事故翌日 車の引き揚げ作業
梅母と桃母のいとこコンビ「ネーチャンズ」が7m下の谷底へ車で転落した。 場所はわさび谷から下の農道へ降りた突き当りだ。
梅母が運転、おそらく茶飲み話でもしていたのだろうが、道路堤の2mの急斜面を斜めに滑り落ち、コンクリートと石の垂直護岸から5m下の岩だらけの谷底へ落ちた。
車体後部は大破、見ただけで廃車の運命だが、2人とも命に別状はなかった。 2人合わせて166歳、限りなく奇跡に近いな。
上から落ちた車を見た人は皆、唖然として顔色が真っ青になる。
すぐ近くに家がある87歳の桃母は、水が流れる沢を歩いて桃太郎を呼びに行った。
上流に10mも行けば岸に上がり易く目の前が家なのに、なんで・・遠回りして下流に向かい、石垣を這い上がって帰って来たのか桃太郎はさっぱりわからんと言う。
落ちる恐怖心も相当なものだったと思うが・・
桃母は何も覚えていないらしく、だから何処に落ちたのかもよくわかっていなかったのだろう。 しかも無傷で本当によかったな。
梅母は腰椎圧迫骨折が治りかけていたが、再度別の個所を痛めた。
意識もお口も達者だが、動けないので救急車で運ばれしばらく入院。
腰椎が弱いので仕方ないが、桃母の健在ぶりから落ちた衝撃は桃母も耐えられる程度で済んだようだ。
何故この程度で済んだのか。
現場の状況は誰が見ても悲惨で命を落としてもおかしくなかった。
フロントから、あるいは裏返しに落ちていたら、底は岩だらけなのだから無事では済まなかっただろうな。
そのままタイヤから水平に落ちても5m落下の衝撃で大事に至るだろう。
何故お行儀よく軟着陸出来たのか、引き揚げに立ち会った野人は自分なりに現場検証してその理由を突き止めた。
野人検証結果報告
道を外れて、沢の護岸まで高低差2mの急斜面を30度角で下る。
左側前輪が最初に脱輪、やがて後輪も脱輪して惰性で逆さまになって天井から5m下の岩場へ落下するところだったが、傾いたまま車体の左下部が、川を跨いだ倒木に当たって停止。
惰性で左後輪は川方面へ脱輪、そのまま後部から先に落下した。
車は左後部で倒立した状態になり、どちらにに倒れても衝撃は大きく、後ろに天井から倒れたら最悪だが、対岸に向かって横向きに倒れていった。
ところが対岸にはつる性樹木が絡んだブッシュが川に大きく張り出し、車はそれに寄りかかるように倒れた。
倒れる速度は軽減され、最後は正常な状態で川底に着地した。
無傷の桃母の証言によれば、さっぱり覚えてないし恐怖感もなかったらしい。 つまり、「落下」感覚がなかったと言うことと、動きが単調ではなく複雑でわけがわからなかったと言うことだろう。
落ちた感覚がなかった理由は次の通り。
道路斜面の高低差2mは30度角で下った為に落ちる感覚はない。
倒木に遮られたが、倒木の傷から、激しくぶつかった形跡はなくストッパーのようなものだった。
傾きかけた車は裏返しにならずそのまま停止、後輪も脱輪して後部から谷に落ちたが、現場の状況と車後部の損傷から比較的ゆっくり「ずり落ちた」ものと思われる。
車が横に倒れかかりスピードが増す位置にブッシュがあり、それによって倒れる速度が軽減。 同時に横向きから正常になって軟着陸。
底には30cmほどの水深があり、タイヤと水がショックをさらに和らげた。 天井から落ちるのとは天地ほどの差が出る。
わけがわからず覚えていない理由は、視覚から見れば、斜め向きからゆっくり上向きになり、倒れる時は横向きで斜めから正常に戻って着地。
つまり10秒以内で視界がこれほど変化すればわけわからんだろうな。
落下距離と時間で見れば、一気に7m落下したわけではない。
落下が始まったのは高さ5mの沢淵からで、倒木で車が止まった時だ。
その時の助手席の桃母の頭の位置は底から5m弱。
車の後部が底に着いた時の頭の位置は底から3m弱。
車内での頭の位置は、車の全長に対して前よりにある。
つまり、後部から弧を描くようにずり落ちた速度の三分の一程度の速度で頭は2m強ゆっくりと落下、座席シートもあり衝撃もたいしたことはなかっただろう。
着地した時の頭部の位置は底から1,5m、車の後部倒立状態からの落差は1、5m。
その距離をストレートに倒れたのではなく、横向きに弧を描くようにブッシュで減速され着地したのだから落ちる感覚はないだろう。
目が回って翻弄されたら車が普通に止まっていたと言うことだろうな。
これだけの深さの谷底に転落した割には、エンジンもタイヤも無傷、つまり前方部分はダメージが少なかった。
倒木に引っ掛かり凹んで擦れた跡
後部尻もちの衝撃で車体は歪んでいたが天井は岩に当たった跡もなく無傷。 これほどの事故でも窓ガラスは最後部以外割れていない。
ほとんど衝撃がなかったと言うことだな。
落ちた川底でもエンジンはかかっていて、梅母がキーでエンジンを止めた。 車内に浸水はないが、車の上流と下流は水深があり位置がズレたら浸水していただろう。
想像するに ・・ おそらく 桃母が・・
「恵ちゃん ここ・・・何処」
梅母が・・
「川・・みたい 」
桃母が・・
「窓の外・・ お水流れてる」
「目の前コンクリートだけど どうやって出るの」
梅母・・
「わ・・わからんもん 」
そう言ったかどうかは定かではない。
桃母が沢を下りに出たあと、梅母は梅娘に電話した。
「えらいことしちゃった・・川に落ちた 腰 痛い・・」
「明日 特大エビフライ 食べ行けないかも」
梅娘が落ちた川の道路からの深さを聞くと・・
「2m くらい・・かなあ」
それで安心したと言うが、後で現場を見た梅娘は腰が抜けそうになった。
お笑いになってしまいそうだが、その程度しか落ちた気がしなかったのだろう。
事故直後の緊急状況報告に「海老フライ」が登場するくらいだから。
最大の功労者は川を跨いだ倒木であり、位置が1m前後にずれていたら大惨事は免れなかっただろう、間違いなく5m下の岩場に天井からダイレクトに落下していた。
この倒木は生きていたから車を止める強度が保てた。
枯れていて折れていたら結果は悲惨だった。
次の功労者は対岸のブッシュで、車の後部倒立からの落下速度を和らげ、車を正常な位置に戻して着水、落下コースも伸ばした。
これがなければ、倒れる速度は速いし、対岸のコンクリート壁に前部が当たって大怪我は免れなかっただろう。
「ネーチャンズ危機一髪 谷底から奇跡の生還」
全国ニュースになってもおかしくはない・・
とにかく二人とも無事でよかったな。
梅母はしばらく病院で静養だが、回復しても無理はさせられないな。
しかし、治ってからも運転する気満々・・事故車は廃車になるが、タイヤは4輪とも交換した翌日とのことで、タイヤだけ返してもらい保管することにした。
回復したら、あの「倒木とブッシュ」にお礼参りだな。
お神酒をあげ、ついでに・・肉まんと 焼き鳥も・・
この木は川を跨いで倒れた状態で生きてはいけない。
よくこの状態で生き抜いていたなあ。
春に挿し木用の新芽をいただいて梅農園で育ててあげよう。
笑いが絶えない梅母も桃母も人徳がありとても優しい。
もっと長生きしなさいと言う神様の思いやりだろうな。
生きた倒木は神の腕
ブッシュは神の手のひら
野人はそう思っている
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