Chapter5:親友
6
ミキが機体を通常に戻すと、後部座席のアドルフは死にそうな声で名前を呼んだ。
「……ミ、ミキ…さん…。うっぷ……」
今にも吐きそうで、口元を押さえている。
「悪い、悪い。ちょっと調子に乗りすぎた」
ミキはアドルフとは反対に、陽気な声で返事をした。
アドルフには、悪いと思うが、今ならどんな飛行だって出来る気がした。モルダーが亡くなって、こんなに素直な気持ちで飛びたいと思った事はなかった。一つ、何かを乗り越えた気がする。
ミキは、アドルフに言い切れない感謝の気持で一杯だった。ミキにしてみれば、アクロバット飛行も嬉しいと思う自己表現の一つだったのだが、パイロットでもないアドルフにしてみれば、良い迷惑だろう。
「アドルフ、悪りぃ。大丈夫か?今夜は調子がよくてつい……。悪かったな。あとは真っ直ぐ飛んで、計器を調べよう」
反省しながらも、心の高揚は留まらない。それでも、最初の目的である夜間飛行の意味をもたせようと、無理矢理心を静めるよう深呼吸する。
心の高揚が落ち着くようにやがて高度が安定すると、ミキは計器のチェックを始めた。
高度オッケー。
油圧オッケー。
問題のミサイル残量、脱着ランプ、オッケー。
ミキ計器をチェックし、まだ青い顔をしているアドルフに報告する。
アドルフも高度が落ちつくと、少し気分がよくなったのか、いつもの口調に戻っていた。
「じゃあ、今度は自動操縦モードで同じ事をやってもらえますか?」
「わかった」
アドルフ言われた通り、ミキは舵を固定し、自動操縦モードに切り替える。
灯りがついたメーターとボタンを、一つ、一つ、指先確認をしながらチェックしていくと、先程はちゃんとついたはずのボタンが一つだけ赤く点滅したものがあるのに気づいた。
「アドルフ、これは何のランプだ?」
「どれですか?」
今まで気がつかなかったけれど、確かに一つだけ座席の下の方で赤く点滅していた。
「一番下のヤツだ」
「一番下か……。判りました。後で見てみますね」
「ああ、頼む」
ミキは一通り飛ぶと、再び基地に戻る事にした。
滑走路の誘導灯に導かれて、滑るように着陸する。なんの衝撃もなく、やがて機体は減速し、滑走路の端で止まった。
to be continued……