自分が属する業界の「簡単に利益を出す仕組み」を書くことは少々気がひけるが、別に計算すれば誰でもわかることだから書いてみよう。

銀行は個人の客に対しては住宅ローンを組ませることを最終目的にしている(と言われている)。個人客に対してただ普通口座を作ってもらって数百万の預金をしてもらうだけでは全国各地にあるATMのコストを賄えるはずもないので、当然といえば当然の話である。

この住宅ローンというのは、とことん銀行が儲かる仕組みになっているのだ。その仕組みをちらっと簡単に説明しようと思う。
※ 僕は住宅ローンを実際に組んだことはないし販売したこともないので、内容と事実に乖離があるかもしれません。悪しからず。

まず初めに、住宅ローンには2つの返済方法があるのはご存知だろうか。
「元利均等法」と「元金均等法」である。

元利均等法:毎月の支払額(元本+利息)が一定になる方式。

元金均等法:毎月一定の元本と、それに利息を上乗せた支払額を払う方式。

総支払額を比較すると、元金均等法の方が元利均等法よりも少なくなる。

これだけの情報であれば、ほぼ100%の人が元金均等法を選択するだろう。
しかし、実際は元利均等法を選ぶ人が一般的となっている。
その理由は、「住宅ローンの税額控除の額は年末のローン残高の1%」というルールがあるからだ。
それに、元利均等法の方が毎月の支払額が一定になるので計算しやすい、などの宣伝文句を使って銀行員は元利均等法を勧めてくるに違いない。

ここまでで、住宅ローンは「元利均等法」が選択されるケースが国の税体制や銀行の都合で多いということを押さえてもらって、次はこのエントリーの本題である元利均等法の元本の減り方を見ていく。

最初に
ローン残高(元本):y 毎月の支払額:p 利率:r 支払い回数:n 
として、

ローン残高yと毎月の支払額pは以下の計算式で求めることができる。
(詳細の計算仮定を説明するとややアカデミックになってしまうので省略。)

photo:01



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※ y(0)とは0回目の支払いが終わった後のローン残高、つまり借入総額である。
※ y(n)とはn回目の支払いが終わった後のローン残高。


さて、この計算式を使って次のケース(一般的と思われる住宅ローンのケース)についてあることを考えてみよう。

借入金額:3000万円
金利:3%
年数:30年

いきなり核心をついてしまうが、このケースで10年間ローンを返済していったとして、10年後のローン残高を計算してみよう(nには10年*12ヶ月の120を代入、rは3%/100/12ヶ月の0.0025を代入して計算する)。

計算してみると10年後のローン残高は2,280.6万円という計算結果になる。

ここで疑問を感じてほしい。

10年間一生懸命ローンを返済したということは、返済期間は1/3過ぎたということになる。
しかしローン残高は2,280.6万円ある。当初借り入れたのは3,000万円だから、1/4程度しか元本を返済していないわけだ。

金利というのは元本にかかっていくもの。
つまり、お金を借りる方としては元本を早めに減らしていきたいのに、現状のわが国の住宅ローンでは元本の減り方が緩慢という仕組みになっている。

加えて、(僕はあまり知らないが)最近では当初数年間の金利が非常に低くて後に金利がジャンプアップする住宅ローンの広告をよく見かける。

いくら当初数年間の金利が低くても、返しているのは元本部分ではなく利息部分ということになる。
元本の減り方は緩慢なので、銀行としては後々に金利をジャンプアップさせてもたんまり金利収入が得られる仕組みになっているわけだ。


最後にいくつか補足。
このエントリーは、住宅を買うことに否定的な意見を述べているわけではなく、我が国の住宅ローンは借りる方に不利な仕組みになっている、といことが主旨です。

銀行というのは住宅ローン以外にも「簡単に利益を出せる仕組み」というのがたくさんあります。
また、銀行以外にも日本には様々な業界で、消費者の無知を利用した簡単に儲かる仕組みが存在しています。
多くの場合、それは様々な規制によって守られて(既得権益)いるわけだが、それを打ち崩すには、今までの常識に囚われずに正しい知識をつけること、つまり正しい教育が必要、というのが僕の考えです。





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以前、ジョン・メリウェザーのアービトラージというエントリーを投稿した。

メリウェザーはソロモンブラザーズ退社後。LTCMというヘッジファンドを設立した。
ここでもメリウェザーは年間利回り40%超の高パフォーマンスを上げるが、1998年に起こったロシア危機によって破綻に追い込まれてしまった。

1999年にはLTCMの負債を返済し、新たなヘッジファンドJWMパートナーズを設立した。ここでは以前ほどの高パフォーマンスは上げられず、2007年から始まる世界金融危機により資産の半分程度を失い2009年、閉鎖に追い込まれた。

現在、メリウェザーは自身3度目のヘッジファンドを設立して奮闘しているが、パフォーマンスは芳しくない。

メリウェザーはたしかにすごかった。しかし、全てのものは栄枯盛衰なのだ。

メリウェザーがアービトラージで稼ぎまくっていた時代は、まだ金融工学が浸透しておらずマーケットに金融工学を導入している者がいなかった。いち早く金融工学を導入し、市場の歪みを見つけ鞘をとっていく手法は当時ではローリスクで莫大な利益を上げることができたかもしれないが、今ではその手法は全く通用しない。

だから、今、過去のメリウェザーと同じようなことをしても利益が上げられないのは明白だ。もしメリウェザーのような歴史に名を残す投資家になりたければ、まだ誰も考えていない投資アプローチで市場に立ち向かう必要があるのだろう。

彼がすごかった点は、アービトラージではなく誰も知らないことを一番早くやってのけたことなのだから。




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 FRBの時間軸強化で日米金利差が低位安定

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日米2年金利差がドル円と高い相関関係にあるのは周知の事実。
先日のFOMCでFRBは時間軸を強化→日米金利差は当分低位で安定する。


 ジャクソンホール(8月26日)に向けた相場
先日までの世界的な株価の急落は米国債の格下げも主因だが、QE3の催促相場という一面もあった。
昨年、バーナンキ議長がジャクソンホールでの講演でQE2を示唆したことから、今年もその期待が高まり、再び催促相場、つまり株安が始まる可能性がある(リスクオフで円買い)。

 欧州問題
欧米の財政問題がクローズアップされているが、米はどちらかというと政治的要因で混乱、財政が本質的に危ないのは欧州。
直近、イタリア、スペインの10年金利はECBの買入れで低下しているが、CDSは300bp以上で高止まりしており、再燃すればリスクオフで円買い要因となる。
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 介入効果は期待薄
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くりっく365のドル円の建て玉。
先日の介入で個人の証拠金トレーダーのロングポジションが大分吸収された。また、足元では再びロングポジションが増加し始めており、証拠金トレーダーが介入の効果を妨げる可能性は今後も大きい。
また先日のG7の声明で「市場において決定される為替レートをわれわれは支持することを再確認」と表明しているので、日本の単独での大規模な介入はしづらいのが現状。

 アノマリー:8月は円高になりやすい
日本の輸出企業がお盆休みに入る
米国債の大量償還・利払いがある(円転ニーズ)



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(初めに断っておくが、大失策とは介入がこのセッションで今後行われないという仮定のもとでの判断であって、例えば明日協調介入などが入れば、また判断は変わってくる。)

今回の介入が大失策と判断するのは、別に80円台まで押し上げたドル円がすぐに反落してしまったという安直な理由ではない。
政府は1日に4兆円という過去最大の介入を行ったわけだが、果たして4兆円もつぎ込んだ成果が得られたのか、甚だ疑問に思うからである。

そもそも、日本政府はなぜ介入を行ったのだろうか。
政府は表向きには円高是正のためと言っている。
しかし、現状、日本の貿易収支は限りなく0に近く日本全体で考えれば円高でもさほど問題ないように思う。
それを考えると、政府が介入をした真の目的は「輸出企業の海外移転を防ぐこと」にあるように思う。

円高になって困る代表格はトヨタなどの輸出企業である。このまま円高が進めば、トヨタなどの輸出企業は海外移転を進めるほかないだろう。トヨタが海外移転してしまえば、日本国内は空洞化して雇用喪失など2次被害が拡大し日本の成長率が阻害される。
日本政府としては、トヨタなどを国内に留まらせるために円売り介入という輸出企業救済策に打って出たと考えるのが自然である。つまり日本政府は、円売り介入を行いドル円の水準を押し上げ、輸出企業にドルを80円(トヨタなどの社内レート)で売らせてあげようとしたわけだ。

では、輸出企業を助けるために1日に4兆円を使って介入することが効果的な方法なのか?

僕の答えは否である。

極論を言ってしまえば(多くの国民は反論するだろうが)1日に4兆円も使って為替介入を行うよりは、直接輸出企業に資金を投入した方が、もっとずっと少ない資金で同じ効果が上げられると考えられる。

日本最大の輸出企業であるトヨタの為替感応度(為替が1円動いた時の営業利益の変化幅)はドル円で300億円と言われている。
今回の為替介入を実施した水準は77円台前半(簡略化のため77円とする)であり、介入によってつけた高値は80.25円(簡略化のため80円とする)である。つまり介入で押し上げられた水準は3円ということだ。
トヨタの為替感応度で言うと300億円*3円=900億円ということになる。しかし、これは1年間の営業利益においての効果であり、ドル円が80円台に乗せたのはせいぜい数十分である。さらに、ドル円が80円台にのったのはロンドン時間だったため、トヨタが80円台でドルを売れたのは一体どのくらいの量だろうか、ごく少量に違いない。今、ドル円が77円台で推移していることを考えると、今回の介入でトヨタが得た便益は100億円にも満たないだろう。大分多く見積もってトヨタに100億円の便益があったとしても、日本最大の輸出企業であるトヨタの便益がたかだか100億円である。
便益が4兆円に達するには、トヨタと同クラスの輸出企業が400社必要ということなるが、日本にそういった会社を400社も見つけることができるだろうか…


では、はたして日本政府が出した4兆円という大金は一体どこに消えてしまったのだろうか。
それはもちろん投機家たちだ。
日本の証拠金トレーダーは介入前に過去最高水準にドル円のロングポジションを積んでいたことは周知の事実である。彼らの利食いが入ったことはくりっく365のポジションを見れば明白だ。
また海外のHF(ヘッジファンド)等からは、80円付近から断続的に売りが入っていることも推測される(現状77円台で推移しているわけだから売りが入っているのは当たり前なのだが)。


しばらく為替水準が円高のまま推移するなら、今回の為替介入は大失策と判断して間違いないと思う。今回の為替介入でハッピーになったのは投機家たちだけだ。
外為特会の資金を使っているとはいえ、元は国民のお金。それを1日に4兆円も使ってほとんど効果を出せていないのだから、国民はもっと政府に怒りを示すべきだと僕は思う。



今日はグラフ等のデータを掲載しないという怠惰なエントリーですいません。





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バーナンキFRB議長は7月13・14日の議会証言でQE3発動条件について以下のような言及をした。
①デフレリスクの再燃
②経済の弱さが予想以上であること

この2つの条件を念頭において最近のマーケットを観察すると、マーケットはQE3を催促しているように思える。
今後の注目は、今週金曜日の雇用統計であろう。マーケットがQE3を催促する中での雇用統計は、最近の中では久々にビックイベントになる可能性がある。


①デフレリスク再燃
現状、アメリカにデフレリスクが再燃しているわけではない。
しかしマーケットではデフレリスクを再燃させようとした動きが観察される。
インフレを示す指標はCPIやデフレーターなど様々あるが、マーケットではBEIというものが将来のインフレ期待を示している。
(くわしくは過去のエントリー、物価連動基礎編を参照してほしい)
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上は米5年BEIのチャート、下は米5年債金利のチャートである。
現状のBEIの水準は、バーナンキがQE2を示唆した時のレベルと比べると大分高位で推移しており、特段デフレリスクが高まっているとは言えないが、名目金利(5年債金利)が実質金利を凌ぐ勢いで急激に下げており、マーケットはディスインフレ、デフレを無理やり作りにいっているようにも感じる。つまりQEを催促しているように感じられる。

②経済動向
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これはNYダウ工業株30種のチャートである。
最近の弱い経済指標の影響もありこちらも急激な下落を見せている。まるでQEを催促しているかのように…

このマーケットをバーナンキがどう捉えるかはわからないが、この状況で迎える今週金曜日の雇用統計は、久々なビックイベントになると思われる。
雇用統計の結果次第では、いよいよQE3への期待が高まってくる.






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ジョン・メリウェザー
元ソロモン・ブラザーズの債券トレーダー。ソロモン・ブラザーズはメリウェザー率いる債券アービトラージ部門で莫大な利益をあげ「ウォール街の帝王」と書きたてられた。
メリウェザーは同社の副会長まで登り詰める。
後にLTCMというヘッジファンドを立ち上げ、1995年は+43%、1996年は+41%と高い運用成績を収める。
日本を代表するトレーダー、明神茂や松本大(現マネックスCEO)はメリウェザーのチームで働いていた。

今回はメリウェザーの率いるチームが莫大な利益を上げたアービトラージについて書いてみようと思う。
アービトラージとは日本語に訳すと裁定取引と言うらしく、つまり理論値からの乖離を狙った取引である。マーケットは所詮人間が取引しているわけだから往々にして理論値からずれた価格形成をすることがある。そのずれはいずれ修正されるはずであるからそこで利益を得ようとする取引を裁定取引という。

以下、難易度別に3つのアービトラージの例を紹介して説明しよう思う。
※ 説明はなるべく簡易化している。

レベル1.オンザラン銘柄とオフザラン銘柄
債券(国債を想像してほしい)には同じ年限・償還期限でもより最近に発行されたものと、より昔に発行されたのもがある。この中でより最近発行された銘柄をオンザラン銘柄といい、昔に発行された銘柄をオフザラン銘柄という。

通常、投資家はオンザラン銘柄を好む傾向があるため(オンザラン銘柄に買いが集まるため)、オンザラン銘柄はオフザラン銘柄に比べて割高になることが多い。
しかし、オンザラン銘柄もいずれオフザラン銘柄になるため、価格は修正される。
割高なオンザラン銘柄を売って、同じ量の割安なオフザラン銘柄を買い、価格が修正された後反対売買を行えば利益が上がることになる。

レベル2.債券先物と受渡し銘柄
日経225先物のように債券にも先物が存在する。
日経225と債券先物の違いは、債券先物は受渡し決済ができるということである。

受渡し決済とは、決済する時現金の受渡しではなく、同じ価値の現物の国債で決済することをいう。例えば、もし債券先物を買っていた場合、期限になるとそれが同じ価値の国債に変わって自分の口座の債券先物が現物の国債に変わっていることになる。

ここで大事なのは、債券先物と受渡しされる国債が「同じ価値」であるということである。
もし交換される物の価値が違えば、その取引が成立しないのは明白である。

しかし、ここでも人間の取引によって価格形成されるため、価値の乖離が発生する。
※先物と受渡し銘柄の理論値を考えるためには、ベーシスやインプライドレポレートというものを理解する必要がある。これを説明すると一気にレベルが跳ね上がるため、ここでは省略する。もし金利マーケットで働くことを志すのであれば必須の知識なので興味があればtwitter @yutabalに聞いてみるといい(丸投げ)。

この乖離を利用、つまりレベル1と同じように割高な方を売り割安な方を買い、修正されたところで反対売買を行えば利益があがる。

レベル3.金利スワップ取引
実際メリウェザーはこれで莫大な利益を上げたように思う。
説明を始める前に前提として、メリウェザーはこの取引を行った時代は高金利時代であり、今後の金利低下を予想していたことを念頭においておく。

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図の上から順に説明していく。
※ 会社名は全て例である。

まず、トヨタ自動車は銀行から融資を受けている。
もちろん融資を受ける代わりに、トヨタは銀行に固定金利を払わなければいけない。時代は高金利で今後の金利低下が予想されていた上に、トヨタは格付けが高いので金利が下がった時に一定の手数料で融資契約を解除できる条項があった。

ここに目をつけたメリウェザーは、トヨタ自動車とスワップ契約を結ぼうとする。
スワップとは固定金利と変動金利の交換である。この場合、ソロモンがトヨタに固定金利(トヨタが銀行に払う固定金利と同じ利率)を払い、トヨタがソロモンに変動金利を払う。
これで、トヨタは融資の支払いを固定金利から変動金利に変えることができ、今後の金利低下に対応することができる。

ソロモンはトヨタに固定金利を払い変動金利を受け取るわけだから、金利低下した場合支払う金利よりも受け取る金利が小さくなり損失を被ることになる。

このためにソロモンは国債買う。国債を買うことによりクーポン収入として固定金利が入り(この固定金利をトヨタへの支払いに充てる)、なおかつ金利低下時に国債価格が上昇して利益を享受することができる。

仮に金利上昇した場合、ソロモンは国債価格の下落により損失を被ることになるが、そこはトヨタと締結するスワップ契約の手数料としてとっておけば損失をカバーできる。

メリウェザーは、まだ浸透していなかった金融工学をいち早く導入・駆使し、アービトラージにより莫大な利益をあげ、ウォール街の帝王と呼ばれたソロモン・ブラザーズで副会長まで登り詰めた。

しかし、そんなメリウェザーも最近ではパフォーマンスが振るわない…



実はこのエントリーには続編がありまして、それは追々アップ致します。
次のエントリーが続編になるかはわかりませんが…





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いきなりチャートを載せてみたが、オレンジのラインが日経平均、白いラインがファナックの株価を示している。
リーマンショックまでは日経平均もファナックも同じような動きをしているが、危機後の推移で明らかにファナックが日経平均をアウトパフォームしているのがわかる。ちなみに、ファナックは本日上場来高値を更新している。

ファナックのような企業の存在は何かと励みになる。
それは1つに、総合的に減速傾向にある日本経済の中においても、正しい行動をすることでしっかりと成長できることを示していること。
もう1つ、正しいものをしっかり評価してくれるマーケット(投資家)が存在していること。

ファナックの堅調な株価の背景は様々あると思うが、今回はその1つである中国における戦略を紹介したい。

まずは今朝の日経新聞の記事をご覧頂きたい。

日産やTDK、中国でコスト削減 賃金高騰5年で2倍
http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C93819696

記事の内容はだいたいこんな感じだ。
最近の中国国内における賃金上昇(5年間で2倍)により、中国に進出した日本企業の収益を押し下げている。中国は内需の拡大が今後も見込めるため、日本企業は工場の自動化投資などでコスト削減を急ぐ。

この記事のポイントは、
・ 中国での人件費が上昇している。
・ 中国の内需は今後も拡大していく。
・ 日本企業は工場の自動化を進めている。
(上から2つは過去のエントリーで触れているので参照してほしい)

この記事をみて、僕はすぐにファナックのことが頭に浮かんだ。
つまり、工場の自動化を進めるにはファナックの技術が必要なのだ。
ファナックの商品は工場の作業を自動化するロボットが多い。

順を追って説明しよう。
かつて日本の製造業(正確には日本企業だけでなく世界中の製造業)は安価な人件費を求めて中国に進出した。それ故、中国はかつて「世界の工場」と呼ばれた。
しかし、中国は長期的な成長のため内需拡大を目指し中国国内の賃金上昇を容認したため、中国は世界の工場としての地位を東南アジア等に譲ってしまった。
ここで、工場をベトナム等に移す企業も出たが、今後も内需の拡大が見込める巨大な中国マーケットが非常に魅力的なため、製造業にとって中国国内に工場を誘致するインセンティブは相変わらず高かった。そんな企業の悩みの種がニュースにある人件費高騰によるコスト高である。

「巨大なマーケットが存在する中国で生産をしたいが、人件費も安く抑えたい」
ファナックは世界中の製造業のこのニーズを満たすことによって、日本経済が低迷する中、孤軍奮闘する形で順調に成長を続けている。

日本の山梨県に本社を置くファナックは、本社から見える富士山のようにまさに日本一の優良企業として世界中からその存在を認められている。




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日本のバブルが崩壊してからすでに20年超が過ぎてしまった。
失われた10年という言葉が誕生したが、この言葉が定着した頃には時間はさらに経過しており、この間も日本は低迷を続けた結果、失われた10年は間違った用語で失われた20年が正しい用語だったと気づくこととなった。

Japan As No1と言われた日本がなぜここまで長期にわたって低迷を続けているのか。
今回は日本の低成長の背景を、部門別の資金需要の推移を見ながら説明していく。
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まずはこのグラフを見ていただきたい。

日本銀行が発表している部門別の資金過不足の推移である。
簡単にグラフの説明をする。
数字がプラス、つまり0より上を推移している場合は、資金が余っている状態なので資金需要(資金を借りる需要)はないことを表している。
逆に数字がマイナス、つまり0より下で推移している場合は、資金が足りていない状態で、資金需要が高いことを表している。
※ 民間非金融法人企業とは事業法人のことを指している。

このグラフを整理してみよう。
バブル崩壊(90年前後)までは家計部門が大きく資金余剰で、事業法人が大きく資金不足となっている。
また政府部門は一時プラスに転じるなど、資金不足は小さかったことがわかる。

一方バブルが崩壊した後を見てみると、家計部門は資金余剰を保っているもののその量は減少傾向にある。
また、事業法人は資金不足から資金余剰へと転換しており、政府部門の資金不足は大きくなっている。

また期間を通して海外部門はほぼ一定の値で資金不足になっている。

さて、ここから何がわかるのだろうか。

まず、バブル崩壊前の状況から説明しよう。
この時日本は高度経済成長期にあり、企業は事業拡大のため積極的な投資を行っていた。そのため企業は多分に資金需要があり、家計で余っているお金を企業が使うという効率的名循環にあった。
このお金の融通に一役かっていたのが銀行である。

しかし、この好循環は永続的なものではなく、日本のバブル崩壊により音をたてて崩れてしまったのだ。
企業の事業拡大計画は頓挫し、事業投資の縮小と共に企業の資金需要も衰えていった。
外需の持ち直しによって貿易は引き続き好調だったため、企業は貿易で稼いだお金でこれまでの借金を返済し、いつしか企業部門は資金余剰の状態になったのだ。無借金経営という言葉が出てきたのもこの時期なのではないだろうか。
一方、家計部門はというと高齢化が進むにつれて貯蓄を切り崩さなければいけないので、資金余剰額は低下傾向にある。
また、政府部門は、景気刺激のために大規模な経済政策を行うために国債を乱発したため資金不足、つまり借金が増えていってしまった。
今の日本の資金過不足の状態は、家計がややプラス、企業が大幅にプラス、政府が大幅なマイナスとなっている。
家計と企業で余っているお金の行き所は政府部門しかないので、日本国債は大量に買われ他国では考えられない低金利が長期間続いている。
また、高度経済成長期のように企業がお金を必要としていないので、銀行は本業である貸し出しが伸びず、単独では生き残れないため次々と合併をしていった。

余っているお金を事業拡大のための投資に使うのであれば経済は成長するが、今の日本は余っているお金は国の借金へと変わっている状態である。
日本企業に投資をしようと思っても、日本企業はお金を必要としていない。

日本のお金の使い方をみていると、日本が成長する要素はおよそどこにも見当たらないのではないだろうか。

この状態を打開する方法はいくらでもあるように思う。
例えば、ベンチャー企業への投資だ。アメリカのシリコンバレーでは次々と若者が会社を作りIPOをしたりGoogleやAppleといった大企業に買ってもらったりしている。
若者はお金を持っていないので事業を行うにはもちろん誰かからお金を借りなければいけない。つまり余ったお金の有効な使い道があるのだ。
アメリカではなぜか多くの若者が会社を起こすが、日本ではそのような傾向はあまり見受けられない。
これは、アメリカ人が優秀で日本人が無能だからかもしれないし、アメリカにはベンチャー企業を起こしやすい土壌があって日本にはそれがないのかもしれない。
前者ならば日本の教育改革が必要だし、後者ならば制度の整備が必要だ。

別にベンチャー企業への投資以外にも打開策はいくらでもあるように思う。
今の日本の政治がこの状況を打開しようとしているとは全く思わないが…




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Japan As No1
エズラ・ヴォーゲルの著書である。
高度経済成長期の日本を分析し日本的経営が高く評価されている。
実際に日本は1人あたりGDPにかつて世界1位の座にいた。日本人は世界一お金持ちだったのだ。
しかし、今や一人当たりGDPは18位まで後退、GDPも中国に抜かれて3位に後退している。
個人的にはGDPや経済成長と個人の幸せは別だと考えているので、GDPのことをとやかく言うつもりもないし、あくまでこのエントリーの主役は中国である。

中国は今、高度経済成長期の日本のように大きな成長を遂げている段階である。
その中国は、バブル崩壊をし失われた20年を過ごしている日本と同じ道を辿らないように、日本の経験を反面教師としながら財政・金融政策を行っているように見える。

高度経済成長期からバブル崩壊にかけて起こった日本の失敗と中国の今の取り組みを見てみよう。

● 円高
日本は貿易立国だ。東日本大震災があった今でも、貿易は即座に開封してすでに貿易収支は黒字に転換した。現状でも日本の貿易は日本経済を支えているわけだが、高度経済成長期の貿易の日本経済への貢献度は今の比でない程大きかった。
当たり前の話なのだが、貿易黒字国の通貨は安い方が自国にとってメリットがある。現状の円高の状況を見ればそのことは肌感覚でわかるだろう。
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このチャートはドル円の長期グラフである。
グラフの通り、かつて1ドル360円だったドル円は、今や78円台まで円高が進んでしまっている。日本企業は無駄の排除や効率化を徹底させ円高耐久力をつけてきたが、円高が国力を落としたことを否定することはできない。

中国はアメリカの牽制にあいながらも人民元を細かくコントロールして自国通貨高を抑えている。中国本土で取引される人民元は取引バンドを決めると共に、外国からの市場参加を制限し、人民元が一方向的に上昇するのを抑えている。
一方、人民元の国際化のためにオフショア市場を充実させている。

● 内需拡大の失敗
日本は内需の拡大に失敗してしまった。その結果が長期間にわたるデフレである。
昔から日本の家計の資金余剰はプラスで推移していた。そして高度経済成長期の企業の資金余剰はマイナスであり、家計から銀行を通して企業にお金が流れることで良い循環でお金が回っていた。しかし、日本企業はいつしか資金余剰がプラスになり今までの借金を返し終わり、内需の乏しい日本で新規の投資をしなくなってしまったのだ。今は家計・企業ともにお金が余っている状態で政府(国)だけがお金が足りない構図となっている。故に、現状の家計の余剰資金が銀行を通して国債に流れるのは当然の流れである。そして今の日本はほとんど成長できていない。
中国はこれも避けたい。中国はこれまで安い労働力を武器に世界の工場として君臨し、世界中から工場を誘致してきた。そしてできた製品をまた海外に売りさばきお金を稼ぐといった手法で成長してきた。しかし最近の中国はこの方針を大きく転換させている。中国の労働者の賃金上昇を国が容認しているのだ。10億人以上の人口をもつ中国の平均賃金があがれば内需拡大が大いに期待できる。賃金上昇により世界の工場としての地位を失い同時に経済成長のスピードも鈍化したが、内需拡大によりより長期的で力強い成長を手に入れようとしている。

● 人口問題
● 不良債権

人口問題と不良債権問題でも中国は日本と同じように苦しむ可能性がある。
人口問題で、日本同様中国は少子高齢化が進んでいる。
不良債権問題では、中国にはまだ把握できていない融資(債権)が多くあると言われている。万が一中国がハードランディングするようなことがあれば、この債権が不良債権化して日本と同じような問題に直面する可能性がある。

中国はこの2つに対してまだ明確なアクションをとっていないが、同じ問題で苦しんだ日本を見ているだけに、なんらかの対処法を行うことは間違いない。

尚、上記で簡単に書いた人民元の通貨戦略と日本のセクター別資金需要に関しては、時間があるときに詳しく書きたいと思います。




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● 最近の出来事
・ 欧州圏ストレステスト
 不合格銀行8行、国債のヘアカット率はギリシャが15%と甘いものになっているので、安心感には繋がらない。
 PIIGSへのエクスポージャ、ギリシャ・ポルトガル・アイルランドの3国で1,495億ユーロ、イタリア・スペインの2国で6,129億ユーロ。
・ バーナンキ議会証言
 追加の緩和策を含めた様々な選択肢を用意している。しかし追加緩和の条件として①デフレリスクの再燃、②経済の弱さが予想以上である、という条件を上げているので、QE3実施のハードルは高いように思える。
・ アメリカ、債務上限問題
 現状では、上院超党派のGang of 6という人たちの、即座に5,000億ドル、今後10年で3.6兆ドルという赤字削減案にオバマ大統領が支持を表明しました。
 この案の問題点は、①下院で合意できるか、②米の経済成長を阻害しないか(2兆ドルの削減の場合、2012年の米GDPを0.4%押し下げるとの試算がある)の2点。
・ RBA議事録
 「ある時点で政策引き締めが必要」との文言が外れる
 ややハト派として受け止められたが、以前からマーケットでは利下げが織り込まれていたので、反応は限定的。
 来週(27日)発表のCPIが金利の方向性を決めるキーになる。

● 今後の予定
・ 欧州周縁国問題
 7月21日、EU首脳会議
ギリシャ債務の負担について。独・蘭は部分的デフォルト案、仏はデフォルト回避、ロールオーバー案、その他銀行税(トービン税のようなもの?)導入案などがある。
ちなみに、ギリシャ2年国債の利回りは昨日40%まで上昇しているが、ユーロはほとんど反応していないので、ギリシャの部分的デフォルトは織り込んでいるとも考えられる。
・ アメリカ債務上限問題
 8月2日が期限だが、手続き等の関係で7月22日までに纏めなければいけないという声もある。



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