時代を彩った銘器と名曲 ~E-MU Emulator~ | 無頼派エレクトロ。

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こんにちは!

今回取り上げるのはコチラ。

 

 

ご存知、サンプリングキーボードの元祖的存在「E-mu Systems Emulator」であります。

(写真はWikipediaから)

1981年発売、価格は当時の日本円にして約300万円!

サンプリングキーボード自体は、それ以前にもフェアライトやシンクラヴィア等がありましたが、一般大衆への認知度という点ではイミュレーターに軍配が上がるのではないでしょうか?

NHK教育テレビで「YOU・YMOの音楽講座」が放映されたのと同じ1983年頃のこと、「欽ちゃんのどこまでやるの!」でシンガーソングライターの原田真二氏がイミュレーターの実演をやっているのをたまたま見たんですよ。

欽ちゃんの声をサンプリングして欽ちゃんバンドと演奏していたんだっけかな?

解説も、「YMOの音楽講座」以上に親切で。

あの「欽どこ」こそ、実に「サンプラー」および「サンプリング」という概念がお茶の間に進出した記念すべき瞬間でした(笑)

当時は他にも、落語家の桂文珍氏がイミュレーターを購入したことが話題になったり。

楽器に興味がない人でも「イミュレーター」という固有名詞を知っているというのは、かなり特異な状況だったんじゃないでしょうか。

一風堂やChina Crisisのアルバムにはメンバーの担当楽器として「Keyboard」「Synthesizer」とは別に「Emulator」とクレジットされていましたしね。

まだまだサンプラーが珍しかった時代のお話です。

 

 

 

では、主なスペックを紹介。

 

・49鍵(UPPERとLOWERにスプリット可)

・最大同時発音数:2音 / 4音 / 8音(タイプによって異なる)

・ビット数およびサンプリング周波数:8bit / 27kHz

・最大サンプリングタイム:約2秒

・メモリー:128KB

・Vibrato搭載

・Sustain / Filter搭載(初期型は未搭載)

・5.25インチフロッピーディスクドライブ搭載

 

と、こんなところですが、発売時期によって仕様がだいぶ異なるようです。

 

 

こちらは「細野観光 1969-2019」で展示されていた細野さん所有のイミュレーター。

シーケンサーが搭載されていますが、初期型には未搭載でした。

(冒頭の写真参照。)

 

 

同じく「細野観光 1969-2019」から。

同期演奏には、こちらのインターフェース(CV/GATE方式)を使用。

後期型のイミュレーターではMIDI規格に変更となりましたが、初期型にはCV/GATE端子すら搭載されていませんでした。

(つまり外部機器でコントロールできない。)

 

 

ついでにリアパネルの写真も。

でっかいロゴとギザギザの冷却ファンがインパクト大でしたよね~。

PCと接続するためのコネクタも見受けられます。

 

 

さて、肝心のサンプラーとしての機能ですが・・・

音色のエディットが困難だったらしく、ワンショットで鳴らすか購入したフロッピーディスクの音色を使うかのどちらかというケースが多かったようです。

「8bit / 27kHz」というスペックが示す通り、音質もかなりローファイでした。

細野さんのように、そのローファイさを「味」と捉えて使い倒したミュージシャンもいた一方、坂本さんなどは早々に売っ払ってしまったようです。

1985年頃だったか、Keybord Magazine誌の売ります買いますコーナーで「以前のオーナーは坂本龍一氏です」と書かれたイミュレーターが出品されているのを見ましたから。

「ウィンターライブで弾いてたやつ売っちゃったのか~」と考えて悲しくなったんですけど(笑)

フェアライトと違って、サンプリング以外の特殊な機能はありませんでしたしね。

 

1986年に登場した後継機のEmulator IIではサンプリングタイムが17.6秒になるなど、大幅な機能アップが図られました。

先鋭的なミュージシャンの作品のみならず歌謡曲でも多用されることとなり、テレビの音楽番組でも日常的に目にしたものです。

それと共に、テクノポップやニューウェーブ音楽が衰退したのは皮肉な話ですが・・・

Emulator IIIが登場した頃にはAKAI S900等の安価な製品が出回り、サンプラー自体が当たり前の存在になってしまいました。

なので、個人的にイミュレーターが輝いていた時代はIIまで。

あの「未知との遭遇」的な(SFチックな)ビジュアルだけで、いまだにときめくんですよね。

インテリアとして部屋に飾っておきたい!(笑)

イミュレーターを再現したプラグインとしてはUVIの製品等がありますが、個人的にはARUTURIA V COLLECTIONでの製品化を熱望しています。

Emulator IとEmulator II を切り替えられたりしたら最高なんだけどなあ~。

 

 

では、イミュレーターの使用曲を聴いていきましょう。

 

 

 

細野晴臣 / 3-6-9(1984)

細野さん&イミュレーターといったら真っ先に「フィルハーモニー」なんですけど、今回は「Making Of NON-STANDARD MUSIC」に収録されているこちらの曲を。

リリース当時、NHKで深夜に放送されたテレビ番組で、細野さんがこの曲を例にイミュレーターのサンプルネタを紹介していました。

セロテープを「ビリビリ」と引き剥がす音とか、ホチキスを「ガシャッ」とやった音とか、算盤を振った音とか、そんなカンジだったと記憶しています。

曲のどこで使われているのかは、実際に聴いてみて下さい。

同番組では細野さん「Super Xevious(Gust Notch Mix)」安野とも子「Flower Bird Wind Moon」のスタジオライブも披露されました。

番組名を忘れちゃったんですが、NHKに映像が残っていたら是非とも再放送して欲しいものです。

 

 

 

立花ハジメ / LIVE TAIYO-SUN ’86(1986)

本当は「Replicant J.B.(Remix Edit Version)」を紹介したかったんだけど、見つからなかったのでこちらを。

一応、初代イミュレーターも映っているのでご容赦下さい(笑)

「Replicant J.B.(Remix Edit Version)」ではイミュレーターによるスラップベースのソロが大々的にフィーチャーされていて、それが実にサイボーグっぽくてカッコイイんですよね。

同様のサウンドはハジメ氏が制作に関わった坂本龍一&トーマス・ドルビー「Field Work(12inch)」でも聴くことができます。

この動画のライブは、確かインクスティック芝浦等で行われたんですよね。

壁のごとく積み上げられたテレビモニターや怒涛のインダストリアル音響が時代を偲ばせます。

それはそうと、今頃気付いたけどハジメ氏の歌声はBauhausのピーター・マーフィーにソックリですね。

顔の感じも似てるし(笑)

 

 

 

Depeche Mode / People Are People (Different mix)(1984)

インダストリアルサウンドを大胆に導入しデペッシュの飛躍を促した1984年のヒットシングル。

僕もこの曲で彼等を知りました。

こちらはエイドリアン・シャーウッドが手掛けたリミックスロングバージョンですが、ビデオもそれに合わせて編集されています。

ウミネコの鳴き声やピアノなど、モロにイミュレーターのプリセット(メーカー供給のフロッピーに収録されていた音)っぽいですよね。

当時、デペッシュのメンバーはまだ20台前半だったと思うんですが、アレンジといい音作りといい実にクオリティーが高い!

イミュレーターやFM音源による主張の強い音が多用されているにも関わらず、全く破綻せず端正にまとまっています。

デペッシュの楽曲を聴いていると、工場のプラントのような構築美を感じさせられるんですよね。

モダニズム(近代合理主義)の極致というか。 

20世紀末のヨーロッパでしか生まれ得なかった音楽という気がします。

やっぱり、この頃のデペッシュは最強!

 

 

 

Cabaret Voltaire / Sensoria(1984)

個人的に、80’Sエレクトロの最高峰としてデペッシュと双璧をなすのが、このキャバレー・ヴォルテール(通称「キャブス」)。

テープコラージュを多用した陰鬱なインダストリアルミュージックでカルト的な支持を集めた初期からブリープテクノに接近しクラブシーンでヒットを放った後期まで、キャブスがシーンに与えたインパクトは相当なものだった筈。

New OrderやThe Chemical Brothersのメンバーもキャブスからの影響を公言してましたしね。

この「Sensoria 」をリリースした当時のキャブスはダンスミュージック路線に舵を切った頃で、エレクトロニックボディーミュージックの雛形とも言えるスタイルを打ち出しています。

シンセのSEやダブっぽい空間処理など、今の耳で聴いてもカッコイイですよね。

ちなみに、この曲もエイドリアン・シャーウッドがリミックスを担当しています。

実のところ、イミュレーターを使っているのかどうか確証はないのですが(笑)、より多くの方にキャブスの音楽を知っていただきたくてセレクトしました。

 

 

 

Orchestral Manoeuvres In The Dark /(Forever)Live And Die(1986)

僕は決してOMDの熱心なリスナーじゃないんですが、アルバム「The Pacific Age」はリリース当時好きでよく聴いていました。

日本のテレビCMをサンプリングし、リフ的に使っている曲もあったりして。

シングルカットされたこの「(Forever)Live And Die」は王道UKポップで実験的な要素は希薄なんですが、間奏のブラスセクションはイミュレーターをRolandのシーケンサー・MSQ-700で動かしているそうです。

(ちなみに僕が最初に買ったシーケンサーがMSQ-700でした。)

忘れられないのは、この曲でOMDが日本の音楽番組「夜のヒットスタジオ」に出演した際のこと。

演奏前のインタビューでメンバー達が寿司の話で盛り上がってしまい、司会の古舘伊知郎が「さて、寿司と言えばシンセサイザー」と強引に話題を変えたんですよ。

スタジオ内にドッと笑いが沸き起こったんですが、OMDのメンバー達が「何々?」というカンジでキョトンとしてしまって。

通訳が説明したところ、ようやくメンバー達もドッと笑ったという。

通訳を介してギャグがウケるのがシュールでしたね。

「増殖」の林家三平のコントみたいで。

 

 

 

と、思わず脱線してしまいましたが・・・

寿司が食べたくなったところで、それではまた!(^-^)ノ~~~