限り流行性角結膜炎として扱わざるを得ません。
結果として流行性角結膜炎ではない方が含まれることになります。

法律上は学生に関しては「学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」登校が禁じられています(学校保健安全法)。
感染のおそれがないと判断できるのは必ずしも症状の改善と一致せず、発症してある程度の期間が経った後になります。

学生でなければ流行の原因にならないという理由はなく、全ての感染者に対して学校保健安全法に準じた日常生活上の制限が望ましいと考えられます。

感染症の原因治療は病原体の除去ですが、現在のところアデノウイルスに直接効果のある薬はなく、患者自身の免疫の力によってウイルスは除去されます。

流行性角結膜炎の治療の目的は感染の拡大の防止と後遺症発症の予防です。

後遺症とは感染症が落ち着いてからも瞼の裏側に膜のようなものができて残ることと、黒目に濁りが残ることを指します。この黒目の濁りは数年以上に及ぶものがあり、濁りが黒目の中央付近に残ると視力に影響することがあります。

単純ヘルペスウイルスによる結膜炎は皮膚症状を伴う場合は流行性角結膜炎との鑑別は容易ですが、眼の状態だけだと鑑別は困難です。
治療法が異なるので、注意が必要です。


2)細菌性結膜炎


細菌が原因の結膜炎は細菌の種類によって症状や重症度が変わってきますが、その多くはカタル性結膜炎の形をとり、通常は抗生剤点眼による治療によく反応し重症化することはありません。

例外的に淋菌による結膜炎は激しい炎症を引き起こし、角膜穿孔をきたす可能性があるので注意が必要です。薬剤耐性菌の割合が増えているため薬剤の選択も慎重に行う必要があります。

クラミジア結膜炎はクラミジアという病原体による結膜炎で、非定型細菌といって普通の細菌とウイルスの間のような性質の病原体です。
クラミジア結膜炎は抗生剤の治療に反応しますが、従来はその生物学的特性から長期投与が必要でした。

しかし最近になって長期間効果が持続する抗生剤が登場したため、1回の投与だけでの治療が可能になり、治療に必要とされる労力が劇的に軽減されました。


3)その他の感染性結膜炎


リケッチア・真菌・寄生虫といった病原体も結膜炎の原因となり得ますが頻度は高くありません。


●アレルギーによる結膜炎


日本眼科学会のガイドラインでは、アレルギー性結膜疾患は「I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で、何らかの自他覚的症状を伴うもの」と定義されており、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎に分類されています。

アレルギーの仕組みは複雑でそのすべてに言及するのは困難ですが、ごく簡単に説明を試みると、I型アレルギーとはIgEというタイプの抗体が関与するアレルギー反応です。

ある抗原に特異的に結合するIgEが肥満細胞と呼ばれる細胞の表面に結合した状態が感作という状態です。

抗原が結膜に侵入し、結膜の表面のすぐ下に存在する感作された肥満細胞の表面のIgEに結合することにより、肥満細胞からヒスタミン等の放出やその他の反応が起こります。

ヒスタミンは結膜表面の細胞にあるヒスタミン受容体に結合することによりかゆみや他のアレルギー症状を引き起こします。
ここまでを即時型反応といいます。

即時型反応の後に炎症が遷延化し、T細胞、好酸球、好塩基球、好中球といった様々な炎症細胞が結膜下に集まり、これらの細胞間の相互作用の悪循環が起こった結果引き起こされる組織障害性の反応が慢性化した状態を増殖性変化といいます。


1)アレルギー性結膜炎


結膜に増殖性変化を伴わないアレルギー性結膜疾患のことです。
日常的に頻繁に遭遇するアレルギー性結膜疾患の多くはアレルギー性結膜炎です。

アレルギー性結膜炎は原則として深刻な組織障害を伴わないため、治療の主な目的は不快な自覚症状(主にかゆみ)を抑えることです。
季節性の抗原が原因の場合、症状は一過性でありその時期を凌ぐことができればいいと考えられますが、通年性の抗原が原因の場合には長期にわたる治療の継続が必要になる可能性があり、なるべく侵襲が少ない(長期間使用しても深刻な副作用が起こりにくい)治療を選択する必要があります。


2)春季カタル


増殖性の変化として「まぶたの裏側の大型の隆起性の病変(乳頭)」あるいは「角膜と結膜の境の隆起性の病変(トランタス斑)」を伴うアレルギー性結膜疾患のことです。

しばしば角膜への影響を伴います。角膜への影響が重症になると視力障害の原因になる可能性があります。
 参考:https://fdoc.jp/byouki-scope/disease/spring-catarrh/


3)アトピー性結膜炎


顔面にアトピー性皮膚炎を伴う患者に起こる慢性のアレルギー性結膜疾患です。
まぶたの裏側に小型の隆起性病変と結膜の下の層の肥厚、時として春季カタルのような大型の隆起性病変を伴うことがあります。


4)巨大乳頭結膜炎


コンタクトレンズ、義眼、手術用縫合糸などの機械的刺激によるまぶたの裏側の大型の隆起性の病変を伴うアレルギー性結膜疾患です。


アレルギー性結膜疾患の治療

 

・アレルゲンの検索、除去


原因治療としてまず考えることは、アレルゲン(アレルギーを引き起こしている抗原)の検索と除去です。アレルゲンのスクリーニングのために、血清中特異的IgE抗体定量(RAST、MAST)、抗体特異的ヒスタミン遊離試験、皮膚テスト(スクラッチテスト、 プリックテスト、皮内テスト)などを行います。しかし抗原となり得る物質は無数にあり、現在起こっているアレルギーの原因が何かを正確に同定することが困難な場合もあります。

アレルゲンが判明した場合、その原因物質の除去が原因治療です。

スギ花粉などの季節性アレルゲンは外出時に曝露されることが多く、外出時のマスク・フード付き眼鏡や、室内に入るときの着衣・手・顔についたアレルゲンの持ち込み防止、室内の空気清浄機の使用などが有効です。

ダニ、ハウスダスト、カビなどの通年性アレルゲンは室内で曝露されることが多く、室内環境の整備(絨毯の除去、徹底的な清掃、ダニ防止カバーの使用、十分な換気、空気清浄機の使用など)が有効です。また、アレルゲンの種類にかかわらず、人工涙液の点眼はまぶたの裏側のアレルゲンを減らすのに有効と考えられます。

しかし実際には、目に見えない空気中のアレルゲンの侵入を減らすことはできても、完全に除去するのは困難です。

巨大乳頭結膜炎では多くの場合、原因となっている異物(コンタクトレンズなど)がはっきりしているので、その除去により治療が可能ですが、コンタクトレンズや義眼などは一時的に中止することが可能でも、中止を継続することが困難な状況があり得ます。

この場合、使用を再開しても巨大乳頭結膜炎を再燃させない方法を模索することになります。


・薬物点眼療法


薬物療法はアレルゲンの種類を問わず効果が期待できますが、原因治療ではなくあくまでも症状に対する治療です。根治を目指すのではなく症状を和らげるのが目的の治療なので、必要最低限の治療で目的を達成することが要求されます。

特に通年性のアレルゲンが原因のアレルギーに対しては、治療は長期間に渡ると予想されますので、副作用のリスクのある治療を漫然と続けることを避けることが望ましいと考えられます。

第一選択は抗アレルギー薬の点眼で、ヒスタミンH1受容体拮抗薬とメディエーター遊離抑制薬に分類されます。
ヒスタミンH1受容体拮抗薬は放出されたヒスタミンの受容体への結合をブロックします。

症状を起こさせる反応のすぐ前の経路をブロックするので即効性が期待できますが、ヒスタミンを減らすわけではなく持続性がありません。

メディエーター遊離抑制薬は肥満細胞からのヒスタミン等の放出を抑制します。
効果が出るまで時間がかかりますが(1~2週間)、効果は持続的です。

抗アレルギー薬点眼のメリットは重大な副作用がないことで、両者の特性をうまく利用して症状のコントロールができれば、リスクの少ない望ましい治療法といえます。

ガイドライン上は、春季カタルを除くいずれのアレルギー性結膜疾患も、抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合はステロイド点眼の併用となっています。
増殖性変化を抗アレルギー薬点眼のみでコントロールするのは困難です。

ステロイド点眼は抗アレルギー薬点眼よりも上流のアレルギー反応を多岐にわたって抑制します。
従って効果は強力で増殖性変化に対しても効果が期待できますが、重篤な副作用の可能性があり、使用のメリット・デメリットを考慮して慎重に使用する必要があります。

春季カタルは抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合は免疫抑制薬点眼の併用となっています。
免疫抑制薬点眼は価格が高いのが欠点ですが、効果も高くステロイド点眼よりもリスクは低いので可能であればステロイド併用前に併用を考慮することが望ましいと考えられます。


・点眼以外の治療


特に春季カタルでは点眼のみでコントロール不良のことがあります。その場合、ステロイドをまぶたの裏に注射したり、まぶたの裏の乳頭を切除することを考慮します。


・舌下免疫療法


アレルギー性結膜疾患に対する従来の治療では症状を抑えることはできても根治することはできませんでした。根治というのは、アレルゲンが侵入してもアレルギー反応が起こらない体になるという事です。

近年アレルギー疾患を根治する可能性のある唯一の治療法として、舌下免疫療法が開発されました。
治療がうまくいった場合のメリットは大きいのですが、デメリットもあります。

①現時点では、スギ花粉とダニによるアレルギーのみが対象です。
②長期的な効果を維持するためには最低でも3年間の継続が必要で、治療期間中は原則として1ヶ月ごとの受診が必要で、治療したら必ず根治に至るわけではありません。
③可能性は極めて低いもののアナフィラキシーという重篤な反応を引き起こす可能性があります。

軽度な症状に対して安易にお勧めできる治療ではないですが、重症なアレルギー症状でお困りの方で興味のある方はご相談ください。


●その他の結膜炎


ドライアイに伴うもの、外傷に伴うもの、自己免疫疾患に伴うもの、遺伝子異常に伴うものなどがありますが、それぞれ原因を解明したのちに原因に対する治療を選択する必要があります。