Chapter2:戦闘訓練
2
訓練開始二日目になると、さすがにミキの乗る戦闘機を邪魔する者はいなくなった。パイロットとして腕は皆に認められたものの、特に用が無い限り、ミキを遠巻きに見ている事がほとんどで、ミキに声をかけるのはアドルフぐらいなものだ。地上訓練でも、女性にしては誰もが認めざる得ない優秀な成績を見つけ付けられると、つけいる暇もないらしい。
ミキのほうから声を掛けても必要以外の返答しかなく、今まで威嚇していた輩ほど、バツが悪いのか、早々とミキの前から立ち去ってしまう。
まあ……こんな環境は初めてではないけどな。
開き直るわけではないが、優秀がゆえにいつも邪険にされる事が多いミキは、いつもの事だとクールに振る舞うしかない。それが余計に生意気だと判断されて、あきらかにパイロット仲間の中でもミキの存在は浮いて見えた。
逃げている訳ではないけれど、どことなく自分の居場所がない。ミキの足は自然に戦闘機にしか向かなかった。
戦闘機はいい。ミキを裏切らない。人間のようによけいなことも言わず、ミキの言うとおり動いてくれる。一日でも早く、自分専用の最新型戦闘機を飛ばしてみたくて、ミキは時間があると、格納庫へ足を向けることが多くなっていた。
ミキはようやく二日目の戦闘訓練を終え、機を降りると、アドルフに声をかけた。
「明日には仕上がりそうか?」
「そうですね。今夜徹夜でがんばりますよ」
油まみれになりながらも、笑顔を向けてくれるアドルフの対応が嬉しい。
「徹夜か?なにもそこまでしなくたって……」
「いいや、僕が早く仕上げたいんですよ。僕が整備した機をミキさんが操縦する。整備士の仕事をする僕にとってはそれが何より誇らしい。貴方がこれを飛ばす姿が早くみたいんです」
「そうか……」
そこまで言われると、ミキは何も言えなかった。確かにアドルフを見ていると、仕事だからと嫌々やらされている感はまったくなく、もっとよい整備をして、一刻も早く仕上げたいという気持があふれているようだった。
「じゃあ、オレも今夜はつきあう」
「え?」
「オレがいたら邪魔か?」
「いえ、そんな事は。むしろ調整具合の好みをすぐに聞けるので、僕としてはいてもらったほうが助かりますが」
「なら、決まりな」
「いいんですか?徹夜になるかもしれませんよ。ミキさんは、明日も訓練があるのでしょう?」
「オレは大丈夫だから。心配するなって」
ミキはアドルフににかりと笑い、そう告げると、部屋から毛布や新型戦闘機の取扱説明書を持ってきて、夜通しアドルフに付きあう事にした。
to be continued……