夜明け前。 -168ページ目

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枯れてしまった心と、一生懸命に生きてる観葉植物。










ちかちかと光る赤い光の群れや下品な看板、きらきら輝くネオンを、時々懐かしく想う。霞んで眼を細めないと見えない星だったり、騒がしい声。アルコールの匂いや、煙草の匂い、そして化粧や香水の匂いや体臭が入り混じって空気が淀んで湿っぽい風を、僕は時々恋しいなって想う。たった1年前の事が、随分と昔のように想えるのはどうしてだろうって、考えたって仕方ないから、ただただ、あの景色を想い出すんだ。妙に切ない気分になって、君の声が聴きたくなって電波を飛ばしてみたけれど、留守番電話のピーという音で、僕は現実に戻される。もしかしたら君なんて存在してなかったんじゃなかったんだろうか。と、馬鹿げた事を想うんだ。そう、何もかも僕の夢であってもそれは、それで、良いやってね。時々知らぬ間に着信履歴が残ってて、それが非通知だったりすると、その度に僕は、連絡が途絶えてしまった人たちの事を想い出す。










01412











からっぽな、脳みそ。小さな痛み。











薄らいでいく記憶が沢山あって、僕の記憶力ってそんなもんだなって想うと、どれだけの出来事や、どれだけの景色を僕は記憶して置くことが出来るんだろう。と、ふと想う。テレビだったか本だったか、ああ、それも忘れてしまったけれど人間の記憶についての事があったっけ。例えば30年生きてきた人間が30年の記憶を全部覚えてる事って、出来ないって。忘れなくちゃ人は前には進めないし、生きては行けないんだって、確かそんな事、言ってたっけ。痛みや苦しみを覚えてちゃ、生きて行けない。っていうような事。僕の脳みその中でも色々な記憶が奥に、奥に追いやられてそしては消えてしまっているんだろうな。自分でも、気がつかないうちに。曖昧になってしまった僕の記憶はやがてどこかに行ってしまう。なんて想ったら少しだけ寂しい気分になってしまう。だから人は、写真を撮るのかもしれない。少しでも、記憶を引き伸ばす為に。あぁ、心に残るような、ずしんと想いそんな出来事と出逢いたい。例えばそれが、僕を悲しませるような出来事だったとしても、だ。このからっぽな脳みそを、何かで埋め尽くしてしまいたい。今の僕には夢中になれるものが、ないのかもしれない。何か、探さなくちゃ。僕が欲しているもの、を。何を欲してるのかさえも、わからないけれど、探さなくちゃ。なんだか、息苦しくなっちゃうよ。














01411









生温い珈琲と、僕の抜け殻。









なんだか毎日のように僕は帰宅後に洗濯をしてるんだ。乾燥している部屋の中で、翌朝にはすっきり乾いてしまう洗濯物を毎朝触るのが癖になってしまった。そして洗い立てのタオルで身支度をすると、なんだか朝から幸せな気分になってしまう。そして、毎晩洗濯したてのルームウェアを着ていると、なんだか物凄く贅沢な気分にもなってしまう。エコブームだってのにこんなに洗濯ばかりして僕は地球に優しくない男かもしれないなって、今夜はそう想ったら、なんだか珈琲を作るのを躊躇ってしまった。生温い珈琲を啜りながら、ああ、やっぱり僕は熱い、熱い。淹れたての珈琲が好きだって、実感してしまったんだ。仕事の合間に外に出てぼんやり煙草を愉しんでいると、冷たい風が時々僕を、痛めつけるけれどやっぱり煙草も好きだなって想った。僕は、変われないのかもしれない。好きなものは、きっとずっと好きのまま。苦手なものを好きになる事はあるけれど、好きなものは嫌いになんかなれないや。そう、君の事だって嫌いになんかなれないよ。どんなに、時間が経ったって、どんなに苦しい想いをしたってね。いつまで、冬が続くんだろう。太陽が沈む時間が少しだけ、ほんの少しだけだけど遅くなってしたような気がする。ああ、春はもうすぐそこまでやってきてるんだろうな。東京に雪が降る事もなく、冬は終わってしまうのかもしれない。そして、いつまでも僕は降るはずもない雪を少し心の奥底で愉しみにしてたりも、するんだ。雪が、降らなくちゃ始まらないし終われない僕の冬。だったら雪の降る街に行けば良いやって、そんな風にも想うけれど、それはそれで正しくないような気が、するんだ。ねぇ、そうだろ。生温い珈琲を飲みながら、背中に猫の温もりを感じながら、木曜日の夜が過ぎて行くよ。