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博多ではフグをフクと呼ぶ

 でも愛媛では普通にフグ。

 フグといえば下関ですが、実は愛媛の八幡浜や長浜も有名。というか、下関に水揚げするフグ、愛媛の漁船が水揚げしたのもけっこう多いとか。

 というわけで、フグを食べてきました。行ったのは八幡浜の北浜大島屋 。フグのフルコースですよ。


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まず、定番のフグ刺し。うますぎます。昔、下関で食べたときは、ヒラメのほうがおいしいじゃん・・・と思ったのもいい思い出。


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次に唐揚げ。野菜の量が異様に多いのが気になるけど、ゼラチン質でおいしい。トラフグをまるまる一匹使うので、口とかも唐揚げになって出てきます。フグの歯って鋭いんだねー。


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そして鍋。まあ、体が温まります。うまいです。写真撮り忘れたけど、この後は雑炊で〆です。


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もちろんヒレ酒も。飲みすぎました。


八幡浜にお越しの方で、おいしいものが食べたくて、かつ財布にちょっとばかり余裕があれば、ぜひ!

 

あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁

去年の平均気温

 NASAから、去年の平均気温をまとめたデータが発表されました 。2009年の平均気温は観測史上第2位に高温となったようです。以下の2つの図はともにNASAのHPからの引用です。




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図1:世界平均気温の推移。黒線が毎年の値で、赤が5年移動平均。



 前の記事 にも書きましたが、南半球の高温傾向が大きく寄与しているようです。南半球に限定すれば、観測史上1位の高温を記録しています。



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図2:半球ごとの平均気温の推移。赤が北半球、青が南半球。北半球の昇温が早い傾向にあることに留意。


 実は、気象庁やNOAAは既に速報値を出していました。気象庁によると 観測史上3位タイ、NOAAによると 観測史上5位タイとなるようです。

 なんでそんな差があるんだ、これでは温暖化を正しく評価できないではないか、という批判も出てきそうですが、これは用いているデータセットが異なるため生じる当然の誤差範囲です。

 平均気温の計算には、気象庁はGHCN(最近ではCLIMAT)データおよびCOBE-SSTデータを、NASAはGISTEMPデータを、NOAAはICOADSデータを、それぞれ用いています。どう違うか、詳細は私も把握していませんが、日本国内で例えるなら、「アメダスデータを用いるか、気象台のデータを用いるか、船などで収集した気温データも含めるか」などの差異があると考えてください。

 観測点は、できるだけ均一に分布するようにしているとは言っても、全く均一なデータが得られるわけではありません。また、あらゆる観測機には機差が存在するため、たとえ測定環境が同一であったとしてもある程度の誤差は含まれます。

 ・・・というより、全く同じデータが得られるようではいくつもの機関で気温を観測・統計する意義がありません。むしろ、観測者・解析者が異なるためデータが異なっているにもかかわらず、どのデータも同じ傾向を示すことこそが、得られたデータは信頼できるものだということの証左になります。 3つの機関で、誤差はあるものの全ての観測データが2009年はかなりの高温だったという結果を示すことは、むしろ気温観測がかなりの高精度でなされていることの裏付けになりえます。2位だったのか、3位だったのか、5位だったのか、は、重要な話題ではありません。重要なのは、いずれのデータでも地球平均気温の上昇は継続していることを示しているという事実です。

 これは化学分析でも同じことです。複数の人間がが分析を行ったとすると、決して全く同じデータは得られません。A海域とB海域のどちらがCODが高いか比較したとき、人によっては逆のデータが出ることも当然あります。 実は、どちらがCODが高いかを論じるのはさほど重要ではありません(日本一きれいな湖はどこか、といった議論をCODも元にされることがよくありますが、CODで0.1mg/Lの差を論じるのはかなり微妙です)。重要なのは、その値が以前と比べて増加傾向にあるのどうか、その値は海水浴に問題を与えるほどの濃度なのかどうか、もし_CODの数値が高いとしたらその原因はどこにあるのか、などのほうがはるかに重要なのです。

 

 今後も地球の平均気温の観測は、誤差を内包しながら続けられていくでしょう。誤差があるから信頼できないというのは科学的ではありません。誤差を小さくする努力は必要ですが、誤差をゼロにすることは決してできません誤差を考慮してなお、そこに何があるのか見極めることが重要です。

ミルコトカラハジマル

 愛媛県美術館 で開催されている「ミルコトカラハジマル 」展に行ってきました。

 正直言って、現代美術というとなんだかよくわからないイメージがあるのですが、前衛前衛していない、見てて楽しいと思えるのが多かったです。自然がテーマだから、ということもあるのかな?ふと気付くと、廊下の天井に作品が展示(?)されてたり、窓にも工夫があったりと、遊び心も満載。

 運良く、ギャラリートークの真っ最中。作品の作者自身の声が聞けるなんて、私にとってはめったにない経験ですから。楽しかったです。「昔は展示の都合を考えて作品のサイズを限定するなんて堕落だと思っていたが、年をとるとトラックの寸法を測ってから作品作りをするようになった」なんて、裏話もあったり。

 別の作家さんの「自然とはなにか」という問いかけに、つい「非線形 」だの「散逸構造 」だの、いらんことをイメージしてしまったり。これはいかん。


 ちなみに、同時開催されている円空・木喰展 は、去年すでに行っていますが、これもよかった。こちらは明日までですが、みなさんぜひ行ってくださいー。

IPCCのミス

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル) の「ヒマラヤの氷河が2035年までに消滅する」とした報告は誤りだったとする記事 が流れました。この件についてちょっと考察を。


 まずは、IPCC AR4 WG2 (IPCC第4次報告書第2作業部会)報告書の中を見てみます。ヒマラヤの氷河について書かれているのは第10章です。すでに訂正が入っているようですが、原文はこちら (PDF開きます)。この中のP493、10.6.2節に問題の部分があります。

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Glaciers in the Himalaya are receding faster than in any other part of the world (see Table 10.9) and, if the present rate continues, the likelihood of them disappearing by the year 2035 and perhaps sooner is very high if the Earth keeps warming at the current rate. Its total area will likely shrink from the present 500,000 to 100,000 km2 by the year 2035 (WWF, 2005).
"ヒマラヤの氷河は世界のどの地域よりも急速に縮小していて、もし現在のペースで縮小が続くなら、2035年ごろまでには氷河は消失する(注:実際には現在のペースが続く訳ではない)。現在50万km^2ある氷河は、2035年には10万km^2になるであろう。"

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 という感じでしょうか。

 なお、抄訳ですが、日本語訳もされています。環境省 は以下のように訳しています。

"現在の温暖化速度が継続されれば、ヒマラヤの氷河は非常に急速に崩壊し、2030年代までに現在の50万km2から10万km2に縮小し得る。"


 次に、この記述部分の引用元であるWWF (世界自然保護基金)の2005年の報告を見てみます (PDF開きます)。

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In 1999, a report by the Working Group on Himalayan Glaciology (WGHG) of the International
Commission for Snow and Ice (ICSI) stated: `glaciers in the Himalayas are receding faster than in any other
part of the world and, if the present rate continues, the livelihood[sic] of them disappearing by the
year 2035 is very high.

1999年、WGHGは「ヒマラヤ氷河は世界の他の地域に比べ急速に縮小していて、もし現在のペースで温暖化が進行すれば、2035年までに消失してしまう可能性が非常に高いと報告した

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 と、冒頭のイントロダクションに出ています。ところが、(ざっと流し読みしたところではですが)その根拠はどこにも出てきていません。あるいは引用文献のどれかに記載があるのかもしれませんが、それらを読める環境ではないので、現段階では「2350年を2035年と勘違いしてそれが一人歩きしたのではないか」という記事の指摘が最もそれらしいのかな、と思います


 この問題により、IPCC報告の信頼性が低下するのはやむをえないでしょう。しかし、信頼性の低下の度合いはどうか、というと、やはり世界はIPCC報告に信をおき、IPCC報告書に基づき政策を構築していくことだろうと思います。

・今回の問題は「ヒマラヤ氷河の後退する速度」という、気候変動という巨大な問題の中のごく一部の問題に過ぎません。「気候変動のメカニズムに間違いがあり気候変動自体に疑義が生じた」というのならともかく、一部に誤りがあったからと言って全体が否定されるものではありません。

・ヒマラヤ氷河の消失時期については再検討を要するとは言え、ヒマラヤ氷河が縮小しているのはほぼ疑いのない事実 です。ヒマラヤ氷河縮小による問題が既に発生していて、今後被害は拡大していくと思われること自体には何ら変わりがありません。

・もし、ヒマラヤ氷河に関する報告を担当した科学者(Hasnain)に故意の捏造などがあったとしても、それは科学者個人の問題であり、IPCCという組織自体に問題があったわけではありません(見抜けなかったことは失敗ですが)。数年前、黄教授がES細胞論文を捏造したという、科学界最大級のスキャンダル がありましたが、ES細胞そのものは山中教授のiPS細胞に発展していった ように、理論自体に誤りがあったわけではありません。それと同じようなことでしょう。

 

 今回はIPCC自体に問題があったのではなく(繰り返しますが、報告に不確かな点があったことを見抜けなかったのは間違いなく失敗であり反省材料でしょう)、個人の問題に帰せられる可能性が高いようです。これをもって、IPCCが組織的に報告書を捻じ曲げた、という結論を主張する向きがあるようですが、それは正しくありません。

 ただ、ES細胞のときは、スキャンダルにより、ES細胞研究は数年の停滞を余儀なくされました。同様に、今回の問題が気候変動対策を早期にとることの妨げにならなければいいのですが。


※2010/01/23 21:30追記

氷河の研究をされている方のブログに、今回の件についてのコメント があったので、紹介します。

ウンシュウミカンと温暖化

 愛媛県の主要産業といえば、誰もが答える「みかん」。みかん栽培も、昨日紹介した ブドウ栽培と同様、気候変動の影響を免れることはできません。

 環境省報告 (PDF開きます)の2ページ目図2を見ると、現在のウンシュウミカン栽培適地である九州・四国・本州太平洋側はほぼすべてが高温すぎて不適になる、と予想されています。

 その分、適地は高緯度あるいは標高の高い地域に移行し、東北地方の沿海地域まで適地となっています。実際、佐渡島のみかんが初出荷 された、という記事もありました。

 私の故郷は、ミカンどころ愛媛県の中でも最優良ミカンが栽培されている地域なのですが、「今まで質が悪かった山間部のミカンの味が格段に向上している」という声はよく聞きます。

 そのほか、温暖化との関連は未確定ではあるもののカンキツグリーニング病 という、ミカンにとっては致命的な病気の北上傾向 も見られます(これは日本に限りません、アメリカなどでも同種の報告が見られます(DOI: 10.1126/science.312.5773.523


 さて、これをどう見るか。大変だ、温暖化を止める行動をするべきだ、と考える人も多いでしょう。が、反論する人も多いでしょう。

A:温暖化を否定する科学者もいる。温暖化自体証明されたわけじゃないのだから、先に温暖化は間違いないと証明すべきではないか。

B:もし温暖化が本当でもミカンの栽培地が変わるだけでたいした問題ではない、今のミカン栽培適地はマンゴーでも作ればいいのではないか。

C:栽培適地の変化にせよ、病気の北上にせよ、温暖化以外の影響も考えられるのではないか。例えば栽培技術の発達や、人の往来の活発化などがあるのではないか。

 などがあるでしょうか。いずれも一理あるのですが、再反論もあります。再反論については後日また。