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「な、何をする……」
「乱暴だな。せっかく仲間にしてあげたのに」
「何を言ってる?」
おかしい。
レオナルドの言う事が理解できない。
こ、これは……レオじゃない。
レオは決してこんな風にはしない。
弟とキスをしたことなどないくせに、ウィリアムはなんとなくそれだけは直感でわかる。
ここにいるのは弟じゃないのか?
では、誰だ?
ウィリアムは相手の顔を見ようとするけれど、薄暗くてよくわからない。
背格好も弟にそっくりだが、少し声が違う気もする。
「そんなに嫌わないでよ」
ウィリアムに突き飛ばされて床に倒れた人物は、ズボンについた埃をはらいながら立ち上がった。
ベルベットのカーテンの隙間から足下だけ薄く日差しが入り、かろうじて近づいてくる人物のシルエットが確認できるぐらいになるが、背格好はやはりレオナルドのようだ。
「キスは初めてだったの?」
違う。
レオナルドがこんな事を言うはずがない。
これは誰だ?
「レオじゃないのか?」
ようやく逆光だった位置からずれて、相手の顔が確認できると、ウィリアムは驚いた。
「……レオナルド?」
「嬉しいね。僕の名前を呼んでくれるとは」
そこには袖が少しふくらんだシルクのシャツのボタンを上から二段目ほどはずし、黒いパンツ姿のレオナルドがやさしく微笑んでいた。
「薔薇の館へようこそ。貴方は白い薔薇がよく似合うね」
きっとレオナルドが髪に飾ってくれた野薔薇の事をいっているのだろう。
「レオじゃ……ないな」
目の前の青年は確かに弟のレオナルドそっくりだ。けれどよく見ると瞳の色が自分と同じ金色ではなく蒼い瞳をしている。この顔……たしか先程肖像画に描かれていた人物そっくりだ。
「何を言っているの?僕はレオナルドだよ。レオナルド・ハイデリヒ。せっかく仲間にしてあげたのだから、もっと僕に感謝して欲しいな」
次の瞬間、ウィリアムの体に痛みが走った。
「……うっ……」
「痛いでしょう?少し我慢してね。我慢できなかったら、ベッドに連れて行ってあげようか?」
ウィリアムは痛みにこらえきれず、床に伏せてはぁはぁと息を荒げる。
「はぁ……お、お前……オレに何をした?」
「貴方があんまり可愛いから、仲間にしてあげたんだ。これで貴方には永遠の美しさと永遠の命が保証されたよ」
「永遠の命?」
「ああ。貴方は僕の仲間になったんだ。これで貴方もヴァンパイアだよ。ずっとこれからは僕と一緒だ」
ハイデリヒは満足気なほほえみを浮かべて、床に伏せるウィリアムに近づいた。
to be continued……