地元Hackney Picturehouseでフランシス・フォード・コッポラ監督の『メガロポリス/ Megalopolis』(2024)を観た。建築家の話で未来都市を描いているとなれば、講義で使えるかも、と期待大。月曜割引で行くつもりだったが、忙しくて挫折した。木曜夜は大きめなスクリーンなので敢えて観たのだが…スクリーン上で展開される背景画は素晴らしい。いくつかのシーンでは「この絵が撮りたかったから、この映画を作ったのでは?」と思われるくらい目を奪われるものだった。でも、前面で展開されるストーリーはイマイチ、というか「どうしてこうなってしまったの?」レベル。IMDbの低評価10点中5.0にも納得。さて、あらすじは…

 

 容赦ない変化に晒されるニューローマ市。ユートピアのような理想的な未来を推進する天才芸術家セザール[シーザー]・カティリーナ(アダム・ドライバー)と、その反対者であるフランクリン・シセロ[キケロ]市長(ジャンカルロ・エスポジート)との間で対立が生じる。市長は、退行的な現状に固執し、貪欲、特別利益、党派争いを続けている。 社交界の華である市長の娘のジュリア(ナタリー・エマニュエル)2人の間で引き裂かれる。彼女はセザールへの愛によって心が分裂し、人類が真に値すると彼女が信じるものを探していく。(Megalopolisサイトより翻訳)

 

人類が真に値すると彼女が信じるもの」って一体なに?映画を観た限りでは最後の一文は伝わってこなかった。Picturehouseの小冊子*によると、「映画界最大のギャンブラー」コッポラは保有するワイナリーを一部売却して自己資金$120ミリオン (約180億円)でこの映画を制作したとか。「非常にリスクの高いプロジェクトだが、見事に報われる」とあるけれど、本当かは疑わしい。元々映画館では観客が10人程度と少なかったが、正規料金を払ったにも関わらず、途中退席者続出。最後まで残ったのは3, 4人。私は「仕事上最後まで観なければ」と欠伸をしながら頑張ったが、これは正解でセザールの描く未来都市は終盤に登場。ただ、建築家が描くイメージとして提示されるだけで、人々がどうその都市で生きているのかまで踏み込めていないのが残念。更に未来なのに何故セザールがコンピューターではなくて昔の設計ツールのT定規を持っているのか意味不明。(今の学生はT定規が何かも知らないだろうー今度聞いてみるか。) 夢の中に居る設定の『マトリックス』のネオのように、セザールは時間が止められるのは何故?今時ヒロインのジュリアが市長の娘でセレブというだけで、セザールを追いかける以外に何もしてないってどうよ?とツッコミどころ満載の映画。 

*Freer,Ian (2024)'Megalopolis,' Picturehouse Recommend, Sep/Oct/Nov2024. pp.18-19.