Chapter3:襲撃 1
訓練三日目。
ミキが整備を手伝った甲斐もあり、ようやく基地に来て初めて自分に当てられた専用戦闘機を飛ばすことができた。
今日の訓練は、基地にある四本ある滑走路をすべて使い、速攻離陸の訓練を中心に行う。
ミキはあれからぐっすり眠ったおかげで、調子はよかった。アドルフに起こされて、いったん自室にもどってシャワーを浴びると、専用のパイロットスーツに身を包む。前身頃のジッパーを上げると、身が引き締まる思いがした。
さっそく格納庫にもどり、ヘルメットを装着して操縦席に乗り込む。エンジンにスイッチを入れ、ゆっくりとレバーを倒して前進させる。滑走路までゆっくりとした動きで操縦すると、緊張してグローブにぐっしょりと汗をかいた。
エンジン全開。
ゴゥと戦闘機のジェット音が、心地よい振動と共に操縦席まで鳴り響く。あとはもう身体が勝手に動いていて、気がついた時は、ミキはすでに上空一千メートル彼方の雲の上だった。
無線でアドルフが呼びかける。
「調子はどうです?」
ミキは油圧計、高度計を瞬時にチェックし、明るい声で返答した。
「ああ。初めて飛ばした割りには調子がいい。今日は晴れて環境もいいしな。今度は天候が悪い時に飛ばしてみたいけど」
「そうですか。よかった。でもまだ第一回目のフライトなので、あまり無茶はしないでくださいよ」
「ああ……わかってる。適当にとばして、宙返りと低空飛行を試してみるよ」
「そうですね。後でどんな調子だったか教えてください。エンジンの微調整は、実際に飛ばしてみないとわからないものだから。パイロットのクセや好みもありますしね」
へぇ。コイツよくわかっているじゃないか。
ミュンホ長官が言っていた事はまんざら嘘でもないらしい。まだアドルフと組んで間もないが、押しつけがましいところは全くなかった。むしろ自分好みに合わせようとしてくれる気持が嬉しい。腕の立つ整備士の中には、熟練の自分の腕を過信するあまり、パイロットの好みや飛び方をまったく聞き入れてくれない輩もいる。
ミキ自身も、何度かそんな整備士と組まされ、自分の思い通りの飛行ができなくて、イライラした事も一度や二度ではない。確かに整備をするという観点では間違っていないのだろうが、戦闘機はもっとデリケートなものなのだ。
マッハ単位のスピードの中では、〇・一秒の操作が命取りになる。もちろんパイロットの腕にもよるだろうが、そのパイロットの腕を十分出せる整備をする者こそ、整備士の資格を名乗るべきだというミキなりの持論があった。そうゆう観点からすると、アドルフの整備に対する姿勢は及第点と言ったところだろうか。いいや、及第点どころか、初めて会った整備士に、ここまで好みの調整をしてもらえたことに、喜びを隠しきれない。思わず口笛を吹きたくなる気分だ。ミキは思っていたより、アドルフと相性が合いそうなのかもしれないと、心の中でほくそ笑んだ。
to be continued……