ぴいなつの頭ん中 -4ページ目

ぴいなつの頭ん中

殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる


スワッピングスラム「黒胆汁」


あたし

もう

誰彼構わずまぐわうのをやめます

あたしが食べるのではない

あたしが食べられるのでもない

舐めまわされるのでも舐め回すのでもない

身を委ねるのでも委ねられるのでもない

まぐわうの

やめます


あたしにはひとりだけ

あなただけ

だから誰かと

とっかえひっかえなんて

しません


あたしね

あなたの腕の中でこんなに幸せなことってもう他にないって思いながら同時に

早く死にたいと思うの

それはね

今がいちばん幸せだから死にたいんじゃないの

ただもう消えてしまいたくて

あたしがあなたを愛しているのとも

あなたがあたしを愛しているのとも

別次元で

ああ早く死んでしまいたいなって

死んでしまえって

いつも思ってるの


泣いても無駄なの

あなたが何をしようがあたしの消えたい気持ちは無くならない

たとえあたしが死ぬことでどれだけたくさんの人が悲しみ、お金を払い、責任を取り、泣いて、また死にたくなったとしても

あたしの消えたい気持ちは

無くならない


たとえあたしが死ぬことで

どれだけたくさんの人が悲しみ

お金を払い

責任を取り

泣いて

また死にたくなったとしても

あたしの消えたい気持ちは

無くならない


MONO消しがいちばんよく消えるって

かんたんに

自分の名前をえんぴつで書いて、消しゴムできれいに消す

ノートに

消えないインクでひたすら

消えたいと

いなくなりたいと繰り返し書いた


やぶいて

バラバラになった紙を散らばして

また組み直す

新しい言葉にはならなかったけれど

何か生まれたような気がした


たくさんの気持ちを

紙いっぱいに敷きつめて

やぶいて

ひきちぎって 散らばして

大好きな本を 言葉を 詩を

紙いっぱいに敷きつめて

やぶいて

ひきちぎって 散らばして


そうしてできたのです あたしの黒胆汁の色で染まった

ゴミ箱の中が光って 生まれる

真っ黒だと思っていた体液が

排泄によりクリアになっていることに気づく


だから 消えたい気持ちを

あなたのこころと

まぜあわせて

あたらしくなにかできるかもしれない

そう思うんです


泣きながら殴ったりしないで

死ぬななんて言わないで

他の人と比べないで

めぐまれているとか いないとか

甘えているとか いないとか

そんな次元で考えていることでは

ないの


あたしの大切な

消えていなくなりたい気持ちを

取り除かないで

騙し取らないで

黒胆汁で紡いだ言葉はあたしだけのもの


いつか

あたしがほんとうにねがいをかなえて

死んで、いなくなるときがきたら

あたしの中に溢れている

黒胆汁を一滴残らずインク壺に詰めて

33日おいてから

あなたの血液100ミリリットルとよくまぜて

インクを作ってほしいの


あたしとあなたのまざったインクでなら

どんなことだって書けると思う


3:40


本当に心からここがホームだと思える場所なんてどこもなかった

街はときに大勢の中の一人でいていいのだと肯定してくれながら、ときに消費活動を盛んに行うよう促し、みんなと同じであることを強制し、どこかの集団に属していないことへの焦燥感をかきたてた


想像力をかき立てられると言ってくれたあのひとのすきだった詩

デスマスク

涙が流れそうになる

小説の中の登場人物があなたでないことに

胸がギュッと苦しくなる

あなたとまた会えるかもしれないと思って

あなたみたいな人が出てくる小説を探してる

でも本の中の人はあなたではないから

あなたに似てる人でもないから

わたしは泣いてしまう

また会えなかったと

ゴオッという音がして

ここが飛行機の中なのかJRの高架下なのかわからなくなる

わたしがあなたの想像力をかきたてても

あなたはわたしから想像力をうばってしまう

頭の中で結んだ像がわたしの中でどんどん解像度を失っていく

目に溢れる涙で目の前のものがはっきりと見えなかったから世界がこんなに美しいと感じたのかもしれない

ここに行けば会えるという場所が

数年前に潰れてしまって

頭の中のあなたがどんどん忘れられていく

解像度を失って

わたしは間違った方向を向いて歩いていて

色彩だけがきれいでキラキラしたところに沈み込んでいく

それからどうなるかなんてわからずに

わたしは高架下で自撮りをする

あなたにみつけてもらえないかと期待している

あなたがわたしを忘れないでいてくれればいいのにと

期待している

胸が苦しくて忘れたかった物事が喉に詰まってる

飲み込んだカルダモンの粒が心臓の奥深くにひっかかっていて心を動かすたびにあなたの音がする


1人でいたいのだと言って泣いた

生まれてこなければよかったと駅のホームで騒いでいたのはわたしだったんだよ

1人でいたいのだと言って

もう一人なのに

この街ではわたしを知ってる人はいない

わたしを包み込んでくれる場所はない

わたしの居場所はわたしの胸のカルダモンの粒が弾けるみたいにぐちゃぐちゃに散らばって言葉をなくす

どこかに居続ければよかったのに

あなたにとってわたしのひかりはガラスみたいだもう壊れてしまっていてもおかしくない

日常に埋没してしまって

見て欲しいのではなく

忘れられたくない

ただそれだけだったのかもしれない

涙の結石がコロコロと音を立ててまわっても流れ落ちてくれることはない

溢れても消えていく

あなたの泣いた顔がみられたら

わたし幸せな気持ちになれるかもしれないのに

あなたを傷つけてでも忘れられたくなかったのか

どうしてあのときにあなたを守ってあげられなかったのか


デスマスク

鏡に映るあなたの顔がふとしたきっかけで一瞬わたしの顔に重なる日がありますように

呪いと言われてもいいくらいに

涙の結石があなたのもとに飛んでいきますように

死んでしまえと頭の中で騒ぐ者がある

やらなければならないことをやっていない時や

やるべきことができなかった時

しっぱいした時

努力してもうまくいかないと感じた時

人と気持ちがすれ違ったり誤解を与えた時

八つ当たりをした時

死んでしまえと頭の中で騒ぐ者がある

声ではない

だから幻聴ではない

自然に湧き上がる思考のようなもの

必要な休息をしている時でもそれは騒ぎ出す

死んでしまえと

お前はどうしてまだ生きているのだと

死ねばみんな喜ぶし、誰にも迷惑をかけずにいられるし、みんなのためでもあるのだ

なにもできない自分や、愛されていない自分は世界に必要がない

さあ、死ぬのです

はやく死になさい

そう言われ続けている  毎日毎日

この騒ぎが起きたのはいつからだったか忘れてしまったが、気づいたらしばらくずっと続いていた

何回か死にかけた

電車に飛び込もうと思った

電気あんかのコードをカーテンレールに巻きつけ、そこに首をひっかけた

血管をシャープペンシルで滅多刺しにした

それでも死ねなかった

死ぬのが怖かった

気分がものすごく落ち込まないように、薬を飲みはじめた

医師は大したことはないと言った

わたしが話す悩みがまるで滑稽なものでもあるかのように

医師はいつも片頬でわらっていた

食欲が全くなくなって激痩せしたり一睡もできない日が続いたり真っ青でクマだらけになったり急に倒れたり、そういうわかりやすい衰弱があればわたしはもっと労られてたのだろうか

薬はあまり効かなかった

どれほど継続して規則正しく内服しても、頭の中の死んでしまえ騒ぎはおさまることがなかった

それでも薬を増やされるのが嫌で、受診の時は毎回「調子はまあまあです」と答えた

薬でドロドロに溶かされた人間をたくさん見てきたから

わたしはそうはなりたくなかったのだ

どんなに苦しくても、正気を保っていたかった

たくさん検索をした

わたしの状態に該当する症状は出てこなかった

日増しに辛くなってゆき

好きだった読書もできなくなっていた

やりたいことに没頭することも困難になっていた

他人へも影響した

わたしが自分を嫌いであるあまりに、周りの人々もわたしのことを嫌いに決まってると思った

それでもわたしの妄想を突き破ってわたしに声をかけてくれようとする人がいると

その人は人を見る目のない、唾棄すべき人間なのだと思うかもしくは、恐ろしい感性を持つ人間として避けて通った

マイナスの発言
不安感の表出
自分への悪口
すぐに諦める癖
死ねばいいと思う考え
苦痛やネガティブな感情をすぐに死と結びつける思考

それらもまた、他者を遠ざけていった

死だけが救いのように感じていた

人が楽しんでいる物事を楽しめなかった

どうしようもなく無様な人と出会った

その人はわたしよりも苦痛で、わたしよりも恵まれておらず、わたしよりも不細工で、わたしよりも頭が悪かった

そしてわたしよりも頑張り屋で、わたしよりも信じる心が強く、わたしよりも希望をもっていた

はじめは、その人を見下して優位になりたくて、わたしはその人に近付いた

その人の名をかりにAとしよう

Aは本当に愚かだった
すぐ間違い、すぐつまづいて転び、すぐ騙され、すぐ誤解され、要領もわるく、どこにいっても誰よりもなにもできない、役に立たない人間だった

Aは次々といろんなことを試していたから、どこに行っても新人で、どこに行っても素人だった

見かねて幾つかのアドバイスをするとAは笑顔でいつもありがとうと言った

Aの口癖はありがとうだった

それしか言葉を知らないのかと思うほどその人はありがとうを連発した

たまにきついことを言ってもAはありがとうかごめんねしか言わなかった

あるときAは言った

『あなたにしか言えないけど、たまにね、わたし、なんにもできないからさ、頭の中で、そんなにダメな人間なんだからもういなくなれ!死んじゃえ!って言われてるみたいな気になるの』

ほんとなにやってもダメだし、死んじゃえって思われてもしかたないよね、とAは笑った

わたしは驚いた
わたしと同じだったからだ

『でもね、前向きな言葉を心の中で叫んで、自分に言い聞かせて、打ち消してるの』

どんな言葉?

『なんでもいいんだよ、元気勇気、とか、これがしたい!とか、自分に合った言葉。最近はね、生きる!!って叫ぶことにしてる。死ねって言われたら、生きる!って全力で反抗するの』

こういう、空っぽな前向きさが、Aのいやなところだなと思った

自分が色々考えながら落ち込んでいる時に、空っぽの頭で元気だの勇気だのと言われると、自分が惨めに感じる

こうしている間も、わたしの頭の中では打ち消しようのない『死ね』が聞こえているというのに

わたしは自分のことも打ち明けずに、関心がないふりをした

自宅にかえってみると洗濯物がにわか雨で全て濡れていて、わたしの気分は一気に重たくなった

死んでしまえと頭の中で騒ぐ者がふたたび強まる

こんなことすら対応できない人間なんて生きている意味がないからはやく死になさいと言われている気がする

自分の脳内が生み出している現象だということはわかっている

セロトニンが少なすぎることも

自分でどうにかしたいからたくさん勉強したのだ

栄養も気をつけた

運動もした

朝の光を浴びながら

たくさん努力したのに

どうしていつもわたしは死ぬことばかり考えてしまうのだろう

具体性のない希死念慮は重要視されない

わたしは今すぐにでも入院させてほしい気分だった

この際薬でドロドロにされてもいい気がした

全てを失うとしても

わたしには最初から失って困るほどのものは持ち合わせていない

仕事もお金も、もうどうでもいい気がした

今度こそうまくやろう

うまく死ぬのだ

包丁に手をかけながら、それでも怖くて涙が止まらなかった

元気勇気

元気勇気

元気勇気

Aの声で頭の中にかすかな言葉が浮かんだ

小学生レベルの問題をテストでやらされているような、恥ずかしさとどうしようもなさで悲しくなりながら、わたしは試しに呟いてみた

元気勇気

元気勇気

元気勇気

元気のげでからだに力が入り

『き』の発音の時にわたしの力は歯の間からすうっと抜けていく

勇気、と発音するのにはこんなに力が必要だったのか

でも苦痛ではない

『ゆ』と発音する時にわずかだが『げ』と違う力が動いている感覚がある

2回目の『き』で肩の無駄な力が抜けて

馬鹿馬鹿しいと思いながらもわたしはいつの間にか何度もその言葉をつぶやいていた

声はだんだん大きくなり、『死んでしまえ』の声を打ち消すくらいに、大きな叫びになっていた

悲しみの叫びではなく

強い声だった

自分にこんな力があったなんてと思うほど声は遠くまでゆき、壁で反射してまた心に戻ってくる

最後にふと思い出し、とどめの一言を発した

生きる!!!!

『い』で息を取り込み

『き』で瞬間的に勢いよく吐いて

『る』ではっきりと切り裂いた

目の周りがぎゅっとなって涙が溢れた

包丁をしまい、椅子に座った

死んでしまえの声はまだここにある

しかし以前ほど脅威に感じなくなっていた

わたしにはこれと闘うための武器がみつかったから

死んでしまえというのは単なる思考の余り物であり

脳が作り出すイミテーションだと理解したから

短時間だがこれほどまでに、死んでしまえを吹き飛ばす言葉は今までになかった

またふくらみつつある死んでしまえを見つめながら

この方法を続ければもしかしたら

勝つことができるかもしれない

死んでしまえと頭の中で騒ぐ者に 

別れを告げることができる日が来るかもしれない

そう思った

どうしても調子が悪い時には忘れてしまうかもしれないから

わたしは皮膚に小さく太く

生きる

と描いた





釜寅ってカーマ・スートラの略なのかな。
官能的な食べ物ということなのかな。
釜寅のかにいくら釜飯を今日食べました。
カロリーは951kcal。
これをお昼に食べるために1日の摂取カロリー調整しましたとも。朝はプロテイン。夜はセロリの漬物。

さて、なぜ釜寅を食べることになったかというと、通販型同人即売会のテキレボEXというイベントに5月後半出店していて、その売り上げが芳しかったら売り上げで何か贅沢なものを食べようと思って、前から決めていたのです。
いつも出ている文学フリマも終わったら売り上げで焼肉を食べてるので、そういうことをやろうって思ったんですよね。
本を作るのにもお金がかかるから100%純粋に収入となるわけではないんだけど、なんか本を売ったお金でご飯を食べているという贅沢な感じがします。
ただ普通に何かを食べるのではなく、一旦本にしてからお金にしてる感じ。経済回している感じがすごい。
この感覚が異様に気持ちいいのです。
単なる食事に自分の努力が挟まっているみたいな。

でも今回はただの打ち上げ以上の重みがある気がしている。

通販だから対面じゃないから手続きも面倒だし、普段やってる通販はあんまり動かないし、どのくらい売れるのか正直全然自信なかったの。
だから自分にしてはものすごい勢いで宣伝をしまくっていた。Twitter宣伝まみれになっていたから、うるさいっつって嫌われたらどうしようみたいな気持ちと闘いながら。
目標を持ってそれに向かって頑張って(宣伝をして)、目標が達成できたからご褒美みたいな、ほんと打ち上げ以上の意味があったんです。
本を書くこと自体は頑張ることに含まれないの?ってことになるかもしれませんが、本を書いてから売り出すまでにとんでもなく時間がかかってるのでその頃には本を書いていた時の努力とかはほとんど忘れていることが多いの。
まあ日記を1年分出したときは、手書きのものを全てワードで書き直したのですごくお尻痛かったし頑張った気がしたのだけど。

いつもご褒美的なものを設定すると、目標が達成する前に挫けて自分にご褒美をあげてしまったり達成できずに終わったりしていたので、釜寅は奇跡でした。

目の前にちょこんと、思っていたよりも小さめな釜に入った釜飯。漬物3種類。おだし。お茶漬けみたいに食べる用のわさびとのりとねぎ。
これすぐ食べ終わっちゃうんじゃないかと思ってましたがまず漬物に手を伸ばした時のわたしの手は震えていました。
漬物、大根がぽりぽりしていて美味しかった。他のやつもよくわからないけど美味しかった。そして釜飯。取皿みたいなのがついていたのでほんのちょびっとずつとります。なんてことだ、いつも開いた冷蔵庫の前でしゃがんで数十秒でサラダチキンを食べ終わってしまうわたしが、お米炊いたら2合あっという間に食べ終わっちゃうわたしが、ほんのちょこっとずつ、釜から釜飯を出して食べている。しかも味わって噛み締めている。ごはんは意外と深くて、おこげもついていました。掘り下げる掘り下げる。しかしほんの少しずつ。体が自然とほんの少しずつをとるように動いてるのです。そして少しずつ食べる。
お米おいしい。久しぶりのお米。白くてふわふわのお米。柔らかすぎないお米。かにはよくわからないけどおいしい。いいカニとカニカマの違いがわからないバカ舌だけどおいしい。そしていくら。いくら多めで注文しました。いくらは潰さないようにそっと持ち上げてよそいます。プチプチでプチプチで口の中がとても楽しく美味しいいくらの味が広がります。
釜の中が残り半分になったところで、わたしはお出汁に移行しました。取皿のお茶碗にお出汁をなみなみ注いで、熱い熱い言いながらゴクゴク飲みました。おいしい。お出汁ってこんなにおいしいんだなあ。おでんパックのおだしはがぶ飲みするけども、それとも何か違う感じの味がする。温かさが体に染み渡る。じんわり。
ひとしきりお出汁をたのしみ、またほんの少しずつ釜飯を取皿によそって、お出汁をかけて、少し混ぜる。
美味しい。
ただし、これは問題もあって、プチプチ楽しむべきいくらが蛋白質変性を起こしてゆで卵みたいに固まり、なんか薬みたいに飲み込みにくくなったのです。これは誤算でした。
のこりはお出汁と釜飯は別々に食べ、食べ終わったあと、今までにないような満足感がありました。

目標があってそれに向かって頑張ったご褒美という特別感だけでなく、食べたいものでしかも贅沢なものを選んでピンポイントで注文したということがでかかったのかもしれません。
目標をもつってすばらしい。
たまの贅沢するってすばらしい。
普段の、無駄にたくさん食べたくなるみたいな衝動がなかったことに驚きました。
昔クドカンさんがネットで、過食が止まらないと相談してきた人に対して「高いものを食べましょう」と言っていて何言ってんだこいつと思ったことがあったんですが、食べ過ぎないためには高いものでいいものを選んで精神的な満足感を得るというのもテなのかもしれません。クドカンさんごめんなさい。ようやくわたし、あなたの言っていたことがわかりました。

とにかく自分でも驚くくらいに釜寅体験が特別なものになってしまいました。
釜寅最高でした。ダイレクトマーケティングというのかしらこういうの。
でも釜寅さんからお金は一切もらっていません。
おいしかった。
しあわせ。
書きながらあまり集中力が持たなかった。
夜はやりたいことが多すぎますね。


Twitterで架空の街を紹介するタグにて書いた街の設定。



1.駅前が充実してるんですよ北口が海、南口が山につながっていて、そこでとれたものはみんな好きに持って帰っていいことになってるのです


2.海は有数の美しい海水浴場として名高く、駅舎にあるレンタル水着を着ていつでも手ぶらで泳げるのです


3.山のほうではおいしいきのこがたくさんとれます、雨を降らすきのこ、3分間だけ背が伸びるきのこ、掌サイズになれるきのこ、きのこに変身できるきのこなど。山の中にはいくつかの小さなご飯屋さんがあって、それらのきのこやら珍しい山菜を美味しく煮込んで安く提供してくれるようです。


4.中央口から出ると、世界一小さな時計塔が見えると思います。とても小さいので重厚に、何重にもじょうぶな箱でつつまれているのでかえってめだつのです。

大きさは世界一小さいですが鳴らす音は箱に内蔵された特殊なスピーカーで街中に響くように調整されています。


5. 時計塔を中心にして半円で囲むように、広場にはお店が並んでいます。

向かって左から紅茶の店、クッキーの店、ケーキの店、バイオリンの店、ピアノの店、歌を売る店。

わたしは歌を売る店がいちばんすきです。ここに売っている飴を口にすると、口から歌が流れ出るのです。口を塞いでも鼻から出ます。


6.中央広場はわりと都会的でいつも人々でごった返しています。今年の流行はスチームパンクだそうでみんな、壊れそうなボロボロの機械みたいになってギシギシ音を立てながら街を歩いています。


7.ケーキとクッキーのお店の間をぬけていくと、大きなお城が目の前を覆います。シーラッハ城です。今では街の人たちに人気のテーマパークとなっていますが、かつてはここで強制朗読が行われていました。罪人は罰として、飲食も排泄もできず死ぬまで詩を朗読させられました。


8.詩が人を苦しめるための道具として使われていたという史実を、重く受け止めなくてはなりません。当時の王様は強制朗読の様子を見てたのしみ、気に入らなければ罪人を即ガス室に送りました。面白い詩を読めた者のなかには、出世して王のもとで働けるようになった者もいました。


9.シーラッハ城は現在詩の朗読のボクシングやスラムが行われるテーマパークとなっており、城の中にはいくつものリングが設置されています。また、スケートリンクやスキー場やゴルフ場もあり、あらゆるスポーツを楽しめる場としても親しまれています。


10.この街の名産品はたくさんありますが、ここが若者に大人気の『ラー油チョコレート」の発祥の地といったらこの街の豊かさがすぐにわかるでしょう。お菓子にもなりごはんにもなるという新しさに、2015年には生産が追い付かないくらいのたいへんなヒットとなりました。


11.ラー油チョコレートの専門店は城の中にあります。この街の中ならスーパーにもコンビニにも売っているのできっと手に入れるのは簡単でしょう。シーラッハ王印のラー油チョコレート、お土産にぜひいかがでしょうか。専門店ではラー油チョコレートがけのチュロスや餃子なども販売されています。


12.少しドローンカメラからの景色をご覧ください。駅から10キロ離れるとようやく住宅街があらわれます。この街の人の交通手段は主にロケットなので、このくらい遠くてもあまり困ることはありません。自家用ロケットで通勤や通学をしているのです。


13.この住宅街の特徴といえば、どの家もみんな合掌造りを採用しているということがまずあげられるでしょう。冬にはライトアップもされ、茅葺の屋根にこんもりと乗った雪の景色を楽しむことができます。


14.トイレに行きたくなりましたか?ここでは街のあらゆるところにトイレが隠れています。大きな声でオシッコ!と叫んでみてください。あなたのいるところから一番近い便器が地下から伸びてきて、股の間に接着します。付属されているチューリップのような形の覆いが排泄中は全身を隠してくれます。


15.ドラッグストアやスーパー、コンビニなど日用品を購入する場所も地下に潜っていることが多いです。蜥蜴の尻尾とよばれる魔法陣が街中の歩道そこかしこに描かれていることに気がつきましたか?お手持ちのスマートフォンで魔法陣を読み込めば、ホログラムで店舗が出現しすぐに買い物ができます。


16.この街の伝統工芸を見にいきましょう。住宅街からもう少しはずれたところ、駅からは20kmほど離れているところにギャラリーに併設した工房があります。珍しいピアノをオーダーメイドで作っている工房です。木の匂いがしてきましたね。


17.珍しいピアノといってもただものではありません。曲調と弾くテンポに合わせてカクテルを作る「カクテルピアノ」、子供用にキャンディを出してくれる「キャンディピアノ」絵画を見せると世界観を汲んで演奏してくれる「絵画ピアノ」などなどきっとお気に入りを見つけられるはず。


18.良い街には良い女が住みつくといいます。この街の女性たちは皆強く、そして美しく、いつでも新鮮な感性を持って生きています。


19.医療面ですか?街には大きな病院が3つあり、そのほか小さなクリニックがいくつも点在しています。精神科病院だけはどこにも見当たりません。みんなが在宅で過ごせるように法を整備したら、だれも入院する人がいなくなってしまったのです。


20.え、本屋さんの紹介がないって?駅前に戻りましょう。時計塔の前に小さなドリンクスタンドがあったのを覚えていますか?そこで飲み物を一つ買って飲むと、時計塔の中に入れるようになるのです。中には、全世界から集めた最高の書籍たちが所狭しと並んでいます。お気に入りを見つけに行きましょう!


21.蛇の抜け殻の魔法陣に気づきましたか。それは図書館をあらわしています。魔法陣の真ん中に立って足踏みをするだけで、今度はホログラムでなく実体の建物が出現します。


22.映画館はすべて地下に潜っています。そこの階段を降りていくんですよ。トイレとは違う配管なのでご安心を。

月に一回、この中央広場で、広場全体を映画館にする催しが行われています。その日になると街中の人だけでなくあちこちから人が集まって、お菓子を食べながらわいわい映画を楽しむのです。


23.ブンチョウが寄ってきましたねこの街にいちばん多く生息している野鳥です。あっ、モンスターボールを向けないで。みんな大人しくていい子なので、炊く前のお米をあげると喜んでついてきますよ。


24.山のほうにあるかわいいシンデレラ城みたいな建造物は、ラブホテルです。

トリックアートをふんだんに利用した内装となっており、軽くスリルも味わえると評判です。

ロケットの駐車場も充実しています。


25.地酒ならおすすめのものがあります。小豆で作ったお酒です。その珍しさをはじめ、ほのかな甘みとやわらかい香りで人々を夢中にする逸品。ミルク割りがお勧めです。


26.中央広場のクッキー屋さんにインタビューをしてみましょう。クッキーの焼ける暖かい匂いがしてきます。「たまに猫が来て大量に買い占めていくんだよ。焼く前の生地がすきで食べに来る猫もいるね。やっぱり隣町が猫の街だから仕方ないのかねえ」だそうです!!!


27.街をランニングしているおじさんに聞いてみました。「あそこの道をビューっといってジャーッと曲がったとこにね、ロケットの工場があんのよ。子供向けにおもちゃのロケットなんかもつくってて見たら面白いと思うよ!折り紙工場の二軒先ね!」


28.コロッケ屋さんの「おにく」でラー油チョコレート入りのコロッケを食べながら、住宅街と程近い商店街を歩いていきます。暖かい部屋着からセクシー水着まで何でも売っています。脂肪を買い取ってくれるお店もあるのだけど、会員制で会員費がちょっとお高めだとか。


29.商店街にあるカフェは動物雇用制度が充実していて、動物のための就労支援事業所が所有している店舗が5つほどあります。食べ物に困り山から降りてきた動物たちにカフェで働いてもらい、報酬はそれぞれが希望したものを支給しています。