ドストエフスキー『貧しき人びと』全人物事典①

 

 

・アクセンチイ・ミハイロヴィチ…9月11日に閣下のすばらしさをマカールとエメリヤン・イワーノヴィチと話し合った。

 

・アレクセイ・オシポヴィチ…マカールの同僚。去年、ピョートル・ペトローヴィチを門番の部屋に呼びつけて、潔いやり方で制裁を加えた。今は仲直りしている。

 

・アンナ・フョードロヴナ…ワルワーラの遠い親戚。あやしげな仕事をしている。

 領地管理人をクビになったワルワーラの父に金を貸していたが、貸した金は返ってきそうもない。二人は仲たがいしたまま、先にワルワーラの父が亡くなる。葬儀のとき、アンナ・フョードロヴナは、これまでのことは水に流して仲直りをしようと提案して、残された母と娘を引き取った。これは、返ってこなかった借金の代わりに、母娘に残された財産をふんだくってやろうという思惑があってのことだったが、何も残されておらず、当てが外れた。

 アンナ・フョードロヴナについて、哀れな逆らえない人間に力関係をわからせ、支配して恩に着せようとする人物であると、ワルワーラは感じている。しかし、ワルワーラ自身が、夢見がちな世間知らずの気の強い自尊心の高い少女だったので、この評価は必ずしも正しくない。マカールが、アパートの女主人をひどい人だと言っていたのと、対になっている。どちらも自分の行いに原因がある。

 ワルワーラの母は、いつも針仕事をしていたが、アンナ・フョードロヴナはこれが気に食わず、自分が二人を養ってやっている恩を忘れて、自分の家を出て行こうとしていると腹を立てた。

 また、その当時、アンナ・フョードロヴナの家には、みなしごの親戚サーシャ(ワルワーラより一歳年下)と、ポクロフスキーも住んでいた。ポクロフスキーはブイコフ氏の隠し子である。

 ワルワーラの母親が亡くなったときに、アンナ・フョードロヴナが彼女を赦そうとしなかったことを、ワルワーラは根に持っている。

 この物語の始まる前に、アンナ・フョードロヴナの紹介で、ワルワーラはブイコフと関係を持ち、捨てられている。これは、アンナ・フョードロヴナの仕掛けたハニートラップのようなものだったのかもしれない(ポクロフスキーの母親と同じ状況)。アンナ・フョードロヴナは、「ワルワーラに対するブイコフ氏の罪を当人に償わせる」と言っており、ブイコフ氏はのちに、アンナ・フョードロヴナのことを、「とても卑劣な女ですよ」とののしっている。ワルワーラにブイコフ氏の子どもができたと言って、ワルワーラを別の結婚相手に嫁がせるかわりに、ブイコフ氏から持参金を巻き上げようとしたのだろうか。サーシャもまた、アンナ・フョードロヴナのもとで、あやしげな仕事を手伝うようになり、破滅しそうになっていると書かれているので、同様の手口で、関係をもった地主からお金を巻き上げていたのかもしれない。

 ただ、そのあたりの事情は詳しく書かれていないので、表面的には、アンナ・フョードロヴナは、ワルワーラが小役人マカールの仕送りで暮らしていることを心配して、強い言葉で忠告しているようにも見える。ワルワーラは、「あれこれ詮索する」「あたしをつけねらう」としか感じていない。二人の対立は、自尊心の強い保護者と気の強い夢見がちな娘の、ごく一般的な日常風景にも見える。

 士官の伯父やブイコフのような、ワルワーラに言い寄る男は、アンナ・フョードロヴナの紹介を受けている。そして、最終的にブイコフとワルワーラが結婚することになるのだから、アンナ・フョードロヴナは、敵役として登場したものの、ただ、おせっかいな世話焼きの親戚としてふるまっただけだったとも言える。

 

・ヴェーラ ⇒ ワルワーラ

 

・ウラジーミル・フョードロヴィチ・オドエフスキー(1803~1869)…冒頭の引用文を書いた批評家・幻想小説家。ドストエフスキーの作品や世界観に影響を与えており、両作家の比較研究は盛んにおこなわれている。彼の小説はロシアの没落貴族を扱ったものが多かった。冒頭に掲げられた一節にある、「地下の秘密を洗いざらいほじくりだすばかり」というのは、ゴーゴリの『外套』のような風刺作品を念頭に置いたものである(直接ゴーゴリを批判しているわけではない・ゴーゴリ『外套』の発表から3年、似たような作品が雨後のタケノコのように多く書かれた)。

 オドエフスキーの批判は、作中でマカールが行った『外套』批判と半分重複している(オドエフスキーは公爵、マカールは九等官であり、その立場に雲泥の差がある)。

 

・エフィム・アキーモヴィチ…マカールの同僚。前代未聞の毒舌家。マカールの服装をからかう。

 

・エフスターフィ・イワーノヴィチ…「一番大切な市民としての美徳とは金儲けの才能だ」と言ったらしい。9月9日のマカールの失敗の際、マカールに急いで閣下のところへ行くように言った。

 

・エメーリヤ ⇒ エメリヤン・イリイッチ

 

・エメリヤン・イリイッチ‥‥元役人。7月にマカールと会った時には、持ち物をすっかり質に入れてしまい、二昼夜、何も食べていなかった。マカールは彼への同情の念に負けて、一緒に飲み、泥酔した。そして、エメリヤン・イリイッチは、酔って正体不明の状態のマカールを、士官の部屋にけしかけた。8月19日のマカールの手紙に、「エメーリヤ」があなたによろしくとのことでした」と書かれている。

 

・エメリヤン・イワーノヴィチ…マカールと同じ役所に勤めている。二人そろって最古参の万年九等官。「好人物で、無欲な男ですが、とても無口で年中熊みたいな目つきをしています」。マカールが悩んでいるときに「何をそんなに考えこんでいるんです?」と親切にたずねて、ピョートル・ペトローヴィチに借金することをすすめた。さらに、借金に失敗したマカールに、マルコフへの借金をすすめた。9月11日にマカールらと閣下の話をしている。9月28日に、閣下に叱られた。

 

・エルメラーエフ…役所の書記。マカールが通りかかったとき、「まるで酒代がほしいといわんばかりに」、ぴんと不動の姿勢をとって、マカールを見送った。

 

・女主人…マカールの長屋の女主人。「とても小柄な薄汚いばあさんで、一日じゅう、だぶだぶの部屋着という格好」をしている。いつも女中に小言を言っている。ゴルシーコフの息子が死んだとき、6歳の長女にお菓子をやったが、彼女は食べなかった。マカールからは、いつも怒鳴り散らしているひどい人間のように言われるが、これはそもそもマカールが家賃を納めないのが悪い。マカールが、7月28日と9月4日に家賃の一部を払うと、その場はおとなしくなる。ゴルシーコフが青天白日の身となったとき、女主人はわざわざこの一家のために料理を作った。「うちの女主人さんもあれでなかなかいいところもあるのです(byマカール)」。

 

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