Japan As No1
エズラ・ヴォーゲルの著書である。
高度経済成長期の日本を分析し日本的経営が高く評価されている。
実際に日本は1人あたりGDPにかつて世界1位の座にいた。日本人は世界一お金持ちだったのだ。
しかし、今や一人当たりGDPは18位まで後退、GDPも中国に抜かれて3位に後退している。
個人的にはGDPや経済成長と個人の幸せは別だと考えているので、GDPのことをとやかく言うつもりもないし、あくまでこのエントリーの主役は中国である。

中国は今、高度経済成長期の日本のように大きな成長を遂げている段階である。
その中国は、バブル崩壊をし失われた20年を過ごしている日本と同じ道を辿らないように、日本の経験を反面教師としながら財政・金融政策を行っているように見える。

高度経済成長期からバブル崩壊にかけて起こった日本の失敗と中国の今の取り組みを見てみよう。

● 円高
日本は貿易立国だ。東日本大震災があった今でも、貿易は即座に開封してすでに貿易収支は黒字に転換した。現状でも日本の貿易は日本経済を支えているわけだが、高度経済成長期の貿易の日本経済への貢献度は今の比でない程大きかった。
当たり前の話なのだが、貿易黒字国の通貨は安い方が自国にとってメリットがある。現状の円高の状況を見ればそのことは肌感覚でわかるだろう。
photo:01


このチャートはドル円の長期グラフである。
グラフの通り、かつて1ドル360円だったドル円は、今や78円台まで円高が進んでしまっている。日本企業は無駄の排除や効率化を徹底させ円高耐久力をつけてきたが、円高が国力を落としたことを否定することはできない。

中国はアメリカの牽制にあいながらも人民元を細かくコントロールして自国通貨高を抑えている。中国本土で取引される人民元は取引バンドを決めると共に、外国からの市場参加を制限し、人民元が一方向的に上昇するのを抑えている。
一方、人民元の国際化のためにオフショア市場を充実させている。

● 内需拡大の失敗
日本は内需の拡大に失敗してしまった。その結果が長期間にわたるデフレである。
昔から日本の家計の資金余剰はプラスで推移していた。そして高度経済成長期の企業の資金余剰はマイナスであり、家計から銀行を通して企業にお金が流れることで良い循環でお金が回っていた。しかし、日本企業はいつしか資金余剰がプラスになり今までの借金を返し終わり、内需の乏しい日本で新規の投資をしなくなってしまったのだ。今は家計・企業ともにお金が余っている状態で政府(国)だけがお金が足りない構図となっている。故に、現状の家計の余剰資金が銀行を通して国債に流れるのは当然の流れである。そして今の日本はほとんど成長できていない。
中国はこれも避けたい。中国はこれまで安い労働力を武器に世界の工場として君臨し、世界中から工場を誘致してきた。そしてできた製品をまた海外に売りさばきお金を稼ぐといった手法で成長してきた。しかし最近の中国はこの方針を大きく転換させている。中国の労働者の賃金上昇を国が容認しているのだ。10億人以上の人口をもつ中国の平均賃金があがれば内需拡大が大いに期待できる。賃金上昇により世界の工場としての地位を失い同時に経済成長のスピードも鈍化したが、内需拡大によりより長期的で力強い成長を手に入れようとしている。

● 人口問題
● 不良債権

人口問題と不良債権問題でも中国は日本と同じように苦しむ可能性がある。
人口問題で、日本同様中国は少子高齢化が進んでいる。
不良債権問題では、中国にはまだ把握できていない融資(債権)が多くあると言われている。万が一中国がハードランディングするようなことがあれば、この債権が不良債権化して日本と同じような問題に直面する可能性がある。

中国はこの2つに対してまだ明確なアクションをとっていないが、同じ問題で苦しんだ日本を見ているだけに、なんらかの対処法を行うことは間違いない。

尚、上記で簡単に書いた人民元の通貨戦略と日本のセクター別資金需要に関しては、時間があるときに詳しく書きたいと思います。




iPhoneからの投稿