「良いスーツの見分け方」 「袖口」編 | NARUのブログ

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ええ、のっけから言い訳ですが。 ・・・写真がめちゃくちゃ多いわりにめちゃくちゃ下手糞です。初めに謝っておきます。

 

スーツ・ジャケット・コート等の「袖口」の仕立ての形式は大きく分けて3つ有ります。

 

「筒仕上げ」「開き見せ」「本切羽」です。一般的には(男性ファッション誌的には?)「筒仕上げ」が一番簡略で、「本切羽」が一番上質とされています。

「本切羽」=「良いスーツ」みたいな風潮が作られているように感じます。

 

しかし、そこでまたしてもかかわってくるのが裏地の取り付け方です。(こちらは今までファッション誌でもWebでもなぜか誰も言及していませんが・・・)

 

こちらも大きく分けて3つあります。

「手纏り」「開き部分のみ手纏り」「ミシン縫い」です。

 

もちろん「手纏り」が一番手間と技術がいりますが、メリットとしては先回の「良いスーツの見分け方」http://ameblo.jp/naruichiito/entry-12259976139.htmlでの裾の場合と同様、「裏地の量」をより適切にコントロールできると言う点です。

 

さて、では私の敬愛する前田誠氏の手になる「GALAMOND」ではどうしていたのでしょうか? ・・・答えは「筒仕上げ+手纏り」です。

無駄な裏地の余分も無く、綺麗ですね。

同じ仕上げの、こちらは昔の(色んなセレクトショップの指定が入る前の)リングヂャケット。コートですが当時はスーツも同じ仕上げでした。こちらも綺麗です。

 

逆に「本切羽」にしているのに裏地は「ミシン縫い」と言う物もあります。

裏返すと・・・。 ミシン縫いの為裏地の余りが多くシワがどうも美しくない・・・。

 

参考までに、これは「開き見せ」で「開き」の部分だけ手纏りにしてます。

袖に「額縁」を作って若干の開きが出るようにします。

開きのところだけはミシンで縫いにくいので手纏りで仕上げます。

 

まあ、「手纏り」でも下手だったら意味は無いですし、「ミシン縫い」でも肩の仕上げが手仕事であればある程度の調整が効きますので、致命的な問題ではありません。

ただ個人的には、(肩の仕立てについては別の機会に書きますが)肩・袖の両方を手仕事で納めて欲しいと言うのが正直なところです。

 

悪い例としては・・・ 某イタリアの○ル・ジレリのコートですが。

ミシン縫いの為(どうもその為だけではなさそうですが)裏地の余りが大きすぎて・・・。

裏地が袖から見えそうです。

 

裾の方も・・・ 

こんなにしっかりダブルで手纏りしてるのに・・・

裏地のマチ部分の余りが多すぎて、裏地が表にはみ出しそうです。

 

・・・まあ手仕事の方が「有利である」と言うだけで「必ず良い結果になる」と言う事では無いようですね・・・。

 

そしてこれも参考までに。私がいままでに「これは拘ってるな」と思った仕立てです。

「開き見せ」なのですが、

完全に「本切羽」の仕様を作った上で、ボタンの位置で縫い付けて最終的に「開き見せ」にしているんですね。

ボタンの付け外しが出来る人なら、素人でも「本切羽」に直せるという仕様です。開きになっている周辺の裏地の縫い付けも全て手仕事です。

(今は亡きAVON HOUSEの上級シリーズ「AVON HOUSE  Collection」の物です。

 

さて、色々な仕様が出てきて逆にどれが良いのか分けがわからなくなってしまったかも知れませんが。ここで一つ考えてみて下さい。

 

「スーツで一番大事な事」はなんでしょうか?

 

色々ご意見はあるかもしれませんが、まず第一は「サイズが合っている」事だと思うんです。

その意味で、「本切羽」は「お直し」が効かないんですよ。

 

本来直しのいらない「オーダーメイド」の仕様なんです。オーダーの際に拘りのある趣味人がオーダーしていた仕様を、薀蓄の好きな○レクトショップの皆さんが、既製服にも深く考えずに取り入れてしまった感があります。

 

そして、前田誠氏が手掛けていた頃の「GALAMOND」では、裄丈をかなり長めに設定していました。これは恐らく「お直し」による調整を前提にしていたのでしょう。そして袖の「筒仕立て」も、その前提に基づく仕様だったと考えています。

 

えらい長々と書いてしまいましたが、要するに。

 

「デザイナー前田誠氏は素晴らしい」と言う事です。