オゾンホール特集
オゾンホール発見25周年記念ということで、Natureにオゾンホール特集 が掲載されました。
大気圏上部のオゾンが気候気象に影響を与えること、1931年にはもう分かっていたのかとか、これがオゾンホール発見の記念碑的論文なのか、とか、おもしろいです。しかも、オゾンホール発見の論文は無料公開です。
http://www.nature.com/nature/journal/v315/n6016/pdf/315207a0.pdf
こういう特集は私のような耳学問者にはとてもありがたいです。Natureに感謝です。
オゾン濃度とフロン濃度の相関。南半球の春(10月)では、オゾン濃度が急速に減少していて、それと歩調を合わせてフロン類の濃度が増加しているのがよく分かる。これが、特定フロン類の全廃という「偉業」につながった。
おらくこのNatureの特集を受けたのでしょう、National geographicもオゾンホール記事 を掲載しています。
読売新聞社説
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100503-OYT1T00811.htm
ちょっとこの社説は、いくらなんでもレベルが低すぎます。
ここで出てくる「日本学術会議が初めて、この問題を公開の場で論議する会合を開いた。」というのは、
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/94-s-3-1.pdf
のことでしょう。まず、この会合自体がそもそも何らかの結論を出すためのものではなく、現状を整理する意味合いが強いものでした。よって「会合では、専門家がそれぞれ自説を述べるだけで学術会議の見解は示されなかった。このまま終わらせてはならない。」と批判するのは的外れです。そもそも「公開シンポジウム」ですよ、これ。読売新聞社は、自社主催の公開シンポジウムで出た意見を、新聞社の公式見解として示すというのでしょうか。
学術会議の見解はとっくに示されています。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h72-1.pdf
この見解は今回のIPCCのスキャンダル(と懐疑派が呼ぶもの)を受けても、基本的には何も変化していないと思います。異論は少数あるものの地球温暖化は真に起きており、人類にとって重要な問題であることは、学術会議の変わらぬ見解です。
「「ヒマラヤの氷河が2035年に消失する」「アフリカの穀物収穫が2020年に半減する」といった危機感を煽る内容」があったのは事実だとしても(注;ただし、アフリカの穀物収穫が2020年に半減するという報告が危機感を必要以上に煽る内容なのかというと、個人的にはそうは思いません)、それと反対に、極地の氷の融解が加速しているという報告や海面上昇が予想より加速している事実はどう考えているのでしょうか?必要以上に煽っていると批判する一方、これらを過小評価していると批判しないのはなぜなのでしょうか?
「環境団体の文書を参考にするなど、IPCCが報告書作成の際の基準としていた、科学的な審査を経た論文に基づくものではなかった。」という批判には、ならばなぜ、世の中の懐疑論を展開する人が科学的な審査を経た論文に基づいていないことを批判しないのでしょうか?科学的審査を経た論文に基づいていない度合いは、懐疑論者のほうが圧倒的に高いことについてどう考えているのでしょうか?
「この10年、温室効果ガスは増える一方なのに気温は上がっていない矛盾を、温暖化問題で主導的な英国の研究者が公的に認めた」というのは、そもそも批判にすらなっていないことを社説著者は理解するべきです。たぶん以前紹介した ジョーンズ博士の発言を受けているのでしょうが、別にことさらに取り上げなくても、この10年と区切るなら有意に気温が上昇していないことは、温暖化を問題とする科学者ほぼ全員がそう思っています。この批判には、タイムスケール というものへの認識が完全に欠如しています。科学者達は10年などの単位なら温暖化傾向が停止することはあると以前から言っていました。「この10年、温室効果ガスは増える一方なのに気温は上がっていない」と、まるで新しい発見があったかのように主張し「矛盾」と批判されてもどうしようもありません。こういうのを「独り相撲」と言うのでしょう、この社説の著者は、著者の頭の中に存在する科学者を批判しているにすぎません。
アメリカでもFOXのような保守的な新聞は、ことさらにIPCCのミスを取り上げたり、少数の懐疑的な科学者の意見を必要以上に強調するきらいがあるようです。読売新聞もその傾向があると言えるのかもしれません。
本来、保守とは「変えなくてもいいものは変えない」考え方のはずなのですが、往々にして「変えるべきことも変えない」スタンスを取りがちです。気候変動対策は、どのようなものにせよこの社会の有り様を変えることは疑いありません。この社説からは「変えるべきことも変えない」スタンスが透けて見えるように思えてなりません。
17:10追記
「温暖化の気持ち」を書く気持ち さんでも紹介されていました。
19:20追記
実際にシンポジウムに出席されていた、macroscope さんのブログに記載がありました。なるほど・・・。
19:55追記
シンポジウムのことには触れていませんが、朝日新聞も5月2日社説で気候変動問題について触れていました。
http://www.asahi.com/paper/editorial20100502.html
個人的には、明らかにこちらの社説の方がいいですねえ。
佐田岬
佐田岬灯台が一般公開されるとのことで、野次馬に行ってきました。
いつ見ても細長い半島です。
ここまではいつでも行くことができますが、今日は中にも入れます。
帰りに、朝日共販という水産会社直営の「しらす食堂」へ。しらす丼セット(しらす丼、吸物、生しらす、新香)500円ナリ。これはおいしい。釜揚げしらす丼ももちろん、生のしらすをポン酢で食べるのがおいしい。おいしい、安い、ちょっとした非日常が味わえる、ということで、讃岐うどんに通じるものがあるような。これはうけるかも。

余談ですが、実家そばの堤防が50cmほどかさ上げされていました。写真上、白っぽい部分がかさ上げ部分。高波が堤防を越えることが頻発するようになったことが一因とのこと。台風の時など排水溝を海水が逆流してくることも見られるようになりました。それが地球規模の海面上昇によるのかどうかはともかく、このあたりでも海面が上昇していることは、多くの住人が実感しています。
しかしゴミ警告太朗って。太郎じゃないのが重要なのかな。
北極の急速な温暖化の原因
北極は、地球のほかの地域に比べ急速に温暖化しています。その速度は全球平均に比べると約2倍に達し、"arctic amplification(北極増幅)"と呼ばれています。
図1 1901-2000年の平均気温に対し、2000年-2009年の平均気温がどの程度上昇したかを示す。北半球高緯度地域の高温傾向が顕著。ゴダード宇宙科学研究所 のHPを用いて作図。
北極増幅は何に起因しているのでしょうか?雲量の変化や水蒸気量の変化などの説がありますが、今回、海氷面積の縮小による正のフィードバックが最も影響が大きいとする報告がありました(doi:10.1038/nature09051)。ただし、水蒸気量や雲量の変化も全く影響がないということではなく、特に水蒸気量の増加は北極の温暖化にいくらか寄与しているとのことです。
気温上昇→海氷減少→さらに気温上昇→さらに海氷減少という、いわゆる正のフィードバックが現実に起きていることを強く示唆している報告と言えます。
星の大きさ
以前紹介した"Nature by Numbers"同様、「考えるな心で感じるんだ」というべき動画です。できればHD画質でどうぞ。
恒例の蛇足説明を。
0'00~0'15
この宇宙にはどれほど大きな天体があるのだろう?そして、その大きさはどのくらいなのだろう?この動画ではその大きさの比較をしてみよう。楽しんでくれたまえ。まずは地球の月からスタートしよう。
0'15~0"45
月→水星→火星→金星→地球(あなたは今ここにいる)→海王星→土星→木星(ここまでが惑星または衛星だ)
0'45~1'30
太陽→シリウスA(おおいぬ座、見た目では全天で最も明るい星)→ポルックス(ふたご座の橙色巨星)→アルクトゥルス(うしかい座の赤色巨星)→アルデバラン(おうし座の赤色巨星)→リゲル(オリオン座の青色超巨星)→ピストル・スター(いて座の青色極超巨星、全天で最も明るい恒星の一つで太陽の4000万倍も明るい)→アンタレス(さそり座の赤色超巨星、アンタレスとは「火星に対抗するもの」という意味でその赤さは際立っている)→ガーネット・スター(ケフェウス座の赤色超巨星)→おおいぬ座VY星(赤色極超巨星、我々が知る最大の天体)
1'30~1'38
見ろ、地球がゴミのようだ!
1'38~2'00
おおいぬ座VY星は直径28億km。この大きさをイメージできるだろうか?(ちなみに、土星の公転半径は約14億kmなので、土星の軌道まですっぽり覆われる計算だ。)仮に、時速900kmの飛行機でこの星の回りを飛んで見るとしよう。すると、一周するのに1,100年もかかる!ちなみに地球なら44時間だ。
2'00~2'20
しかしこれでも、数千億の星からなる銀河の大きさから考えると単なる点にすぎない。そして、この宇宙にはそんな銀河が1千億個も存在する。
2'20~
あなたは宇宙の中心なんかじゃない!!
・・・日常に埋没することなくこのような視点を常にどこかに持っておきたいものです。