Chapter3:襲撃 2
その時だった。レーダーに未確認飛行物体のランプが点滅した。
なんだ? これは?
ミキはすぐ、別の機のパイロットに無線で確認をした。
「二時の方向に未確認飛行物体を確認。そちらでも確認できるか?」
「まあな」
必要だと思われる質問をしても、仲間のパイロットは、曖昧な答えしか返さなかった。
やはり、自分はこのチームのパイロットには認めて貰えてないのだと確信すると、なんだか悔しい。軽くみなされるのは慣れているが、今はそんなことを言っている場合ではない。プライドがあるのはわかるが、対処が遅ければそこに待つものは『死』なのだ。
ミキは再度忠告しようとすると、横割りの無線が入った。
「ああ。私も確認した」
どうやらミキの無線を聞いていたらしい。管制塔のミュンホだった。
「こちら司令室からだ。非常事態発生。未確認飛行物体だ。しばらく様子を見ろ!」
ミュンホからの厳しい口調で通信が全機に入った。他のメンバーも、いくらミキが気に入らないからといって無視はできない。長官から直々の命令なので、即刻返答をするしかなかった。
「ラジャー!」
一斉に声をあげて、戦闘態勢に入った。
現在、エドワードの仲間は九機いた。けして少ない数ではない。相手がどんなヤツから知らないが、こちらのレーダーに感知されていると言うことは、相手側にもミキを含む仲間の機が九個のランプとなって相手にも認識されているはずだ。
もし、この相手が敵だとしても、レーダーに映っている数は一つ。
九対一では、よほどの秘策がない限り、攻撃は仕掛けてこないだろう。場合にもよるが、この分だと、ミキの軍に分が多い事は明白だった。こういった場合、相手が攻撃をしかけてこない限り、偵察だけでどこかへ姿を消すまで未確認飛行物体を観察するのが、セオリーである。
ミキは、未確認飛行物体と、ある程度距離をおきながら様子を見ようと低空飛行へと移ろうとした。スロットルを倒して、首尾を下げる。高度計を見ると、少しずつ高度は下がり、他の機もまたミキに習い、低空飛行する機と上空飛行する機にわかれて、要観察体勢に入ろうとしていた。
ズドン!
それは突然だった。
すざましい爆撃音と共に、煙が立ちこめる。煙と雲で前方が見えない。ミキはすぐにレーダーを確認し、後尾モニターのスイッチを入れると、仲間の機が一機、煙をあげながら高度を下げていく風景が目に入った。
襲撃だ。
敵の機は、こちらの戦闘機の数をものともせずに先攻を仕掛けてくるのだから、相当攻撃力に自身があるのか、何か秘策があるのかもしれない。
「ブーメラン、大丈夫か?」
管制塔からの無線で、緊迫したミュンホの声が響いた。
ブーメランとは、追撃された仲間のコードネームだ。戦闘中は名前で呼んだりはしない。敵にパイロットの名前を知られない為だ。
「つ、翼を一部やられました。大丈夫です」
「なら自力でもどれ!他の機はブーメランを援護しろ」
「長官、こちらから攻撃はしないのか?」
ミキは早口で問いかけた。
「攻撃できるものならやってみろ。但し、お前の機体には、まだミサイルを積んでいないんだからな」
「ミサイルを搭載してないって? でもちゃんと翼の下に積んでるじゃないか!」
ミキの問いに答えるように、アドルフから通信が入る。
「すいません。言い忘れていたのですが、そこにあるのはミサイルのバルカン砲のカバーだけで、中身は空なんです。実はまだうちの基地に部品が届いていなくて……」
「なんだって?」
「悪いな。まさか訓練中に戦闘態勢に入るとは、私も予測をしていなかったからな。とにかくそうゆうわけだ。今日のところは、深追いはやめておけ」
ミュンホ長官が命じている最中にも、敵の機体からミサイルが連射される。
「長官、オレの機にミサイルがなくても、他の機からは攻撃できるだろ?」
言っている側から、敵は攻撃を仕掛けてくる。幸いにも味方の狙われた機は上手くかわし、ミサイルは当たらなかった。
「このまま基地に帰ってか?やられっぱなしじゃ、舐められるだけだろ!」
仲間の機はやられたのに、一方的な敵の攻撃に何もやり返せないとはあまりに悔しい。
ミキの脳裏には、あの時の悪夢が蘇っていた。
to be continued……