というわけで、ビンテージシンセ系プラグイン特集の後編。
前回はARTURIA V COLLECTION 5から僕のお気に入りプラグインをいくつかご紹介しましたが、今回は以下のバンドルから。
・KORG Legacy Collection
こちらも定番中の定番ですよね。
僕は遅ればせながら、昨年のサマーセールで購入しました。
例のnanoKEYを同時購入すると半額になるプランと組み合わせたので、税込9,000円くらい。
ちなみにARTURIA V COLLECTION 5は、ARTURIAのオフィシャルサイトで日本円にして26,000円くらいで購入しました。
折しも「トランプショック」で円安だったんですけど、それでもかなりのお買い得価格ですよね。
基本的に、僕は激安セールの時しか購入しません(笑)
話が脱線しましたが・・・
KORG Legacy Collectionを使っての感想は、GUIが小さくて使い辛い!
まずはそれですね、やっぱり(笑)
なので、まだあまり使いこなしていません。
しばらく前にKORG Legacy CollectionからKORG Collectionにリニューアルされましたが、今のところGUIは従来通りのようなので、アップグレードは保留中です。
追加プラグインのARP ODYSSEYは使ってみたいけど、取りあえずARTURIA V COLLECTION 5 ARP 2600があるからなあ・・・
今後のアップデートに期待。
MS-20
僕は、もっぱらこのプラグイン目当てでKORG Legacy Collectionを購入しました。
オリジナルは、いまだ根強い人気を誇る1978年発売のセミモジュラー式アナログモノフォニックシンセサイザー。
低価格ながら2基のオシレーターに加えてオシレーターシンクやリングモジュレーター(メタリックな倍音を発生させる装置)などの機能を備え、ハイエンドなアナログシンセサイザー同等の音作りができるのが魅力。
なんですが・・・
いかんせん、どんな音を作ってもMS-20の音しかしない!(笑)
ベースはあくまでもMS-20のベース、パッドはあくまでもMS-20のパッド、リードはあくまでもMS-20のリード、といった具合で。
「この音が欲しくて買った!」という方はいいですけど、「なんか違う」と感じた方も結構いらっしゃるのではないでしょうか?
(とりわけ、ハード版のMS-20miniを購入した方。)
良くも悪くも、それくらい個性的な機種です。
ザラッとした質感の音、というんですかね?
初期テクノポップ、インダストリアル~EBM(エレクトロニックボディミュージック)系のアーティストには人気がありました。
一時期流行ったラウンジ系のような使い方には向いていないかも・・・
個人的には、これから使い込んでみたいプラグインです。
Polysix
実機には全く興味なかったんですが(見た目が好きじゃないので)、何かと使い勝手のいいプラグイン。
「取りあえずアナログポリシンセの音が欲しいけど、Prophet VやJup-8 Vを立ち上げるほどでもない」という時に重宝します(笑)
なんといっても、CPU負荷が軽いですからね。
(その点は、このバンドル全般に言えることですが。)
1VCO+サブオシレーターという構成なので、オシレーターシンクやクロスモジュレーションを用いた複雑な音作りはできないものの、「使える音」がすぐに出せるのが魅力。
とりわけ、パッド系の音には定評がありますよね。
レゾナンス発振によるベル系の音も強力。
PWM(パルスワイズモジュレーション)をハイピッチで揺らすと、YMOやJAPANっぽい音も作れますよ。
惜しむらくは、ノイズジェネレーターが付いていないこと。
元々の機種が「プログラミング(作った音を保存する)機能付きポリシンセを安価で提供する」というコンセプトに基づいているので、仕方ないんですけどね。
その点は僕が愛用していたProphet-600にも通ずるものがあって、シンセ普及期ならではの試行錯誤を感じさせる機種です。
M1
1988年に発売された、元祖オールインワンシンセ。
なんと、今年で発売30周年とのこと!
おめでとうございます〜。
とにかく、このシンセが発売された時はぶったまげました。
PCM音源、デジタルシーケンサー、マルチエフェクター・・・
それらが一体化されたシンセが、実に20万円代で買えるとは。
Prophet-5やDX-7と同じくらい、もしくはそれ以上にシンセ史を塗り替える革命的な機種だったと思います。
DAWの先駆けともいえますしね。
さすがに今の耳で聴くと時代を感じさせられますが、それを言ったらおしまいなので・・・(笑)
生音系はともかく、デジタルシンセ系の音は今でも使えるものが結構ありますよね。
僕が使っているLogic Pro Xには、意外とこの手の音が収録されていなかったりするし。
(生音系かビンテージアナログシンセ系が大半)。
なんといっても僕はM1の後継機である01Wから音楽制作を始めたので、懐かしい音の数々に感涙!
特に、ワールドミュージック系、環境音系ね。
音楽制作を始めた頃のワクワク感を思い起こさせてくれるという意味でも、貴重なプラグインです。
・Free Software
以下は、無料で配布されているプラグインです。
無料とは言っても、即戦力になるものが最近は多いですよね!
(僕の制作環境はMac+Logic Pro Xなので、AU 64bit版のプラグインしか使用できないのですが・・・)
ここでは、2018年5月現在でもダウンロード可能なプラグインのみ紹介します。
(機種名をクリックするとダウンロード先へ移行します。)
個人的には「待ってました!」のプラグイン。
1977年に発売されたKORGのセミモジュラーシンセ、PS-3100をエミュレートしたもの。
(上位機種にPS-3200、PS-3300があり、いずれもFB-3200、FB-3300としてプラグイン化されています。)
このPSシリーズ、なんと全鍵盤対応のポリフォニックシンセでした。
見た目もシンセマニアの心をくすぐるもので、Moogモジュラーが「箪笥」だとしたら、PSシリーズは「勉強机」といったところ(私見です)。
YMOファンには、坂本さんのファーストアルバム「千のナイフ」ライナーノーツに写真が載っている機種として有名ですよね。
また、YMOの第一次ワールドツアーの公開リハーサルが箱根のスタジオで行われ、その際の写真を見ると細野さんがPSシリーズを使用しているんですが、実際のツアーでは使用されませんでした。
なんでも、安定性が極めて悪い機種だったらしいので、そのせいかなあ・・・
このプラグイン、とにかく音が素晴らしいです!
MS-20よりマイルドかつ繊細、Mini Moogのようにリッチかつマッシブでありながらコード弾きしても暑苦しくない。
パッチングによって、かなり変な音を作ることも可能。
プリセットも即戦力になるものばかりで、試奏しているだけで楽しくなること請け合いです。
これで無料とは!
ただ、各パラメーターのネーミングに古いシンセ特有の「死語」が使われているので、一瞬何が何やら分からなくなります。
今日のネーミングに置き換えると、「SG(Signal Generator)」がVCO、「MG(Modulation Generator)」がLFOですね。
「SG」は1基(すなわち1VCO)、「MG」は2基(2LFO)搭載されています。
「MG1」は通常の意味でのLFO(低周波発振器)とは異なり、かなり高い周波数まで出せるので、金属的な音を作ることも可能。
つまりは、LFOとクロスモジュレーション両方の機能を兼ね備えているというわけですね。
「MG2」はモジュレーションソースとなる波形を選択することができず、あらかじめ三角波が設定されているので、用途によって「MG1」と使い分けて下さい。
パッチングはケーブルで繋ぐのではなくクリックで選択するタイプなのですが、KORG Legacy Collection MS-20よりむしろ分かりやすいのではないかと思います。
以下、「MG(Modulation Generator)」の基本的な使い方を解説します。
1. オシレーターに適用して金属的な音を作りたい場合
パネル左側「SG」の下部にあるスイッチ「MG」を下側にし、そのすぐ下のツマミでモジュレートする幅(つまり、この場合は「音程」)を設定。そして中央の「MG1」で好みの波形を選択し、「Frequency」ツマミでモジュレーションスピード(1秒間につき何回音を揺らすか)を高めに設定。
「MG1」で矩形波を選ぶと、モロにテクノポップ〜ニューウェーブ系の音になります!(笑)
「Frequency」ツマミを低めに設定した場合は、通常のビブラート効果です。
2. フィルターに適用してスイープ効果を作りたい場合
パネル左側「LOWPASS」の下部にあるスイッチを下側にし、そのすぐ下のツマミでモジュレートする幅を設定。そして中央の「MG1」で好みの波形を選択し、「Frequency」ツマミでモジュレーションスピードを設定。
3. アンプに適用してトレモロ効果を作りたい場合
パネル右側のパッチングエリアで「VCA1」もしくは「VCA2」の「MOD」をクリック、「Internal」から「MG1」もしくは「MG2」を選択。そして「MG1」もしくは「MG2」の「Frequency」ツマミでモジュレーションスピードを設定。
以上です。
平均律以外のチューニングが可能なのもPSシリーズならではの機能で、このプラグインではあらかじめ様々なチューニングがプリセットされています。
とにかく使って良し、遊んで良し。
ビンテージシンセに興味のある方なら、取りあえずゲットしておいて間違いありません。
超オススメです!
こちらも超定番ですよね。
1983年に発売されたYAMAHAのFM音源デジタルシンセ、DX-7をエミュレートしたプラグイン。
僕は1984年秋、自分にとって最初のシンセを買う際に、当時大ヒットしていたDX-7にするかYMOの楽曲に近い音を出せるProphet-600にするか迷ったのですが、結局後者にしました。
今となってはProphet-600にして良かったと胸を撫で下ろしているものの(DX-7にしていたら間違いなく途中で売っ払って他の機種に乗り換えていた筈なので)、DX-7に対する未練はずっと抱え続けていたんですよね。
そしたら、このプラグインでしょ。
しかも、システムエクスクルーシブでファイルを読み込むことによって(「Dexed Syx」で検索してみて下さい)、DX-7のファクトリープリセットをそのまま鳴らすことができるとは!
で、試してみたところ、当時のヒット曲で耳馴染みのある音が入っているわ、入っているわ。
一気に、80年代当時へタイムスリップしてしまいました(笑)
一世を風靡したエレピやチューブラーベルはさすがに使うのが憚られますが、やっぱり美しい音。
マリンバや琴も、リアルではないけれど独特の清潔感があって素敵。
「Train」というプリセットが有名なので聴いてみると、なるほど、こういう音だったのね〜(笑)
ARTURIA DX7 Vを購入したらお役御免になってしまいそうですが、ここまで実機そっくりに再現してくれたことに感謝です!
個人的には、僕が作曲を始めた当初に使っていたYAMAHA V2のプラグインも作って欲しいなあ〜。
(チープながらも、アナログ感のある音が良かった。)
1985年に発売されたアナログポリフォニックシンセ、ROLAND JX-8Pをエミュレートしたプラグイン。
実機ではPG-800という専用のコントローラー(別売)を使用して音作りするようになっていましたが、このプラグインはそのPG-800を模した作りになっています。
機種の型番やコントローラーを使用して音作りする点から見るとJX-3Pという機種の流れを汲んでいるように思えますが、メーカー的には「ポストJupiter-8」という位置付けだったようです。
実際、2基のオシレーターに加えてクロスモジュレーション(スイッチの切り替えでオシレーターシンク、もしくはリングモジュレーターとして使用)を搭載していたり、エンベロープをオシレーターにも適用できたりと、Jupiter-8同様に自由度の高い音作りが可能となっています。
ちなみにオシレーターはVCOではなく、デジタル制御によるDCOでした。
その点はJX-3PやJUNOシリーズと同じで、いわばROLANDのアナログシンセ技術の集大成とも言える機種だったと言えます。
にも関わらず、あまり売れなかった(笑)
DX-7などのデジタルシンセが脚光を浴びていたり、音楽シーン的にもテクノ系が衰退していたりと、そういった時代背景によるところも大きかったのかも知れませんね。
さて、このプラグインですが、何よりも音作りがしやすい。
もちろん、元々のPG-800がそうだからなんですが、非常に合理的な構成になっているんですよね。
僕が知る限り、アナログシンセの音作りを理解するには最適の機種だと思います。
というわけで、初心者の方にもオススメです。
肝心の音はというと、これぞ80’Sアナログポリシンセサウンド!
良くも悪くもオーソドックスというか中庸的で、その点は80年代半ばの音楽シーンに通ずるものがあります。
プリセットに「PET SHOP BOYSナントカ」というのがあるけど、まさにそんなカンジ(笑)
ただ、エグい音を作ろうと思えば作れるし、リッチな音はリッチなので、ダウンロードしておいて全く損はありません。
というか、これだけハイクオリティーな音源がタダで手に入るなんて、素晴らしい時代になったとしか言いようがない!
個人的には、このPG-8Xと前述のDexedだけを使って、80年代のアマチュアのデモテープっぽい曲を作ってみたいです(笑)
というわけで、2回に渡って紹介してきましたが、いかがでしたか?
僕自身、まだまだ理解不足の点があるとは思いますが、何かしらお役に立てたなら幸いです。
今後は、個々の銘器とそれを用いた名曲の数々をご紹介しますので、どうかお楽しみに。
ではまた!(^-^)ノ~~~