ドストエフスキー『罪と罰』~冒頭でつまずかないために~

 

ドストエフスキーの長編を読むとき、『罪と罰』を最初に選ぶ人が多いと思います。たしかに、ほかの長編よりも読みやすいですが、冒頭に壁があって、投げ出しやすい作品でもあります。第一部の終わりまで興味を持ち続けられれば、あとは一瀉千里です。ファイト!

 

 冒頭、主人公の青年(ラスコーリニコフ)が、「あれ」をするかどうかで悩んでいます。「あれ」の正体がなかなか明かされないので、何がなにやらわからないまま、だいぶん泳がされることになります。ドストエフスキーの執拗でねっとりしたアプローチに慣れていない読者は、「あれ=金貸しの老婆殺し」だと、あらかじめ知っておく方が良さそうです。

 次に、下見を終えたラスコーリニコフが、居酒屋でマルメラードフという酔っ払いの話を聞くのですが、この内容は、物語を構築するためのめちゃくちゃ重要な下準備になっています。しかし、いきなり事件の本筋から外れて、酔っぱらいが管を巻き始めたので、ちょっと読み飛ばしてしまおうという気持ちが起きがちです。その結果、あとでだれがだれだかわからなくなって、混乱してしまいます。

 たしかにマルメラードフは魅力的な人物ですが、この魅力がわかるには、読者が年齢を重ねる必要があります。ということで、まずは上に書いた登場人物だけは、しっかりと頭に入れておきましょう。マルメラードフの類型は、ドストエフスキーのどの長編にも登場しますが、その扱いとしてはマルメラードフが一番大きく、『罪と罰』は、この家族の行く末をめぐる物語であるともいえます。

 続いて、「母からの手紙」を読むことになりますが、これが面白くありません。そもそも、母の手紙に面白さなど期待できないことは、わかりきったことなのですが、『罪と罰』を探偵小説のようなものと言われて、軽い気持ちで読み始めた読者は、ここでめんどくさくなるでしょう。ただ、この手紙も、重要な登場人物を把握するための下準備です。上の表にまとめた人物だけは、しっかりおさえましょう。

 また、この手紙の中で、「同一人物の呼び方が複数ある」というロシア文学の洗礼を受けることになります。たとえば、主人公のラスコーリニコフは、「ロージャ」「ロージェンカ」「ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコーリニコフ」のように、複数の呼び方をされます。これについては、どの人物も「中心となる呼ばれ方」があるので、読み進めれば慣れてきます。ただし、「ルージン」という人物だけは要注意で、「ピョートル・ペトローヴィチ」という呼び名と半々で登場するので、だれだかわからなくならないように。

 母の手紙を読み終えることさえできれば、そのあとは、ラスコーリニコフの鋭いメスが入るので、はじめてここで物語に引き込まれる感じがあるはずです。作者は、てんびんの上にさまざまな条件を乗せて、ラスコーリニコフを空想の殺人へと向かわせる実験を行います。そして、その勢いを駆って、犯行が終わる第一部の終わりまで行きつけたら、勝ちです。

 

 『罪と罰』の登場人物は非常に限られており、舞台もコンパクトにまとまっています。どこにだれがいるか、しっかり把握しておくことが必要です。

 ラスコーリニコフの下宿には、「おかみ(プラスコーヴィア・パーヴロヴナ)」と「女中(ナスターシャ)」がいます。物語を読み進めると、節目節目にナスターシャが登場しますが、おかみは実際に顔を出すことはありません。ナスターシャはRPGのセーブポイントのような存在で、物語が一段落したことを示しています。途中で、ラズミーヒンが「おかみ」にうまく取り入るのですが、油断していると、パーシェンカとは一体だれだろうと、とまどうことになります。

 ラスコーリニコフの下宿の目と鼻の先にコーゼルマンションがあり、カテリーナ・イワーノヴナとマルメラードフ夫婦と、3人の小さな子どもたちが暮らしています。家主のアマリヤ・フョードルヴナとカテリーナ・イワーノヴナは、とても相性が悪いです。また、序盤と終盤で大きく印象を変えるレベジャートニコフという人物も、ここに住んでおり、あとでルージンが同居するようになります。ある事情で、コーゼルマンションに住めなくなったソーニャは、カペルナモウの一家に間借りしますが、あとで横にスヴィドリガイロフが引っ越してきます。

 登場人物の理解が難しいのは、最初の登場時には名前が明かされない人が多い点からです。犯行時に、老婆の部屋の前に来た二人の男のうち、若い方はペスチャコフです。ペンキ屋は、ミコライとミトレイです。カテリーナ・イワーノヴナと先夫との間の3人の小さな子どもたちも、なかなか名前がわからず、最終的にポーレチカ・リードチカ・コーリャだとわかります。さらに、ラスコーリニコフが出頭したとき、若い「事務官」が出てきますが、この場面の中では、アレクサンドル・グレゴーリエヴィチと紹介されるだけです。この人物は、後の場面になって、ザミョートフと呼ばれます。ラスコーリニコフが婚約していた「おかみの娘」も、途中まで名前がわかりませんが、あとでナターリヤ・エゴーロヴナだとわかります。ちなみに、主人公のラスコーリニコフは23歳なのですが、彼の年齢は、第六部でようやく明らかになります。

 

ルイザの店には、のちにラズミーヒンとザミョートフが何度か通っています。送金に関係する人物がいろいろ出てきますが、母から送金を依頼されたワフルーシン、ラスコーリニコフの手形を買い取ったチェバーロフは覚えておきましょう。お金のことは、話がややこしいわりに、物語の展開にはかかわりません。

 

このあたりで読みにくいのは、ラスコーリニコフの着替えをさせるところと、ラズミーヒンがドゥーニャに舞い上がるあたりです。

 

20代で読んだときには、スヴィドリガイロフという存在を追い払おうとしていたのに対して、40代で読んだときには、スヴィドリガイロフの一挙手一投足を凝視していました。年齢によって、読み方が変わってくるものです。

 

【登場人物50音順整理】

・アヴドーチヤ・アレクサンドロヴナ⇒ドゥーニャ

・アニーシカ…マルファ・ペトローヴナの村のお針子。

・アフィナーシイ・イワーノヴィチ・ワフルーシン⇒ワフルーシン

・アフィナーシー・パーヴルイチ…居酒屋でミコライに老婆殺しのことを伝える。

・アフロシーネシカ…運河から身投げした背の高い女。この身投げを見たラスコーリニコフは、「だめだ、醜悪だ……水は……いかん」と言って、警察署のほうに歩き始め、その後、事件現場に戻って血のことを聞く。

・アマリ・イワン⇒アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル

・アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル…コーゼルマンションに住居を構え、借りた住居を細かく区切って貸し出している。マルメラードフとカテリーナの一家が間借りしている。カテリーナとは相性が悪い。「あそこには、わたしたちのほかにも、たくさんの人がいますが……その醜悪なことったら、まさにソドムですな(byマルメラードフ)」。レベジャートニコフとルージンが住む部屋もある。

・アマリヤ・リュドヴィーゴヴナ⇒アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル

・アリョーシカ…年上のチートとともに、老婆の部屋の改装をしていた職人。ラスコーリニコフがやってきて、血のことを聞く。

・アリョーナ・イワーノヴナ…金貸し老婆。十四等官未亡人。ラスコーリニコフに殺される。

・アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフ⇒スヴィドリガイロフ

・アレクサンドル・グレゴーリエヴィチ⇒ザミョートフ

・アレクセイ・セミョーノヴィチ…ラスコーリニコフが寝ているときに、ワフルーシンからの送金の件で、事務所から派遣された人。

・アンドレイ・セミョーヌイチ・レベジャートニコフ⇒レベジャートニコフ

・イリヤ・ペトローヴィチ…副署長。「落雷、稲妻、竜巻、旋風!」。連帯では火薬中尉と呼ばれていた。

・イワン・アファナーシエヴィチ閣下…マルメラードフに手を差し伸べた。「もう一度わしの個人の責任において採用してやろう」。

・イワン・イワーノヴィチ…ソーニャにワイシャツを六枚も仕立てさせながら、金を払わなかった。

・イワン・ミハイルイチ…カテリーナ・イワーノヴナの祖父。五等文官だった。

・ウラズミーヒン⇒ラズミーヒン

・おかみ⇒プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ

・おかみの娘⇒ナターリヤ・エゴーロヴナ

・カテリーナ・イワーノヴナ…マルメラードフの妻。30歳前後。佐官の家に生まれた教養ある婦人。気性が激しい。コーゼルマンション4Fのアマリヤ・フョードロヴナが借りた住居の一部を借りている。レベジャートニコフ氏に殴られたことを根に持っている。最初の夫は歩兵士官で、熱愛して家を飛び出したが、夫が賭博で裁判沙汰になり、それがもとで死んでしまう。その後、マルメラードフの後妻となる。

・カペルナモウ…洋裁店を営む。コーゼルマンションから追い出されたソーニャが間借りしている。隣にはスヴィドリガイロフも間借りする。

・カルル…ルイザの店の庭番。飲んだくれに目をなぐりつけられる。

・御者…マルメラードフをはねてしまう。

・クリュコフ…七等官。ミコライがミトレイを地べたにおさえつけ、馬のりになってぶんなぐっていたと、証言した。

・クロプシュトーク⇒イワン・イワーノヴィチ

・毛皮の職人⇒町人風の男

・ゲルトルーダ・カルローヴナ・レスリッヒ⇒レスリッヒ夫人

・コーゼル…ドイツ人の金持ち。マルメラードフ一家らが住むコーゼルマンションの持ち主。4Fを借りたアマリヤ・フヨードロヴナが、さらに借りた住居を細かく分割して、又貸ししている。

・コーリャ…カテリーナ・イワーノヴナの息子。

・コッホさん…ラスコーリニコフが老婆とリザヴェータを殺害した直後に、呼び鈴を鳴らして金を借りに来た男。質流れ品の買い占めをやっていた一種のペテン師。そのあとに来た若い男(ペスチャコフ)に、部屋の前で待つように言われたが、待ちきれずに階段を下りてしまったせいで、ラスコーリニコフは逃げ出すことができた。老婆を訪れる前には、下の銀細工師のところに三十分いて、七時四十五分に老婆のところに向かった。

・ザミョートフ…ラスコーリニコフが最初に出頭したときに応対した事務官。二十二~三歳。

・ザルニーツィナ⇒プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ

・ザルニーツィン…プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナの亡夫。

・シチェゴリスキー公爵…カテリーナ・イワーノヴナに求婚したが、断られた。

・事務員風の男…ラズミーヒンが来ているときに、ラスコーリニコフに、ワフルーシンからの三十五ルーブリを渡す。

・事務官⇒ザミョートフ

・シャルメル…「シャルメルの店へなんか注文したら、それこそことだよ!」と、ラズミーヒンが言っている。

・巡査…酔った少女を家まで連れて帰る髭の巡査。「なげかわしいことだ。このごろの若い者の堕落にはめにあまる!」

・署長⇒ニコージム・フォミッチ

・紳士…酔った少女をストーキングしている脂太りの伊達男。「おいきみ、ソヴィドリガイロフ!」とラスコーリニコフに呼び止められる。

・スヴィドリガイロフ…マルファ・ペトローヴナの夫。50歳くらい。ドゥーニャが、家庭教師に入ったときに醜聞が持ち上がる。

・セミョーン・ザハールイチ⇒マルメラードフ

・セミョーン・セミョーノヴィチ…ラスコーリニコフの母の依頼で、ワフルーシンから送金を受けた事務所の人。

・ソーニャ・セミョーノヴナ…マルメラードフと亡き先妻の娘。「そんなに惜しいものかい? 宝ものでもあるまいし!」とカテリーナ・イワーノヴナに言われ、売春婦となる。レベンジャートニコフ氏からルイスの『生理学』を借りて熱心に読んでいた。

・ソーネチカ・マルメラードワ⇒ソーニャ

・ソーフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ⇒ソーニャ

・ゾシーモフ…医者。二十七~八歳。ラスコーリニコフの病状について、頭にちょっとショックを受けただけの「軽い神経の発作」だから、自然になおると言っていた。

・ダーリヤ・フランツォヴナ…何度も警察の世話になっている悪女。ソーニャに、アマリヤを通じて売春婦になることをすすめる。売春婦となったソーニャに難癖をつけて、アマリヤに家から追い出させる。

・チート・ワシーリエヴィチ…老婆の部屋の模様替えをしていた職人のうち、年上の方。ラスコーリニコフが訪ねてきて、「血のあとはもうない?」と尋ねる。

・チェバーロフ…七等官で腕っこき。おかみから、ラスコーリニコフの手形を買い取った。チェバーロフが支払いを請求したことで、ラスコーリニコフは警察署に呼び出された。その後、ラズミーヒンが百ルーブリと引き換えに手形を買い戻し、おかみも訴えを取り下げた。

・町人風の男…五十過ぎに見える背筋の曲がった男。ラスコーリニコフの名前を庭番に言って、下宿しているかどうかを確認する。ちょうどその場にやってきたラスコーリニコフが追いかけると、「人殺し!」と叫んだ。「おまえが人殺しだ」と言って立ち去った。その直後、ラスコーリニコフは悪夢を見て、目が覚めたところにスヴィドリガイロフが現れる。その後、ポルフィーリーの尋問後に、ラスコーリニコフの前に現れ、謝罪する。ポルフィーリーがラスコーリニコフに言った「贈り物」とは、彼のことだった。

・亭主…マルメラードフとラスコーリニコフが出会った居酒屋の亭主。

・ドゥクリーダ…流しの女。三十前後のそばかすだらけの女で、顔中に青あざをこしらえている。ラスコーリニコフが気前よく、5ペイカ銅貨を三枚渡す。そして、「生きていたい」と思う。

・ドゥシキン…事件現場の向かいで居酒屋をしている農夫。金のイヤリングをペンキ職人のミコライから1ルーブリで買い取った。その後、警察に出頭した。

・ドゥーニャ…ラスコーリニコフの妹。スヴィドリガイロフのところに住み込みで家庭教師をしていたが、醜聞をきっかけに、ルージンと結婚することに。

・ドゥーネチカ⇒ドゥーニャ

・ドミートリー・プロコーフィチ⇒ラズミーヒン

・トルチャコフ…ラズミーヒンの友人で、公式の場に出るときに、必ず帽子を脱ぐ人。

・ナスターシェンカ⇒ナスターシャ

・ナスターシャ・ペトローワ…ラスコーリニコフの下宿しているアパートの女中で料理女。おしゃべりで笑い上戸。

・ナスターシュシカ⇒ナスターシャ

・ナスチェンカ⇒ナスターシャ

・ナターリヤ・エゴーロヴナ…一年前にチフスで亡くなったおかみの娘。ラスコーリニコフと婚約していた。

・ニコージム・フォミッチ…区警察署長。

・ニコライ⇒ミコライ

・庭番…殺人後のラスコーリニコフの部屋にナスターシャと共にあらわれ、警察からの通達の手紙を黙って差し出した。

・パーシェンカ⇒プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ

・バーブシキン…ラズミーヒンの新居であるポチンコフのアパートのオーナー。

・母⇒プリヘーリヤ・ラスコーリニコワ

・ハルラーモフ…ラズミーヒンが、ラスコーリニコフの下宿を探そうとしたとき、ブッフの家なのに、ハルラーモフの家だと勘違いしていた。

・ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン⇒ルージン

・フィリカ⇒フィリップ

・フィリップ…六年前に亡くなったスヴィドリガイロフの家の下男。スヴィドリガイロフが自殺に追いやったという噂。スメルジャコフの原型となる人物。

・フェジャーエフ…ラズミーヒンが、ラスコーリニコフのために洋服をそろえた店。はき古したら、来年は別のズボンが無料。

・副署長⇒イリヤ・ペトローヴィチ

・ブッフ…ラスコーリニコフが前に下宿していた家。

・ふとった大男…ラスコーリニコフがはじめて入った居酒屋で、酔って歌っていた。

・プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ…ラスコーリニコフの住む屋根裏の下に住む。四十歳くらい。娘がラスコーリニコフと結婚することを約束していたが、一年前に腸チフスで亡くなった。ラズミーヒンが、うまく取り入っている。

・プラトークをかぶった背丈の高い女⇒アフロシーニュシカ

・プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ・ラスコーリニコワ…ラスコーリニコフとドゥーニャの母。恩給を担保にワフルーシンから金を借りて、ラスコーリニコフに送金する。

・ベズゼメリナヤ公爵夫人…舞踏会のときに、カテリーナ・イワーノヴナがマルメラードフと結婚したことを祝福した。

・ペスチャコフ…ラスコーリニコフが殺人を犯した直後に、老婆の部屋の前に来た二人目の男(もうひとりはコッホ)。「ぼくはね、予審判事になると思って勉強中なんですよ!」。

・ヘルヴィーモフ…本屋。ラズミーヒンが翻訳の仕事をしている。自然科学系のあやしげな本が妙に当たる。

・ヘンリエッタ…ルイザの店で、のんだくれに目をなぐられた一人。

・ポーリャ⇒ポーレチカ

・ポーレチカ…カテリーナ・イワーノヴナの上の娘。十歳。

・ポーレンカ⇒ポーレチカ

・ポコレフ…ラスコーリニコフに、アリョーナ・イワーノヴナの住まいを教えた。

・ポルフィーリー・ペトローヴィチ…予審判事。三十五~六歳。「頭のいいことは無類だが、ただものの考え方に独特のくせがある……疑り深いんだな、会議論者で、毒舌家で……人をからかうのが好きなんだよ……なあに、古臭い実証的方法さ……だがしごとはよくできるよ、たいした腕だ(byラズミーヒン)」

・マルファ・ペトローヴナ…スヴィドリガイロフの妻。ドゥーニャの方がスヴィドリガイロフに言い寄ったと勘違いして、ドゥーニャを送り返すが、誤解だったとわかり、ドゥーニャがスヴィドリガイロフに送った手紙を朗読して、名誉挽回をはかる。

・マルメラードフ…カテリーナ・イワーノヴナの夫。退役九等官。先妻に死別して十四歳の娘を抱えていたとき、カテリーナ・イワーノヴナに求婚する。居酒屋でラスコーリニコフに話しかける。妻と家族への病的な愛を持つのんだくれ。

・ミチカ⇒ミトレイ

・ミコールシカ…ラスコーリニコフの夢に登場。馬を殺した男。役立たずの老いた馬を鉄棒で叩き殺すという夢は、ラスコーリニコフの殺人を暗示することに。

・ミコライ・デメンチェフ…ペンキ屋。二十二歳。ミコライとミトレイが、追いかけっこをしながら階段から降りていったことで、老婆を殺害した直後のラスコーリニコフが2Fのペンキ屋の仕事場に隠れることができ、庭番たちをうまくやりすごした。その後、拾った金のイヤリングを、ドゥシキンに1ルーブリで売り、ぺスキの荷舟で寝ていたが、逮捕されるのを恐れて、首を吊ろうとする。

・ミトレイ…ミコライとじゃれあっていたペンキ屋。

・喪服の女…ラスコーリニコフが最初に出頭したとき、先に出頭していた2人の婦人のひとり(もうひとりはルイザ)。

・ユーシン…ルージンがドゥーニャたちのために用意したアパートの持ち主。「ひどいところだよ、はきだめだよ」。

・ラスコーリニコフ…主人公。プリヘーリヤ・ラスコーリニコワの息子、ドゥーニャの兄。

・ラウィーザ・イワーノヴナ⇒ルイザ・イワーノヴナ

・ラズミーヒン…ラスコーリニコフの大学時代の友人の一人。ワシーリエフスキー島に住む。

・リーダ⇒リードチカ

・リードチカ…カテリーナ・イワーノヴナの下の娘。

・リザヴェータ…金貸し老婆の腹違いの妹。35歳ごろ。ラスコーリニコフに殺される。

・リッペヴェフゼル夫人⇒アマリヤ・フョードロヴナ・リッペヴェフゼル

・ルイザ・イワーノヴナ…居酒屋の店主。ラスコーリニコフが最初に警察署に呼び出されたとき、先に呼び出されていた赤黒い顔の派手な女。店でいつものように騒ぎが持ち上がったため、呼び出された。その後、ラズミーヒンとザミョートフが二度、訪れている。

・ルージン…マルファ・ペトロ―ヴナの遠縁。マルファ・ペトローヴナの骨折りで、ドゥーニャと結婚することになった。ペテルブルクでは、レベジャートニコフと同居している。

・レーナ⇒リードチカ

・レスリッヒ…スヴィドリガイロフと親密な関係にあった小金貸しの外国人の女。遠縁の十五くらいの少女が一緒に住んでいたが、レスリッヒはこれを憎み、ひどく虐めた。ある日、少女は首をつって亡くなったが、その後、スヴィドリガイロフに少女が凌辱されていたという噂が流れる。マルファ・ペトローヴナが金を使って、噂をもみ消した。その後、スヴィドリガイロフがペテルブルグに間借りしている。ソーニャの部屋の隣。ソーニャとラスコーリニコフの会話を、スヴィドリガイロフは盗み聞きした。

・レベジャートニコフ…役所勤め。マルメラードフの妻を6月ごろにぶちのめした悪党として登場するが、後半で正当防衛だったことが明かされる。新思想を研究している。マルメラードフが、「ぜんぜん見込みのない借金」を頼みに行く。ソーニャを追い回していたのに、ソーニャが売春婦になったあと、「わたしのような文化人が、こんな女と一つ屋根の下に住めるか!」と言った(byマルメラードフ)とされていたが、そうではなく、ソーニャが家を出た後も、啓蒙しようとして本を貸したりしていた。ルージンと同居している。最後に、どんでん返し。

・ロージェンカ⇒ラスコーリニコフ

・ロージャ⇒ラスコーリニコフ

・ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコーリニコフ⇒ラスコーリニコフ

・ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ⇒ラスコーリニコフ

・露天商の夫婦…ラスコーリニコフが立ち寄ったセンヤナ広場で、リザヴェータをお茶に招待する。ラスコーリニコフは、これを聞いて、老婆が明日ひとりでいることを知る。

・ワーシャ…ワフルーシンのところの小僧。

・若い男⇒ペスチャコフ

・若い娘…酔ってベンチに座っていた15歳くらいの少女。30前後の紳士に目をつけられていたのを、ラスコーリニコフと警官に救われる。

・ワフルーシン…商人。ラスコーリニコフの母に、「年に百二十ルーブリの恩給」を受け取る権利と引き換えに、金を貸す。