最初の一冊「真理のことば」
お釈迦さまの教えが、一番易しく短い言葉で書かれたのが
有名な「ダンマパダ」です。
日本語訳だと『真理のことば・感興のことば』(岩波新書)に入っている
「真理のことば」がそれです。文庫本で60Pしかないですが、
人としてかく生きるべしという真理に満ちていて感動します。
それに、言葉が文学的で高潔です。たとえば・・・
<第四章 花にちなんで>より
「蜜蜂は花の色香をそこなわずに、汁だけとって花から飛び去る。
聖者が村に行くときはそのようにせよ」
「うるわしく、あでやかに咲く花でも、香りが無いものがあるように、
善く説かれたことばでも、それを実行しない人には実りがない」
「うず高い花を集めて多くの華簪(はなかざり)をつくるように、
人として生まれまた死ぬべきであるならば、多くの善いことをなせ」
この四章で、特に私が心にとめているのはこの教えです。
「他人の過失を見るなかれ。
他人のしたこととしなかったことを見るな。
ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ」
仏教初心者としては、まずこれを最初に読めばよかったのですが、
私は何も知らなかった頃に『ブッダのことば』(スッタニパータ)を
最初に読んで、よくわからずに挫折してしまいました。
単純に岩波文庫でそっちのほうが先に出てただけの理由ですが・・。
最初の一冊としては、「ダンマパタ」がおすすめです。
でも、日本で読まれるようになったのが、
なんと大正時代だというからビックリですよ!
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JAL新会長は禅のお坊さん
今日、あのJALが会社更生法を申請、つまり”倒産”しました。
新会長としてJAL再建を担うのは、
ご存知のとおり京セラ・KDDI創業者の稲盛和夫氏です。
民主党の支援者でもあるので、その関係で頼んだのでしょう。
稲盛氏がいちおう僧侶でもある、というのはよく知られています。
65歳で”出家宣言”をして、97年に臨済宗妙心寺派の円福寺で得度しています。
(妙心寺派というと、私が何度か講座にいった花園大学と同じですね)
”お坊さん”がJALを再建するというのも、すごい話です。
稲盛氏は、すばらしい経営者だという評価が多いのですが、
一方で、宗教がかっていてなんか気持ち悪い、という指摘をしたのが、
名著『カルト資本主義』を書いたジャーナリストの斎藤貴男さんです。
この本では、「稲盛和夫という呪術師」という章を設けて、
稲盛氏が主催する「稲和塾」の取材や、
稲盛氏自身のインタビューもしています。
「稲和塾」には、多数のベンチャー経営者などが入っていて、
「京セラ・フィロソフィー」を学ぶ場で、
稲盛氏の言葉に、数百人が涙を流さんばかりの勢いだそうです。
この本に出てくる稲盛氏の言葉を引用すると、
「面白いことに、利他になったら決して損はしないんですね」
「これはもう見事に宇宙ってのはそうなってます。
徹底して利他で行ったら、自分も潤うようになっとんです」
「(社員の)長時間の拘束はまったくない。しかし自発的に
夜更けまで働くことは、各人の燃える情熱の表現だ」
ね、なんか気持ち悪いでしょう?
最後のやつとか、過労死裁判で必ず会社が出す言い分です。
利他で儲かれば、そりゃハッピーですが、実際に働いている人なら、
「宇宙ってのはそうなってないですよ」とわかるはずです。
下請けのコストを下げさせる、社員をリストラする、
自社製品のいいところだけをオーバーに宣伝して売る、
それを「世のため人のため」と自分に言い聞かせながら、
なんとか儲けを出すのが仕事の日常なのであります。
たとえば『ダンマパタ』の最初のすばらしい一節、
「ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によって作り出される」
だって、会社はよく、似たようなことをいうわけです。
たとえばサービス残業もノルマ競争も、
「自分の成長の機会だと思ってやれ」と言うわけですよね。
社員も、そう信じてやるわけですよね。
著者の斎藤貴男氏(この人も若干エキセントリックなのですが)は、
宗教、ニューエイジ思想が、企業経営に利用されることの
気持ち悪さ・危険性を、『カルト資本主義』で突いています。
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紀元前500年にお釈迦さまが説いた教えを、
その2000年以上あとにまったく違う文脈で出てきた資本主義=企業が
安易に流用するのは、お釈迦さまに失礼なんじゃないでしょうか?
もちろん私は稲盛さんにお会いしたことがないですが、
みなさんの言うように立派な経営者なのでしょう。
これから、JALは1万人以上をリストラしないといけないそうですが、
稲盛氏はそれも立派に「利他の心」でやり抜かれることでしょう。
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これぞ無明「闇金ウシジマくん」
借金の話が好きです。
『ナニワ金融道』も好きでしたが、今連載してるいるのでは
『闇金ウシジマくん』(小学館の『スピリッツ』)も好きです。
出てくる人、出てくる人、「無明ここに極まれり」なのです。
「無明」と聞くと、ウシジマくんの客を思い出します。
<例えば、第一巻に出てくるOLさんの、転落の軌跡>
(一部記憶違いがあるかも。あと、ネタバレします)
同僚に仲間はずれにされないため&見栄のために、
ブランド品や旅行代で借金がかさむ
→サラ金で借りられなくなって、ウシジマくんの闇金へ
→返せなくなってピンサロに沈む
→ストレス解消のため、唯一の女友達(ピンサロ仲間)から
眠れるクスリ(シャブ)を買う。その友達は、実はウシジマくんの一味
→シャブ漬けになってもっと借金が増える
→デリヘルで本番をやるようになる
→エロ写真を社内メールで流され、会社を辞める
→性病をもらって彼氏にうつし、ボコボコにされる
→シャブ中でガイコツのようになり、気がふれる
→立ちんぼ(街娼)になる
→ヘンな新興宗教に入る
物欲、執着、競争心、無知などなど、
お釈迦さまがダメと言ったことが見事にコンプリートされています。
でも現実に、このマンガに近い話は山ほどあるわけですよね。
ある人権派弁護士が、理想に燃えて、弁護士のいない田舎町で開業したら、
相談のほとんどが「債務整理」だった、という新聞記事もありました。
迷妄には、知的迷妄と情動的迷妄がありますが、
知的迷妄(無知)だけでも脱していれば、どうにかなるのに。
せめて、
「闇金には元本さえ返さなくていい」という
最高裁判決だけでも知っておきたいものです・・・。
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