こんにちは!
三ヶ月ほど前になりますが、Behringerの製品「TD-3」を購入しました。
そう、Roland TB-303のクローンとして話題騒然の機種です。
正直、いまさら303という感はあったのですが、ニコちゃんマークのキュートさについつい食指を伸ばしてしまいました(笑)
見た目だけでなく、サウンドもかなりソレっぽいです。
僕は303の実機を使ったことがないので微妙なニュアンスまでは分かりませんが、フィルターの切れ具合もスムースだし、レゾナンスの効き具合もイイカンジ。
なんといっても、直感的にプレイできるのがハードならではですよね。
オーバードライブまで付いて、これが1万円台で買える時代が来るとは!
テクノを続けてきて良かったなあ~。
というわけで、今回はTB-303を取り上げます。
これまではハイエンド機種ばかりを取り上げてきましたが、今回は身の丈に応じた機種ということで(笑)
(画像はWikipediaから)
Roland TB-303 Bass Line
・発売開始:1982年
・価格:53,000円
・音源方式:アナログ
・最大同時発音数:1音
・オシレーター:ノコギリ波&矩形波(音域=3オクターブ)
・フィルター:24db/octローパスフィルター
・シーケンサー:64パターン×7トラック
・SYNC IN端子搭載(Roland独自のDIN-SYNC規格)
・CV OUT端子、GATE OUT端子搭載(本機のシーケンサーで外部機器をコントロール可能)
・MIX IN端子搭載(本機のオシレーターの代わりに外部オーディオ信号を接続して使用)
・携帯用ソフトケース付き
とまあ、基本情報はこんなところ。
80年代当時の音楽雑誌(Keybord Special誌1984年12月号)には「世界初のベースマシン。1曲分のリズムパートをまるごと自動演奏できるTR-606のベース版」と記載されています。
おそらくメーカーの宣伝文からの引用だと思われますが、「本体のみで自動演奏可能な音源」という点が当時としてはセールスポイントだったのでしょう。
シーケンサー付きの音源なんて珍しかったし、シーケンサーと音源をそれぞれ購入するとなると相応の出費を覚悟しなければなりませんでしたので。
もっとも安価な反面、サウンドや機能は中途半端なものでした。
およそ一般的なベースフレーズの作成には向いていないし、シーケンサーも使い勝手が悪い。
僕の記憶にある限り、アマチュアでも本機を使用している人はまずいませんでしたね。
「こんなのどうやって使うんだ?」というカンジで。
完全に忘れられた存在でした。
90年代に入ってアシッドハウスリバイバルが起こるまでは。
シーケンサーの使い勝手が悪いと書きましたが、入力方法が独特。
まず「音の高さ」を入力、次に「音の長さ」を入力するというものです。
不便なのはディスプレイがついておらず、どこを打ち込んでいるのか分からなくなりがちなこと。
「音の高さ」はキーボードで鳴らせるのでまだしも、「音の長さ」は頭の中で音符をイメージしながら入力するしかないので間違いやすい。
また、打ち込んだ音のオクターブを変更したりスライドやアクセント等の効果をつけるには「音の高さ」と「音の長さ」の入力後に行う必要があるわけですが、この際にも間違いやすい。
それらのミステイクが重なると、とんでもないフレーズが鳴ってしまうことになります。
それがカッコ良ければいいのですが、大抵は単なる「入力ミス」にしか聴こえない。
「303で打ち込めば、おのずとACID TRAXみたいになるんだろう」という思い込みは全くの幻想であることを、あらかじめお伝えしておきます(笑)
結果的に、メーカーの意図せぬところで本機はその魅力を発揮し、テクノという音楽スタイルを象徴する楽器にまでなりました。
303にまつわる数多のレジェンドは、他の方々に筆を譲るとして・・・
では、当ブログ独自の視点で303使用曲を聴いていきましょう。
Heaven 17 / Let Me Go(1983)
The Human Leagueを脱退したマーティン・ウェアらによって結成されたHeaven 17。
彼らの楽曲にはハウスの方法論を先取りしたようなものがいくつかあって、それらは現在の耳で聴いても興味深いです。
この曲は2ndアルバム「The Luxury Gap」からのシングルカットですが、バレアリックハウスにも通じる楽園的なムードがありますよね。
そんなわけで僕は長年、夕日に染まるイビザ島を思い浮かべながらこの曲を聴いていたんですが、今回初めてPVを見てあまりのギャップに愕然としました(笑)
まあ、これはこれでイギリスのニューウェーブっぽくていいですけど。
肝心のTB-303ですが、ベースに使われています。
プロのミュージシャンが303を使った例としては、世界的にもかなり早かったんじゃないでしょうか。
ベース本来の使い方をしているのが逆に新鮮だったりします。
ちなみに幸宏さんが彼らにソロツアーへの参加を要請したところ、楽器を弾けない彼らはビビって逃げ出した・・・
と、ピーター・バラカンさんがラジオ番組で暴露していました。
A Certain Ratio / Good Together(1989)
Factoryレーベル出身ということでNew Orderの弟分的な扱いをされがちだったACRですが、New Orderとは違う部分でUKのクラブカルチャーに大きな足跡を残したと言えましょう。
ファンクを基調としつつもラテンやジャズの要素も取り入れたクロスオーバーな音楽性は、ある意味New Order以上に幅広い影響力を持つものだったのではないでしょうか?
Swing Out Sisterも、ACRの元メンバーが始めたユニットだしね。
この曲はACRが古巣Factoryを離れ、メジャーのA&Mに移籍して発表したアルバム「Good Together」からのシングルカット。
僕は当時「夜のヒットスタジオ」でこの曲を聴き、あまりの無機質さに「これがハウスというものか」と呆気に取られたものです。
このライブ映像では汗みずくのボーカリストや色っぽい女性シンガーのせいで、肉体派の印象を与えるかも知れませんけどね。
ちなみにこの曲の12インチバージョンでは303のウネウネサウンドがよりフィーチャーされ、Happy Mondaysのメンバーがコーラスで参加したりもしています。
今年、12年ぶりのアルバム「ACR LOCO」をリリース。
「Yo Yo Gi」という曲では山手線のアナウンスなどが使われ、PVも新宿や渋谷で撮影されたものです。
90年代レイブ風の曲調とあいまってなかなか面白い作品になっているので、興味のある方はYouTubeをチェックしてみて下さい。
ULTRAMARINE / Stella(1991)
僕はこの曲を「Crepuscule For Cafe Apres-Midi」というコンピ盤で知りました。
そのことからも分かるように80年代のネオアコ、さらには00年代以降のフォークトロニカ、チルウェイブあたりに通じる牧歌的かつ夢想的なエレポップに仕上がっています。
個人的には、初期China CrisisやTestpatternを連想させられました。
とにかく素敵な曲なので聴いてみて下さい。
去年リリースされた最新アルバム「Signals Into Space」では、Crepusculeレーベル時代の同胞アンナ・ドミノ(!)がボーカルで参加しています。
Hardfloor / Lost In The Silver Box(1993)
ベタですが、303復権の最大の功労者であるHardfloorはやっぱり外せないでしょう。
タイトルの「The Silver Box」とは、当然303のことですよね。
この曲は彼らの1stアルバム「TB Resucitation」の冒頭を飾る曲ですが、使われているのは303やTR-909等の電子楽器のみながらロッキン(笑)なノリを強く感じさせられる。
その意味で、80年代のDAFから00年代のJUSTICEへ至るテクノパンクの系譜に位置付けられる曲なのではないでしょうか?
それにしても、ここまで303を使い倒す熱量がスゴイ。
「思い込んだら真っしぐら」なドイツ人気質と言ってしまえばそれまでですが(笑)、レコーディング技術が飛躍的に進んだ今だからこそ、あらためてその姿勢を学びたいと思います。
Ellen Allien / Erdmond(2017)
ドイツ繋がりで、「ベルリンのテクノ女番長」ことエレン・エイリアンの作品を。
DJとして日本のWIRE等にも出演しているので、ご存知の方はご存知でしょう。
こちらは2017年のアルバム「Ellen Allien」収録曲。
宇宙船の発射シーンを想起させるアンビエントなトラックに、大地の鳴動を思わせる303のベース音がハマっています。
去年リリースされた最新アルバム「Allientronic」でも303等のアシッドサウンドが全開。
決して斬新な音楽をクリエイトするタイプの人ではありませんが、ニューウェーブ世代ならではのデカダンかつファッショナブルな世界観が魅力です。
というわけで、独断と偏見のままにお送りしてきました。
303を使った有名曲は無数にあるのでご不満の向きもあるかも知れませんが、ご容赦下さい。
さて、僕はというと年末恒例のセールでシンセ等のプラグインをいくつか購入しました。
それらを使って再構築したいので、新曲の公開が大幅に遅れております。
当ブログの目玉としては、某Emulator2のプラグインも購入しました(笑)
公開をお楽しみに~♫
ではまた!(^-^)ノ~~~