西早稲田眼科のブログ

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西早稲田眼科のブログです。
眼のことやクリニックのことについて発信していきます。

幼い子供は自分から症状を訴えることができません。ある程度大きくなっても必ずしも自分から症状を訴えるとは限りません。そのため、周囲の大人が子供と接していて感じる顔つき・目つき・しぐさの異常が、子供の眼の病気に気付くための重要な手掛かりになります。

 

子供がかかりやすい眼病の種類

 

とある小児眼科の教科書に、小児の眼科受診者の病気の種類ごとの頻度は高い順に

①屈折・調節異常

②結膜疾患

③斜視

④眼瞼疾患

⑤弱視

との記載がありました。これをもとに子供がかかりやすい眼の病気の注意すべき症状について述べてみたいと思います。

 

①屈折・調節異常の注意すべき症状

屈折異常とはいわゆる「近視」「遠視」「乱視」のこと、眼鏡をしないと見えづらい状態の事です。見えづらいという症状は屈折異常に特異的ではありません。見えづらさの原因となりうる病気は沢山あり、子供が見えづらいと感じている事が疑われる場合、屈折異常と同時に他の病気の可能性を考慮する必要があります。

 

乳児が両眼とも見えづらい場合、「視線が合わない」「目が揺れる」「目でものを追わない」「おもちゃに反応しない」などが気付くきっかけになります。また、習慣的に「目を押している」場合には重度の視覚障害を疑う必要があります。幼児が両眼とも見えづらい場合、行動の変化としてあらわれる場合があります。

 

「いつもやっていた遊びが難しそうになる」「いつもやっていた遊びをすぐにやめてしまう」などです。また、「目を細める」,「目にすごく近づける」,「近づいて見ようとする」などが気付くきっかけになります。年長児では自分から見えにくさを訴えることができますが,訴えがない場合でも「字がノートのマス目からはみ出す」,「なぞり書きがずれる」などが気付くきっかけになります。

 

片眼だけ見えづらい場合、「片目が寄る」「両目の視線が合っていない」などが気付くきっかけになります。

 

調節とはピント合わせの機能のことです。生後すぐには調節の機能はありませんが生後 2か月頃から徐々に発達していきます。子供では調節力が不足することはまれで、多くは調節が働きすぎたり、不安定になることが問題になります。

「急に視力が低下した」「テレビなどを近くに寄ってみるようになった」「眼を細めてみるようになった」「勉強時の姿勢が非常に悪くなり、眼を極端に近づけてみるようになった」といった急激な変化は、屈折異常と同時に調節異常を疑うきっかけになります。

 

また、強い遠視がありものを見る時に多くの調節力を必要とする場合に、調節力を補おうとして視線が内側に寄ってしまう状態が調節性内斜視です。2歳前後に発症する「視線が内側に寄っている」という症状は、調節性内斜視を疑うきっかけになります。

 

②結膜疾患の注意すべき症状

結膜は白目からまぶたの裏側にかけての表面を覆う薄い膜のことです。結膜を含む前眼部(眼の前の方の部分)の病気は見た目に症状があらわれることが多く、自分から症状を訴えられない乳児であっても、特に授乳時にアイコンタクトを交わす母親が気付きやすいといえます。

 

「目ヤニが出る」「目が赤い」は結膜炎の存在を示す症状です。「目をこする」はかゆみ、「目を開けたがらない」は痛みによる症状の可能性が高く、「白目が腫れている」は目をこすった可能性が高いと考えられますが、そうではない可能性もあります。

結膜炎を治療する上で重要なのはその原因を突き止めることですが、診察する上で本人の協力が得られないことが多い子供では、十分な観察ができずこういった症状のみから原因を推測せざるを得ないことがよくあります。従ってこれらの症状についての詳細な情報は診察する上でとても役に立ちます。

 

③斜視の注意すべき症状

「両目の視線が合っていない」「目つきがおかしい」「明るい所でまぶしそうに片眼をつぶる」「物を見るときに真正面から見ず、顎を上げたり顔を回して見ている」などは斜視を疑う症状です。

斜視の検査も本人の協力が得られないと難しいので、症状についてのなるべく詳しい情報がある方が診断に有利です。「症状はいつもなのか、それともたまにみられるのか」「何をしているときに目立つのか」「内側に寄るのか,外側にはずれるのか,それとも上下にずれるのか」「見ている方向と関連するのか」「まぶたの動きや姿勢の異常はないのか」などの情報は診断の手掛かりになります。

 

斜視は弱視の原因になり得ますし、より深刻な病気の症状として起こっている可能性もあるため、疑ったら躊躇せずに眼科受診をすることを強くお勧めします。

 

④眼瞼疾患の注意すべき症状

 

眼瞼疾患は見た目に症状があらわれることが多く、乳児であっても周囲から気付かれやすく、年長児では自ら訴えことができます。

 

「まぶたにいぼができた」,「まぶたにしこりがある」といった症状は腫瘤病変であり、多くの場合麦粒腫(ものもらい)か霰粒腫かを見極める必要があります。「押して痛みがあるかどうか」が鑑別の根拠の1つになりますが、小児の場合は訴えの真偽が不明なことがあります。病変部の周囲の炎症所見の有無や膿点の有無などで総合的に判断しますが、診察が十分にできない場合、家族からの情報はとても有用です。子供の腫瘤病変が深刻な病気の症状であることは稀ですが、可能性がない訳ではありません。

 

「まぶたが下がっている」のほか,「目が細い」「眉を上げている」「顎を上げている」といった症状は眼瞼下垂を疑います。眼瞼下垂もその原因が重要で、深刻な病気が原因となっている可能性があります。

「目が大きくなってきた」という症状は眼球突出もしくは牛眼を疑いますが、いずれであっても深刻な病気として早急に精密検査が必要です。

 

⑤弱視の注意すべき症状

 

生後すぐの乳児は大人と同じようにものを見る能力はありません。ものを見る能力はピントが合った状態でものを見る機会を得ることによって発達していきます。何らかの理由でこの機会が得られないと、ものを見る能力が発達できず視力が出ないままになります。この状態が弱視です。

 

弱視の治療は原因となった「ピントが合った状態でものを見る機会を妨げたもの」を除去し、強制的にピントがあった状態でものを見る機会をつくることです。

ものを見る能力の発達には期限があり、約10歳くらいまでは治療に反応する可能性がありますが、それ以降の年齢になると発達可能な期限を越えてしまい、弱視は不治になります。

従って弱視は手遅れになる前に発見し、速やかに治療することが望ましいのですが、その症状が「見えていたものが見えなくなる」のではなく「見えていないものが見えるようにならずそのまま」なので、幼児が自ら気付き訴えることを期待するのは難しいといえます。

 

日本では眼科健診として「3歳児健診」「就学時健診」「学校健診」が義務付けられています。

よほど特殊な事情がなければ、本邦の子供が10歳まで眼科健診を受けたことがないという事態にはならない筈です。

そして「3歳児健診」「就学時健診」「小学校低学年までの学校健診」の主たる目的の一つは弱視のスクリーニングです。

健診は自身もしくは周囲の方が気付かないような病気を検出することが目的なので、「自覚症状がない」としても引っかかったら精査が必要と考えるべきです。

 

 

まとめ

子供がかかりやすい眼の病気の注意すべき症状は、以上で全てではありません。何であれ、普段から接しているご家族の方が子供の目に関して違和感を感じることがあれば、受診することが望ましいと考えます。結果として病的なことではなかったとしても、それがわかることに意味があります。そして、繰り返しになりますが、健診で引っかかったら症状のあるなしにかかわらず受診することが必要です。

 

糖尿病とは

 

 健常者の血液中のぶどう糖の濃度(血糖値)はかなり厳密にコントロールされています。

 このコントロールがうまくいかなくなり、血糖値が持続的に高くなった状態が糖尿病です。

 

 

 ヒトにとってぶどう糖は生命維持に必須であり、血糖値の低下は即生命の危機的状況を意味します。

 ぶどう糖を必要とする生物の誕生から現在までの期間の圧倒的な部分が、低血糖つまり飢餓との戦いで占められていました。

 低血糖状態に強いことは生存競争で有利な条件であり、進化の過程で低血糖値を防ぐ機構が保存されやすかったことは容易に想像できます。

 ヒトが血糖値を上げる働きをするホルモンを複数持つのはこのためかも知れません。

 

 低血糖への対応が生存ための最重要事項であったのに対し、高血糖状態が持続するような機会は生物の誕生から現在までの期間の中で圧倒的に少なく、高血糖を防ぐ機構の重要性は低かったと想像できます。

 このため進化の過程で血糖を下げる機構を複数持つことは生存にさほど有利には働かず、そのせいかヒトは血糖値を下げる働きをするホルモンをインスリンだけしか持ちませんでした。

 

 糖尿病とは、安定した食物供給が可能になった結果、これまでは必要性が高くなかった「血糖値を下げる能力」の必要性が高くなり相対的に現在の能力では不足するようになった状態、と表現すべきなのかも知れません。

 

 糖尿病は1型と2型に大別されます。

 1型糖尿病はインスリンの合成・分泌ができないことによる糖尿病です。

 インスリンを外から補充することが必須になります。

 2型糖尿病はインスリン分泌の低下、インスリンに対する体の反応の低下、カロリー摂取と消費とのバランスの悪化、などの複数の要因による糖尿病です。

 

糖尿病の合併症

 

 糖尿病合併症には,高度のインスリン作用不足によって起こる急性合併症と,長年の高血糖によって起こる慢性合併症があります。

 

急性合併症

 

 低血糖が直ちに生命を脅かす状態なのに対し、高血糖は通常であれば直ちに生命にかかわる状態ではありません。

 しかし血糖値が限度を著しく超えて高くなり、生命の危機的状況に至る場合があります。

 これが糖尿病による急性合併症で、「糖尿病ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖状態」とがあります。

 

慢性合併症

 

 糖尿病の合併症として問題となる頻度が高いのは慢性合併症です。

 長期にわたる高血糖は全身の動脈硬化性変化を緩徐に進行させ、様々な部位を障害します。

高血糖によって血管障害が引き起こされるメカニズムは複雑で、「炎症を惹起する糖化産物の増加」「血管新生や線維化を促す酵素の活性化」「抗酸化物質の減少」といった反応が互いに影響しながら進んでいき、その結果全身の血管の慢性的な炎症・瘢痕化・老廃物の沈着・老化の促進が起こり、血液成分・血管壁・血管周囲組織の変性・機能喪失が引き起こされると考えられています。

 さらに、この血管障害は代謝障害や高血圧といった血管に対して悪影響を持つ他の因子によって助長されることが分かっています。

 

 全身の血管が少しずつ傷んでいきますが、大血管が傷んだ結果引き起こされる病態を大血管症、細小血管が傷んだ結果引き起こされる病態を細小血管症と分類します。

 大血管症のうちの冠動脈障害の結果引き起こされる心筋梗塞,脳血管障害の結果引き起こされる脳梗塞・脳出血などは生命の危機的状況です。

 細小血管症としては糖尿病3大合併症と呼ばれる「腎症」「神経障害」「網膜症」が代表的なものです。

 

糖尿病腎症

 

 長期にわたる高血糖が腎臓の血管を障害した状態が糖尿病腎症です。

 

 腎臓の機能は血液中の不要な老廃物を濾し出すことです。濾し出された老廃物は尿として体外へ排泄されます。

 この老廃物を濾し出すところの血管壁は非常に薄く、血管内外の物質交換が可能なのですが、糖尿病腎症ではこの血管壁が変性してしまい物質交換ができなくなってしまいます。

 その結果、血液中の有害な老廃物は排泄されなくなり体内に蓄積します。

 腎機能の低下が進むことによる限界量を超えた有害物質の体内への蓄積は致死的であり、透析による有害な物質の除去が必要になります。

 

糖尿病神経障害

 

 長期にわたる高血糖が直接的に、もしくは細小血管障害を介した血流不足により神経細胞を障害した状態が糖尿病神経障害です。

 

 感覚神経・運動神経・自律神経のいずれも障害され得ますが、初期症状として最も多いのは感覚神経障害による感覚障害、特にパレステジーと呼ばれる足先や足裏のピリピリ感・ジンジン感で、多少の左右差はあってもほぼ両側に対称性に起こり、徐々に拡大していきます。

 

 運動神経障害による運動障害は特に足の背屈(つま先を上げる動き)が最初に障害されます。

 他の筋肉によって代償されるので初期には明らかな症状が認められにくいのですが、進行すると歩行不安定・歩行困難になります。

 

 自律神経障害に起因する症状は様々で、立ちくらみ、下痢・便秘、排尿困難・残尿、足の発汗低下、顔面・胸部の発汗促進などがあります。

 自律神経障害は初期には代償機能によって補われるので、症状がはっきり出てきたらそれはある程度進行したことを意味します。

 自律神経障害のうちの心血管系自律神経障害は無痛性心筋梗塞を引き起こし突然死の原因になります。

 

糖尿病網膜症

 

 長期にわたる高血糖が網膜の細小血管を障害し網膜を障害した状態が糖尿病網膜症です。

 

 網膜の細い血管がつまったり、血液成分が血管外に漏れやすくなったりします。血管がつまるとその先の網膜に血液が行かなくなります。

 網膜の血液不足が起こると新しい血管がつくられますが、網膜の新しい血管は血液成分が血管外に漏れやすい異常な血管になります。

 血液成分が血管外に漏れると網膜が腫れたり、本来ないはずの血液成分が眼内に混入し、眼内に膜のようなものをつくる原因になります。

 この膜は網膜にくっついて網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こします。

 この状態が糖尿病網膜症が進行した状態(増殖性糖尿病網膜症)です。

 

 網膜の虚血性変化が広範囲にわたり、新しい血管が網膜の辺縁を越えて眼球の前の方にある虹彩まで伸びてくると、眼の中の水の出口が目詰まりを起こします。

 その結果著しい高眼圧が引き起こされた状態が血管新生緑内障です。

 

 いずれも、放置すると失明に至ります。

 

糖尿病における網膜症の位置づけ

 

 糖尿病網膜症では視覚障害により種々のアクシデントの可能性が高くなり間接的には死亡率は上がりますが、網膜症がどんなに進行しても直接的に死亡原因になることはありません。

 これに対し、他の合併症は直接的に生命を脅かす可能性があります。

 今まさに糖尿病による昏睡で生命の危機という際に網膜症の有無を検討するのはナンセンスです。

 

 しかし、緊急性のない慢性期の糖尿病において、その程度を測るうえで糖尿病網膜症の状態を把握することはそれなりに重要です。

 網膜は全身の中で唯一、生体内で機能している血管を外科的侵襲なしで観察可能なところであり、血管の微細な変化を容易に把握できます。

 糖尿病は全身の血管を同時進行で障害する疾患なので、網膜症のみが単独で進行するという事はほぼあり得ません。

 つまり、眼底検査により網膜血管を観察することで全身の血管の状態を推測することができます。

 糖尿病の診断基準に網膜症の有無は含まれていて、他の合併症は含まれていないことからも、糖尿病そのものを評価する上での網膜症の重要性が伺えます。

 

 逆に血糖コントロールの状況は今後の網膜症の予後を占ううえで極めて重要です。

 網膜症の進行を抑えるためには血糖値を低く保つことが必要ですが、血糖値の急激な変動や極端な低血糖も網膜症の進行のリスクになります。

 血糖コントロールが不良の場合、なるべくゆっくりと正常に近づけていくのが理想的です。

また、高血圧・腎機能低下・脂質異常も網膜症の進行を助長することが分かっています。

 これらの治療を含め、網膜症のコントロールには内科の助力が不可欠です。

 

 慢性期の糖尿病治療における最重要事項である血糖値のコントロールは内科で行われることですが、合併症に関してはそれぞれの科でなされるべきことです。

 2型糖尿病は初期の段階で自覚症状を伴わないため、健康診断や偶然という機会がなければ発見されません。

 糖尿病診断時にはすでに糖尿病発症からかなりの時期が経っていることがあり得ます。

 糖尿病診断時には約30%がすでに糖尿病網膜症を発症していると報告されています。

 疑いを含めた糖尿病のすべてのステージで眼科での眼底検査による網膜症の有無の確認が必要と考えます。

 

 糖尿病治療において内科-眼科間の連携・情報共有は必須です。

 もし「糖尿病」もしくは「糖尿病疑い」と診断されているにもかかわらず眼科受診をしていないという事がありましたら、眼科受診を強くお勧めします。

 

治療

 

 糖尿病の治療は血糖コントロールに尽きます。

 合併症の治療は大前提として血糖コントロールが良好である必要があり、その上で合併症ごとに対応する必要があります。

 眼科領域以外の治療についてはここでは言及を控えます。

 

 糖尿病網膜症の治療については、令和2年12月に日本眼科学会からガイドラインが発表されました。

 以下にガイドラインに則って治療をまとめます。

 

 初期の糖尿病網膜症は眼科的な治療を必要としません。

 これは放置していいという意味ではなく、ガイドラインでも「最も大切なことは,糖尿病と診断されたら必ず眼科受診が必要なこと,また,高血糖および高血圧の是正などの内科的治療により網膜症発症および進展の危険が低くなることを,広く患者および内科と情報共有することである」との記載があり、内科-眼科間の連携・情報共有の重要性が強調されています。

 

 糖尿病網膜症において、網膜の真ん中の部分が腫れてしまう状態を糖尿病黄斑浮腫といい、視力低下の原因となります。

 糖尿病黄斑浮腫に対する治療は

「抗VEGF療法(眼の中に注射する)」

「レーザー」

「ステロイド療法(眼球の中もしくは眼球の後に注射する)」

「手術」

のいずれかを状態に合わせて選択します。

 

 ある程度進行した糖尿病網膜症にはレーザー治療を行います。

 糖尿病網膜症がさらに進行して網膜剥離を伴うようになったり、眼の中の出血が治まらなくなったら手術を行います。

 

 これらの治療は「既に起こったこと」への対応であり、その原因である「網膜血管の障害」を元に戻すことはできません。その結果障害された網膜を元に戻すこともできません。

 

まとめ

 

 網膜は痛みを感じないので、視覚に影響が出て初めて自覚症状が出現します。

 しかしこれでも傷みは伴わずただ見えにくくなるだけなので、人によってはこのまま放置してしまうこともありますが、視覚にに影響が出ているのであれば既にかなり進行しているということです。

 

 網膜のダメージは基本的に不可逆的です。

 視覚を司るメインの部位である神経網膜は増殖・再生をしないため、現在の医療では悪化させない以上のことは期待できません。

 従って、糖尿病網膜症は初期で見つけてそこから進ませないのが理想です。

 

 同様に糖尿病も初期には自覚症状を伴いませんが、自覚症状が出てからの対応は望ましくなく、初期の状態から進ませないことが理想です。

従って「健康診断で引っかかったけど、自覚症状がないから放置した」という行為は、明らかに間違っていると認識すべきです。

 糖尿病に対する正しい対策は、ある程度の年齢になったら自覚症状の有無に関係なく定期的に健康診断を受け、結果を蔑ろにしないことです。

 

 また、「糖尿病」の存在が「糖尿病網膜症」発見のきっかけになり得、「糖尿病網膜症」の存在が「糖尿病」発見のきっかけになり得ることから、内科-眼科間の連携は非常に重要です。

 内科で糖尿病と診断されたら通常は眼科受診を勧められると思いますが、もし勧められないということがあったとしても眼科を受診をすべきです。

 同様に、眼科受診して眼底に糖尿病網膜症を疑わせる所見があった場合、通常は内科紹介になりますが、もし紹介にならなくても内科を受診すべきです。

眼にやさしい、眼に良いという謳い文句をよく目にします。

このたびは「眼にやさしい食べ物」という観点で、できる限り科学的な根拠に基づいて理論的に解説をしていきたいと思います。

 

眼に優しい食べ物はない

まずはじめに結論から言うと、 

Q.眼にやさしい食べ物とは何か?

という問いに対し

A.それは〜です

という答えは存在しません。

 

かつての「ビタミンA欠乏」

 かつて栄養事情が劣悪であった時代にビタミンA欠乏という状態が存在していました。

暗いところですごく見えにくくなる症状でよく知られています。

ビタミンAを摂取することで症状が改善しますので、このことだけで判断すると「ビタミンA(を含有する食品)は眼にやさしい」といえなくもないです。

 

しかし、ビタミンAを摂取することはビタミンA欠乏じゃない人にとっては特に著しい効果はなく、過剰に摂取することはむしろ有害です。

 

必要最低量と上限

 あらゆるものは摂取する上で必要最低限の量と上限があります。

「食べれば食べるほどいい」「これさえ食べれば健康が維持できる」「これを食べれば病気が治る(欠乏症を除く)」というような食べ物があるわけではありません。

ここで「眼にやさしい食べ物について」というタイトルを現実に即して修正すると「現代の食生活で不足しがちなもののうち、特に眼にとって重要なものを補うのに適した食べ物について」という事になるでしょうか?

 

 2017年の調査では、日本の失明原因疾患の1位が緑内障、2位が網膜色素変性症、3位が糖尿病網膜症、4位が黄斑変性症という結果でした。これらの疾患の発症に食生活が関わっているのであればそれがこのテーマにとって最も近い解答ではないかと思います。

 

失明の原因1位の「緑内障」

 緑内障は視神経乳頭の脆弱性と比較して眼圧が相対的に高いことにより網膜内の神経繊維が消失してしまうという疾患です。

眼圧が高いとなぜ神経線維が失われるのかの正確なメカニズムは完全にはわかっていません。

 

昔からこのメカニズムに血流障害が関与しているという説があり、網膜血流量を増加させることにより緑内障の進行を抑えるトライアルがなされてきたものの、未だ臨床的に有意な効果を見いだせてはいません。

 

現時点で緑内障の進行抑制に有効であると科学的に証明されているのは眼圧を下げるという事だけで、それ以外は可能性が皆無とは言えないという程度の根拠しかありません。

緑内障の治療プロトコールは確立していて、科学的に最も有効な治療は決まっています。

しかし「治療の成果が自覚的にわかりにくい」「治療の目的が進行予防であり元に戻るわけではない」という、モチベーションの維持が困難になりがちな治療ではあります。

代替の治療が提示された結果、あくまでも補助的な治療ととらえられればいいのですが、時として実際に代替治療に多大な労力を割き、本来必要な治療を疎かにして手遅れになってしまうという事例を経験することがあります。

代替の治療が存在しなければこのような事態にはならなかったのではないだろうかと思わざるを得ず、緑内障治療において眼圧コントロール以外の「〜が効く」という情報は個人的には無意味どころか有害ではないかと思っています。

 

失明原因の2位「網膜色素変性症」

 網膜色素変性症は遺伝子上の異常により網膜が変性していく疾患です。

現在のところ網膜色素変性症には確立した治療法がありません。

将来的に可能性のある治療法として遺伝子治療、神経保護、人工網膜、網膜再生などが考えられていますが、いずれも近日中に臨床応用が期待できる段階ではありません。

 

ヘレニエンは日本では網膜色素変性症に効果があるものとして1950年代に保険収載された物質です。保険医療上の適応が認められているためこれまで広く使用されてきていますが、実際には進行抑制の効果ですら立証されてはいません。ヘレニエンはマリーゴールドの花弁に含まれており、食用もあるようです。

ビタミンA・ビタミンEは共に網膜色素変性症に対し確たる効果が証明されているわけではないですが、可能性が示唆されています。ビタミンAはレバー・バター・卵黄・うなぎなどに多く含まれ、ビタミンEはアーモンド・ヘーゼルナッツ・落花生などのナッツ類やほうれん草・モロヘイヤなどに多く含まれています。

現行の網膜色素変性症に対する治療は経過観察かこれらの投与です。従って緑内障とは異なり、代替治療に労力を割いても問題はありません。

 

失明原因の3位「糖尿病網膜症」

 糖尿病網膜症は糖尿病により引き起こされる眼合併症であり、食事はかなり直接的に影響することが分かっています。

これまでの研究では、「野菜・果物・魚、地中海食(肉より魚、果物・野菜・ナッツ・オリーブオイルが多めの食事)は糖尿病網膜症の予防に関与し、ビタミンD欠乏は糖尿病網膜症の増悪に関与する」という結果になっています。

ビタミンDは魚・キノコ類に多く含まれています。また、「総エネルギー量を適正化し、炭水化物を50〜60%、蛋白質を20%エネルギー以下とし、残りを脂質で摂取し、さらに脂質が25%エネルギー量を超える場合は多価不飽和脂肪酸を増やす」ことが推奨されています。多価不飽和脂肪酸は青魚・植物油・クルミなどに多く含まれています。

 

失明原因の4位「加齢黄斑変性」

 加齢黄斑変性は老化に基づく黄斑異常で、発症の原因は遺伝学的素因と環境因子とが複雑に絡み合っています。日本眼科学会が作成したガイドラインでは加齢黄斑変性の治療としては光線力学療法や硝子体注射といった、病院でしかできないものになりますが、「加齢黄斑変性の前駆病変」の治療としては「ライフスタイルと食生活の改善、サプリメント摂取」となっています。具体的には、抗酸化物質を多く含む食物摂取により加齢黄斑変性のリスクが軽減すること、高用量のビタミンC・ビタミンE・βカロチン・亜鉛の内服によって加齢黄斑変性の発症リスクが減少すること、ルテインの摂取が加齢黄斑変性リスクを軽減すること等が立証されています。ビタミンCは果物・野菜に、βカロチンはニンジン・ほうれん草・モロヘイヤなどに、亜鉛は牡蠣・うなぎ・レバー等に多く含まれます。他に有効である可能性があるものとしてEPA/DHA・アントシアニン・アスタキサンチンが挙げられており、それぞれ魚(あん肝・クジラ・鯖・うなぎなど)、ブルーベリー、鮭・いくら等に多く含まれます。

 

まとめ

 まとめると、眼にやさしい食事とは「適切なカロリー摂取、その内の蛋白質・脂質・炭水化物の割合を適正化し、脂質は多価不飽和脂肪酸、特にEPA/DHAを多めに取る。ビタミンA・C・D・Eを適切な量摂取する。普段の食事としてはあまり一般的ではないマリーゴールドの花弁やブルーベリーはなるべく意識して摂取する。」という感じでしょうか?

 

 繰り返しになりますが、重要なのは特定の食品にこだわることではなくそれぞれのバランスであり、これはごく一般的な「健康的な食事」と大差ありません。そしてこのような食事をすれば疾患が治るわけではなく、発症・進行を抑制するかどうかも定かではありません。それでもあえてこれらの条件を全て満たす食事をすることを目指すのであれば、過剰摂取に留意しながらサプリメントを利用することが労力の軽減につながると思います。現在眼疾患を持たない方にとっては、あまり過剰な期待をせずにこのような食事をとるように努めることは悪くないと思います。既に眼疾患を発症している方は、食事で何とかしようなどとはせず、眼科受診することを強くお勧めします。

肩こりって病気の名前なの?

「肩こり」は症状を表す言葉であり、疾患名(病気の名前)ではありません。

「肩こり」は明確な定義がなく、病因も正確には分析されていません。

一応の分類として「本態性肩こり」「症候性肩こり」「心因性肩こり」があります。

 

首の後ろから肩にかけての不快感(痛み、重い感じ、硬くなった感じ、疲労感など)を何となく「肩こり」と表現していて、そのうちの原因がより直接的なものを「本態性肩こり」、他の疾患が症状を引き起こしている場合を「症候性肩こり」、症状が心因性であるものを「心因性肩こり」と分類しています。

 

この中で「心因性肩こり」は眼とは直接的な関りはあまりないといえます。この文章では「本態性肩こりと眼の関係」「症候性肩こりと眼の関係」につき説明させていただきます。

本態性肩こり

本態性肩こりは特別な基礎疾患がなく、かつ肩こり症状の発症を説明できるわかりやすい理由がある状態のことです。

 

理由としては

  • 不良姿勢
  • 運動不足による筋力低下
  • 不適切な運動
  • 過労
  • 寒冷
  • ストレス
  • 加齢

などが挙げられます。

本態性肩こりと眼疾患の関連性

本態性肩こりはその定義上からも眼疾患とは直接的な関連はありません。

 

しかし、たまたま一つの原因が肩こりと眼症状の両方を引き起こすことはあり得ますし、共通の原因で引き起こされた独立した2つの事象を関連性があるとしてとらえてしまうことはごく自然なことではあります。

 

リモートワークで急増している症状

これに該当する最もありがちな状況は、VDT(PCディスプレイなどのデジタルデバイス画面を見る仕事)による長時間にわたる過度の前傾姿勢の結果引き起こされる「本態性肩こり」と「調節性眼精疲労」です。

 

長時間にわたる過度の前傾姿勢は重い頭部を支えるために僧帽筋を始めとする頭部を支える筋肉の過度の緊張を強いることになり、その結果として肩こり症状を惹起します。と同時に目から見ようとするもの(想定としてはPCディスプレイ)までの距離が短くなり、ピント合わせの筋肉(毛様筋)の過度の緊張を強いることになり、その結果として眼精疲労を惹起します。

 

眼精疲労対策

この場合の自宅でできる対策は

VDT作業時の姿勢を正すこと

です。

 

 ついでに本態性肩こりの対処法は、原因ごとに

  • 適度な運動
  • 休息
  • 保温
  • ストレス除去
  • 抗加齢

などが挙げられます。

症候性肩こり

一般的な本態性肩こりの対処法を試しても症状の改善が認められない場合に、症候性肩こりを疑います。

 

症候性肩こりの原因

症候性肩こりの原因となる疾患は

  • 整形外科疾患
  • 内科・外科疾患
  • 眼科疾患
  • 耳鼻咽喉科疾患
  • 婦人科疾患
  • 歯科疾患
  • その他

と多岐にわたり、当然原因毎に対処は異なります。

 

「眼科疾患」として挙げられているのは

  • 視力障害
  • 緑内障
  • 眼精疲労

です。

要するに原因が明確ではない肩こり症状がある場合、その原因が「視力障害」「緑内障」「眼精疲労」である可能性がある、という事です。この中で、まず「眼精疲労」について言及します。

 

症候性肩こりと眼精疲労

眼精疲労は本態性肩こりでも言及されていますが、本態性肩こりにおける眼精疲労はたまたま同じ原因で異なる2つの病態が引き起こされている状態です。

これに対し、症候性肩こりにおける「眼精疲労による肩こり」は眼精疲労が原因で、肩こりが結果という状態です。

 

この2つの何が違うかというと、前者の場合は症状を軽減させるために上記の対処法が有効と考えられますが、後者ではたまたま原因となる疾患が上記の対処法で軽減する物でなければ無効であることです。

 

仮に肩こり症状が「眼精疲労による症候性肩こり」であるとわかっているならば、その対処法は

  • なるべく遠くを見る機会を増やす
  • 近視の場合、近くを見るときの矯正の度数を落とす
  • 近視であり裸眼で近くを見る作業が可能な場合は裸眼でやる
  • 裸眼もしくはコンタクト装用で近くを見る作業をしている場合、老眼鏡を使用する

等が考えられます。

 

要するに、ピント合わせの機能を司る筋肉の負担を減らすことによって症状の改善が見込めます。

但し、この症状が「眼精疲労による症候性肩こり」であるかどうかを明確にする検査はありません。

「眼精疲労の治療をした結果肩こり症状が改善した」という事が確認できてはじめてこの症状が「眼精疲労による症候性肩こり」であったといえます。

 

 「眼精疲労による症候性肩こり」の発症機序として自律神経系の関与が考察されています。

「毛様筋が緊張している状態は副交感神経が優位の状態であり、この状態が持続すると末梢の血流を低下させ、肩こりを発症させると考えられる」とのことです。

この説明は私的には理解しがたい部分もありますが、これが真実であるならばこの肩こりは「眼精疲労による症候性肩こり」ではなく「自律神経失調による症候性肩こり」と考えるべきものであり、肩こりの治療としては眼精疲労よりも「自律神経失調」もしくは「末梢の血流低下」をターゲットにする方がより直接的である可能性があります。

 

自宅でできる対策への過度な期待

タイトルが「自宅でできる対策」であるので恐縮ですが、実際には自宅でできる対策は限られていると考えた方がいいです。

こういうタイトルの文章が及ぼす影響として最も避けなくてはいけないのは、この対策に過剰な期待をして徒に時間を費やした結果、速やかに適切な治療をしていれば治った疾患が手遅れの状態になってしまう事態です。

 

「視力障害による症候性肩こり」「緑内障による症候性肩こり」が一般的かどうかはわかりません。

しかしもし「視力障害」「緑内障」の可能性があるのであれば、眼科医としてはいずれも放置していい状態とは考えられません。

肩こり症状があって通常の対策で解決しない場合、まず整形外科の受診を考えると思いますが、結果充分な症状の改善が得られなかった場合には可能な限り眼科も受診し「視力障害」「緑内障」の有無をチェックすべきでしょう。

リモートワークとは?

もうみなさん聴き慣れている言葉だと思いますが、リモートワークとは、対人での仕事はできる限りデジタルデバイスなどを介して行う勤務形態です。

近年、新型コロナウイルスの予防措置として、不必要な対人接触を避けることを目的として急速に普及しました。

 

単独で可能な仕事は会社以外の場所で行い、一般的に、従来の勤務形態と比較するとパソコンなどのディスプレイを見る作業(VDT)の時間が長くなります。

 

リモートワーク導入による眼の疲れが急増

概して、リモートワークによる眼の疲れとは、パソコンなどのVDT時間の延長により起きているケースがほとんどです。

VDTによる眼精疲労は「眼精疲労」の項で言及していますので、以下にそのまま引用します。

ドライアイの症状を眼精疲労と感じる事は非常によくあります。

そもそも「疲れている」「乾いている」という感覚を言葉で説明することは困難です。

眼が疲れるであろうと考えられる状況下で決まって生じる不快感を「疲れ」として認識してしまうのはごく当たり前に起こり得ることです。

この混同を生じさせる最もポピュラーな状況がVDT作業機会の増加です。VDT作業は近業なので調節性眼精疲労の原因になり得ますし、まばたきの回数が減るのでドライアイの原因にもなり得ます。

習慣的に長時間のVDT作業に携わる方が眼の疲労感を自覚している場合、その症状の真の原因は調節性眼精疲労、ドライアイ、その他、の可能性があります。

調節性眼精疲労とは異なり、ドライアイの重症度はある程度客観的に評価することが可能です。

ドライアイの検査で客観的な異常を認めた場合、自覚症状の主原因はドライアイによるものの可能性が高いと考えられます。

ドライアイの検査で異常を認めなかった場合、屈折の状態から調節性眼精疲労を否定できなければ、自覚症状の主原因は調節性眼精疲労の可能性が高いと考えられます。いずれにも該当しなければ、その他の原因を検討します。

上述の通り、VDT時間の延長による眼の疲れの原因は、ほぼ調節性眼精疲労もしくはドライアイによるものです。

 

この項では、「せっかくリモートで仕事しているのに眼科受診のために外出するのは抵抗がある」という方のために、受診せずにできる解決策を検討してみます。

 

 

眼科医監修!リモートワークによる眼の疲れ対策

VDTが原因であればVDT作業を控えることで症状の改善が期待できます。しかし、それが容易に許される方は多くはないと思います。VDT作業を継続しながら解決するためには、更に詳細な原因を特定する必要があります。VDT作業を控えることなく自宅でできる調節性眼精疲労・ドライアイの検査方法を考えてみました。

 

①調節性眼精疲労対策!定期的に遠くを見る

調節性眼精疲労はピントを近くに持ってくるために働く筋肉がの緊張が限界を超えることにより起こります。

従ってこの筋肉をなるべく使わなければ症状が軽減することが期待できます。

自宅でできる簡単な方法は、今までよりも遠くを見る機会を意識して増やすことです。VDTを控える必要はありませんが、合間の休憩時間などがあったら意識して遠くを見るように心がけて1〜2週間程度過ごしてみて下さい。もし少しでも症状の改善が見られたら、主な原因が調節性眼精疲労だったという事になります。

 

②ドライアイ対策!特別な成分が入っていない目薬の使用

ドライアイは分類や条件や症状が多岐にわたるため、その細部を考慮すると複雑になりますが、結局のところ眼表面に存在する水分量が足りていないことを指します。

従って方法を問わず、眼表面に存在する水分量を増加させれば、ドライアイに起因する自覚症状はある程度の改善が見込めます。

そこで、市販の点眼薬でなるべく特別な薬効成分や他の余計なものが入っていないもの(人工涙液)を頻回に点眼することを試してみて下さい。

人工涙液は少なくとも点眼した直後は眼表面の水分量を増加させますので、持続性はないものの一過性には症状の改善が見込めます。

持続性をカバーするためには回数を増やすことが有効ですので、可能であれば起きている間1時間ごとくらいの頻度で点眼し、1〜2週間程度過ごしてみて下さい。

もし少しでも症状の改善が見られたら、主な原因がドライアイだったという事になります。

 

原因がわかったら、できる範囲で対処することを考えます。

 調節性眼精疲労で、遠くのものを見ることを心掛けるだけである程度症状が改善するものの、それだけでは効果が不十分な場合のために、さらなる上乗せを考えてみます。

 

③眼鏡をかけていない方!老眼鏡を使用

普段眼鏡ではない方は、100円ショップで購入できる老眼鏡(+1.0D)をVDTの際に使用することをお勧めします。

コンタクトレンズ装用の上からでも構いません。

1.0D(ジオプター)分の筋肉の緊張を節約できますので、確実に楽になることが期待できます。

但し、普段から低矯正(近視を残した状態)でVDT作業をされている方の場合は、ディスプレイに近づかないと見えにくくなってしまいむしろ疲労を増加させてしまう可能性があります。

普段は眼鏡を装用してVDT作業をされている方は、もし近視が軽度で裸眼でも作業が可能であれば裸眼での作業をお勧めします。遠視の方や、強い近視で眼鏡を外すとディスプレイが見えにくくなってしまうような方は該当しません。

 

まとめ

リモートワークによる眼の疲れに対し、眼科受診せずにできる対処を考えてみました。原因に関しては、調節性眼精疲労とドライアイのどちらかのみという事はまれで、多くの場合関与の程度に差があるだけで両者ともあわせもっていますから、どちらにより重点を置くべきかという点で参考にしていただければと思います。

また、これらのことをしても効果が十分ではないこともありますし、全く効果がない場合は調節性眼精疲労・ドライアイ以外の原因によるものである可能性も考えられます。その場合は、重篤な疾患が原因である可能性と外出・受診による感染リスクとを天秤にかけた上で、受診するかどうかを自分自身で選択する必要があります。

眼精疲労とは


眼精疲労は「眼を使用したことに伴って疲れという感覚が生じた状態」を意味する言葉であり、疾患や病気の名前ではありません。
客観的な「疲労」と自覚的な「疲労感」は必ずしも一致せず、疲労のない疲労感や疲労感のない疲労も存在します。

臨床上問題となるのは“自覚的な「疲労感」”であり、眼精疲労を治療するにあたっては「本当の原因が疲労かどうか」は関係ありません。
治療の目的は、「疲労感」を軽減させることです。

従って、治療する上で最も重要な点はその「疲労感」を引き起こしている真の原因が何かをつきとめることです。

 

眼精疲労の種類

 

眼精疲労の種類は教科書的には以下の5種類に分類されます。

 

1)調節性眼精疲労

ピント合わせの筋肉を過度に使用することによる疲れです。

 

2)筋性眼精疲労


眼球を動かす筋肉を過度に使用することによる疲れです。

 

3)症候性眼精疲労

 

何らかの眼疾患による自覚的な不快感を「疲労感」と感じることです。

 

4)不等像性眼精疲労

 

左右の眼から入力される像の大きさに差がある状態を「不等像視」といいます。
不等像視があると,両眼で物を見ようとしても大きさが揃わないので二重に見えてしまいます。これを修正しようとする努力のための疲れです。

 

5)神経性眼精疲労

 

眼以外の身体的もしくは精神的異常に伴う症状を「眼の疲労感」と感じることです。

 

眼精疲労の検査

 

「眼の疲労感」を訴えとして来院された方に対しては、1)4)のために屈折、視力及び調節検査を、2)のために眼位及び眼球運動検査を、3)のために一般的な眼科的検査を行う必要があります。そのすべてで異常がなかった場合に5)を考慮します。

 頻度の高い眼精疲労
日常診療における頻度という観点からは、1) 調節性眼精疲労によるもの、および3) 症候性眼精疲労のうちのドライアイによるもの、が大多数を占めます。

 

調節性眼精疲労について

 

調節性眼精疲労が一般的にイメージし易い「眼精疲労」です。
人間のピント合わせの機能(調節)は、遠くに合っているピントを近くに持ってきます。
水晶体という眼の中のレンズが伸び縮みすることによって、この機能を発揮しています。
水晶体の伸び縮みのために働いている筋肉が毛様筋であり、この筋が収縮するとピントが近くに移動します。

この能力は若いころは過剰にあり、その能力の一部を使うだけで遠くに合っているピントを手元まで近づけることが可能です。
このため、若いころは長時間近くを見ていても容易には疲れません。
しかし、この能力は加齢とともに衰えていきます。
ある程度の年齢になると、残っている能力に対して必要な能力の占める割合が大きくなり、以前は平気だった負荷が苦痛に感じられるようになります。
これが調節性眼精疲労です。

調節性眼精疲労による苦痛の程度を可視化できるマーカーはないので、その診断には「調節性眼精疲労として矛盾しない状況である」ことを確認した上で「調節性眼精疲労を軽減させること」をした結果として「自覚的な疲労感が軽減すること」を確認する必要があります。

「調節性眼精疲労を軽減させること」とは、毛様筋をなるべく緊張しない状態にすることであり、手軽な方法として「遠くを見る機会を増やすこと」があります。
毛様筋は近くを見るときに緊張するので、遠くを見る機会を増やすことにより毛様筋が弛緩した状態をなるべく増やすことになり、毛様筋を休ませることになります。
生活上遠くを見る機会を増やすことが困難な場合には、「眼鏡の調整をして現状よりも近くにピントを合わせる」或いは「毛様筋を強制的に麻痺させる点眼薬を使用する」といった方法があります。

これでしばらく過ごしていただき、その結果自覚的な疲労感の軽減が得られたら調節性眼精疲労であると診断できます。

治療は「眼精疲労による苦痛の程度」と「これを緩和させるために払う労力」とのバランスの問題になります。
調節性眼精疲労は、理論上は毛様筋を一切緊張させなければ起こりません。
但し、一切緊張させないためにはそれなりの労力を払う必要があります。
また、調節性眼精疲労を放置して症状が悪化したとしても、失明するような重大な機能障害を引き起こす原因にはなりません。
どこまでの労力が無理なく払えて、どこまでの苦痛が許容範囲なのかは、その人毎の価値観や環境、忍耐力等によって変わりますので、医療者側が勝手に決めつけるのではなく、自分自身にとっての最善なバランスを探る必要があります。

 

症候性眼精疲労の原因としてのドライアイについて

 

ドライアイの症状を眼精疲労と感じる事は非常によくあります。
そもそも「疲れている」「乾いている」という感覚を言葉で説明することは困難です。眼が疲れるであろうと考えられる状況下で決まって生じる不快感を「疲れ」として認識してしまうのはごく当たり前に起こり得ることです。

この混同を生じさせる最もポピュラーな状況がVDT作業(パソコン等のディスプレイを見る作業)機会の増加です。
VDT作業は近業なので調節性眼精疲労の原因になり得ますし、まばたきの回数が減るのでドライアイの原因にもなり得ます。
習慣的に長時間のVDT作業に携わる方が眼の疲労感を自覚している場合、その症状の真の原因は調節性眼精疲労、ドライアイ、その他、の可能性があります。

調節性眼精疲労とは異なり、ドライアイの重症度はある程度客観的に評価することが可能です。
ドライアイの検査で客観的な異常を認めた場合、自覚症状の主原因はドライアイによるものの可能性が高いと考えられます。
ドライアイの検査で異常を認めなかった場合、屈折の状態から調節性眼精疲労を否定できなければ、自覚症状の主原因は調節性眼精疲労の可能性が高いと考えられます。
いずれにも該当しなければ、その他の原因を検討します。

調節性眼精疲労の診断・治療については前述の通りです。ドライアイの診断・治療については他稿にゆずります。

 

よくある眼精疲労についての誤解と治療上の困難

 

眼精疲労を主訴に眼科を受診し、「眼の酷使を控えましょう」「眼を休ませましょう」といった指導をされることがあるようです。

眼精疲労の原因は一つではなく、それぞれにおいて対処法は異なります。
従って「眼を休ませる」とは具体的にどうすることなのかの説明がないと何が適切な方法なのかがわかりません。
そして少なくない割合で、眼を休めることは「物を見ずに目を閉じている」ことだと考えてしまう方がいるようです。

例えば調節性眼精疲労の場合、疲れるのは毛様筋です。
毛様筋の機能は「ピント合わせ」であり「見ること(視覚情報を獲得すること)」ではありません。
「見ること」のために機能しているのは主に網膜です。
網膜は痛覚がないので、仮に網膜を過剰に使ったとしても網膜由来の不快感は生じ難いといえます。
とすると「見ること」に伴って生じた「不快感」は、「見ることに付随する行為」により生じた可能性が高いと考えられます。
従ってこの「不快感」を軽減させる方法は「見ること」をひかえることではなく、その真の原因である「付随する行為」に対応することです。
調節性眼精疲労の場合、毛様筋の緊張が「不快感」の原因であり、網膜の電気的な興奮とは直接的な関係はありません。
従って、例えば適切な眼鏡矯正により調節を使わなくても見たいところにピントが合うようにすると、理論上は長時間眼を使っても毛様筋由来の「不快感」が生じないことになります。

但し、疲労感はあくまでも自覚的なものであり、どうしても気持ちに影響される部分があることは否めません。
理論に則って検査・診断・治療しても自覚的には明らかな効果がなかった方に眼精疲労用点眼を使用してもらったら症状が軽減した、といったようなことはよくあります。
治療の目的が自覚的な苦痛の軽減であり、科学的な妥当性よりも自覚的な効果が優先されますので、この場合はこれでいいことになります。

現在の眼精疲労のコントロールに満足であればそれでいいのですが、もし例えば「眼精疲労用点眼を処方されて使ってみたもののあまり効果を感じられなかった」、あるいは「現行の眼精疲労治療のために払う労力が大きすぎると感じている」、などという事がありましたらご相談いただければ、より効果的な治療のご提案ができるかもしれません。
 

花粉症とは?

花粉症とは、ひとことで表すと花粉が引き起こすアレルギーのことです。

目に関しては、花粉が抗原となって起こる”アレルギー性結膜炎”を指します。

 

花粉によるアレルギー性結膜炎では、空気中の花粉がたまたま目に入り結膜上に付着し、花粉を特異的に認識するIgEという免疫グロブリンの一種が花粉に結合し、そのIgEが結膜下の肥満細胞の表面に結合することにより肥満細胞からのヒスタミンの放出といった反応が起こります。

ヒスタミンが結膜表面の細胞にあるヒスタミン受容体に結合するとかゆみが起こります。

通常のアレルギー性結膜炎は原則として深刻な組織障害を伴わないため、治療の主な目的は不快な自覚症状(主にかゆみ)を抑えることです。花粉(季節性の抗原)が原因の場合、症状は一過性でありその時期をしのぐことができればいいのですが、通常は一定期間(花粉が存在する間)症状が続くのでなるべく長期間行っても深刻な副作用が起こりにくい治療が望ましいといえます。

 

花粉症の治療は?
 

①私生活で花粉症対策を行い、症状を和らげる方法

 

治療としてまず考えることは、アレルギーを引き起こしている抗原の除去です。

完全な除去は難しいですが、下記のような工夫で目に見えない空気中の花粉の侵入を減らすことができます。

 

花粉は外出時に曝露されることが多く、

✔︎外出時のマスク

✔︎フード付き眼鏡や

✔︎室内に入るときの着衣・手・顔についた花粉の持ち込み防止

✔︎室内の空気清浄機の使用

などが有効です。

 

人工涙液の点眼はまぶたの裏側の花粉を減らすのに有効と考えられます。

逆にコンタクトレンズの装用は花粉を長時間眼表面に留まらせる要因になります。

 

②薬物療法

 

前提として、薬物療法は原因治療ではなく、あくまでも症状に対する治療です。

根治を目指すのではなく、症状を和らげるのが目的の治療なので、必要最低限の治療で目的を達成することが要求されます。

 

副作用のリスクのある治療を漫然と続けることは望ましくありません。

 

③抗アレルギー薬の点眼

 

花粉症に対する抗アレルギー薬の点眼は、「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」と「メディエーター遊離抑制薬」に分類されます。

 

−ヒスタミンH1受容体拮抗薬

 

放出されたヒスタミンの受容体への結合をブロックします。

症状を起こさせる反応のすぐ前の経路をブロックするので即効性が期待できますが、ヒスタミンを減らすわけではなく持続性がありません。

 

−メディエーター遊離抑制薬

 

肥満細胞からのヒスタミン等の放出を抑制します。

効果が出るまで時間がかかりますが(1~2週間)、効果は持続的です。

 

抗アレルギー薬点眼のメリットは重大な副作用がないことで、両者の特性をうまく利用して症状のコントロールができれば、リスクの少ない望ましい治療法といえます。

 

日本眼科学会によるアレルギー治療のガイドラインの上では、抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合はステロイド点眼の併用となっています。

ステロイド点眼は抗アレルギー薬点眼よりも上流のアレルギー反応を多岐にわたって抑制します。

効果は強力ですが、重篤な副作用の可能性があり、使用のメリット・デメリットを考慮して慎重に使用する必要があります。


 
舌下免疫療法では、花粉症根治の可能性が


アレルギー性結膜疾患に対する従来の治療では症状を抑えることはできても根治することはできませんでした。

根治というのは、「アレルゲンが侵入してもアレルギー反応が起こらない体になる」という事です。

 

近年アレルギー疾患を根治する可能性のある唯一の治療法として、舌下免疫療法が開発されました。ス

ギ花粉が原因の花粉症は根治の可能性がある治療法ですが、長期的な効果を維持するためには最低でも3年間の継続が必要で、治療期間中は原則として1ヶ月ごとの受診が必要で、治療したら必ず根治に至るわけではありません。

また、可能性は極めて低いもののアナフィラキシーという重篤な反応を引き起こす可能性があります。

軽い症状の方に対して安易にお勧めできる治療ではないですが、重い花粉症でお困りの方で興味のある方はご相談ください。

緑内障とはどんな病気?


人間の眼球の後ろ側の内張り部分を「網膜」といいます。
網膜はものを見るときに非常に大事な役割を果たす部分です。


網膜の奥の層には「視細胞」という光を感じ取る細胞が全面に存在しており、視細胞で感じ取った光の情報は、神経の線維を通って脳に伝わっていきます。


この神経の線維は網膜の表面に近い層を通って、「視神経乳頭」というところに集まって束になり、眼球の外に出ていきます。
眼球の外に出た神経線維の束が「視神経」です。


視神経は脳につながっていて、視細胞由来の光の情報は視神経を介して脳に伝わります。
 

緑内障とは、この光の情報を伝えている神経の線維が、部分的に抜けていくことを指します。
 

緑内障による症状、形の変化と機能の変化
 

緑内障が進行することによって起こる「眼の形の変化」として、神経の線維が抜けた部分の網膜が薄くなり、視神経乳頭のへこみが大きくなることが挙げられます。


「眼の機能の変化」としては、神経の線維が抜けた部分に相当する視野が欠けます。
網膜は痛みを感じない場所なので、神経の線維が抜けることに伴って痛みを感じたりすることはありません。


緑内障の気付きにくい“初期症状”


通常の緑内障の初期の視野変化は、真ん中ではなく端の方から現れます。
その為、初期の症状に自分で気付くことは非常に困難です。
気付かぬうちに症状が悪化してしまっていた、ということが多くあります。


緑内障になる原因は?


緑内障になる原因は、そのすべてのメカニズムがはっきりわかっている訳ではありません。
「眼圧が高いほど緑内障が起こりやすく進行が速くなり、低いほど進行が遅くなる」という事ははっきりわかっています。


眼圧とは、眼球を中から外に押す力のことです。
日本人の眼圧の平均は14mmHgくらいですが、これより低いから緑内障にならない、ということではありません。

眼球を中から外に押されることによって、神経線維の眼球外への出口である「視神経乳頭」が傷んでいくと考えられます。
しかしこの視神経乳頭の丈夫さには個人差があり、眼圧が平均よりかなり高くても緑内障にならない人もいれば、平均よりかなり低くても緑内障が進んでしまう人もいます。


つまり、一概には言えません。
あくまで上記のような傾向があるということになります。
 

眼圧が高くないにも関わらず、緑内障になってしまう人の割合には人種差があります。
日本人はこの割合が高い、要するに人種的に視神経乳頭があまり丈夫ではない傾向があると考えられます。


緑内障の治療法


緑内障の治療では、主に眼圧を下げることをしていきます。
ただし、現在のところ抜けてしまった神経線維を元に戻す方法はありません。
すでに失われた神経線維をもとに戻すことではなく、これ以上症状が進まないようにすることが目標です。


治療法では、「眼圧を下げること」以外に科学的に効果が証明されている方法は今のところありません。
さらに、前述の通り視神経乳頭の丈夫さには個人差があるため、進行が止まる眼圧も個人ごとに違っています。


視神経乳頭の丈夫さを直接測定する方法はないので、どこまで眼圧を下げればいいかは、治療をしていかなければわかりません。
さらに、眼圧は変動するので、受診時に測定した眼圧がずっと保たれているわけではなく、実際の平均眼圧はそれより高いことも低いこともあり得ます。


そしてさらに複雑なことに、この緑内障の進行に直接関与する「眼球を中から外に押す力(眼内圧)」を直接測定することは困難です。
実際の日常診療では「眼球に外から力を加えたときの変形しやすさ」を測定して眼圧としています。


眼球の変形しやすさは、眼内圧や眼球壁の硬さに影響されます。
つまり、同じ人の測定値の高い低いはその人の眼内圧の上昇下降を表していると考えられますが、眼球壁の硬さが異なる他人との眼圧測定値の比較は眼内圧を比較していることにはなっていません。
眼圧の値だけで比較することが出来ない、ということです。


したがって緑内障の実際の治療は、数値として眼圧をここまで下げるということよりも、実際に視野欠損の進行が進まなくなるまで下げるということが本質的であるといえます。


日本眼科学会のガイドラインでは目標眼圧の設定がありますが、あくまでも目安ととらえた方が理屈にかなっていると思われます。


眼圧を下げる方法


眼圧を下げる方法としてまず最初に試みることは点眼(目薬)です。
症例によって様々なバリエーションがありますので例外はありますが、通常は緑内障の視野変化が確認され進行していると判断したら、まず1種類の点眼を使っていきます。
その点眼により、本当に眼圧が下がっているかを確かめます。


そしてある程度期間をとって視野検査をして、以前の視野検査の結果と比較します。
進行していなければこの眼圧で進行しないと判断して点眼を継続します。


進行していたらまだ眼圧が下げたりないことになりますので、さらに点眼を追加します。
上記を症状が進行しなくなるまで繰り返します。
 

眼圧を下げる点眼の種類には限りがありますので、全ての点眼を使用しても進行を止められない場合に、さらに眼圧を下げるために手術やそれに準ずる処置を考慮します。


緑内障の手術とは?


緑内障の手術は治す手術ではなく眼圧を下げる手術です。
手術は侵襲を伴うものであるため、従来はできれば避けたい、投薬だけではどうしてもだめな場合の「やむを得ないもの」という位置づけでした。


近年、より低侵襲な緑内障手術がいくつも開発され、現在フルメディケーションに至る前に導入することのメリット、デメリットが検討されているところです。


緑内障治療は効果実感がしにくい


緑内障の治療の難しい点は、実感にほぼ反映されないところにあると思います。
初期の緑内障は自覚症状を供わないため、まずそもそも自分が緑内障であることを実感できません。
初期の間の視野進行も実感できません。


従って、進行が停止したことも、点眼して眼圧が下がったことも実感できません。
しかし点眼による副作用は実感できます。


メリットが実感できないことに対して定期的に点眼を続けたり通院を続けることは苦痛を伴います。
しかし実感できるまで症状が進行したら、その症状を治すことができないのが緑内障の恐ろしいところです。


定期的な検査が最も大切


緑内障を初期に発見するためには、自覚症状が全くなくても定期的に検査する以外に方法はありません。
日本人の場合、40歳以上の方の5%が緑内障であることが分かっています。

それより若い方の発症はないわけではないですが、とても珍しいです。
一つの目安として、40歳以上の方で1年以上眼科健診を受けていない方は自覚症状の有無は関係なく健診もしくは眼科受診をした方がいいと思います。

はじめに、みなさまに伝えたいこと


結膜炎という言葉はそのままで、結膜の炎症を意味します。

誤解をされている方が少なくないようなのでまずお伝えしたいのですが、「結膜炎」は非常に広い範囲の疾患を含む総称のような言葉ですので、診断名としてはほとんど意味がありません。

オーバーに表現すれば「あなたは病気」と言っているのと大差ありません。

結膜炎は多種多様の原因で起こり、原因によって治療法も異なります。

充血と目ヤニという症状があればそれはほぼ結膜炎であり、あまり疑問の余地はありません。眼科医に求められているのはこの結膜の炎症が何によって引き起こされているのかを診察により見当をつけて、過不足のない治療を行うことです。

診察の初めに症状をうかがうのですが、「今日はどうされましたか?」というこちらからの質問に対し、「結膜炎です。」「結膜炎だと思います。」といったお返事が返ってくることがあります。

このような答えは結膜炎の原因を追究するためには意味がないものとなっております。
このような場合、具体的な症状について再度お尋ねすることになりますが、ごくまれにご立腹される方がいらっしゃいます。

問診は候補として考えられる疾患を絞って無駄な検査を省くことにつながりますし、特に結膜炎の場合には非常にうつり易いものが含まれていますので、これを否定しないとその後の検査が著しく制限されます。

快くご協力いただけると患者さまの無駄な労力を省くことができます。

一番問題なのは眼科医の中にかなり単純な診療を行っている人が少なからず存在することです。

典型的なパターンは、

「前医で結膜炎の診断のもと抗生剤とステロイドの点眼を処方されて使っているけど治らない。」

というもので、「結膜炎の原因は何といわれましたか?」と尋ねると「何も言われていない」というお返事を頂きます。

この場合、本当は前医で適切な説明がされているにもかかわらず聞いていなかったとか忘れてしまったという可能性もありますのでこれだけで一方的に判断はできませんが、もし眼科を受診して「結膜炎」と診断されてそれ以上の説明はされず抗生剤とステロイドの点眼を処方された、というようなことがあった場合には、診療内容に疑いを持ってもよいのではないかと思います。


結膜炎はどんな病気?


「結膜」とは眼球の白目(強膜)から瞼の裏側にかけての表面を覆う薄い膜を指します。
※眼の表面、粘膜のうちの黒目(角膜)以外の部分です

その結膜が組織破壊を受けた時、その破壊に対して組織を修復するための生体の反応が「炎症」です。


結膜炎の症状と治療について


結膜炎は様々な原因で起こり、結果として多種多様な状況を引き起こします。

結膜炎に対する治療の本来の目的は症状を緩和させることではなく、炎症の原因を解消することです。
※根治的な治療が困難で、苦痛を和らげることを目的とした治療を選択せざるを得ないということもあります


原因治療が必要な理由


原因治療とは炎症の原因を解明し、可能な限りその原因を解消することです。

例えば、結膜炎の典型的な症状である充血(血管が拡張した状態)についてですが、市販薬にも効能として「充血」をうたっている目薬が存在します。
塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリンといった成分を含有するものです。

これらの成分は血管収縮剤であり、充血の原因が何であれ効果を発揮します。
しかし原因を解消したわけではないので効果が無くなると再度充血し、リバウンドのためむしろ悪化することもあります。

これを改善させるためにまた同じ点眼を使い続けると、血管が拡張したまま戻らなくなることがあります。
短期的には見かけ上の充血を改善させますが、本来の病気の症状をマスクしているだけなので、実は「治っていない・悪化している」という可能性もあります。

つまり、血管収縮剤の点眼の効果は完全に対症的であることを念頭において使用する必要があるということです。

もう一つの結膜炎の典型的な症状である目ヤニに対して、盲目的に抗生剤の点眼を使用していることがよくあります。
しかし目ヤニの原因は感染症だけではないため、全く意味のない投薬になっている可能性があります。

抗生剤の無意味な長期投与や乱用は、耐性菌の発生の原因となり得るので極力控えるのが望ましいとされています。
目ヤニは様々な原因で生じ、原因によって性状が変化します。

やみくもに目ヤニの量を減らすことを目指すのではなく、目ヤニの性状を参考にした上でその原因を解明することが重要です。

対症療法は、短期的な成果のみを追求した場合、原因治療よりも優れた効果を発揮することは多々あります。結膜炎では、対症療法のみで実際に解決してしまうことがほとんどかも知れません。しかし原因が解決していなければまた同様の症状を繰り返す可能性があり、中には初期に適切な治療をしなかった結果として重篤な状態を引き起こしてしまうかもしれません。結膜炎に限らずあらゆる疾患の治療は、可能な限り原因治療を目指すことが理想です。


結膜炎の種類

 

結膜炎はその原因から、「感染によるもの」「アレルギーによるもの」「その他」に分けられます。


●感染による結膜炎


感染性結膜炎は病原体による感染が原因の結膜炎です。
病原体の種類は「ウイルス」「細菌」「その他」に分けられます。


1)ウイルス性結膜炎


結膜炎と思しき症状の訴えがあった場合、まず最初に「はやりめかそうではないか」を考えます。

「はやりめ」は非常に感染し易い結膜炎の総称で、その代表的なものがアデノウイルスが原因の流行性角結膜炎です。

流行性角結膜炎は医療従事者の手指や検査器具などを介して感染し得るので、感染者の検査を通常通りにしてしまうと、その後に検査を受ける方に感染してしまう可能性があります。

そのため、流行性角結膜炎の診断がついた場合はその時点でよほど重症な他の疾患の合併を疑わない限り、検査を終了しなくてはなりません。

高度な結膜の炎症所見、もしくは周囲に同様症状の人がいる場合に流行性角結膜炎を疑い、特徴的な所見のうちのいくつかを認め、明確に否定できる理由がない場合に診断されます。

臨床で用いられているアデノウイルス抗原検査は特異度が高く、結果が陽性の場合は流行性角結膜炎と診断できますが、感度がそこまで高くないので結果が陰性の場合は流行性角結膜炎を否定できません。

感染の拡大防止を第一義とするならば、否定できない限り流行性角結膜炎として扱わざるを得ません。
結果として流行性角結膜炎ではない方が含まれることになります。

法律上は学生に関しては「学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」登校が禁じられています(学校保健安全法)。
感染のおそれがないと判断できるのは必ずしも症状の改善と一致せず、発症してある程度の期間が経った後になります。

学生でなければ流行の原因にならないという理由はなく、全ての感染者に対して学校保健安全法に準じた日常生活上の制限が望ましいと考えられます。

感染症の原因治療は病原体の除去ですが、現在のところアデノウイルスに直接効果のある薬はなく、患者自身の免疫の力によってウイルスは除去されます。

流行性角結膜炎の治療の目的は感染の拡大の防止と後遺症発症の予防です。

後遺症とは感染症が落ち着いてからも瞼の裏側に膜のようなものができて残ることと、黒目に濁りが残ることを指します。この黒目の濁りは数年以上に及ぶものがあり、濁りが黒目の中央付近に残ると視力に影響することがあります。

単純ヘルペスウイルスによる結膜炎は皮膚症状を伴う場合は流行性角結膜炎との鑑別は容易ですが、眼の状態だけだと鑑別は困難です。
治療法が異なるので、注意が必要です。


2)細菌性結膜炎


細菌が原因の結膜炎は細菌の種類によって症状や重症度が変わってきますが、その多くはカタル性結膜炎の形をとり、通常は抗生剤点眼による治療によく反応し重症化することはありません。

例外的に淋菌による結膜炎は激しい炎症を引き起こし、角膜穿孔をきたす可能性があるので注意が必要です。薬剤耐性菌の割合が増えているため薬剤の選択も慎重に行う必要があります。

クラミジア結膜炎はクラミジアという病原体による結膜炎で、非定型細菌といって普通の細菌とウイルスの間のような性質の病原体です。
クラミジア結膜炎は抗生剤の治療に反応しますが、従来はその生物学的特性から長期投与が必要でした。

しかし最近になって長期間効果が持続する抗生剤が登場したため、1回の投与だけでの治療が可能になり、治療に必要とされる労力が劇的に軽減されました。


3)その他の感染性結膜炎


リケッチア・真菌・寄生虫といった病原体も結膜炎の原因となり得ますが頻度は高くありません。


●アレルギーによる結膜炎


日本眼科学会のガイドラインでは、アレルギー性結膜疾患は「I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で、何らかの自他覚的症状を伴うもの」と定義されており、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎に分類されています。

アレルギーの仕組みは複雑でそのすべてに言及するのは困難ですが、ごく簡単に説明を試みると、I型アレルギーとはIgEというタイプの抗体が関与するアレルギー反応です。

ある抗原に特異的に結合するIgEが肥満細胞と呼ばれる細胞の表面に結合した状態が感作という状態です。

抗原が結膜に侵入し、結膜の表面のすぐ下に存在する感作された肥満細胞の表面のIgEに結合することにより、肥満細胞からヒスタミン等の放出やその他の反応が起こります。

ヒスタミンは結膜表面の細胞にあるヒスタミン受容体に結合することによりかゆみや他のアレルギー症状を引き起こします。
ここまでを即時型反応といいます。

即時型反応の後に炎症が遷延化し、T細胞、好酸球、好塩基球、好中球といった様々な炎症細胞が結膜下に集まり、これらの細胞間の相互作用の悪循環が起こった結果引き起こされる組織障害性の反応が慢性化した状態を増殖性変化といいます。


1)アレルギー性結膜炎


結膜に増殖性変化を伴わないアレルギー性結膜疾患のことです。
日常的に頻繁に遭遇するアレルギー性結膜疾患の多くはアレルギー性結膜炎です。

アレルギー性結膜炎は原則として深刻な組織障害を伴わないため、治療の主な目的は不快な自覚症状(主にかゆみ)を抑えることです。
季節性の抗原が原因の場合、症状は一過性でありその時期を凌ぐことができればいいと考えられますが、通年性の抗原が原因の場合には長期にわたる治療の継続が必要になる可能性があり、なるべく侵襲が少ない(長期間使用しても深刻な副作用が起こりにくい)治療を選択する必要があります。


2)春季カタル


増殖性の変化として「まぶたの裏側の大型の隆起性の病変(乳頭)」あるいは「角膜と結膜の境の隆起性の病変(トランタス斑)」を伴うアレルギー性結膜疾患のことです。

しばしば角膜への影響を伴います。角膜への影響が重症になると視力障害の原因になる可能性があります。
 参考:https://fdoc.jp/byouki-scope/disease/spring-catarrh/


3)アトピー性結膜炎


顔面にアトピー性皮膚炎を伴う患者に起こる慢性のアレルギー性結膜疾患です。
まぶたの裏側に小型の隆起性病変と結膜の下の層の肥厚、時として春季カタルのような大型の隆起性病変を伴うことがあります。


4)巨大乳頭結膜炎


コンタクトレンズ、義眼、手術用縫合糸などの機械的刺激によるまぶたの裏側の大型の隆起性の病変を伴うアレルギー性結膜疾患です。


アレルギー性結膜疾患の治療

 

・アレルゲンの検索、除去


原因治療としてまず考えることは、アレルゲン(アレルギーを引き起こしている抗原)の検索と除去です。アレルゲンのスクリーニングのために、血清中特異的IgE抗体定量(RAST、MAST)、抗体特異的ヒスタミン遊離試験、皮膚テスト(スクラッチテスト、 プリックテスト、皮内テスト)などを行います。しかし抗原となり得る物質は無数にあり、現在起こっているアレルギーの原因が何かを正確に同定することが困難な場合もあります。

アレルゲンが判明した場合、その原因物質の除去が原因治療です。

スギ花粉などの季節性アレルゲンは外出時に曝露されることが多く、外出時のマスク・フード付き眼鏡や、室内に入るときの着衣・手・顔についたアレルゲンの持ち込み防止、室内の空気清浄機の使用などが有効です。

ダニ、ハウスダスト、カビなどの通年性アレルゲンは室内で曝露されることが多く、室内環境の整備(絨毯の除去、徹底的な清掃、ダニ防止カバーの使用、十分な換気、空気清浄機の使用など)が有効です。また、アレルゲンの種類にかかわらず、人工涙液の点眼はまぶたの裏側のアレルゲンを減らすのに有効と考えられます。

しかし実際には、目に見えない空気中のアレルゲンの侵入を減らすことはできても、完全に除去するのは困難です。

巨大乳頭結膜炎では多くの場合、原因となっている異物(コンタクトレンズなど)がはっきりしているので、その除去により治療が可能ですが、コンタクトレンズや義眼などは一時的に中止することが可能でも、中止を継続することが困難な状況があり得ます。

この場合、使用を再開しても巨大乳頭結膜炎を再燃させない方法を模索することになります。


・薬物点眼療法


薬物療法はアレルゲンの種類を問わず効果が期待できますが、原因治療ではなくあくまでも症状に対する治療です。根治を目指すのではなく症状を和らげるのが目的の治療なので、必要最低限の治療で目的を達成することが要求されます。

特に通年性のアレルゲンが原因のアレルギーに対しては、治療は長期間に渡ると予想されますので、副作用のリスクのある治療を漫然と続けることを避けることが望ましいと考えられます。

第一選択は抗アレルギー薬の点眼で、ヒスタミンH1受容体拮抗薬とメディエーター遊離抑制薬に分類されます。
ヒスタミンH1受容体拮抗薬は放出されたヒスタミンの受容体への結合をブロックします。

症状を起こさせる反応のすぐ前の経路をブロックするので即効性が期待できますが、ヒスタミンを減らすわけではなく持続性がありません。

メディエーター遊離抑制薬は肥満細胞からのヒスタミン等の放出を抑制します。
効果が出るまで時間がかかりますが(1~2週間)、効果は持続的です。

抗アレルギー薬点眼のメリットは重大な副作用がないことで、両者の特性をうまく利用して症状のコントロールができれば、リスクの少ない望ましい治療法といえます。

ガイドライン上は、春季カタルを除くいずれのアレルギー性結膜疾患も、抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合はステロイド点眼の併用となっています。
増殖性変化を抗アレルギー薬点眼のみでコントロールするのは困難です。

ステロイド点眼は抗アレルギー薬点眼よりも上流のアレルギー反応を多岐にわたって抑制します。
従って効果は強力で増殖性変化に対しても効果が期待できますが、重篤な副作用の可能性があり、使用のメリット・デメリットを考慮して慎重に使用する必要があります。

春季カタルは抗アレルギー薬点眼のみで効果が不十分な場合は免疫抑制薬点眼の併用となっています。
免疫抑制薬点眼は価格が高いのが欠点ですが、効果も高くステロイド点眼よりもリスクは低いので可能であればステロイド併用前に併用を考慮することが望ましいと考えられます。


・点眼以外の治療


特に春季カタルでは点眼のみでコントロール不良のことがあります。その場合、ステロイドをまぶたの裏に注射したり、まぶたの裏の乳頭を切除することを考慮します。


・舌下免疫療法


アレルギー性結膜疾患に対する従来の治療では症状を抑えることはできても根治することはできませんでした。根治というのは、アレルゲンが侵入してもアレルギー反応が起こらない体になるという事です。

近年アレルギー疾患を根治する可能性のある唯一の治療法として、舌下免疫療法が開発されました。
治療がうまくいった場合のメリットは大きいのですが、デメリットもあります。

①現時点では、スギ花粉とダニによるアレルギーのみが対象です。
②長期的な効果を維持するためには最低でも3年間の継続が必要で、治療期間中は原則として1ヶ月ごとの受診が必要で、治療したら必ず根治に至るわけではありません。
③可能性は極めて低いもののアナフィラキシーという重篤な反応を引き起こす可能性があります。

軽度な症状に対して安易にお勧めできる治療ではないですが、重症なアレルギー症状でお困りの方で興味のある方はご相談ください。


●その他の結膜炎


ドライアイに伴うもの、外傷に伴うもの、自己免疫疾患に伴うもの、遺伝子異常に伴うものなどがありますが、それぞれ原因を解明したのちに原因に対する治療を選択する必要があります。