釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~ -199ページ目

最初の一冊「真理のことば」


お釈迦さまの教えが、一番易しく短い言葉で書かれたのが
有名な「ダンマパダ」です。


日本語訳だと『真理のことば・感興のことば』(岩波新書)に入っている
「真理のことば」がそれです。文庫本で60Pしかないですが、
人としてかく生きるべしという真理に満ちていて感動します。


それに、言葉が文学的で高潔です。たとえば・・・



<第四章 花にちなんで>より


「蜜蜂は花の色香をそこなわずに、汁だけとって花から飛び去る。
 聖者が村に行くときはそのようにせよ」


「うるわしく、あでやかに咲く花でも、香りが無いものがあるように、
 善く説かれたことばでも、それを実行しない人には実りがない」


「うず高い花を集めて多くの華簪(はなかざり)をつくるように、
人として生まれまた死ぬべきであるならば、多くの善いことをなせ」


この四章で、特に私が心にとめているのはこの教えです。


「他人の過失を見るなかれ。
 他人のしたこととしなかったことを見るな。
 ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ」


仏教初心者としては、まずこれを最初に読めばよかったのですが、
私は何も知らなかった頃に『ブッダのことば』(スッタニパータ)を
最初に読んで、よくわからずに挫折してしまいました。
単純に岩波文庫でそっちのほうが先に出てただけの理由ですが・・。


最初の一冊としては、「ダンマパタ」がおすすめです。
でも、日本で読まれるようになったのが、
なんと大正時代だというからビックリですよ!






ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)/著者不明
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JAL新会長は禅のお坊さん


今日、あのJALが会社更生法を申請、つまり”倒産”しました。
新会長としてJAL再建を担うのは、
ご存知のとおり京セラ・KDDI創業者の稲盛和夫氏です。
民主党の支援者でもあるので、その関係で頼んだのでしょう。


稲盛氏がいちおう僧侶でもある、というのはよく知られています。
65歳で”出家宣言”をして、97年に臨済宗妙心寺派の円福寺で得度しています。
(妙心寺派というと、私が何度か講座にいった花園大学と同じですね)


”お坊さん”がJALを再建するというのも、すごい話です。



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~  お坊さんっぽい姿の稲盛さん。


稲盛氏は、すばらしい経営者だという評価が多いのですが、
一方で、宗教がかっていてなんか気持ち悪い、という指摘をしたのが、
名著『カルト資本主義』を書いたジャーナリストの斎藤貴男さんです。


この本では、「稲盛和夫という呪術師」という章を設けて、
稲盛氏が主催する「稲和塾」の取材や、
稲盛氏自身のインタビューもしています。


「稲和塾」には、多数のベンチャー経営者などが入っていて、
「京セラ・フィロソフィー」を学ぶ場で、
稲盛氏の言葉に、数百人が涙を流さんばかりの勢いだそうです。

この本に出てくる稲盛氏の言葉を引用すると、


「面白いことに、利他になったら決して損はしないんですね
「これはもう見事に宇宙ってのはそうなってます
 徹底して利他で行ったら、自分も潤うようになっとんです」
「(社員の)長時間の拘束はまったくない。しかし自発的に
 夜更けまで働くことは、各人の燃える情熱の表現だ」


ね、なんか気持ち悪いでしょう?

最後のやつとか、過労死裁判で必ず会社が出す言い分です。



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~  生きる目的まで説いちゃってます。


利他で儲かれば、そりゃハッピーですが、実際に働いている人なら、
宇宙ってのはそうなってないですよ」とわかるはずです。


下請けのコストを下げさせる、社員をリストラする、
自社製品のいいところだけをオーバーに宣伝して売る、
それを「世のため人のため」と自分に言い聞かせながら、
なんとか儲けを出すのが仕事の日常なのであります。


たとえば『ダンマパタ』の最初のすばらしい一節、
ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によって作り出される
だって、会社はよく、似たようなことをいうわけです。
たとえばサービス残業もノルマ競争も、
「自分の成長の機会だと思ってやれ」と言うわけですよね。
社員も、そう信じてやるわけですよね。


著者の斎藤貴男氏(この人も若干エキセントリックなのですが)は、
宗教、ニューエイジ思想が、企業経営に利用されることの
気持ち悪さ・危険性を、『カルト資本主義』で突いています。


カルト資本主義 (文春文庫)/斎藤 貴男
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紀元前500年にお釈迦さまが説いた教えを、
その2000年以上あとにまったく違う文脈で出てきた資本主義=企業が
安易に流用するのは、お釈迦さまに失礼なんじゃないでしょうか?


もちろん私は稲盛さんにお会いしたことがないですが、

みなさんの言うように立派な経営者なのでしょう。

これから、JALは1万人以上をリストラしないといけないそうですが、
稲盛氏はそれも立派に「利他の心」でやり抜かれることでしょう。




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これぞ無明「闇金ウシジマくん」


借金の話が好きです。
『ナニワ金融道』も好きでしたが、今連載してるいるのでは
『闇金ウシジマくん』(小学館の『スピリッツ』)も好きです。


出てくる人、出てくる人、「無明ここに極まれり」なのです。

「無明」と聞くと、ウシジマくんの客を思い出します。



<例えば、第一巻に出てくるOLさんの、転落の軌跡>
        (一部記憶違いがあるかも。あと、ネタバレします)


同僚に仲間はずれにされないため&見栄のために、
ブランド品や旅行代で借金がかさむ
サラ金で借りられなくなって、ウシジマくんの闇金へ
→返せなくなってピンサロに沈む


→ストレス解消のため、唯一の女友達(ピンサロ仲間)から
 眠れるクスリ(シャブ)を買う。その友達は、実はウシジマくんの一味
シャブ漬けになってもっと借金が増える
→デリヘルで本番をやるようになる

→エロ写真を社内メールで流され、会社を辞める
性病をもらって彼氏にうつし、ボコボコにされる

→シャブ中でガイコツのようになり、気がふれる
立ちんぼ(街娼)になる
→ヘンな新興宗教に入る



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~ 普通のOLさんが、こんなふうに・・・



物欲、執着、競争心、無知などなど、
お釈迦さまがダメと言ったことが見事にコンプリートされています。


でも現実に、このマンガに近い話は山ほどあるわけですよね。

ある人権派弁護士が、理想に燃えて、弁護士のいない田舎町で開業したら、
相談のほとんどが「債務整理」だった、という新聞記事もありました。


迷妄には、知的迷妄と情動的迷妄がありますが、
知的迷妄(無知)だけでも脱していれば、どうにかなるのに。
せめて、
闇金には元本さえ返さなくていい」という
最高裁判決だけでも知っておきたいものです・・・。


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