高気圧・酸素キャビンの基礎知識
スポーツ分野におけるコンディショニング効果
近年、スポーツ分野では従来の治療方法だけでなく東洋医学や新たな手法・リハビリ機器などが積極的に取り入れられるようになってきました。 その流れの中で高気圧酸素キャビンもケガの早期回復やコンディショニングに効果があると考えられ注目されるようになりました。 |
▲新たなコンディショニングの手法として |
医療用にくらべ気圧が低めで純酸素を使わない簡易なカプセルにおいて、スポーツ外傷にどの程度の効果があるかについては、データや研究はこれからという段階のようです。
急性期のケガでは、損傷部位に腫れや痛み、虚血があり、この程度が小さいほど早く治ると考えられています。酸素不足を補うことで腫れや痛みを軽減する効果、コラーゲンなど組織回復を助ける効果などが期待されています。
●疲労回復への効果
スポーツによって生じる疲労の回復には、エネルギーの回復や疲労物質の除去などが必要であると言われています。
酸素供給をすることで乳酸などの疲労物質の代謝が促進され、早く疲労物質が除去されることによる疲労回復効果が期待できると考えられています。コンディショニング効果を期待してスポーツ分野で利用されるケースが増えてきています。
高気圧・酸素キャビンの基礎知識
高気圧・酸素キャビンは、医療用の「高気圧酸素治療(※)」に使用される機器・原理を基礎として開発された「高気圧エアーチェンバー」「マイルド・チェンバー」「健康気圧エア・チェンバー」と呼ばれる装置です。(注.「高気圧酸素治療器」とは異なるものです)
医療用機器とくらべると気圧は低めで、純酸素ではなく空気を使用するなど簡易なカプセルであり、健康増進機器に位置づけられます。純酸素を使わずそれほど高圧でなくても一定の効果は得られるのではないか、とのことから開発されました。
ここ十数年、欧米では酸素のもつ様々な健康効果に注目が集まり、また空気使用で取り扱いしやすいポータブルタイプの装置が出てきたことで、スポーツ界や美容・健康業界を中心に高気圧エア・チェンバーが広まりはじめました。オリンピックチームやプロスポーツ選手などトップアスリートのコンデイショニング、ハリウッドスターのアンチエイジングなどに取り入れられています。
日本でも、スポーツの世界では早い時期から利用されはじめ最近では「ベッカムカプセル」として有名になりましたが、Jリーグやプロ野球、相撲協会、スケート、ボクシングなどのスポーツ選手がケガの早期回復やコンディショニングに利用しはじめています。
| ※高気圧酸素治療 =ハイパーバリック・オキシジェン・セラピー(HBO=Hyperbaric oxgen therapy) 医療の世界で300年の歴史のある治療法。 1662年にイギリスの医師が治療目的で作ったのが始まりと言われています。 医療用の装置は一人用から多人数が入れる大型のものまであり現在では世界中で様々な病気の治療に使われています。 医療用のものは純酸素を使用し気圧も2-3気圧と高く、一酸化炭素中毒などのガス中毒、脳梗塞や心筋梗塞、火傷や凍傷、皮膚移植、重症頭部外傷など、低酸素症に関わる症状を中心に様々な病気の治療に活躍してきました。 |
高気圧・酸素キャビンの仕組み
●高気圧・酸素キャビンとは
キャビン内の気圧を上昇させた状態で(通常は1気圧→気圧を高くする)一定時間過ごすことにより、通常の呼吸で得られるよりも多くの酸素を身体に取り込むシステムです。
●効果のしくみ
通常の大気圧は1気圧、酸素濃度は約21%ですが、普通に呼吸するよりも身体への酸素供給度を上げることにより健康増進を図ります。
呼吸によって取り込まれた酸素は、赤血球中のヘモグロビンと結合して末梢組織まで運ばれます。これを「結合型酸素」といいます。しかし、この結合型酸素はヘモグロピンの量より多くは運べず取り込まれる酸素量に限りがあり、 また毛細血管は結合型酸素より細いので血管の汚れなどの体内環境要素とあいまって血流が悪くなりがちです。
結合型酸素のほかに血液や体液に分子のまま溶け込んで運ばれる「溶解型酸素」があります。毛細血管よりも小さく通りやすいサイズなのですが、その量はほんのわずか。
この「溶解型酸素」はサイダーやコーラなどの炭酸飲料のように液体に酸素分子が溶け込んだものなのですが、「液体に溶解する気体の量は気圧に比例して増える」(=ヘンリーの法則)ため、環境気圧を高めることで血液中に溶解する酸素量を増加させることができます。酸素吸入だけでは不可能なことで、気圧上昇があってはじめて溶解型酸素を増やすことができるのです。
高気圧・酸素キャビンは
気圧をあげて溶解型酸素を増やす
ことで酸素供給度をあげる仕組みといえます。
高気圧・酸素キャビンとは?
誰でもうけられるの?
一般的には誰でもうけられます。
●閉所恐怖症の人
●ペースメーカーを使っている人
●妊娠中の人
●インシュリンを使っている人(低血糖になるおそれがあるので)
●風邪や鼻炎で鼻がつまっていたり耳の病気などで耳抜きができない人
は、医師に相談の上セラピーを受けて下さい。
とされています。
また、気圧が変化するため耳抜きが必要なので、耳抜きが苦手な人は様子をみながらゆっくり気圧をあげてもらうとか、飴玉をなめて耳抜きしやすくするなど、事前に相談して入るとよいでしょう。
高気圧・酸素キャビンに入るペースはどのくらい?
治療目的の場合は医師の指示・観察下で行われます。
健康増進やアンチエイジング目的の使用であれば、年齢や健康状態にもよりますが一週間に1~2回を1~2ケ月など、ある程度継続して受けることで効果が実感できるのではないでしょうか。
安全なの?
現在、高気圧・酸素キャビンとして普及しつつある1.2~3気圧まで加圧されるポータブル型で純酸素ではなく空気を使用するタイプのカプセルは、引火や酸素中毒などの危険がないので安全に手軽に利用できるとされています。(※ただし火気は厳禁、当然禁煙です。)
いくつか機種があるようですが、
・中からもあけられる設計
・停電でも呼吸ができる
・使用の実績、認可
などがしっかりしているものであるば安心でしょう。
※最近では酸素濃縮器を付けて酸素濃度をあげる機種も出てきており、酸素濃度によっては引火や活性酸素の危険性等が空気使用のみの場合とは異なる可能性があります。
