ドストエフスキー『プロハルチン氏』を読む

 

 作品の発表された1847年は、ヨーロッパに自由化の波が押し寄せた1848年の革命へと向かう真っただ中にありました。当時のドストエフスキーは社会主義に傾倒しており、当局の検閲をかいくぐるため、「自由主義」思想をまるで狂ったプロハルチン氏のように愚かな妄想だとこき下ろしているように見せつつ、政府転覆の可能性を示唆するというどちらともとれる書き方をするという、ロシア的な。作品の外に目的がある点で、この作品は時代の産物だったと言えそうです。

 もともと、この作品の下書きとなった『廃止された役所の話』は、検閲によって出版できなくなっていました。

 また、プロハルチン氏とウスチニヤとの関係から、『分身』のゴリャートキン氏とカロリーナの関係も、これと似たものだったと推測できます。

 さらに、自分の世界に籠りながら一生を送ろうとする人物、良心の呵責に押しつぶされる人物など、その後の物語の核となる人物の原型を見ることもできます。

 ただ、トランクに隠した財産に固執するプロハルチン氏が、それを置いたまま失踪したり、ベッドに顔も知らない義理の姉の人形を寝かせてみたり、空気のような登場人物がいたり、突っ込みどころの多い作品でもあります。

 

  全登場人物紹介

 

アヴドーチャ…女中。いつもため息をついたり、唸ったりしながら、部屋を片付けたり拭いたりこすったりしている。失踪したプロハルチン氏を待っていたとき、あまりに遅いので眠ってしまって、二度も起き上がり、薪を運んできて暖炉で焚こうとした。プロハルチン氏の死後、その敷布団からたくさんのお金が出てくるさまを、猫と一緒に好奇心いっぱいの表情で見守った。

 

アンドレイ・エフィーモヴィチ…プロハルチン氏が見た夢の中に登場する。三部屋離れたところにいる同僚、二十年間、まだひとことも言葉をかけたことのない、無口で禿げ頭の小男だった。おそらく、ペスキイにいた時代の下宿人がモチーフになっているのだろう。階段でプロハルチン氏と出会い、七人の家族がいるのでお金がないと訴えて、プロハルチン氏を非難するような目でにらみつけた。これは、架空の義理の姉を仕立て上げて、仕送りしているふりをして蓄財しているプロハルチン氏自身の罪悪感のあらわれである。

 

ウスチニヤ・フョードロヴナ…プロハルチン氏の住むアパートの女主人。ペスキイにいたころは、プロハルチン氏を含む3人の下宿人を抱え、こちらに移って来てからは、プロハルチン氏を含む10人以上の下宿人を抱えている。押し出しのよい大柄な女。なまぐさものやコーヒーが大好き。彼女の好意を一身に集めていた男が、深酒のせいで亡くなったあと、プロハルチン氏が彼女のお気に入りとなった。「神様、あの人の魂を暖めてあげてくださいまし」。プロハルチン氏が失踪したあと、泣きわめいて、下宿人たちに探させた。戻って来たプロハルチン氏が正気に戻らないので、「クリヴォイ横丁で例の家が焼けたのは禿げ頭の娘がひとりいて、それがローソクに火をつけて物置に放火した」からだと言った。その後、プロハルチン氏の病気が危機の状態に至り、「善良なみなさん、どうか自分を許してほしい、見捨てないでほしい」と言うのを聞いて、同情して大声で泣いた。プロハルチン氏の死後、「なんて罪な人なんだろう、とんだ詐欺師だわ!」と、故人を呪った。ウスチニヤは、プロハルチン氏からのアプローチを待ち続けていたが、プロハルチン氏には、そのようなことができるはずもなかった。

 

オケアーノフ…おとなしくて静かで気が利かないが、結局、一番頼りになるしっかり者だった下宿人。書記。かつてプロハルチン氏と争って、ウスチニヤ・フョードロヴナのお気に入りの地位を奪うところだった。マルクとプレパロヴェンコと一緒にお茶の集まりをしようとしていたとき、ジノーヴィーにトランクの中身を聞かれた怒りがさめやらぬプロハルチン氏がやって来て、義理の姉のせいで自分がいかに貧乏かということや、ジノーヴィーの悪口など、長広舌をふるわれた。プロハルチン氏が失踪したとき、これを最初に見つけたスジピンの発言が正しいことを、裏付けた。その後、病気が危機の状態に至り、「善良なみなさん、どうか自分を許してほしい、見捨てないでほしい」と言うあわれな病人に対して、「あの男がせめて、つらいのは誰も同じだということに気づきさえしたらね」と、後になって言っている。最後の日、夕方に病人は意識不明となり、同居人たちは一晩中、プロハルチン氏に付き添うことにしたが、議論がこじれて寝てしまった。最後まで起きていたのがオケアーノフで、明け方、レムニョフとジモヴェイキンがプロハルチン氏の部屋に入ったらしい気配を感じたが、寝てしまった。その後、大きな叫び声がして目を覚ますと、ジモヴェイキンとレムニョフがつかみ合いをしながら、「この泥棒め!」「ふざけるな。俺は潔白だぞ!」と言い争っていた。プロハルチン氏が亡くなった後、まっさきに分別を取り戻してアパートを抜け出して、医者と警察署長のヤロスライ・イリッチらを連れて来た。その後、ヤロスライ・イリッチに、ジモヴェイキンのポケットに入っていたプロハルチン氏のトランクの鍵を渡したが、その中にがらくたしか入っていなかったため、きびしく詰問された。その後、オケアーノフは一杯機嫌だった。

 

オプレヴァーニエフ…下宿人のひとり……として、冒頭で名前が挙がっていたが、それ以来、忘れ去られてしまった。

 

カンタリョフ…下宿人のひとり。雀のくちばしのような鼻をした町人出身の小男。プロハルチン氏が失踪したとき、これを最初に見つけたスジピンの発言が正しいことを、裏付けた。失踪したプロハルチン氏を迎えるために、下宿人たちは、プロハルチン氏の義理の姉さんの人形を作って寝かせて待ったが、待っている間に、プレパロヴェンコとともにカードでマルクに勝ち、給料の半分を手に入れた。プロハルチン氏の死後、アパートを引き払ってしまった。理由をたずねると、「個々の払いなど自分の懐具合だと難しくなってきた」と、冷ややかに答えるだけだった。プロハルチン的な人間となっていくことが、暗に示されている。

 

義理の姉さん…プロハルチン氏は、お金を貯めていることを隠すために、義理の姉に送金しているという嘘をついていた。失踪後に、意識不明で戻って来たあと、同居人たちが、義理の姉さんの人形を作って寝かせた。

 

辻馬車の馭者…辻馬車の馭者は、家出していたプロハルチン氏を連れてきて、「にぎやかにお楽しみの、感じのいい旦那方」頼まれた、と言った。プロハルチン氏の自宅を知っている人は限られているので、一緒に行動していたジモヴェイキンのことだろう。

 

辻馬車の馭者…プロハルチン氏が、5年前に「人間にあるまじき非道や手口でだました」らしい。たいしたことをしていないと思うが、プロハルチン氏の軟弱な精神は、良心の呵責に耐えられなかった。

 

ジノーヴィイ・プロコフィエヴナ…軽率でまっすぐな下宿人のひとり。上流社会の仲間入りをしたい(軽騎兵見習いになりたい)と念願している人物。若気の至りで、プロハルチン氏のトランクの中身について聞いたため、逆上したプロハルチン氏に、「上流社会に入れるわけがない」「鼻垂れ小僧」と、こっぴどく責められた。その後も、「軽騎兵になったら、戦場で片足をたたき斬られてしまうだろう」などと、さんざん言われている。失踪したプロハルチン氏の帰りを待つとき、一分おきに外に出て確認したので、骨の髄まで濡れてしまった。失踪から戻って来たプロハルチン氏が、お茶の集まりにやって来たとき、義理の姉に関する話を話題にして、プロハルチン氏の反論のあいまいな反論を、仲間たちと共に「すでに一再ならず指摘されている」と、封じた。戻って来たプロハルチン氏が正気に戻らないので、「義理の姉さんだとか、ダンスの私見だとか、そんなことで冗談を言い合っているときですかね?」と、大きな声で言った。その後、病気が危機の状態に至り、「善良なみなさん、どうか自分を許してほしい、見捨てないでほしい」と言うあわれな病人に同情して、さまざまな作り話でプロハルチン氏を苦しめたことを悔いて、アパートの住人で寄付金をつのることを言いだした。プロハルチン氏の死後、敷布団からお金がたくさん出て来たので、ジノーヴィイの音頭でベッドの下を調べたが、何も出て来なかった。大金を前に、ジノーヴィイはすっかり考え込んでしまった。プロハルチン氏との生前のやり取りを思い出していたのだろう。

 

ジモヴェイキン…失踪したプロハルチン氏を誘惑して一緒に行動した暴れん坊の飲んだくれの乞食。なぜこの男がプロハルチン氏を誘惑できたか、くわしく書かれていないが、信じやすいところに付け込んだのだろう。ジモヴェイキンと一緒に見物した火事が、プロハルチン氏に大きなショックを与えた。かつては役所に勤めていたが、省庁再編によって職を失った(このことも、プロハルチン氏にショックを与えた)。しばらくアパートで暮らしたことがあるが、受け入れてもらえた喜びのあまり披露した踊りが侮辱的だったために追放された(戻ってきたが、再度追放された)。比喩的な意味で、「すぐに踊り出すこと」は、『分身』のゴリャートキン氏も同様だった。

 失踪から帰って来たプロハルチン氏が正気に戻らず、同居人たちがいくらなだめても叱っても、らちが明かなかったとき、ジモヴェイキンがやって来て、「センカ、賢人のプロハルチン、分別をわきまえるんだ。強がってばかりいると、引きずり下ろすぞ」と、力強く言った。その言葉が、プロハルチン氏をどぎまぎさせた。「さもないと、訴えるぞ! え、兄弟、何もかも話してしまうぞ」と言うと、プロハルチン氏はおとなしくなった。ジモヴェイキンは、「顔の右側が何かでべっとりとよごれて」「燕尾服もズボンもずたずたに裂けて」いたので、彼が従事したとされる「重大な仕事」とは、酔っぱらうことだとわかる。「お前は情けない奴だよ、泥棒だよ!」とも言われている(実際に泥棒である)。このときのジモヴェイキンの様子が、「どこかの酔っ払いがポケットの中身をすられたからって、あなたも燕尾服の裾を着られるとでもいうんですか?」というマルクの言葉につながっている。

 プロハルチン氏がいよいよという時になった夜、レムニョフの部屋にジモヴェイキンがやって来て、あらかじめ盗んでおいた女将のカギを使って、プロハルチン氏の部屋に忍び込んだ。しかし、あるべき場所に金が見つからないので、二人はつかみ合いをしながら、「この泥棒め!」「ふあけるな。俺は潔白だぞ!」と言い争った。その後、レムニョフとともに、警察署長の手によって、しかるべき人間の手に渡された。この際、ジモヴェイキンが持っていたプロハルチン氏の宝物のトランクの鍵は、警察署長の手に渡った。途中でヴァイオリンを売りに行く場面がちらっと出てくるが、これはその後の小説にも流用されている。

 

紳士…プロハルチン氏の検死のために、オケアーノフに連れられてやって来た。不満そうな顔でプロハルチン氏の脈を取り、死んでいると言った。そして、無駄な手間をかけさせられたと言った表情で、出て行ってしまった。

 

スジビン…下宿人のひとり。書記。失踪したプロハルチン氏を最初に発見するが、声をかける勇気はなかった。クリヴォイ横丁の火事で家が燃えたが、そのとき、プロハルチン氏が立っていたと報告した。

 

セミョーン・イヴァーノヴィチ・プロハルチン…主人公。ウスチニヤ・フョードロヴナの下宿に二十年住んでいる。昔から神秘的なところがあったが、思想は穏健で酒も飲まない年輩の男だった。社交的ではないが、信義は守るし、お世辞は言わない。けちな節約家で、下着を変えたことがない。官等は低く給料も安い。悪口や忠告を言う差し出がましい人間は、その場でしかりつける。トランクをひとつ持っていたが、その中身について聞かれることは、がまんならない。女主人のお気に入りだったので、部屋代を月五ルーブルに負けてもらい、食事も二十五コペイカ分しかとらない(一食は五十コペイカ)。同居人たちのでたらめな話に驚いて頭が混乱して、急に臆病になり、不作法なふるまいをすることが多くなる。そして、自分の悪い噂が耳に入ったとき、おびえたようにアパートからも役所からも姿を消した。

 その後は乞食のジモヴェイキンと行動するようになる。ある日、火事の現場を目撃して、狂った娘の放火によってすべてを失った老人に自分を重ね合わたことで、精神のタガが外れてしまう。

 朝の四時、コロムナで辻馬車に乗せられて戻って来たプロハルチン氏は、意識不明の状態となっていた。プロハルチン氏は、ベッドに運ばれたが、半狂乱の状態となり、「自分のこの乏しい財産をほんのひとかけらでも譲るくらいなら、いっそ死んでしまった方がましだ」と言っているような様子だった。

その後、二・三日寝かされていた。その後、お茶の仲間入りをしようとしても、すぐにうとうととまどろみ、空想の世界に入ってしまうようになる。正気に戻ったプロハルチン氏を、マルクがなだめたり、叱ったりするが、効果がない。ジモヴェイキンがやって来て、おとなしくなったが、議論が奇怪千万な問題になってしまい、同居人たちも匙を投げてしまった。同居人たちのしたでたらめな話が、プロハルチン氏の頭の中で百倍にふくれあがり、自分の頭を見事に改造してしまったことがわかった。

 役所がなくなってしまうかもしれないことは、役所が「自由」であるということであり、役所が不安定であることにショックを受けて不安定になったプロハルチン氏もまた、自由であるということ。そんなことを夢想すること自体が、帝政の永続性に疑いを抱く自由主義者の発想である。「自由主義者になっちまったんだ……」というプロハルチン氏の言葉を聞いたマルクは、「世界はあなたのために創られたとでもいうんですか? あなたはナポレオンだとでもいうんですか?」と詰問するが、プロハルチン氏には答えることができなかった。

 いよいよ病気が危機的な状況になった日、プロハルチン氏は、これまでのふるまいを懺悔し、これからも自分を養ってほしいと頼んだ。その夜、レムニョフとジモヴェイキンが、あらかじめ盗んでおいた女将のカギを使って、プロハルチン氏の部屋に忍び込んだ。しかし、あるべき場所(トランクの中)に金が見つからないので、二人はつかみ合いをしながら、「この泥棒め!」「ふあけるな。俺は潔白だぞ!」と言い争った。そのとき、プロハルチン氏はベッドの下に横たわった状態で発見された。ベッドの上に戻されたが、「プロハルチン氏は善行と悪業とを背負って、あの世に旅立った」。

死んだはずのプロハルチン氏が、棺桶の中で、「つまり、その死んだんじゃなくて――ひょいと起き上がったら、そのときはどういうことになるだろう、え?」と言ってるような気がする……と、物語は締めくくられている。

 

 プロハルチン氏の「杞憂」という形をとった自由主義革命の足音。

 

・火事で燃えてしまったら、すべて失ってしまう。

 →下からの革命が、スラヴの国々にも迫っている。火事は上の方の人たちではなく、生活に困って理性を失った下の人たちから始まることを暗示している。そして、そのような火事ですべてを失うかもしれないという恐れを抱いているのは、この小説の読者たちも同じである。これは、ロシア帝国を盤石なものであると考えていれば、生じるはずのない恐れである。

・役所がなくなってしまったら、収入を得られなくなる。

 →「ある部局が廃止される」「独身男性は雇用されないというでたらめな噂」を、想像力の乏しい頭で誇大に解釈したプロハルチン氏は、「役所がなくなる」ことを恐れている。このような仮定は、政府の転覆を暗示させるものであり、1848年の革命と自由主義をほのめかすものとなっている。そして、プロハルチン氏のような弱い精神の持ち主がが、現実のつらさに耐え切れずに狂ってしまい、自由主義を妄想するようになるという筋書きと、プロハルチン氏とナポレオンの重ね合わせ、プロハルチン氏が生き返るかもしれないとほのめかすことは、ナポレオンの再来を暗示するものとなっている。翌年、ナポレオン3世がクーデターを起こし、その後、ナポレオンの再来となり、皇帝して独裁を行うようになる。ドストエフスキーは、小説を通して国際情勢を敏感にとらえつつ、狂人の妄想という形をとることで検閲をまぬがれようとしている。

・義理の姉がいるなどという嘘をついて、蓄財している。

 →こういう人が革命を恐れており、恐れているからこそ革命の側に立つ。

・本当に貧しい人を助けられるだけの金を持っているのに、蓄財のために見て見ぬふりをしている。

 →恨まれている自覚があるからこそ、変わり身も早い。

・二十年以上衝立のかげで寝て暮らし、だんまりをきめこみ、世間も知らなければ、苦労も知らず、ただけちけちした生活を送ったあげく、とつぜん、誰やらのつまらぬ冗談を真に受けて、すっかり頭を狂わせてしまい、浮き世を渡るのが急につらくなったなどと心配し始めた。

 

センカ⇒セミョーン・イヴァーノヴィチ・プロハルチン

 

デミード・ヴァシーリエヴィチ…下宿人たちが、プロハルチン氏にでたらめなニュースを吹き込んだとき、その話の中に登場する人物。妻帯者の方が、独身者よりも昇進にふさわしという話を、閣下から聞いたとされる人物。プロハルチン氏から、その話は事実かと、二度も問いただされ、プロハルチン氏が精神的に不安定になっていることを目の当たりにする。デミードが、不意に廃止されてしまうような役所があると言っていたことも、プロハルチン氏の混乱に拍車をかけたようだった。

 

フェヴロニヤ・プロコフィエヴナ…下宿人たちが、プロハルチン氏にでたらめなニュースを吹き込んだとき、その話の中に登場する人物。妻帯者の方が出世しやすいなら、フェヴヴロニヤと結婚しようかな?

 

プレパロヴェンコ…下宿人のひとり。つつましい善良な男。マルクとオケアーノフと一緒にお茶の集まりをしようとしていたとき、ジノーヴィーがトランクの中身を聞いた怒りがさめやらぬプロハルチン氏がやって来て、義理の姉のせいで自分がいかに貧乏かということや、ジノーヴィーの悪口など、長広舌をふるった。失踪したプロハルチン氏を迎えるために、プロハルチン氏の義理の姉さんの人形を作って寝かせて待ったが、待っている間に、カンタリョフとともにカードでマルクに勝ち、給料の半分を手に入れた。

 

ポルフィーリイ・グリゴーリエヴィチクビになったジモヴェイキンが、足元にひれ伏して請願した。おかげで、ジモヴェイキンは、ある部局に採用された。

 

マルク・イワーノヴィチ…おしゃべりな常識人である下宿人。博学で賢明。プレパロヴェンコとオケアーノフと一緒にお茶の集まりをしようとしていたとき、ジノーヴィーにトランクの中身をたずねられた怒りがさめやらぬプロハルチン氏がやって来て、義理の姉のせいで自分がいかに貧乏かということや、ジノーヴィーの悪口など、長広舌をふるった。失踪したプロハルチン氏を迎えるために、下宿人たちはプロハルチン氏の義理の姉さんの人形を作って寝かせて待っていたとき、マルクはカードで給料の半分を負けてしまった。その後、戻って来たプロハルチン氏に、やさしい言葉を掛けたり、叱ったりするが、「靴のかかとみたいなやつ」「この自由主義者め、女ったらしめ、けっぽこ詩人め!」と、ののしられた。その後、プロハルチンが何かにつけておびえるので、「あなたにこわがる権利なんかあるんですかね?」「あなたは何者ですか? 何なのですか? ゼロですよ、あなた。たかが薄っぺらいプリン餅みたいなものですよ」と、憤慨している。プロハルチン氏の死後、ベッドから大量のお金が出てきたとき、なぜ彼がおじけづいてしまったのかを説明したが、だれも耳を傾けなかった。なぜプロハルチン氏は大金を銀行に預けなかったのかと問う女主人に、「頭が単純だったからですよ、おかみさん。そこまで思いつかなかったんですな」と答えた。さらに、女主人に対しても、「あなただって単純ですよ」と言った。

 

ヤロスラフ・イリッチ…地区の警察の警部。女主人のウスチニヤが言うには、「私はヤロスラフ・イリッチとさえ知り合いで、もしその気にさえなれば、とうの昔に尉官の奥さんにさえなっていたはずなんですからね」。プロハルチン氏が亡くなった時、オケアーノフに連れられて、検死にやって来た。そして、悪党のジモヴェイキンとレムニョフをしかるべき人物に渡して、ジモヴェイキンのポケットに入っていたプロハルチン氏のトランクの鍵を、オケアーノフから受け取る。しかし、その中にがらくたしか入っていなかったため、オケアーノフをきびしく詰問した。その後、敷布団を点検していた時に、金属の音がして数十ルーブリが零れ落ちたので、「おや、おや、おや!」と叫び、敷布団の裂け目を指さした。そこには、今しがた切り裂いたばかりの跡と、女主人の包丁があった。ヤロスライ・イリッチが部下の検査官に敷布団を調べさせたところ、プロハルチン氏は、再びベッドから転落してしまった。ヤロスライ・イリッチは、下宿人たちを叱咤して、彼をベッドの下から引っ張り上げたさせた。

 

プロハルチン氏⇒セミョーン・イワーノヴィチ・プロハルチン

 

レムニョフ…失踪したプロハルチン氏を誘惑したジモヴェイキンの仲間だが、非常に影が薄い。この下宿とジモヴェイキンを結ぶためだけに設定された人物。プロハルチン氏がいよいよという時になった夜、レムニョフの部屋にジモヴェイキンがやって来て、あらかじめ盗んでおいた女将のカギを使って、プロハルチン氏の部屋に忍び込んだ。しかし、トランクに金が見つからないので、二人はつかみ合いをしながら、「この泥棒め!」「ふざけるな。俺は潔白だぞ!」と言い争った。その後、ジモヴェイキンとともに、警察署長の手によって、しかるべき人間の手に渡された。

 

  その他の主なまとめリスト

 

ドストエフスキー『罪と罰』ー冒頭でつまずかないために

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』人物事典(完成版)

ドストエフスキー『貧しき人びと』全人物事典(まとめ)

ドストエフスキー『分身』を読む(まとめ)

トルストイ『戦争と平和』 全登場人物事典 など

【共通テスト対策】世界史(音声&テキスト)の動画マップ

2023年 京都大学 国語(文系・理系) 全問解説!!

歩き旅(まとめ)

世界の旅(まとめ)

【2021年度】関西の中学受験国語(まとめ)

灘中1日目語句教材&灘中2日目過去問添削

 

  リンク

 

ひとりの国語 (thebase.in)

灘・甲陽の受験教材を販売しています

 

灘中1日目対策語句教材(2024年度版 ver.2)

灘中語句教材の販売サイトの直リンクです

 

ひとりの国語 - YouTube

YouTubeもあります

 

  更新中の記事

 

★★毎日更新中!★★ 「ちょこざっぷ」に行ってみた!

【一緒やん】全農のグミを食べ比べてみた!

 

  灘中語句教材改訂の進捗状況

 

・慣用句(身体編)の画像化を進めています。

・外来語のYouTubeの穴埋め化は、7割くらい終わりました。