chapter1:イーグルF22
6
二人が食堂に向かうと、ちょうど夕餉の時刻のピークなのか、大勢の軍人がセルフサービスのカウンターの前に列を作っていた。
アドルフとミキの姿を見付けると、ひそひそと小声でこちらを見やる仕草をする者が多い。新任のミキが気になるのか、皆、遠目にミキを伺っているようだった。
しかたがない。どこの基地に行っても最初は少なからずこんな経験をするものだ。
ミキは淡々とカウンターからトレーを受け取り、皿に盛ってある料理を受け取ると、空いている窓際の席を陣取った。
すぐ向かいにアドルフが座った。なんとなく居心地悪さを否めないミキを、アドルフが察してそっと声をかけた。
「ミキさんの瞳は金色ですからね。慣れるまでは多少此所では我慢しなければならない事もあるかもしれません」
「は? 瞳の色が何か関係あるのか?」
「ええ……多少は。此所はミキさんもご存じの通り、この基地は国内でも最大の基地です。だからなのかもしれませんが、多国籍軍といってもゲルマン民族の証、白色の肌に金髪、蒼い瞳以外の人を、排除したがる傾向にあるようなんです。よく言えば愛国主義者、悪く言えばただの見栄っぱりのプライドなんでしょうかね。特にミキさんは若くして、エースパイロットとしてこの地にやってきた。しかも女性だ。裏をかえせばミキさんの事がみんな気になって仕方がないんだと思います」
「そんなモンかね……」
「でも、実力がある者には敬意を払う主義のようですので、ミキさんなら大丈夫ですよ。ほら、ミュンホ長官の例もありますから」
そういえばミュンホも漆黒の髪と瞳。典型的なゲルマン民族とは違う。一緒に基地内を歩いただけでも、ミュンホに対する敬意を払う者が多かったのには、ミキも記憶にあった。
「ミュンホ長官も、最初此所に赴任して来られた時は、影では相当な言われようでした。でも半年、一年もするとみんな手のひらを返すように違ってきました。人間は少なからず、最初は見た目で判断したがるものだから」
正直、ミキは気分がよくなかった。
食事中、アドルフが気をつかって話しかけてきたが、適当な相槌しかうたず、食もあまり進まない。
「じゃあ、僕は仕事に戻りますので」
アドルフは残りの仕事があるからと先に席を立ち、残されたミキは一人、部屋に戻った。
to be continued……