Chapter4:戦友 1
「馬鹿者!」
ミキが機を下りると、ミュンホ長官の罵声の第一声で、皆、びくりとした。
「無事だったからよかったものの、ミサイルも持たず、敵に向かって行くとは、どういうつもりだ? あれほど無茶はするなと言っただろう!」
「無茶じゃありません。オレはちゃんと出来るつもりでした」
「なんだと? 上官の私の言うことを無視するつもりか?」
「いえ……オレは無視はしてません。自分で無茶ではないと判断したからやったまでの事だ」
「私は深追いはするなと言っただろう? それが聞けないというのか?」
ミキと、ミュンホ長官の言い合いに、機を下りてきた他のパイロットとアドルフが駆けつけた。
「長官、自分はミキのおかげで助かりました」
先程、敵の襲撃を受けた熟練のパイロットが口をはさんだ。
「すいません、僕のせいでもあるんです。部品の発注をもっと早くしていれば、ミキさんの戦闘機にもミサイルが積めたはずなのです」
パイロットに続いてアドルフも弁護する。二人にそう言われ、何か言葉を継ごうとしたミュンホも、黙って言葉を飲み込んだ。
「いいか? 以後、私の命令を無視するようなら、それなりの処分をするからな。解散!」
ミュンホ長官は激しい口調でそう言うと、スタスタと管制塔の建物の中へ入っていった。
無言で皆その後ろ姿を見送る。
ミュンホの姿が建物の中に消えると、ようやくアドルフがミキの側へ駆け寄り、声をかけた。
「ミキさん、無事でよかった……」
あからさまに脱力しながら言われると、生きて帰るのも悪くないと思う。今までは、エールパイロットであるミキが死ねば、誰かが変わってエースパイロットになる。心からミキが戻ってくるのを望んでいる者が果たしていたのか疑問だ。
アドルフのように、心から喜んでくれる者はいなかった。
「ああ。まあな」
少し照れながらアドルフの言葉に曖昧に相槌を打つと、ミキは先程自分の代わりに敵にミサイルを打ち込んでくれた仲間のパイロットへ歩み寄った。
「さっきは助かった。礼を言っとく。ありがとう」
「……礼を言われる程の事はない。私も仲間の機をやられて、腹が立っていたしな。お互いさまだ」
相手のパイロットも礼を言いながら、静かにミキに右手を差し出す。ミキもおずおずと手を差し出し、黙ってお互い握手をした。
温かい手だった。パイロットの仲間同士で礼を言われても、握手まで求められることはそう多くない。ミキは照れくさいくて、一人スタスタと宿舎の方へ歩き出した。どんな顔をしてよいかわからなかったからだ。
その様子を見ていた他のパイロットが、ミキの後ろ姿に声をかけた。
「おい! お前のトルクロール、凄かったぞ!」
ミキは一瞬振り向くと、黙って軽く片手を上げてそれに応じた。嬉しいけれど、こんな時どんな対応をしてよいのかわからない。今まで自分を遠巻きに見ていたパイロットも、ようやく自分を認めてくれた気がして嬉しくて、口角だけを少し上げた。
「なんだ。笑うと美人じゃないか」
リップサービスだとわかっていても、無言だったパイロット達と軽口をたたき合えるとは悪くない。ミキはそれをかみ締めながら、自室に戻った。
to be continued……