【単語帳】音楽の論文を読んでみた!

 

 下記の論文を読みました。

Commonality and variation in mental representations of music revealed by a cross-cultural comparison of rhythm priors in 15 countries | Nature Human Behaviour

 

 そして、その内容を解説する動画を作りました。

 

 

 

 基本的には、edgeの「aあ」ボタンで翻訳して、Copilotに質問攻めしてましたが、門外漢が専門分野の論文を読むことは、探偵となって推理を行うような、一本のRPGをクリアするような、驚きと発見に満ちた体験でした。

 読破を記念して、この論文のP.1の単語帳を作っていきます。P.1だけ著者が違うみたいで、明らかに読みにくかったので……。P.2から読み始めても支障はないのですが、それは読み終わってみないとわからないことです。
 ここに書いておいたのは、「私がわからなかった」部分です。英語としてではなく、内容としてわからなかった部分なので、青色の訳(直訳)だけではなく、一応、説明も書いておきます。
 edgeの「aあ」や、Copilotへの「要約」要求によって、「もやっと」論文の「あらすじ」がわかっただけでは、そこから何のインスピレーションも得られないし、何の楽しみもない。機械翻訳と機械要約は、「読む」ために「不可欠な」下準備にすぎません。「読む」ことはもっと能動的でダイナミックなものなだと思います。

 

 題名

 

Commonality and variability共通性と多様性(人間に普遍的な要素と文化に固有の要素)

mental representations of music音楽の心的表現(音楽、特にリズムを、人はどのように処理し、内面化するのか。具体的な内容は、下記のrhythm priorsで説明します。)

rhythm priorsリズムに関して前もって持っているもの(聞こえたリズムを認識し、タッピングで再現する際に影響を及ぼす、心理的な傾向やバイアス。Aというリズムを聞いて、それをそのまま再現したつもりだったが、実際は、Bというリズムでタッピングしてしまっていたとする。それをふまえて、その人の心の中で、「リズムA→リズムB」の変換が行われた!という仮説を立てることができる。もちろん、単なるタップミスなど、さまざま要因が考えらえるので、これはあくまで仮説。この論文では、複数回の試行を行うことで、この仮説を統計的に検証していく。

 

 概要

 

reproduced再現する(スピーカーから聞こえたリズムをタッピングで再現する)

‘seed’ rhythmsシードリズム(基本的なリズム。ここでは、3音・3間隔・計2秒のリズムを指している。間隔の長さはランダム。)

fed back as the stimulus刺激としてフィードバックされる(自分が再現したリズムが、今度はスピーカーから流れて来ること。)

as in the game of ‘telephone’伝言ゲームのように(聴取者がスピーカーから流れたシードリズムを再現し、再現したリズムが今度はスピーカーから流れてきて、その流れてきたリズムを聴取者が再現し、それがまたスピ……というようなことが、5回繰り返される。聴取者の再現したリズムが次第にズレていくことで、最終的に、最初のシードリズムとは全然違ったリズムになる。これは、聴取者が、リズム認識におけるprior(biases)を持っていた証拠となる。)

their biases (the prior)事前バイアス(rhythm priorの言い換え)

the distribution of reproductions再現の分布(聴取者が、伝言ゲーム的なやり取りを経て、5回目に再現したリズムを、聴取者のグループごとに、図表にまとめる。その分布は、あるグループメンバーが共通して持つ「リズム認識の傾向」を明らかにする可能性がある。あるいは、人類共通の普遍的な特徴が見つかるかも??)

sparseまばらな=データがいくつかの場所に集中していた=データの分布が均一ではなかった(ランダムなシードリズムを再現したのだから、もし事前バイアスが働いていなければ、グループ全体で1000回ほどの試行を重ねれば、データは均一に分布するはず。そうではないということから、何らかの事前バイアスが働いていたことが、わかる。)

a sparse priorまばらな事前バイアス(この実験では、聴取者が5回目に再現したリズムを記録しているが、この記録は、聴取者の事前バイアスを色濃く投影したものであると、実験過程で統計的に示される。これをふまえて、a sparse reproduction dataと言わずに、a sparse priorと呼んでいる。)

with peaksピークあり(分布が均等でないということは、どこかに集中しているということ。グラフにすると、山みたいなところがあったということ)

at integer-ratio rhythms整数比リズムにある(「小」整数比リズムのこと。この実験では、1:1:1や1:1:2などの22のリズムを小整数比リズムと定義して、聴取者の再現したリズムがそこに吸い寄せられていることを、明らかにしている。たとえば、49:51:55のようなリズムを聞いたときでも、聴取者は、事前バイアスによって、1:1:1のような小整数比リズムでタッピングしがちだというような感じ。)

discrete rhythm ‘categories’ at small-integer ratios小整数比の離散リズムの「カテゴリー」(この一文の説明は動画で扱っていますが、上記の内容のくり返しです。discrete=sparseです。rhythm categoriesとは、直接的には、22の小整数比(1:1:2や2:2:3など)のことです。著者がこの言葉に「’」をつけたのは、そのリズムが、グループメンバーに「共通する性質(共通のbiases=the prior)」であることを、念頭に置いているからでしょう。たとえば、集団Aには、再現リズムが2:2:3に強く引き寄せられる傾向があったので、2:2:3リズムが、この集団を特徴づける事前バイアスだ!というような話です。あるいは、ある個人が、リズム認識の際に、2:2:3リズムに引き寄せられる傾向を持つことを、「2:2:3リズムカテゴリーを持つ」と表現する。)

These representationsこれらの表現:(最も抽象的には、題名にもあった「mental representations」のことであり、最も具体的には、「22の小整数比リズムカテゴリー」のことであり、そこそこ抽象的には、the prior=biasesのことです。まとめると、音楽認識において、「特定の小整数比リズムを特徴とする、心的なバイアス」が働くことを表しています。

 

 本文

 

Musical notes音符

in terms of discrete intervals in frequency and time周波数と時間の離散的な間隔の観点から(intervalという語は、音楽では「音程」を意味するが、ここでは「周波数の間隔(=音程)」と「時間の間隔(=リズム)」の二通りの意味で用いられている。この論文では、リズムのみを扱うことから、「周波数+時間=リズム」のみのことを表す可能性も考えたが、このあたりの文脈で引用されている先行研究が、音程についてのものばかりだったので、前者は「音程」を意味するのだろうと、考えることにした。)

non-arbitrary任意ではない=恣意的な(西洋の記譜法において、音程やリズムは、数学的なルールに即して決められている。)

Discrete symbolic mental representations of music:音楽の離散的な象徴的心的表現(概要に書かれている内容のくり返し。音程やリズムを認識するときに、人の心の中でどのような処理が行われているのかという概念)

be aided by categorical perceptionカテゴリー知覚に助けられる(概要を参照。この論文で、ランダムなシードリズムを、なじみのある小整数比カテゴリーに近似させて認識していたことが明らかになったように、音程についても、絶対音感を持たない音楽家は、シャープやフラットのような小さな音のズレを正確に認識できず、ほかの音符との相対的な関係をもとに、音のずれを認識していることがわかった。バイオリンなどの楽器をチューニングをする際に、先に基準とする音を決めて、その音との関係性をもとに、相対的にほかの音を決めていくことからも、そのことがわかる。)

the perceptual mapping of continuous spaces of signals onto discrete elements連続空間の信号を、離散要素へと知覚的にマッピングすること:たとえば、イラストを見るときに、全体を均等に見るのではなく、人物に表情に着目したり、ニワトリの色の違いに着目したりする。一方に着目しているとき、もう一方は、目に入っていても認識されない(事前バイアスが働いている)。このように、人は、視覚でとらえた「空間(アナログ・連続的なもの)」の「一部を切り取って(=離散要素とする・デジタル化する・符号化する)」、認識している。参考文献の論文に書かれていた内容だが、まだP1なのに、すでに12の論文が引用されている。ちなみに、この論文は45ページあり、100以上の論文が引用されている。
(2010「Goldstone, R. L. & Hendrickson, A. T. Categorical perception. WIREs Cogn.」)

 

おまけ

 

ついでに、もう一個やりました。

 

 

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