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少し長い廊下を進むと、どうやら食堂のようだった。
長いテーブルに何脚もの椅子が白い布をかぶって整然と並んでいる様は、たとえ埃をかぶっていても美しい。
食堂の上座の席の後ろには、真鍮の額縁に縁取られた肖像画があった。
肖像画の人物はどこかで見たことがあるような……。
繋いだ手をふりほどき、ウィリアムが絵に近寄ってみると、それは紛れもなく見たことのある人物だ。
「なんでレオがここに……?」
少し時代遅れなスーツを身にまとい、美しい金髪を短髪にして斜めにわけて、優雅に椅子に座っている。けれどよく見ると、その人物の瞳は金色ではなく、蒼い目をしていた。
「なあ、レオ、お前ここに来たことがレオのか……?」
返事がない。
ウィリアムはレオナルドの返事がないのもおかまいなしに、更に肖像画に近づいてみると、右下の隅の方に小さな文字が書き込んでレオ。
―レオナルド・ハイデリヒ 1838年―
名前は同じなのにつづりも違うし、名字が違う。年代も今から五十年以上も前のものだ。
……なんだ。レオじゃない。よく似ているけれど、これは別人だ。
「レオ、これはどうやら別人のレオみたいだな。それにしても、これ、お前にそっくりだ」
返事がない。
「レオ……?」
返事がないのを不審に思ったウィリアムが振り向いたが、レオナルドの姿が見あたらない。
「レオ! どこだ?」
「おい! レオ!」
ウィリアムが辺りを探すと、逆光のせいかよくわからないが、先程いたはずのレオナルドの場所とは違う方に誰かがいるようだ。
なんだ。レオナルドはここにいるじゃないか。
段々と近づく足音がする。
「レオ、驚かすなよ」
ウィリアムが言うのも無視して、何も答えない代わりに誰かが暗闇の中、ぎゅっと抱きしめる。
え?
一瞬、薔薇の香りがした。
外に咲き乱れている薔薇の香りだ。
ウィリアムがその香りに酔いそうになると、誰かが顎に手をかけ、ゆっくりとウィリアムの唇にキスを落とす。
なんだ……?
オレは今レオにキスをされているのか?
ウィリアムは胸が高鳴るのを感じながら、目を閉じるのも忘れていた。
「……可愛い人だね。仲間にしたいな」
次の瞬間、首もとにチクリとした小さな痛みをウィリアムは感じたが、それよりもレオナルドにキスをされたことに驚いて、相手を突き飛ばした。
to be continued……