Chapter4:戦友 4
「私は、あの時の惨事を身にしみてわかっている。あの時、私が無茶をするなというのも、わかるだろう?」
「……ああ」
オレは想像した。
目の前で大事な人を亡くした絶望感。
人に説明されなくても、オレ自身がそのつらさは、よく知っている。
「特にお前はウチの基地のエースパイロットだからな。新型の戦闘機をそう廃車にしてもらっては困る」
おい!
人が感動しているのに、お金の心配かよ!
ミュンホ長官を見ると、胸の前で小さく十字架をきり、静かに目を閉じて祈りを捧げている。口は悪いが、それがこの人なりの優しさなのかもしれない。
「もう……戦闘機には乗らないのか?」
「私にはもうその資格はない。レオニーを失った時に、全てを放棄してしまった。ただ……アイツの死を無駄にはしたくない。私なりのやり方で、報いる事ができるのならばと、長官を勤めているのだ。出来ることなら、無駄な戦いはしたくない。もっと上の階級をめざして、この世界から戦争を無くすのが、私の願いなのだ」
知らなかった。見た限り、順風満帆な人生を送っているように見えたミュンホも、実はこんな過去を背負っていたのかと思うと、自分だけが苦しい思いをしているのではない気に思えてくる。
「詳しい事は知らないが、お前もそれなりにいろいろあるのだろう? 命は大事にしろ。少なからず悲しむ人はいるはずだ」
ミキは黙ってその言葉を黙って聞いていた。
「暗い話はここまでにしょう。どうする? これから街に繰り出して飲みにいくか?」
せっかくの上官のお誘いだが、今はそんな気になれない。
「せっかくだけど、基地に戻る」
「そうか。せっかく女の子を紹介してやろうと思ったのだがな。おっと、失礼。お前はまかりなりとも女性だったな。ならばボーイズバーでもどうだ? 美少年ばかり揃えた店を知っているぞ」
なに? 女ばかりでなくとも、男もイケル口なのか?
ニヤリと口角を上げて笑うミュンホの顔は、もういつもの顔だった。
「オレはそんな趣味はない。先に帰らせてもらう」
ミキはそそくさと踵を返すと、後頭部から声が聞こえた。
「タクシーを待たせておいた。基地に戻るなら、それを使うといい」
「ミュンホ長官は?」
「私の事は心配しなくていい。電話すれば迎えに来てくれる彼女ならいくらでもいる」
まったく。煮ても食えないヤツだ。
ミキは基地に戻ろうと、墓地の外で待っていたタクシーに乗り込んだ。
タクシーに乗り込んだのがよかったが、すっかり食事を食べ損ねた事を思い出した。どこかのレストランで食事をとってもよかったのだが、そんな気もうせてしまった。ミキは途中、タクシーを止め、食料を買い込み、そのまま基地にもどった。
to be continued……