Chapter2:戦闘訓練
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夜中の格納庫は寒い。
本格的な冬はまだ先だが、朝夕ともなるとしんと冷え込む。じっとしていると寒さで手がかじかむ気がしてミキは積極的にアドルフの手伝いをしようと申し出た。
「他にやる事あるか?」
「すいません。じゃあ、そこの工具箱からスパナとレンチを取ってください」
「これか?」
「レンチは一番小さいやつ」
「わかった」
勝別、言葉を交わすわけではないけれど、なんとなく二人で一つの作業をしているのかと思うと単調な作業でも楽しく思えてくるから不思議だ。
ミキは出来る範囲で手伝いをしようと、アドルフに言われるまま、工具を手渡したり、手伝いの合間に、計器やレーダーの見方や使い方を取扱説明書を広げては、一つ一つ確認していく。
あっと言う間に時間は過ぎていった。
「ミキさん、コックピットに戻ってちょっとスロットルーレバーを引いてもらえますか?」
「わかった」
ミキは補助ハシゴを登り、キャノピーを開けて操縦席につくと、レバーをひく。
「こうか?」
「ええ、しばらくそのままでお願いします」
ミキはレバーを固定すると、他にアドルフの手伝いができないものかと、操縦席から外に出た。
アドルフはエンジンのカウリングを外し、冷たい床の上に薄いマットを引いた上に仰向けにねそべり、スロットバルブの調整をしている。
力を込めてスロットバルブを締める度、アドルフが時々唇をかみ締める仕草を見ると、ミキの脳裏には恋人の姿が蘇った。
恋人のモルダーもよくそんな仕草をしていたものだ。
一つ年下の幼なじみで育ち、小さい頃はミキの方が体も大きく何でもできたが、負けん気だけは強かった。
めったに我が儘は言わないヤツだったが、言い出した事はガンとして譲らない。自分が出来ると思っていてもできない事があると、唇が白くなるまでかみ締めて、ぐっと泣きそう顔を我慢する。泣き虫なクセに、理不尽なことがあると絶対揺るがない自分を持っていた。いつもミキが守ってやるのが常だったのに。
いつの間にか、背を追い越され、気がつくと好きだと告白されていた。最初は弟としか見れないから無理だ。と断ったのに、モルダーは、なかなかミキを諦めなかった。いつの間にか、情にほだされ、ミキもモルダーを男として意識してからは、ミキもすっかり頼れる男になっていた。
オイルとガソリンの油汚れにまみれながら、スパナを握りしめ、一人奮闘するアドルフの姿は、なぜだかそんな恋人の顔を思い出させた。
to be continued……