ご無沙汰です。
新曲、ついにアップしました。
計5曲。
どれも興味深いものになっていると思うので、是非とも聴いて欲しいです!
大半の楽曲は、かなり以前に完成していたのですが、「久々の新曲だし、これまで以上のものにしないと!」と意気込むうちに、どんどん遅くなってしまいました。
あと、「こないだ買った新製品を試してからにしよう」というカンジで、新製品のリリースとイタチごっこになってしまったという事情もあります(笑)
コロナ以降の1年半だけでも数十曲ぶんのデモを作りましたが、今回は比較的ポップな楽曲を中心にセレクトしました。
記事のタイトルにも書いたように、テーマは「Middle 80’Sアーバンポップ」であります。
近年、Early 80’Sのシティーポップがブームになっていますよね。
「ならこっちはMiddle 80’Sだ!シティーじゃなくてアーバンだ!」みたいなノリで。
実際、Fairlight CMI、Emulator II、DX-7など、Middle 80’Sの象徴的シンセを再現したプラグイン(ソフト音源)を多用しています。
あと、楽曲の空気感。
80年代半ばというと、まだまだノンビリしたムードが残っていたんですよね。
バブル景気が本格化するのは87年頃からなので。
80’Sの音楽が持っていた叙情的かつエレガントな感覚を、僕は現代に甦らせたいのです。
シティポップの時代(70年代後半~80年代前半)は、生演奏主体のフュージョンっぽいサウンドが主流でした。
やがて、テクノポップ等、打ち込みによるインダストリアルなサウンドや制作方法が主流となります。
いわば、「シティポップにインダストリアルな美意識を加味したものがアーバンポップ」といったところでしょうか。
では、お楽しみ下さい!
各曲の解説も読んでいただけると嬉しいです。
(Photo By Narumi)
“風天 (Fu-Ten)”
風天とは、「フーテンの寅さん」のフーテンです。
寅さんが田舎道を歩いてくるようなイメージ。
「瘋癲」と書くとイメージを限定してしまうので、当て字にしました。
和メロのインストなのでYMOを連想される方もいらっしゃるでしょうが、自分的にはYMOという意識はありません。
むしろ、DJ的なテクニックやシティーポップ風のコード進行を取り入れるなど、今日的なダンスミュージックを意識しました。
イントロだけは、一風堂「China Step」ようなキッチュなテイストを狙ったんですけど。
シンセは主に、Massive、Serum、Prophet-Vを使用しています。
ピアノは、Korg M1のアノ音(笑)
リアルな音色より、こっちの方が良かったんですよね。
実は、作曲したのは一昨年の10月。
その少し前に母が癌で亡くなったのですが、入院していた際、母の実家に残っている古いアルバムを見ながらたくさん話をしました。
モノクロ写真に焼き付けられた、遠い昔の風景や人々の姿・・・
それらを思い浮かべながら作ったのが、この曲です。
いわば、失われた風景や人々への挽歌。
母が亡くなった当初は「胸に穴があく、とはこういうことか」というくらいに喪失感を覚えましたが、この曲を作ったことで癒されました。
音楽を作っていなかったら、僕はとっくにダメになっていたでしょう。
“Hip Hop Tracks Vol.1 (Trailer)”
「Trailer」とあるように、複数のトラックを繋げたものです。
ラッパーと音源制作したいんですよね。
そのためのデモです。
全体的にラウンジっぽいというか、深夜っぽい(笑)
DJ MITSU THE BEATSなど、ジャジーなテイストのヒップホップが好きなんですよね。
自分の好きな要素をミックスしたらこうなりました、というカンジ。
僕は作曲する際、まず最初にNative Instruments Maschineでベーシックなオケを作るのですが、これらのトラックに関しては2ミックスまで全てMaschineで作っています。
もちろん、JUP-8 V、UVI Emulation II等のプラグインも使っていますけど。
ラストのトラックで和メロを奏でているのは、FB-3100というフリーのプラグイン。
以前にも当ブログで紹介しましたけど、とても好きなプラグインです。
元になったのは、KORG PS-3100。
初期YMOで細野さんが使っていた本棚みたいな(笑)シンセですね。
あと、ROLAND JX-8PをエミュレートしたPG8Xというプラグインも使っています。
音作りが単純明快で、取りあえずアナログシンセが欲しい時に重宝するプラグインです。
そうそう。
ヒップホップといえばレコード等からのサンプリングが定番ですが、著作権という観点から、僕は打ち込みだけで作りました。
Maschineの拡張音源にはイイカンジの音ネタがたくさん収録されているので、その点でも僕の楽曲制作には欠かせないツールです。
“Urban Ethnology”
ソロ活動を始めた頃のDavid Sylvianっぽくしようと思ったのですが、作り進めていくうちに坂本さんっぽくなってしまいました。
「オネアミスの翼」とか、あのへんのカンジ。
これぞ、「Middle 80’Sアーバンポップ」なサウンド。
その意味では、今回の中心的な楽曲かも知れません。
日本庭園や日本家屋特有の緊張感をイメージして作ったんですが、それってどんなタイトルにしたら良いのやら?!
というわけで、「都市の民族学」というもっともらしいタイトルに落ち着きました。
サウンド的には何と言っても、Fairlight CMIのボイス。
そう、坂本さん「Self Portrait」やTears For Fears「Shout」等でお馴染みのサウンドです。
あれを使いたかった!
でも、有効なのは今回限りでしょうね(笑)
あと、昨年末に無料配布されていたNI Yangqinというプラグインも使っています。
揚琴(中国琴)をサンプリングしたものですが、これがなかなかリアルで良い。
「オネアミスの翼」というよりは「ラストエンペラー」になってしまいますけど(笑)
間奏やアウトロのベルっぽいシーケンスフレーズに用いているのは、前述のPG8X。
Prophet-Vのポリモジュレーションで作ってもいいんですけど、こちらの方がよりシンセっぽい。
他には、Serum、u-he Diva等を使っています。
“日傘の女 (Off Vocal Version)”
以前短縮版をアップしていましたが、こちらがフルコーラス版。
(今後、ボーカルとラップを入れる予定。)
ちょっとYENレーベルの頃の幸宏さんと細野さんっぽい。
僕にしては珍しくハモンドオルガンやオルタナ系ギターを取り入れて、新機軸を打ち出してみました。
「ギョーン」という特徴的な響きの低音シンセはEmulation IIです。
(Depeche Mode「A Question Of Lust」等で使われていた音。)
曲名にもあるように、クロード・モネの絵画「日傘の女」にインスパイアされました。
モネは同じモチーフでたくさん作品を残しているんですが、僕がインスパイアされたのは奥さんと幼い息子が描かれている一枚です。
奥さん(モネの最初の奥さん)は、32歳で亡くなっているんですよ。
で、「年老いた息子が、若くして亡くなった母親を偲んでいる」という設定で作曲しました。
言うまでもなく、その設定には僕自身と母が託されています。
実はこの曲、3年前に短縮版を作った時には、母はまだ存命だったんですよ。
でも、近い将来、確実に母との別れが訪れる。
いわば、心の準備のつもりで作ったんですね。
そんなわけで、この「日傘の女」と「風天」は繋がっています。
僕が幼かった頃、母は近所の子供達も一緒に野原へ連れて行ってくれました。
シロツメクサの白やレンゲのピンクが、まばゆい光の中で風に揺れていた・・・
そんな情景が、この曲を聴くと甦ります。
“Heavy Metal Music”
ヘビーメタルと言っても、長髪の兄ちゃんがやっている暑苦しい音楽のことではありません。
文字通り、「ヘビーな金属音を用いた音楽」の意です。
Maschineの拡張音源には、金属片を叩いたような音がたくさん収録されているんですよ。
アインシュトゥルテンデ・ノイバウテンやTEST DEPTみたいな。
インダストリアルミュージック愛好家の僕として、使わない手はなかった!
リズムパートは全てメタルパーカッションによるもので、通常のドラムキットの音は一切使用していません。
シンセもアナログ系は封印して、DX7-VやSerum等、デジタルシンセのみを使用しています。
他にも、ワルそうな音がたくさん入ってる(笑)
近年、屋形船による工場見学ツアーが人気を博していますよね。
この曲も、工場見学ツアーをイメージして作ったものです。
「夜の東京湾を出港し、川崎の運河をすり抜けて工場地帯へ。縦横無尽に張り巡らされたパイプと無数の照明をまとったプラント群に圧倒され、再び太平洋へ。いつしか水平線には昇る太陽が・・・」
みたいなストーリーの、一大インダストリアル絵巻!
「コロナ禍が終息したら真っ先に川崎の工場地帯へ行きたい!」と思っていただけたなら幸いです。
というわけで、楽しんでいただけましたか?
僕としては無事アップを終えて、本当にホッとしました。
心置きなく、次回作に取り掛かりたいと思います。
ではでは(^-^)ノ~~~