恋は二度目のアネモネ -4ページ目


泣きそうになったのは、
なつかしい河原町の風景を思い出して、
その中に、
若かったあなたとわたしの思い出が、
いくつもいくつも貼りついていたから。

あんなに楽しいことしかなかったのに、
思い出になるとどうして切ないの。
あなたは今もここにいるというのに、
なぜだかあなたを思い出す。
そしてふいに、泣きそうになるのだ。

慕情は、ふっと
心にしのんで、
あたたかく、
やわらかく、
撫でていく。
そしていつだって少しの後悔が、
消えない痕になって残るのだ。


遠い日の愛の残り火が
燃えてる嵐山

胸がじんとなる歌を聴いて、
昔を思い出す。

悲しいことは、もう忘れてしまった。

涙が出るのは、
あの頃の若いふたりが、
とてもとても愛おしいからだ。









美しさだけで惹かれるというとても率直なこころがわたしにもあったのだ。
きみに会うためだけに書くのは正しい動機だし、
小賢しくなくて好ましい。
愛などではなく、
恋とか憧れとか哀しみの中じゃないと、
こころの奥にしんとある、ぬるい水が音を立てることはないから、
ぽこりと沸騰した瞬間をめざとく見つけて、
その泡から、必死で言葉をかきだすのだ。

沼の底でごぼごぼ言ってるわたしにもし、
きみのような才能や美しさがあれば、
自分ひとりきりだけでも、
きちんと幸せなのかもしれないな。
なんてな。
はてな。
ああ、美しいきみをずっと見ていたい。













関西弁でぼそぼそ喋っていたのに、
たちまちとんでもなく美しい顔をして、
笑ったり、泣いたり、
きみのせいで、息がとまるよ。

遠隔操作、されてるみたいだ。
何も手につかない。
ぼうっと、
きみのことを考えて、
幸せになりたいのか、
幸せになってほしいのか、
それはもう
境界線があいまいな願望だ。


あなたが、
もうすぐ帰ってくる。
昨日よりもっと、
わたしを愛しく思いながら。
それはきっと何よりもあたたかい。

わたしより少しだけ、
あなたが幸せであってほしい。







お気に入りの燻製屋さんで、
燻製ビールを嗜む。






好きな人ができたって、
かまわないと思う。
相手が男でも女でもそれ以外でも。
べき、というのは
視野の狭さで増えてゆくのだ。
あなたがどんな人間だろうとどうでもいいけど、
わたし自身は、
べき、の少ない人間でありたい。

人生を自由にするのは、
自由な思考だけだ。


真夜中にたゆたう。
下着もつけないままで、
胃の中まで無防備だ。
彼の赤い目や、
切羽詰まった表情や、
台詞の裏側にある気持ちのすべてが、
わたしを欲情させるから、
きっともうわたし、
ただの日常には飽き飽きしているのだ。
なにもかもかえりみず、
七竈の母のように、
辻斬りしたいのだ。
きっと。


瞳と爪がきらきらしている。
胸元からは良い馨がする。
どんな状況になろうとも、
女を忘れるなどまっぴらごめんだ。









子どもの頃から、
妖怪が好きだった。

この世のものさしではかれないものに、
ずっとずっと憧れていた。

こわいものはおもしろい。
しょうもない現実よりも、
おもしろいものが好きなのだ。





密度を増す季節に、
あなたとふたりで浮世ばなれ。
べとべとさんの足音も、
わたしたちの喧騒には敵うまい。






都会からぞろりと離れて、
日常のきりとり線。

誰の言葉も誰の手も届かない。
自分本位の幸福のなか。
ああ。
こんな素晴らしい休日は何日ぶりだろう。
わたしの完全な幸福は、
いつもあなたのそばにあるのだ。







あなたが買ってくださった栞を挟みたいから、
今夜は鬼太郎夜話を少しだけ読もうかな。


ゲゲゲ。