内臓破壊ラーメン 二郎 第1話 黒いウンコ
前回までのあらすじ
カラテの大会を見に東北にでかけた自分とA君。
その道中、A君は高速道路でウンコした。
登場人物
自分・・カラテでよくやられる
A君・・・自分の親友。冷静沈着。道路でウンコをした。
目的地だった福島の旅館に到着した。
ついた頃には既に夜中になっており、
周りの景色は見えなかった。
空に広がる輝く星空、都会と全く違う新鮮な空気、
小川のせせらぎが聞こえるので
自然が生い茂る朝の景色を思い浮かべると
ワクワクした。
しかし、そんな雄大な状況の中でも、A君は終始無言だった。
彼と到着の感動を一緒に味わいたかったが、
彼の眉間の皺は、いまだとれずにいた。
自分のいたずらで彼がこんなことに・・・。
思い出すと後悔の念がよぎったが、同時に笑いもこみ上げてきた。
思い切って、A君に話しかけてみた。
「やっぱ田舎の空気は全然違うね!星空も綺麗だしね!」
うつむいているA君の肩が小刻みに震えた。
覗き込むと
彼の眉間にさらに深い皺が刻まれたので、
自分の中から開封前に振りまくったコーラのように
笑いがあふれ出そうになった。
ここで噴出したら全てが終わってしまう!
そう思ったもう一人の自分が、
あわ立ち今にも噴出そうとしている
炭酸のような気持ちにぐっとフタをした。
旅館の部屋を開けると、
畳なのか壁なのか良く分からないが
木のいいにおいが鼻を刺激して
いい気分になった。
部屋も二人の男が泊まるに十二分な中々の広さだった。
今まで無休で運転してきた疲れから
体を開放させたくて、
部屋に入るなり、すぐに畳の上で大の字になった。
体を動かさずに目だけ入り口のA君に向けると、
彼は無言のままトイレの前に立っていた。
そして、自分と目があうやいなや
トイレにこもってしまった。
そこまでふさぎこんできるのか・・・
普段冷静沈着な彼にとっては
おしり丸出しで高速道路にしゃがんでいた事実は
想像以上に酷だったのかもしれない・・・
しかし、彼は今まで、
自分が仕掛けた数々のイタズラに
何度も笑って答えてくれていたはず・・
何故今回だけ・・・!A君、君はそんな人間だったのか!
悲劇の事のように物事をとらえている自分を客観視ししたら、
さらに笑えたので、A君に聞こえないように笑った。
それから10分ほどたったのだろうか。
A君はトイレから全く出てくる気配が無い。
どうしたんだろう?
トイレも、部屋も静かだった。
外の小川のせせらぎがうるさいくらいに聞こえるだけ。
トイレは人の気配すら消えているように思えた。
ふと心配になったのでトイレのドアに耳を近づけてみた。
すると・・・・
「プゥ」
屁の音が聞こえたので、彼の無事が確認できた。
続く。
カラテの大会を見に東北にでかけた自分とA君。
その道中、A君は高速道路でウンコした。
登場人物
自分・・カラテでよくやられる
A君・・・自分の親友。冷静沈着。道路でウンコをした。
目的地だった福島の旅館に到着した。
ついた頃には既に夜中になっており、
周りの景色は見えなかった。
空に広がる輝く星空、都会と全く違う新鮮な空気、
小川のせせらぎが聞こえるので
自然が生い茂る朝の景色を思い浮かべると
ワクワクした。
しかし、そんな雄大な状況の中でも、A君は終始無言だった。
彼と到着の感動を一緒に味わいたかったが、
彼の眉間の皺は、いまだとれずにいた。
自分のいたずらで彼がこんなことに・・・。
思い出すと後悔の念がよぎったが、同時に笑いもこみ上げてきた。
思い切って、A君に話しかけてみた。
「やっぱ田舎の空気は全然違うね!星空も綺麗だしね!」
うつむいているA君の肩が小刻みに震えた。
覗き込むと
彼の眉間にさらに深い皺が刻まれたので、
自分の中から開封前に振りまくったコーラのように
笑いがあふれ出そうになった。
ここで噴出したら全てが終わってしまう!
そう思ったもう一人の自分が、
あわ立ち今にも噴出そうとしている
炭酸のような気持ちにぐっとフタをした。
旅館の部屋を開けると、
畳なのか壁なのか良く分からないが
木のいいにおいが鼻を刺激して
いい気分になった。
部屋も二人の男が泊まるに十二分な中々の広さだった。
今まで無休で運転してきた疲れから
体を開放させたくて、
部屋に入るなり、すぐに畳の上で大の字になった。
体を動かさずに目だけ入り口のA君に向けると、
彼は無言のままトイレの前に立っていた。
そして、自分と目があうやいなや
トイレにこもってしまった。
そこまでふさぎこんできるのか・・・
普段冷静沈着な彼にとっては
おしり丸出しで高速道路にしゃがんでいた事実は
想像以上に酷だったのかもしれない・・・
しかし、彼は今まで、
自分が仕掛けた数々のイタズラに
何度も笑って答えてくれていたはず・・
何故今回だけ・・・!A君、君はそんな人間だったのか!
悲劇の事のように物事をとらえている自分を客観視ししたら、
さらに笑えたので、A君に聞こえないように笑った。
それから10分ほどたったのだろうか。
A君はトイレから全く出てくる気配が無い。
どうしたんだろう?
トイレも、部屋も静かだった。
外の小川のせせらぎがうるさいくらいに聞こえるだけ。
トイレは人の気配すら消えているように思えた。
ふと心配になったのでトイレのドアに耳を近づけてみた。
すると・・・・
「プゥ」
屁の音が聞こえたので、彼の無事が確認できた。
続く。
内臓破壊 ラーメン 二郎 プロローグ
5年程前の話である。
福島県で行われるカラテの東北大会に
自分の先輩が出るので、
友人A君の車を使い二人で向かった。
交代で運転することを約束し、
最初の運転は自分だった。
ある意味小さな旅行でもあったので、
最初のうちはワクワクしながら
車を走らせていた。
高速に乗ってしばらくすると、普段無口な彼が
サムライのように静かに、そして重々しい一言を漏らした。
「モーレツにウンコがしたい」
なにか不穏な空気が流れはしたが、
彼のその冷静な態度から
まだ大丈夫だと思い
そのまま車を走らせることにした。
その後何事も無かったように
無言に戻った彼だったが、
車は既に都心を抜けてしまったため
しばらくパーキングエリアが見つからなかった。
あまりに無言だったので彼の方を向くと、
真冬にも関わらず
額から玉のような汗が吹き出てきているのが
対向車のライトにキラついていたので、
内心はいらだっているのが明らかだった。
数秒後。
「間に合わん!」
その声は静寂を破るには
あまりに大きな声だった。
まるでアクション映画の主人公が
悪人の手によって取り付けられた
時限爆弾を解体しようとした結果失敗し、
周りに「逃げろ」という意味で
放った台詞のように勇ましかった。
彼は、その大きな体躯からは想像できないほどの速さで
助手席の前に常備してある
クリネックステッシュの箱を鷲掴みにし、
おもむろに後部座席への移動を始めた。
え?うそ、後ろでやんのか!?
あせった。
ナチのシャワー室さながら
彼の汚物のニオイでまみれる車内が
脳裏に飛び込んできたので
自分はありたけの力を振り絞り
最も早い口調で
「せめて路肩でしてくれ!!」
と怒鳴り急ブレーキをかけた。
彼は車が止まった瞬間かそれより前に
外に出ていた。
そして今度はズボンを下ろす瞬間かそれより前に
車の陰で轟音を立て脱糞をはじめた。
その音は、
高速道路を走るトラックの騒音より
大きくけたたましく思えた。
何気なく助手席側のバックミラーを見ると、
友人の情けない姿と、脂汗の吹き出る激しい表情が飛び込んできた。
そして、なんだか釈然としないものを感じていた自分は、
中に湧き上がる悪意を抑えきれなくなっていた。
気がつくと自分の足はブレーキから離れていた。
そして車はクリーピングを起こし、徐行を始めていた。
自分からは見えないが徐々に車が動いていくと
_かくれんぼの最中、腹が急に痛くなり
家に帰るのが間に合わないと悟って
葉っぱで尻が拭けることを理由に野糞をする小学生さながらに_
大の大人が尻を丸出しにして
鬼神のごとき形相で脱糞をしている姿が
横切る車にあらわになっていたはずだ。
しかし丸見えになっているのにもかかわらず、
糞を押し出すため力強く目をつぶっている彼には、
今自分がどういう状況におかれているのかに
気付くまで少し時間がかかってしまった。
ミラーで小さくなっていく彼の姿に、
自分は悪意とこみ上げてくる可笑しさで複雑な心境になっていた。
そしてミラーから、A君が顔を上げ車が無いのに気付き、
少しだけ周りを見回したたのが頭の動きで確認できた。
彼は、手に持っていたクリネックステイッシュを使うことなく、
逆に箱がつぶれるくらい握り締め、
「マデゴルァアアアアアアアあアアアアア!(まてこらああ!)」
と、高速道路の数キロメートル先まで
伝わるのではないかと思うくらいの大声で叫びながら、
ズボンをスネのあたりまで下ろし
しゃがんだ状態のまま、
高速で膝下だけを動かし追いかけてきた。
もはや、自分にはどうすることもできなかった。
彼の人間業とは思えない
器用な移動の仕方に
巨人に腹をねじ切れるくらい捻られた
と思うほど笑ってしまい、
友人が車に飛び乗る隙を与えてしまった。
車に戻ったA君は、現地に到着するまで
私を許してくれなかった。
続く
福島県で行われるカラテの東北大会に
自分の先輩が出るので、
友人A君の車を使い二人で向かった。
交代で運転することを約束し、
最初の運転は自分だった。
ある意味小さな旅行でもあったので、
最初のうちはワクワクしながら
車を走らせていた。
高速に乗ってしばらくすると、普段無口な彼が
サムライのように静かに、そして重々しい一言を漏らした。
「モーレツにウンコがしたい」
なにか不穏な空気が流れはしたが、
彼のその冷静な態度から
まだ大丈夫だと思い
そのまま車を走らせることにした。
その後何事も無かったように
無言に戻った彼だったが、
車は既に都心を抜けてしまったため
しばらくパーキングエリアが見つからなかった。
あまりに無言だったので彼の方を向くと、
真冬にも関わらず
額から玉のような汗が吹き出てきているのが
対向車のライトにキラついていたので、
内心はいらだっているのが明らかだった。
数秒後。
「間に合わん!」
その声は静寂を破るには
あまりに大きな声だった。
まるでアクション映画の主人公が
悪人の手によって取り付けられた
時限爆弾を解体しようとした結果失敗し、
周りに「逃げろ」という意味で
放った台詞のように勇ましかった。
彼は、その大きな体躯からは想像できないほどの速さで
助手席の前に常備してある
クリネックステッシュの箱を鷲掴みにし、
おもむろに後部座席への移動を始めた。
え?うそ、後ろでやんのか!?
あせった。
ナチのシャワー室さながら
彼の汚物のニオイでまみれる車内が
脳裏に飛び込んできたので
自分はありたけの力を振り絞り
最も早い口調で
「せめて路肩でしてくれ!!」
と怒鳴り急ブレーキをかけた。
彼は車が止まった瞬間かそれより前に
外に出ていた。
そして今度はズボンを下ろす瞬間かそれより前に
車の陰で轟音を立て脱糞をはじめた。
その音は、
高速道路を走るトラックの騒音より
大きくけたたましく思えた。
何気なく助手席側のバックミラーを見ると、
友人の情けない姿と、脂汗の吹き出る激しい表情が飛び込んできた。
そして、なんだか釈然としないものを感じていた自分は、
中に湧き上がる悪意を抑えきれなくなっていた。
気がつくと自分の足はブレーキから離れていた。
そして車はクリーピングを起こし、徐行を始めていた。
自分からは見えないが徐々に車が動いていくと
_かくれんぼの最中、腹が急に痛くなり
家に帰るのが間に合わないと悟って
葉っぱで尻が拭けることを理由に野糞をする小学生さながらに_
大の大人が尻を丸出しにして
鬼神のごとき形相で脱糞をしている姿が
横切る車にあらわになっていたはずだ。
しかし丸見えになっているのにもかかわらず、
糞を押し出すため力強く目をつぶっている彼には、
今自分がどういう状況におかれているのかに
気付くまで少し時間がかかってしまった。
ミラーで小さくなっていく彼の姿に、
自分は悪意とこみ上げてくる可笑しさで複雑な心境になっていた。
そしてミラーから、A君が顔を上げ車が無いのに気付き、
少しだけ周りを見回したたのが頭の動きで確認できた。
彼は、手に持っていたクリネックステイッシュを使うことなく、
逆に箱がつぶれるくらい握り締め、
「マデゴルァアアアアアアアあアアアアア!(まてこらああ!)」
と、高速道路の数キロメートル先まで
伝わるのではないかと思うくらいの大声で叫びながら、
ズボンをスネのあたりまで下ろし
しゃがんだ状態のまま、
高速で膝下だけを動かし追いかけてきた。
もはや、自分にはどうすることもできなかった。
彼の人間業とは思えない
器用な移動の仕方に
巨人に腹をねじ切れるくらい捻られた
と思うほど笑ってしまい、
友人が車に飛び乗る隙を与えてしまった。
車に戻ったA君は、現地に到着するまで
私を許してくれなかった。
続く
サイレントヒルに似ている場所で起きた事件の巻
オハイオ州 シンシナティに
「エデンパーク」という公園がある。
そこはサイレントヒル2序盤に出てくる
街を見下ろせる丘そっくりの場所だった。
(当時、SH2どころかSHすら発売されていなかったので、
SH2を初めてやってそっくりな景色が出てきた時は本当に驚いた)
切り立った崖の上が公園になっていて、
そこから川を挟んだ向こう側にあるお隣の州、
ケンタッキー州の町並みが見える。
川がサイレントヒルで言う湖なのだ。
朝行くと霧の中に街が浮かび、
夜は街の灯が星空のごとく広がって見え、
とても幻想的な気持ちになる場所だった。
友人のA君が自分を訪ねてきた時の話だ。
汁とその彼女 台湾人のモニカが
「カズアキ、今度モニカの友達が来るから、
一緒にエデンパークに行こう」
と誘ってきた。
面倒だったので断ると 汁が
「可愛い女の子が他にも二人くるんだよ。」
と耳打ちしてきたので行くことにした。
実際その二人に会ってみると、
便所コオロギと
高校の部活で使う
でこぼこしたヤカンみたいな顔をした女達だった。
出かける際には、
5人乗りの汁の車に6人パンパンに詰め込まれた。
汁は女の子に囲まれて超ハイテンションになっている。
エデンパークに行く道は、
日本にでいうところの
日光にある「いろは坂」のようで
カーブが多く、
上機嫌の汁はここぞとばかりに
タイヤを滑らせ金切音を出し、
レースさながらのドリフトしながら上がっていった。
女の子達がキャーキャー言うと
「ハウドウユウライクマイドライビングテクニック!
(おまえらどんだけ俺の運転を楽しんでんだ!)」
とさもエンターテイナーのような顔をして調子にのっていた。
しかし人間の重みで滑る汁の運転はなかなかスリリングなもので、
自分もA君も結構楽しんでいた。
ただ、モニカだけは別だった。
彼女は前々から汁の運転に腹を立てていた。
ふと助手席に乗っているモニカの顔をミラー越しに覗き込むと、
キャーキャー喜ぶ自分達とは対照的に
鉄のように無表情だった。
エデンパークに到着し、車から降りると
すがすがしい山の空気と壮大な景色が目に飛び込んでくる。
カマドーマとフィンガーボール顔の女子達も
感動して目を輝かせていた。
すると、テンションがMAXに達した汁が突然
「アイアムクンフーチャンピオン!
(俺はカンフーの達人だ!)」
と大声で叫びだし、崖の柵に登って
上からベンチを蹴りだした。
柵は低く、石で出来ているので簡単に上に乗れる。
ベンチは崖ギリギリに設置されており、
一番景色が楽しめるようになっていた。
汁は、何故かヒヒヒヒヒ!
と笑いながらベンチを蹴り続けている。
先ほどの運転が受けたのが、よほどうれしかったんだろう。
しかし、意味がよく分からないその行動に、
自分や女の子達は少々ひき気味にならざるを得なかった。
次の瞬間だった。
モニカが汁の後頭部を、思いっきり横殴りに叩いた。
「オワッ!」
一瞬フラッと汁がよろけると
モニカはさっと汁の肩をつかみ、 そのまま汁を回転させた。
汁はモニカの方を振り向く形になり、二人は向き合った。
モニカは正面に来たその顔を、今度は拳骨で強打した。
汁はそのまま斜めに倒れこんで、無言で崖から落ちた。
一瞬、静かな時間が過ぎた。
モニカも少し青ざめてる。
「モニカなにしてんだよ!」
言うや否や、
あせった自分とA君は急いで崖を覗き込んだ。
すると、柵の裏側である崖側は内側より2Mくらい低くなっていて、
人二人くらい座れるスペースがあり、
汁はギリギリそこにうつぶせで落ちていた。
(もっとも、崖側には木々が生い茂っているので、
それ以上は落ちなかったようだ)
「オオー、オゥー」
と汁は具合悪そうにうなっている。
「大丈夫か?」
と聞くと
「マイノーズイズゴーン
(俺の鼻がどっかいっちまったみたいだ)」
と返事が返ってきた。
どうやら落っこちた際、顔を強打したようだ。
とりあえず落ちなくて良かったので、
あがって来いと汁に手を差し伸べると、
汁は柵に手をかけて自分の手につかまりなんとか登ってきた。
自分もA君も、
今回はあやうく殺人事件に遭遇しそうだったが、
事なきを得てすこしホッとした。
帰り、早々に汁はテンションを戻し、
懲りずにまたドリフトを続けて
「ヒャッハー!」とハイテンションに戻っていたが、
周りのみんなは無言だった。
モニカは相変わらず鉄のような表情だった。
「エデンパーク」という公園がある。
そこはサイレントヒル2序盤に出てくる
街を見下ろせる丘そっくりの場所だった。
(当時、SH2どころかSHすら発売されていなかったので、
SH2を初めてやってそっくりな景色が出てきた時は本当に驚いた)
切り立った崖の上が公園になっていて、
そこから川を挟んだ向こう側にあるお隣の州、
ケンタッキー州の町並みが見える。
川がサイレントヒルで言う湖なのだ。
朝行くと霧の中に街が浮かび、
夜は街の灯が星空のごとく広がって見え、
とても幻想的な気持ちになる場所だった。
友人のA君が自分を訪ねてきた時の話だ。
汁とその彼女 台湾人のモニカが
「カズアキ、今度モニカの友達が来るから、
一緒にエデンパークに行こう」
と誘ってきた。
面倒だったので断ると 汁が
「可愛い女の子が他にも二人くるんだよ。」
と耳打ちしてきたので行くことにした。
実際その二人に会ってみると、
便所コオロギと
高校の部活で使う
でこぼこしたヤカンみたいな顔をした女達だった。
出かける際には、
5人乗りの汁の車に6人パンパンに詰め込まれた。
汁は女の子に囲まれて超ハイテンションになっている。
エデンパークに行く道は、
日本にでいうところの
日光にある「いろは坂」のようで
カーブが多く、
上機嫌の汁はここぞとばかりに
タイヤを滑らせ金切音を出し、
レースさながらのドリフトしながら上がっていった。
女の子達がキャーキャー言うと
「ハウドウユウライクマイドライビングテクニック!
(おまえらどんだけ俺の運転を楽しんでんだ!)」
とさもエンターテイナーのような顔をして調子にのっていた。
しかし人間の重みで滑る汁の運転はなかなかスリリングなもので、
自分もA君も結構楽しんでいた。
ただ、モニカだけは別だった。
彼女は前々から汁の運転に腹を立てていた。
ふと助手席に乗っているモニカの顔をミラー越しに覗き込むと、
キャーキャー喜ぶ自分達とは対照的に
鉄のように無表情だった。
エデンパークに到着し、車から降りると
すがすがしい山の空気と壮大な景色が目に飛び込んでくる。
カマドーマとフィンガーボール顔の女子達も
感動して目を輝かせていた。
すると、テンションがMAXに達した汁が突然
「アイアムクンフーチャンピオン!
(俺はカンフーの達人だ!)」
と大声で叫びだし、崖の柵に登って
上からベンチを蹴りだした。
柵は低く、石で出来ているので簡単に上に乗れる。
ベンチは崖ギリギリに設置されており、
一番景色が楽しめるようになっていた。
汁は、何故かヒヒヒヒヒ!
と笑いながらベンチを蹴り続けている。
先ほどの運転が受けたのが、よほどうれしかったんだろう。
しかし、意味がよく分からないその行動に、
自分や女の子達は少々ひき気味にならざるを得なかった。
次の瞬間だった。
モニカが汁の後頭部を、思いっきり横殴りに叩いた。
「オワッ!」
一瞬フラッと汁がよろけると
モニカはさっと汁の肩をつかみ、 そのまま汁を回転させた。
汁はモニカの方を振り向く形になり、二人は向き合った。
モニカは正面に来たその顔を、今度は拳骨で強打した。
汁はそのまま斜めに倒れこんで、無言で崖から落ちた。
一瞬、静かな時間が過ぎた。
モニカも少し青ざめてる。
「モニカなにしてんだよ!」
言うや否や、
あせった自分とA君は急いで崖を覗き込んだ。
すると、柵の裏側である崖側は内側より2Mくらい低くなっていて、
人二人くらい座れるスペースがあり、
汁はギリギリそこにうつぶせで落ちていた。
(もっとも、崖側には木々が生い茂っているので、
それ以上は落ちなかったようだ)
「オオー、オゥー」
と汁は具合悪そうにうなっている。
「大丈夫か?」
と聞くと
「マイノーズイズゴーン
(俺の鼻がどっかいっちまったみたいだ)」
と返事が返ってきた。
どうやら落っこちた際、顔を強打したようだ。
とりあえず落ちなくて良かったので、
あがって来いと汁に手を差し伸べると、
汁は柵に手をかけて自分の手につかまりなんとか登ってきた。
自分もA君も、
今回はあやうく殺人事件に遭遇しそうだったが、
事なきを得てすこしホッとした。
帰り、早々に汁はテンションを戻し、
懲りずにまたドリフトを続けて
「ヒャッハー!」とハイテンションに戻っていたが、
周りのみんなは無言だった。
モニカは相変わらず鉄のような表情だった。