四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (7)聖水
最近麻沙耶の体調が思わしくないらしい。毎日僕は麻沙耶を迎えに行くんだけど、母親が出てきて心配そうに言うんだ。
「ごめんなさいね黒田君。麻沙耶ったら今朝も頭が痛いとか言って起きてこないのよ。熱測ってみたら微熱だし・・・。病院へ行くように行っても嫌がるのよ。受験生だというのに・・・だめねえ・・・。このままだとそのまま上の大学かしら・・・。ホントごめんなさい。毎日迎えにきてくれているのに・・・。」
「いえ。」
麻沙耶は僕の自宅へ遊びに来るたびに体調が悪くなっている。どうしてなんだろう・・・。僕は大丈夫なのに・・・。
僕は受験生のための特別授業を終えると家路に着く。もう夕方に近い。でも夏だからまだまだ明るいのだけれど・・・。途中一人になる道があるんだけど、そこに見慣れた人物が立っていた。
「麻沙耶・・・。体調・・・。」
麻沙耶はいつもの微笑で僕に近づいてくる。
「僕、大丈夫だよ。どうしても紫苑君の顔が見たくなって、家を抜け出してきたんだ。」
本当に麻沙耶のかわいい清々しい顔・・・。久しぶりに見たような気がする。
「のど渇いてない?今日ね、おいしい水をこっそり汲んできたんだ。すごくおいしい水。これを飲んだら僕元気になったんだ。最近紫苑君、元気が無いだろ?飲んでみたら?」
「麻沙耶。」
麻沙耶は飲んで飲んでと、僕に薦める。麻沙耶が薦めるものならきっと大丈夫だ・・・。僕は麻沙耶に薦めされるまま、その水を瓶からぐいっと飲み干した。麻沙耶は微笑んで僕を見つめている。
「どう?紫苑君。おいしいでしょ。・・・・・体の中から悪いものが出ていく感じかしら?」
え?声が・・・急に・・・。
ふと麻沙耶のほうを見る。するとさっきまで微笑んでいた麻沙耶が・・・。
誰?この女性は誰?
僕は体中に痛みを感じ崩れ落ちる。すると僕を暖かく包み込むような感覚・・・。こんな感覚ははじめてだ。そして体の痛みがふっと消える。
さっきの女性が僕を抱きしめ涙を流している。どうして泣くの?この女の人は誰?
ああ勘違い^^;
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勘違いをしていました。
たまごだぶルマックというから、ミートパティーが2枚じゃなくてたまごが2枚と勘違い。たまご好きにはたまらないと思ったんだけどなあ・・・。これならあまり見栄えはしないよね。ありきたりというかなあ・・・。
こんなこと考えているのは私だけだと思う。
四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (6)姫君
私は人間界でのいつもの生活へ戻る。龍希様からいただいた聖水を小さなビンに入れ持ち歩く。本当に授業以外は接点のない紫苑君と近衛君。呼べば史学準備室に来るかもしれないが、先日の事があり、敬遠されているのは確かな話・・・。しかしまず紫苑君にかけられた黒龍の結界を解かなければ何も始まらない。本当にこの聖水が役に立つんだろうか?勿論みんなで集まり論議するが、なかなかいい方法が見つからない。私はいつものように自分の祠で考え込む。ここは私の気の源というか、ここにいれば私は落ち着く。考え込むうちに夜になっていた。すると私の後ろで人の気配がする。
「亜樹か?夕飯はいらない・・・・少し考えさせてくれ。」
でも何も反応は無い。気を集中してみると亜樹の気ではない・・・これは・・・。これはもしかして・・・。私は振り返る。そこには人影。
「朱央様・・・。」
そこに立っていたのはある女性・・・。その顔はまさしく・・・玄武の姫君、近衛麻耶姫様。麻耶姫様は私の側に近寄ると座り頭を深々と下げる。
「麻耶姫様・・・。」
麻耶姫様は涙を流し私に詫びを入れる。
「申し訳ありません・・・。私のもう一つの姿・・・・麻沙耶が・・・。麻沙耶が・・・魔王、黒龍の封印を解いてしまいました・・・。私というものが側にいながら・・・。あの子の憎しみ悲しみの心が、私の力を超えてしまったようです・・・。」
「え?黒龍が復活したと?どうしてそのような・・・。」
麻耶姫様は詳しい経緯を話す。玄武に関する者麻沙耶君は黒龍の水晶玉に心の闇をぶつけたというのか?でもどうして麻耶姫様がここに?それを私は姫様に問う。
「それは・・・黒龍の力で、生の力の源である私を追い出したのです。ですからあの子の体には霊の力のみが残っています。今は何とか覚醒をしておりませんから、黒の勾玉のおかげで平静を保っておりますが、このまま黒龍の側にいると霊の力が覚醒を・・・。そうしないと四神が・・・四神が揃いません。私・・・私が責任を持って阻止します。ですので、朱央様が悩んでおられる聖水の件、私に任せていただけないでしょうか?」
麻耶姫様が?麻耶姫様がどうするというのだ?
でもしかし・・・。
黒龍が復活したとなると、早く紫苑を黒龍の呪縛から解き放たないと・・・。紫苑がいればきっと麻沙耶君は、こちらに付くに違いない。
私は麻耶姫様に聖水を託した。きっと麻耶姫様なら・・・玄武の姫君、麻耶姫様ならやり遂げてくださる。あの方の心は正義の心。何が起きようとも揺るがされない強い心をお持ちの方・・・。任せよう・・・。紫苑の事も麻沙耶君の事も・・・。
四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (5)龍族の秘術
私は青龍国へ向かった。はじめ朱雀の皇子である私を衛兵たちは追い返そうとしたが、赤の勾玉を見せると、衛兵たちは頭を下げ、青龍王龍希様の前へ案内した。
「お久しぶりです、龍希様。」
「ああ、朱雀の皇子。今日は何か?」
「実は龍族に伝わる秘術はないかと伺いに参ったのです。」
「秘術?」
私は龍希様に色々話し、聞いてみたのだ。すると龍希様は顔を曇らせていうのだ。
「性を変える術はあるにはある。しかしそれは禁じられた秘術でね・・・。術を掛けられた者の体には相当負担がかかると聞いた。そしてその秘術はまさしく黒龍のみ使う秘術。」
「解くことはできないのですか?」
「できないことはないが・・・。まずは黒龍の呪縛からその少年を引き離さないといけないよ。早く術を解かないと命に関わるかもしれん。そうだ、気休めにしかならないと思うが、これを渡しておこう。」
と、龍希様はつぼに入ったものを渡す。
「これは青龍の聖水だ。邪悪なものを払拭してくれる。この聖水をその少年に飲ませると、邪悪な結界を払拭できるかもしれない。一度試してみたらいい。」
「ありがとうございます。一度試してみます。」
「んん・・・。」
私はその聖水の入ったつぼを大事に抱え、人間界へ戻る。本当にこの聖水が結界を取り除くことができるのかどうかはやってみないとわからないが、やってみる価値はあるのかもしれないのだ。
四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (4) 朱雀の印
朱雀の印とは口ではよく表せないのであるが、とても綺麗な宝石のようなもの。生まれた時に抱いた状態で生まれてくる。朱雀それぞれの色と形があり、私の場合は朱色である。だから朱央と名づけたらしい。そして紫苑は赤紫色の石。とても綺麗な赤紫。高貴な色で光り輝いている。まるでこの前あの少年紫苑君の心の奥底の清い心そのものだった。このことで私は紫苑君が私の妹ではないかと憶測する。しかしどうして男の子として育っているのか?それだけが疑問だった。しかしどうすれば紫苑を助けることができるのだろうか?あのまま黒龍の側にいたら、きっと紫苑はだめになってしまう。祠で私は紫苑の朱雀の印を見つめ、考え込んだ。
「朱雀様。どうかしたんですか?」
と亜樹が声をかけてきた。
「なんでもありません。ちょっと気になる少年がいてね。知ってるかい?3年生にいる黒田紫苑君を・・・。」
「はい。結構女の子に人気あるんですよね。何か?」
「あの少年は人 じゃない。」
「人じゃない???では?」
「朱雀かもしれないんだ・・・。それだけじゃない。もしかしたらこの私の双子の妹・・・。でもどうして少年なんだ?」
めずらしく悩む私を見てか、亜樹は私に言ったのだ。
「もしかしたらそういう術があるのかもしれませんね、朱雀様。何ていうのかなあ・・・操り人形というか・・・。亜樹はそういうことあまり知らないから、龍族に伝わる秘術があるのかもしれません。」
そうだ・・・。龍族の筆頭である青龍王龍希様なら、龍族に伝わる秘術を知っているのかもしれないのだ・・・。龍が操る術の事なら、龍希様に一度お会いして聞いてみるのも手・・・。早速私はすぐに青龍国へ向かった。
四神降臨 復活編 第6章 朱雀 (3)朱雀の国
私は休日、祠にこもり考え事を一日中していた。どうすれば紫苑君の心の闇、邪悪な気を取り除き、そして心の奥底の清い心、朱雀の気を引き出すことができるのだろうか。私はふと思い出し、私の生まれ故郷である朱雀国へ行ってみることにした。久しぶりに訪れる朱雀国。まだまだ再建途中ではあるが、父である朱雀王は人間界に住む私を快く迎えてくれた。
「父上、私は人間界で不思議な少年に出会いました。」
「不思議な少年?」
私は父にことの一部始終を話した。すると父は言葉を失ったのだ。それっきり話をしない父は私にあるものを渡したのだ。それはある札。人間界で言う命名札というべきか。そこにはこう書かれている。
『第二皇子 朱央 第二姫皇子 紫苑』
と。
私の妹の名前、それは紫苑というのである。母は黒龍族に捕まった少しの間、ずっと紫苑を抱き『紫苑、紫苑』と声をかけていた。しかしある日紫苑は取り上げられ、そして母は黒龍王に朱雀の力を吸収するために喰われたのだ。母は紫苑が処分されているものと思い込んでいた。もしそれがわが妹紫苑であれば、どうして黒龍の側にいるというのだ?そしてどうして男の子として育っているのだ?
母は私が人間界に戻る間際、あるものを手渡す。それは朱雀のしるし。朱雀のものが必ず持っているというあるもの。そのあるものを私は大切に抱き、人間界へ戻ったのである。